凡キャラでGANTZ   作:フランディーニ

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前回のあらすじ:
高所から火事場を俯瞰するオリ主、火オニに対する上位スーツ(使用者)の他に停止する上位スーツを見付けた。



オニ編⑤

 

まさか、

お代わりがあるの?

残機増えるなら前向きに入手を検討したい。

「ハードスーツ」や「岡スーツ」と呼ばれる上位スーツは標準装備以上に謎なアイテムだ。

マンガで主人公(及び語り手)の所属するチームメンバーはZガンまでしか(自力)入手しなかったし「本番」では転送のおまけで装備していたから仕方ないけど装着方法すら判らない。

それともセンパイ以外の誰かなの?あの中身。他チームの助っ人?

主催者の飛び入りは無いと思う。

 

中身が誰か知らないが(何十発浴びたとしても)あの火球やら火柱で三番目の100点装備が壊れたんなら火オニって案外高得点なのでは?

和泉より超能力師匠の得点が上だったし雷オニより高得点な可能性はある。

マンガの火オニは読者にあんまり評価されてなかったけど採点判定に関わる大きな要素がヤッつけるまでの梃子摺り具合なら100点いきそう。

そもそも星人呼称するような生物の戦闘力をどんな方法で測っているんだ、と言うか測れるの? 

星人のスペック(と言うと殺人や器物損壊の手際?)を知ってミッションを企画しているならもっと役立つ指令内容の筈だ。違うなら被害が多すぎる。ミッション中の行動でテキト―に採点してそう。もしくは、ボスクラスの高得点は1チーム全滅させる度に加算された結果だろう。

 

消防車らしき車両に埋まったまま動かない上位スーツは、まだ入ってるのか?あの中身。

火種が直撃しなきゃ標準スーツでも耐えられそうではある(サウナ並みの体感ならキツイが)。

とか思ってたら腕長スーツが動いた、かに見えたが違って車両ごとずれた。原因はヒトの骨格。

それはその場でもがくと転がり歩道の次に車道へ横転、漸く止まった。

サウナよりも熱いらしい。

望遠モードに変えて視たところボタンは点灯している。

マンガで燃やされたメンバーのようにスーツごと炭化してないから無事っぽい。

火オニ戦に参加しようと飛び込んだにしては変な動きだった。投げ込まれたのだろう。犯人は…

瓦礫の上に居た。

火事場と橋梁に挟まれたビル跡地を更に散らかし戯れるメンバー2人と大きなヒト型。

メンバー2人は玄野と桜丘。その倍近くある相手の身長は3m弱。

 

Xショットガンを構える玄野とXガンを持つ桜丘が示し合わせたように間合いを空け、不思議な踊りを披露する。腿上げ数回ののち上体を反って一回転、時計回りで身体を投げ出し側転を決め更に後退。桜丘はともかく意外と柔軟だな玄野(帰宅部)。(見物する余裕がありそうな一般人が周りに見当たらないし周波数はいつも通りっぽいので当然)飽きた観客への配慮、ではなく回避行動なのだろう。2人の目線からして犯人は大きなヒト型。

スキャンモードでは頭蓋骨が大分欠けているし望遠で観察するとマンガ版岩オニそっくりなので本物登場か、と思ったのに(大した射程じゃないが)遠距離攻撃手段があるなら別オニかも。

マンガでは相手が拳法使いだったから同じ土俵で闘っただけで石を(機関銃に近い速度で)ばら撒く特技があったのかも、玄野たちへ指先すら向けず仁王立ちのままなので体表のどこからでも飛ばせるヤツが。丸腰の奴に使ったら負けになる、とマンガの風戦では封印してた可能性はある。

最期は驚き顔だった。

 

 

 

===◇○○===

 

 

 

一段高い瓦礫の上に佇むのは怪人。

火事場に照らされ陰になッた前面の中で唯一濡れたように街灯を映す双眸が大物感を醸し出す。

…厳しい相手だ。

火中の変な奴は何かスゴそーな装備貰ッたアイツに任せるとして、奴は俺たち2人でやるしかない。風はトラックの荷台にめり込ンでから帰ッて来ずJJはうつ伏せで倒れたまま。

デカブツの自爆で発生した視界の悪さを利用し、残る敵(=動けるガンツメンバー)のうち一番デカい奴(=JJ)を戦闘不能にするあたり、基本的に俺たちを舐めてかかる星人らしからぬ賢さだ。

加えて聖ちゃんと俺の狙撃を避けながら放ッた針?のような攻撃は視え難く、かなり鋭利。

掠ッただけでスーツの防御を越えたらしく左二の腕に刺すような痛みがある。早いトコ取り除きたいが…

そンな暇は無さそーだッ

 

…ヒュッ

 

悪寒に従い右へ跳ンだ俺の耳に微かな音が届く。奴の足音と投げた礫が風を斬る音に混ざッて判り難い。

 

ヒュヒュ ヒュヒュヒュ ヒュンッ

 

走ッて跳ンで物陰に入ッたところで気付いた。

バカか?俺は。その辺の瓦礫じゃ(スーツを貫通する)針を防げない。

動き続けることが唯一の対処法。目隠しにはなるだろうが…

ヘンだな、針がとンで来ない。

瓦礫から顔を出すと黒いスーツの背中が視えた。

 

浮いていた右足の裏が着地し膝が曲がると左右の順番で空を掻く両腕、

3つ編みが解け広がり艶を増す。

 

「聖ちゃんッ!!」

 

着地した後頭部が一度弾み露わになッた美貌が再び隠れる。

背中を瓦礫に凭れると彼女は動かなくなッた。

 

「ぁぁぁあああぁあああああ”あ”あ”」

 

嫌だッ 聖ちゃんッ そンなッ!

倒れた彼女の背景が俺を見る。奴が聖ちゃんへ視線を戻す前に俺は地を蹴ッた。

視界をすぎる彼女と捨てた武器。近付く巨体と醜い貌。

 

そこを一歩も動くなよ

 

今すぐ頭をかち割ッてやるッ

 

 

 

=========

 

 

 

ジャンプし武器を振った玄野は一撃で弾かれ巻き戻しのような軌道で桜丘の近所に落ちた。

柄物が廃材なら当然か(回避時に捨てたXショットガンが最後の武器だったらしい)。

寝返りをうって彼女を認めた途端飛び付く茶髪。傍らで恋人の手を握り俯いてから漸く周囲を確認するとその動きを止めた。

 

視線の先は岩オニ、

の首無しver。

(鎖骨ギリギリまで削った分)低くなった座高で膝を折り沈黙している。

停止から一転、忙しなくキョロつき桜丘を抱えた玄野は跳んだ。

 

ドバンッッ

 

直後四散する星人、

岩オニのパーツが周囲へ破壊をばら撒く。飛び出ていた廃材が砕かれ瓦礫の表面が均される。

あいつもか。

 

高架上に(は寝かせた)桜丘と玄野。

瓦礫だらけのビル跡地全体を隠す土煙が晴れる。爆心地の凹みには何も残っていない。

前例(=大岩オニ?の自爆)が無かったら巻き込まれてたかもね玄野たち。

点滅していたターゲット反応が消える。

粉々になってもすぐに討伐判定できないって、火を渡る火オニのように岩オニが周囲の土や瓦礫と化し倒せていないことでも考慮したの?

そんなの火オニより面倒じゃん。

 

…そろそろ勝負に出ないとまずいなぁ、

マップが予兆を示しだした。

 

 

 

===□○◇===

 

 

 

“オニ星人”が蒼い景色の中ゆらゆらと歪み幾つもの靄が周りを彩る。

階段と周辺施設の表面からも生じては消える薄い靄は、その大きさはともかく濃淡は温度を表しているのだろう。

いま俺は、炎に囲まれているらしい。

地獄なんてモノが在るのならこんな場所だろうか。装備が無かったら生きていられない筈だ。

喉が渇く。

迷いなく靄へ飛び込んだ先頭に、倣った当初は平気だったのに。やはり直撃はマズッたか。

白い塊…おそらく火球をくらってから発汗が止まらない。目前下部に表示されたアーマー内の気温は60℃。さっきよりは下がった。

 

遡って十数分前。署内へ駆け込んだものの3階の廊下に着いた時点で一度も襲撃されないこと、ガン類でバラされた様な星人しか見当たらないことに安堵と少しの徒労を感じていると建物が揺れ、窓から出した顔面を熱風に焙らせながら知ったのは追われるガンツアーマーと追う怪人。

(たぶん轟音の原因で)警察署玄関へ移動したパトカーを盾に警戒する計ちゃん達を無視し2体は南へ走り去った。

 

現在、超高層ビルの足元で俺が対峙するのは怪人のほう。

この火事場も奴が作ったのだろう、まとまった炎で攻撃してくる。初めて視た時は自分の目を疑った。走りながら掲げた掌の上に火球をつくり敵の背中へぶつけるキャラとかどこのフィクションだ。放火や爆発を手軽に起こす漫画の超能力者みたいな技術だけでも厄介なのに崩しても千切っても堪えない星人なんて、どうしたらいいのか…

頭からツノが生えている以外は人間っぽかったのに骨格無いとか幽霊かよ?!

 

ゴォッ

 

火柱(?)に指先を掠めながら見えた車両は横転したまま。大穴の開いた腹をこちらに見せる。

あいつは復帰しないのか?

穴の奥に居るはずの、誰かの装備は俺と同じ。豪華客船で着た頑丈そうな外装…

 

ザゥッ …ボンッ

 

を車両ごと2条の衝撃波(?)が火で包む。

みるみるへたってゆく鉄塊。温度を思うと頭が痛い。

警察署から線路を横断し此処まで、あいつは何度も火球をくらっていた。いくら背後へぶつけられても起きあがり走りきったんだから正面からの一撃で壊れたりしないよな?

車両から出てこない原因(かもしれない攻撃)は大きいめの火球ではあったけど。

…。

スーツと同じで急所があるのか?

 

『ハンター!』

 

?!

声に振り向くと星人が居た。どういうことだ?

バックステップし確認する。やはり2箇所に星人が居る。と言っても新手ではない。

正面と2時方向に全く同じ姿とポーズで立っている。火を出す奴が増えている。

 

『みろ!みえるか』

 

あぁ視えてるよ…

俺より数段高い場所…2時方向に残る階段横の壁を足場に立つ星人、奴が掲げる右手の上、頭3つ分ほど離れ巨大な塊が浮かんでいた。

ツノを含めた星人の背丈よりもでかい…

 

『動くな!』

 

身構えた俺を叩く声。

は?

 

『少しでも動けば!これを!あれに!ぶつける!』

 

正面の星人がおろした右掌を俺へ向け左手で示す。

長い指がさしたのは火事場を見おろすランドマークタワー。

…!

サウナのようなアーマーの中で頭から血の気が引いてゆく。

いきなり喚いたと思えば、なに言い出すんだあの星人。

 

【よせっ落ち着け…】

『動くな!!』

【…。要求は?】

『腕を下ろせ!!』

【わかったから、はやまるな】

 

両手を上げると怒鳴られた。しかも下ろせって…まぁ元々手ぶらだ、掌を見せる意味は無い。

 

♪トントントン トトトッ トトトッ トトトントントン トトトッ トトトッ トト…♪

 

!!

ホールド・アップを改める前に電子音が曲を奏でる。着メロ?

 

『ちっ こんなときに…』ピッ『何だっ』

 

正面の星人が立つ方向から苛立った声が。電話出たのあいつ? しかし奴の口元は動かない。

 

『うん?…。そうするとこだ。…。ああ?うるせぇな。てめぇに言われたかねーよ。

 大体、話が違うだろ。あんなん出るなんて聞いてねぇ…。は?…ああ、わかった』ピッ

『ハンター!』

 

妙な独り言が終わり今度こそ口を開く火オニ1号。やはり同じ声にきこえる。

 

『武器を捨てろ!』

 

…?

……?

 

【意味がわからないっ こっちは手ぶらだっ】

『ふざけんなっ 中身入ってんだろ!…もう一度言ってやる 武器を捨てろ!』

 

命令を解せず困惑する。何なんだ、これ以上どう『武器を捨てろ』と?

仕方ないので自分の姿を想像する…やっぱり武器を持っていない。腕のギミックは外せないし……もしかして肘ブレードを折れと?掌の射出口を塞げって意味か?

…。

まさか、このアーマーから出ろと言いたいのか? 聞くと頷く火オニ1号。 

『はやくしろ』って、はじめからそう言えよ!……しかし、

脱げるのか?この装備。

 

怪人たちを追う途中、思いついてレーダーを操作したら着れた(?)ので脱ぎ方わかんねぇ。

ミッションエリアへ転送直後レーダーに表示されていた新しい画面、線画ガンツアーマーページを再び出し“Yes”を選択したら視界が蒼くなった。たぶん転送のように頭頂部から果物の皮剥きを巻き戻すように着たのだろう。視界にちらばる表示は何故かバグったように文字化け(?)していて着脱に関係あっても見分けがつかない。マジでどーやって脱ぐんだ?

ていうかこんなとこで耐火装備脱いだら…

 

ドンッ

 

言い訳を始める前に1号の背後が陥没した。

 

 

…ゴゥ ゴゥ ゴゥ…ボボボ…

 

見間違いか? 目の前で星人は消えた。霧散って表現が近い。逃げたのか?

さっきまで火オニ1号が居た少し後方には円形の凹み。

土下座一歩手前な姿勢で見回せば火オニ2号も居なくなっている。

…。

……。

えー…と…?

火事場に残されたのは俺だけらしい。

 

ドンッドドンッ

 

危ねっ

1・2歩の位置に3つの凹みが重なるようにできて思わず後ずさると浅い陥没を踏みしめる骨格に気付いた。数は2体。左右の手には見覚えのあるシルエット。

部屋の武器だろう、メンバーだ。

 

「リーダー?」

 

伺うように首を傾げる骨格①発した声はたぶん苫篠。骨格②は周囲を一瞥。

炎で中の様子が視えないから牽制として特典武器を使用した?もしかして消火に使ったとか?

武器のスキャン機能やレーダーのマップを使えない状況ってこと?

骨格①②…苫篠と誰かは嵩張る武器を右手で構え駆け寄る。

 

【あぁ俺だ】

「マジでっ すっげー!」

「おい後にしろ。リーダー」

 

「やめろよーはげちゃうだろ~」と言う苫篠の頭頂部をひっぱって留めると骨格②が空を指す。

視えたのは丸い月…

…いや動いている。風船の様にフヨフヨと。

 

「あれって星人関連だよな」

【まさか…】

 

苫篠たちは空に浮かぶアレが何か判らないなりに心配して来てくれたようだ。

でも説明は待ってくれ。問題の物体を見上げながら俺は精一杯考える。

此処からだと小さく見えるが、あの光る浮遊物体は貯水タンク大の火球…エネルギー弾?

とにかく爆発物だ。(今まで爆発したソフトボールやバスケットボール大の火球の威力から単純に考えて)小さく見積もっても家屋を丸ごと吹き飛ばすような。

そんな危険物が火事場の気流によるものなのかゆっくりとビルへ向かっている。

超高層ビルの壁面へ。

くっそぉ…何でアレだけ残ってんだ、出した奴と一緒に消えとけよっ!

とにかく(警察も含め)一般人は気付いても(建物内の人なら避難以外に)何も出来ないし、この装備で体当たりを試すくらいなら少しでも建物から遠いうちにXショットガンで誘爆させたい。ガンツアーマーについたレーザーの射出口から強めの風を出せるなら誘導出来るのに…

いや飛び続けていられないだろうし例えミッションエリアの境界線ギリギリまで運べても未だまだ街だ。落とせない。

残る手は…

 

「あっ」

 

こっちを見る苫篠の顔が別の景色に浸食されてゆく。

 

上手い方法を思いつく前に俺は部屋へ転送された。




火オニ戦の経緯:
①上位スーツN、飛行ユニットでオニ幹部らを奇襲。雷オニ瞬殺。
②上位スーツNvs火オニ(大規模な火事場を作ってから追い駆けっこ)。
③駅の西側まで足をのばし元の階段に戻る。火オニの火球で上位スーツN(の中の人)気絶。
④上位スーツ(に換装?した加藤こと)Kvs火オニ。
以下略、
なんやかんやで上位スーツ所持者以外の誰かに火オニは潰された。

火オニ:
「ボスが殺られた!よし燃やそう」
「何か重装備だけど俺の敵じゃない」
「同じ装備だけど二台目は中々やるな」
「気付いたら周りに敵しか居なくね?やばくね」
「人質とって逃げよう。ついでに目の前のハンター殺ってこ」
「電話だ。生きてたのかアイツ」
「ぺしゃん」

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