凡キャラでGANTZ   作:フランディーニ

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前回のあらすじ:
クラブから出た山田と菊池、コインパーキングへ向かう。




ホスト編③

===□□□===

 

 

 

「…」

「…」「…」

 

路上に沈黙が落ちる。

…。

どどど

どうしよう。

更に星人が来ないうちに菊池さんを送ろう、と始めたところで躓いた。

知らない子と目が合ってしまった。

もう無視出来ない程に見つめ合っている。

 

「こんばんわ~」

「…どうも」

 

じりじりしていたら菊池さんのアシストが!

そうか、フツ―に挨拶で済むよね。恰好が変なだけだもん僕。池袋とか黒い球とは無関係デス。

 

Xガンを背中へ隠し、やや蟹歩きで進路をあけると知らない子は通りすぎた。

…ほっ。

 

「おい」

 

しかし安心した僕は甘かった。

 

「あれ…やったの、おっさん達?」

 

振り返ると、知らない子が指していたのは全裸星人。

脳内でお鈴の音が鳴る。

…殺人現場っ忘れてたっ!!

まずいよ!ドキドキしすぎて言葉が出ないっ。

 

再び菊池さんが対応する。

 

「おっさん呼びは酷いなぁ。まだそんな年じゃないよ、て言うか何のことだか分からない」

 

…彼もテンパっている様子。

 

「そこに転がってるじゃん、人間にみえない? 老眼なの? だかr

 

ダッ

知らない子が言い終わる前にダッシュする。菊池さんを肩に担いで。

背中ともっと後ろで何か言ってるけれど耳元で唸る風に紛れて聴こえなーい…聴こえない!

北条くんに化けた星人の頭を爆破した犯人は僕じゃない。でも銃持ってるし状況証拠揃ってるし!

通報されたら捕まっちゃう。

まだ教師やめたくないよ。エリア内に警察署無かったら死んじゃうよっ

 

「!」

ズザザッ「ぐえっ」

 

急ブレーキをかけるとアスファルトを削る音と呻き声が聞こえ止まった。

 

なっ…

 

なんで?

街灯の届かない裏道、ゴミやら埃が舞うなか倉庫の上に立つのはさっきの子。

…。

今ごろ気付いたけど……彼も黒色を纏っていた。

 

 

 

… … …

 

 

 

「もうやめたい、こんな生活…!」

 

対面に座り両手で顔を覆うのは知らない子、改め吸血鬼少年。

僕ら3人は従業員の休憩用だろう倉庫横に置かれた椅子を使っている。

普段はともかく今はミッション中。彼我の関係は敵対。

なのにどうして返り討ちにあわずヤッつけてもいないのか、原因は彼にある。

 

「…」

「…」「…」

 

Xガンで狙いつつも丸腰な少年に向かってトリガ―を引けず途方にくれていると倉庫から下りた彼はお世辞にも綺麗とは言えない石畳に跪き表面を殴った。

そして言った。

 

「なんで撃ってくれない」

 

拳を受けた敷石は浅く凹み、砕けていた。

 

「話を聞こうか」

 

促したのは菊池さん。

掌サイズの機械を弄ったあと舌打ちし手帳とペンを構える彼を気にせず吸血鬼少年が身の上話を始め今に至る。

少年はハンター(←僕たちのことだ)に殺されることで吸血鬼「生活」を「やめたい」らしい。

 

頭痛に苛まれ始めてから数日、へんなセミナーにひっかかったと思ったら友人たちを斬殺された。そのとき悲しみは無く喉の渇きしか感じなかった、との言。

吸血鬼たちの悪魔的な所業に加担させられ数ヶ月。殺人を見逃すほど化物に近付くような気がして人助けを試みるも失敗。自分のスペックでは絶対に勝てそうにない「奴」が居る一方で同じ不満を抱えてそうな同類はひとりも見当たらない。吸血不足による頭痛は耐え難い。

 

意外なことに彼は4カ月と数週間前まで人間だったらしい。セミナーと幹部の説明で転化を自覚したのは今年の3月。ナノマシンが人間を吸血鬼へ変えているのだ。

感染(?)経路は「わからない」がそのウイルスめいたものが体内に入った生物は全ての細胞が入れ替わるのに数週間かかり見た目は変わらないまま別物にされる。頑丈で力強い星人に。

一番の悩みは面倒くさい体質や化物スペックを隠す煩わしさではなく考え方の変化。

「自分が自分であって自分でない感覚」を他の吸血鬼と同じく自覚した彼は強い反発を覚えた。

 

吸血鬼の成り立ちを聞いた筈の周りが全く気にしていないのが理解できない。

人としての一生と正常な感情を奪われたのに何故受け容れる?

血液と闘争以外への興味を失った自分は、もはや自分ではない。

ほかの意思に操られてまで生きていたくない。

憎きナノマシンに操られた吸血鬼に殺されたり犯罪者や化物として捕まるくらいなら正義の味方の手で終わりたい…

 

初対面なのに重すぎる相談だ。

 

「正義の味方」か、僕らとは遠い言葉だよ。

「悪」魔的な吸血鬼を狩る集団は「正義」なの?安直すぎない?

戦争だって悪い国と善い国が敵対するワケじゃないんだし。ぁあ加藤くんなら「正義」かも。

ところで、素朴な疑問いいかな?

 

「あのさ、吸血鬼のグループって抜けられないの?」

「…」

 

余計な質問すぎたのか黙る少年。

だって吸血鬼いっぱい居たから、ひとりくらい居なくなってもバレなくない?

 

「ヤクザとかよくない集まりみたいに大変そうかな?足抜けは」

「…全員が毎日溜まり場に集まるわけじゃない。俺が消えても気にしない、かも」

「それなら距離をとってみなよ。合わない人達と無理に関わるからストレスがたまるんだし」

「いや、あんた話きいてたか?俺はバケモンになるのが嫌なんだ…!」

 

まぁその点は嫌なものを遠ざけても解決しないけど、

 

「血液確保の問題もある」

 

メモに忙しい人からも意見が出る。

そうでもないよ菊池さん。

 

「若い女の子の新鮮な血液しか受け付けないってんじゃなければ、僕が相談にのるよ」 

 

体重50kgの人で800ml血を抜くと気絶するらしいけど缶コーヒー1本で190mlくらいだから頻繁に大量じゃないなら僕が提供しても構わない。

汚染された恐れのある輸血パックの大量廃棄に繋がる事態や希少な型の横取りで起きる人命の危機に関わらない所から拝借すれば解決だ(装備を着た僕らと同程度のことが出来るなら簡単に保管場所へ忍び込めるはず)そんな所があるかって訊かれたら困るし窃盗は犯罪であり吸血鬼少年が嫌がる悪行のひとつなので最後の手段だろうけど。

 

「迷惑で違法で乱暴なことしなくても血を貰う方法は沢山ありそうだから保留として、

 本題の、ナノマシンだっけ?それに操られてるってのは違うんじゃないかな」

「え」

「吸血鬼のグループ、入って4カ月経つんだよね?」

「うん」

「君がいちばんの新入りなの?」

「いや…数日前ひとり増えた。他は知らないけど地味に増えてる」

「そう。で、そのヒト達の様子も」

「他の奴らと同じ。…?」

 

不思議そうな表情で答える吸血鬼少年。

 

「君は操られてないと思う」

「?!」

「少なくとも君より後に変わったヒト達より自我が残ってると思う。

 操られてるんならこんなところで敵と会話になってるのがおかしいでしょ。

 ナノマシンの言いなりな他の吸血鬼が僕らを敵と判断してるんだよ?」

「っ でも殺人を、それも知ってる奴を殺されても何も感じないんだ!

 人間なら怖がったり悲しんだり そういうのがある筈だ!!」

 

うーん

 

「全てがそうとは言い切れないな」

 

そうそう大量殺人とか猟奇的な事件起こす人間は居るしね。殺人犯の全てが隠れ星人でないなら、だけど。

ただ菊池さん、口にされると何か怖い。

 

「とにかく殺人犯でも場合によっては死刑にならないのに

 補助しかしてない子を撃ち殺すことはしたくない。転送もしない」

「でも血を飲んだから同罪だ」

 

被害者目線ならそうだけど僕は違う。少し追い回されて悩み相談うけただけ。

だから言われても困るんだ、長々と聞いといてなんだけど。

気の毒だなぁ程度の感情で「人」殺しは無理。

 

「僕らだって好きでこんなことしてないんだよ、やらないと殺されるからやってるの。

 人を襲う星人でもなるべく殺さないで捕まえる子もいるくらいだし。

 攻撃してこない丸腰のきみを事務的にヤッつけてくれるメンバーなんて居ないよ」

 

居たら異常者だよ。そっちが星人だよね。

 

「…あんたを人質にしても無理か?」

「それなら成功するかも、じゃないよっ冗談はやめて?」

「なら武器持って近付くくらいしか方法無いかぁ。貸してくれない?それ」

 

指名されたXガンをホルスターから外しグリップを彼へ向ける。

 

「2つともトリガ―引いたら撃てるから」

「…」

 

敵に武器を与えたワケだが問題無い。

人間を殺せる仲間に馴染めないから初対面の敵に相談するほど悩んだのだ。彼は僕を撃たない。

彼が今えらぶべき行動は逃走一択。捕獲拒否ならメンバーの前に出ないほうがいい。

エリア外へ出ればターゲットから外れるだろう。

僕たちと違い彼の脳に爆弾は設置されていないはず。あったらミッションにならない。

 

ていうか落ち込んじゃうなぁ。

罪悪感で自殺を考えるとか彼のほうが余程人間らしいよ、僕なんかより。

なんだかんだでミッションに慣れちゃった、星「人」狩りを肯定してしまった僕は人でなしだ。

そう再確認してしまう。

特典のひとつを選べば沢山の罪を帳消し出来るとすら思っていた。

僕が忘れても事件は消えないのに。

 

俯いてXガンを撫でる吸血鬼少年。

 

待てよ? 撃ち方教えたのマズかったかも。

彼の動作は速いから自殺を図ったら止められる自信が無い。

包丁とかだと痛そうだ、と一瞬で終われる銃器を入手する機会を伺っていたとしたら…

 

僕が後悔している間にゆっくりと立ち上がると銃を左手へ持ち変える少年。

話し中も思ったけど綺麗な顔だ。整っているのに親しみやすい造作はモテそうで羨ましい。

此処で失ったら沢山の人に恨まれそう。長身だから高校生くらいかな?

僕が笑顔をつくると彼も口角を上げる。逸れた視線を戻し細まる目元。

ふたつのトリガ―へ指のかかった銃口は 僕の眉間へ向けられた。

 

…あれ?

 

 

 

===◇○○===

 

 

 

地下クラブ。

 

山田と一般人離脱後、暫く星人共を観察していると天井でまわる球体の輝きを何かが遮ッた。

人垣から垂直に跳び出した星人だ。

 

「ぅおっ?!」

 

ソイツは加藤の横へ着地しガクッと関節を曲げる。

垂れた黒髪が顔を隠す奴の服装は黒色の全身タイツ…

ッてガンツスーツじゃん。

オマエ何してンの?

 

「えっ 和泉?」「あっ」

 

メンバーの呟きと驚く声の直後、今度は半裸が跳ンで来た。外人顔の男だ。

裸足だから着衣はボトムのみ。

奴は俺たちの誰よりも階段へ近い床に着地すると右掌の甲をこッちへ向け軽く4指を動かしニヤつく。

和泉は振り返ッた姿勢で歯噛み、ていうか歯軋りが聞こえる。

何かヘンだと思ッたら、スーツだ。ボタンの光が消えている

 

「おいっ」

 

声をかける加藤を無視し駆け出す和泉。足首や手首のボタンから飛び散る液体が気になるのか急いで進路を空けるメンバーたち。グラサン男は既に見えない。

 

「追うぞっ」

 

誰かの声は続く足音に呑み込まれた。




山田急ブレーキ時に聞こえた潰れ蛙のような声の出所はお荷物の菊池。

吸血鬼少年を山田が「親しみやすい造作」と思ったのは似た顔を知っているから。

(頼まれてもいないのに)武器無し勝負に応じフツ―に劣勢な和泉。

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