Double Guardian   作:nonota

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第十話 「決戦」

「ここか」

 

コウは、一つの扉の前で立ち止まった。イノコの示した見取り図通りならば、ここにこの施設の責任者である紅月ウミという科学者がいるはずだ。

変身すると、扉に拳を叩き込み、室内に乗り込む。

 

「騒々しい入室ね」

 

部屋には無数のモニターが存在し、そこには、コウの姿、戦うハクたちの姿、走るヒムの姿が映っていた。

モニターの前の椅子から人が立ち上がり、ゆっくりと振り返る。

床についても余るほどに長い髪の美しい女性がいた。

 

「…紅月ウミだな」

 

「G1。私の傑作で、最強のガーディアン。

あなたの成長、見せてもらったわ。

素晴らしい、私の予測を超えていたわ」

 

「その力で、お前は殺されるんだよっ」

 

高速で拳を繰り出す。だが、ウミの髪が意思を持ったかのように動いてコウの腕に絡みつき、ウミに拳が届く前に止めた。

 

「予想を超えた速さではあったけれど、私の想定したレベルには、まだ届かない」

 

ウミの身体が変化してジェリーフィッシュへと変わった。

コウの腕に絡みつく髪が触手へと代わり、それの数が増えてコウを覆いつくそうとする。

 

「チィ!」

 

加速し、触手を焼き切って離脱する。

 

「高速移動を離脱に使うか、さらに応用性が出てきた。やっぱり、あの子たちをあなたにぶつけたのは、間違いではなかったわ」

 

「何をごちゃごちゃと!」

 

ウンウンと一人で納得し、頷くジェリーフィッシュに再び、今度は加速して襲い掛かろうとした。

 

「同じ加速では芸がないわ」

 

「ぐはっ!?」

 

一瞬、何をされたのかわからなかった。加速したはずなのに、床に転がる自分がいた。

 

「加速とは、脳が加速を決めて身体が加速を行うことで起こすことができる。脳の判断を体へ伝達するまでにある一瞬のタイムラグを突けば、加速は妨害可能なのよ。もっとも、私も自分の思考を加速させて、そのタイムラグを見切っているわけだけど」

 

まるで、出来の悪い子供に諭すようにジェリーフィッシュは言い、触手をコウに向けて伸ばす。

それを、強化した手刀で薙ぎ払おうとしたが、脚に激痛が走り、体勢を崩した。

 

「一点集中での身体強化を改善させたようでも、つける穴は多い」

 

「な、なめるなぁ!!」

 

腕を振り抜く。放たれたサイコウェーブが、触手を弾き飛ばし、ジェリーフィッシュに迫る。

 

「超能力を放つのは、G2の仕事、そんな脆弱なサイコウェーブで ッ!?」

 

「チっ!!」

 

苦も無く、コウのサイコウェーブを弾いたジェリーフィッシュが講説を口にしようとした時、眼前にコウの爪が迫っていた。ジェリーフィッシュは、それをギリギリで回避することで、顔面に貫手が突き刺さることはなかったが、頬が深く切り裂かれた。

 

「サイコウェーブを放った直後、加速による急接近、身体強化した貫手…

これだけの動作を連続して行えるなんて、加速の速さも身体強化も制度が下がっていたけれど、超能力の操作がさらに上がっている」

 

ジェリーフィッシュは自分の頬に手を当ててすっと撫でると、コウの付けた傷は、消えていた。

 

「いい、凄くいいわ!」

 

ジェリーフィッシュが、楽しそうな声を上げてコウに触手を放つ。

 

「あぶねえ!!」

 

飛び込んできたヒムがサイコバリアで触手を防いだ。

 

「王白!? なんで、お前がここに?」

 

「ゴールまでついたから、お前の方に行けってみんなに押し出された」

 

「それは……そうか、正直助かる。俺一人じゃ手に負えない」

 

「お前がそんなこと言うなんて、よっぽどの相手なんだな」

 

「俺たちの製作者さまだよ」

 

「なるほど、それはそれは」

 

ふら付きながら立ち上がったコウと肩を並べてヒムも構えた。

 

「G2、あなたの成長も素晴らしい。

第一段階までの改造でありながら、そこまでの力を発揮するとは思わなかったわ。第二段階まで改造して、そっちに回していた超能力を戦力に使用したら、どれくらいになるか、楽しみでしょうがないの」

 

「丁重にお断りさせてもらうぜ!」

 

多方向から向かってくる触手全てをヒムがサイコバリアで弾き、コウが加速して攻撃する。

ヒムがいるせいで、先ほどのようにコウの加速の妨害ができない。さらに、ヒムの弱点を攻めようにも、コウがいるせいでそれができない。

コウの攻撃で傷付いた身体を、すぐに再生させる。その間にヒムが接近し、力任せに攻撃をする。それをするりと躱し、死角から触手を伸ばすも、コウが弾き飛ばす。

 

「フフフ、攻防一体、私の理想とした運用法がされているわ」

 

自分が不利な状況のはずなのに、楽し気にジェリーフィッシュは言う。

その時、不意に、アラームが聞こえた。

 

「まったく、楽しくなってきたところで」

 

深いそうな声とともに、ジェリーフィッシュは、触手でスイッチを押した。

 

『博士、ヘリの準備ができました』

 

「予定はキャンセルよ」

 

『そんな!? キャンセルなど不可能です!』

 

「本当にタイミングの悪い、わかったわ、すぐに行く」

 

『はっ!』

 

モニターが消え、ジェリーフィッシュが振り返る。

ジェリーフィッシュが部下と会話している間、コウもヒムも手を止めたりはしていなかった。だが、触手だけでなく、超能力も行使するジェリーフィッシュに二人は、攻め切ることができなかった。

 

「っというわけで、申し訳ないのだけど、これから出かけないといけなくなったの」

 

「「はい、そうですかって、いくかよ!」」

 

二人が攻撃を仕掛けようとするが、天井が崩落し、床が抜けた。

 

「野郎っ、触手で床ぶち抜いて、念動力で天井崩落させやがった!」

 

「ウソだろ!?」

 

ヒムはジェリーフィッシュのやった荒技に驚愕するも、即座にサイコバリアで足場を作り、さらに上に“Λ”の形にバリアを展開して落下してくる瓦礫を受け流し、コウは瓦礫を跳んでわたる。

崩落は、すぐにおさまったが、そこにジェリーフィッシュの姿はなかった。

 

「逃げられた!」

 

「いや、まだ追える。ヘリの準備ができたって、言っていたってことはあいつら、ヘリを使う気だ」

 

「ってことは?」

 

「どんなヘリかはわからないが、外だ。月海のくれた見取図には載っていなかったが、8割近くわかっていれば、おおよその見当はつく。行くぞ!」

 

「おう!」

 

走り出したコウの後に続いてヒムも走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妨害もなく、二人は、格納庫までたどり着いたが、すでにヘリは飛び立っていた。

 

「クソ、遅かった!」

 

「いや、まだだ、アレを使うぞ」

 

自分たちのジャンプ力では届かないであろう所にいるヘリの姿に、地団駄を踏むヒムの肩を叩き、コウはそこに置かれていたバイクを指差した。

 

「え? バイク!? いや、向こうは、空を飛んでんだぞ! そぉらぁを!」

 

「大丈夫だ。俺と、お前ならな」

 

「っていうか、鍵は!?」

 

「問題ない」

 

コウは、バイクに跨ると、手をかざした。すぐに、エンジンがかかった。

 

「え? どゆこと?」

 

「念動力だ」

 

「超能力って便利なんだな」

 

「その便利な超能力を俺以上に使えるはずなのが、お前だぞ」

 

ヒムが、コウの後に乗ると、コウはバイクを発進させた。

鋪装されていない悪路をバイクが恐ろしい速さで疾走し、ヘリとの距離を詰めていく。

草木が生い茂る場所で出す速さではないが、コウが自身の感覚を強化することで、安定した走行を実現させていた。

 

「そろそろ、お前の出番だぞ」

 

「何しろっているんだよ」

 

「サイコバリアで道を作れ」

 

「あ、なるほど!」

 

「跳ぶぞ。それに合わせろ」

 

「あいよ、了解!」

 

コウが、木の根を利用してバイクをジャンプさせた。それに合わせてヒムがサイコバリアを展開して、バイクに見えない道を作る。

真っ直ぐにヘリへと向かって行く。ヘリの方も、空を走るバイクに気が付いたらしく、ヘリから、マシンガンを持った兵士が身を乗り出してきた。引き金が引かれ、マシンガンが火を吹いた。

だが、コウは、ハンドルを切らない。

銃弾がコウに当たる前に、コウの位置が下がった。ヒムがサイコバリアを解除したことで足場を失い落下したのだ。

銃弾を回避するとすぐにヒムはサイコバリアを再展開して道を作る。

コウがアクセルを全開にすると、バイクは、ありえない速さでヘリに突っ込む。

ヒムのサイコバリアの上を疾走し、コウのサイコバリアでコーティングされたバイクは、ヘリの装甲を貫き、メインローターを破壊した。

ヘリは、火を噴いて真っ逆さまに墜落し、爆発した。

地上に着陸してバイクを傍に止め、二人はバイクから降りた。

 

「クフフっ、アハハハハハハ!! 素晴らしい、本当に素晴らしいわ、あなたたちは!

マシン・ゲイルを完璧に操り、空まで走って!

精神をリンクさせて会話もなく、意思疎通をしている!

あなたたちの進化の早さは、私の想像を超えていく。

あなたたちを選んだ私は、間違っていなかった!!」

 

触手で、ヘリを跳ね飛ばし、炎をかき消してジェリーフィッシュが、狂気の笑い声を上げて姿を現した。

 

「ヘリが壊れたんじゃ、遅れても仕方ないわよね?」

 

そう言いながら、触手を二人に放つ。

ヒムが前に出てサイコバリアで防ぎ、加速したコウがバリアの影から加速して飛び出し、ジェリーフィッシュの腕を切り裂く。

即座にジェリーフィッシュは、腕を再生させ、コウに向けて、腕を伸ばすも、不可視の巨大な腕に下方向に押し付けられるように、下に叩きつけられた。

 

「ハ、ハハハっ! そういえば、G2は教わりもしないでサイコプレッシャーが使えるようになっていたわね! さすが、今の私が選んだガーディアンよ!

あなたもよ、G1! 高速移動の速さがさらに上がっているわ! 次の私が手助けしただけのことはあるわね!」

 

「今の私? 次の私?」

 

「おっと、余計なことを考えてしまった。さぁ、もっと見せて!」

 

ジェリーフィッシュの楽し気に声を上げ、不可視の巨大な腕を持ち上げるように、サイコプレッシャーを片手で押し返すように上に伸ばし、逆の手を振り下ろした。

 

「なっ!?」

 

「グぉっ!!」

 

ヒムは、撥ね返されそうになったサイコプレッシャーを必死に抑え込み、コウはジェリーフィッシュのサイコプレッシャーを叩きつけられ、地面に膝を着いた。

身動きできない二人を触手が襲い、二人は吹っ飛ばされた。

 

「「ぐはぁっ」」

 

吹っ飛ばされた二人はすぐに起き上がろうとするも、サイコプレッシャーが再び叩きつけられ、地面に押し付けられる。

 

「くっそおおぉっ」

 

ヒムは、先ほどジェリーフィッシュにされたのと同じようにサイコプレッシャーを撥ね返そうとする。

 

「ぐ、ぐうううっ」

 

コウは、自身の力で強引に立ち上がる。

 

「へぇ…」

 

それぞれの抵抗に、ジェリーフィッシュは、感心したような声を漏らす。

 

「「ああああああっ!!」」

 

複眼を発光させ、それぞれの方法で、サイコプレッシャーを撥ね退け、ジェリーフィッシュに、拳を振り上げ襲い掛かる。

同時に繰り出された拳は、ジェリーフィッシュの数cm手前で止まった。サイコバリアが展開されていたのだ。

コウは二本の腕で、ヒムは四本の腕で、不可視の障壁を殴り続ける。止まることなく繰り出されるラッシュによって、障壁にひびが入り、砕ける。

そのままの勢いでジェリーフィッシュに殴りかかるが、再び二人は、直前で拳が止まり、そのまま、後方へと弾き飛ばされた。

いくつもの木をなぎ倒して、二人は止まった。

 

『遊んでやがる』

 

『え?』

 

『これだけの力があったら、施設で…いや、お前が助けに来る前に俺を殺すなり、それこそ戦闘不能にしてとらえるなりできたはずだ。

こいつは、俺に、自分の改造人間たちを戦わせてよかったと言っていた。

俺たちを、あいつらの言い方で言うところの進化させるためにあえて手加減してやがる』

 

『舐めやがって!!』

 

ヒムは、自分が激突してなぎ倒した木を持ち上げ、ジェリーフィッシュに次々と投げつける。それら全てが、ジェリーフィッシュの眼前で止まる。その木の中から、コウが飛び出し、蹴りを放つが、それも後に数mmのところで触手に絡め捕り、締め上げる。

 

「ぐううううっ!!」

 

「とばされてから一瞬で、反対方向まで回り込んで奇襲……まだ、精神リンクは継続中と」

 

不意にジェリーフィッシュに影が差した。上空から、木がジェリーフィッシュを串刺しにせんばかりの勢いで降ってきたが、木は空中で静止した。

 

「まだだ!」

 

その木に向かって、ヒムが踵落としを叩き込み、ジェリーフィッシュへ押し込もうとするが、ジェリーフィッシュのサイコバリアは破れない。

 

「おい」

 

不意にコウが、ジェリーフィッシュに声をかけ、指を振る力だけで尖った石を投げた。その石は、正確にジェリーフィッシュの目を射抜いた。

 

「ッ!?」

 

そのダメージで集中が乱れたジェリーフィッシュのサイコバリアが破れ、その身体の左半分を押しつぶした。それにより、コウは拘束から脱する。

ジェリーフィッシュから距離を取り、ヒムもその隣に着地した。

 

「っ!」

 

「おい、大丈夫か!?」

 

コウが不意に膝を着いた。

 

「まだ、大丈夫だ。だが、そろそろ、終わらせないと俺もお前もガス欠だ」

 

「あ~、それはなんとなくわかるわぁ。そろそろ、限界っぽいな」

 

コウはゆっくりと立ち上がった。

半身を破壊されたジェリーフィッシュだったが、驚異的な再生力で半身を復活させていた。

 

「誇りなさい。この短時間で、あなたたちのした進化段階は、今までの研究データを優に超えているわ」

 

身体を半壊させられた跡だというのに、ジェリーフィッシュの声は楽しげだった。

 

「もう、てめぇを喜ばせるもんなんてねぇよ」

 

「楽しませたりなんてしない」

 

「「先に言っておく、さっさと終らせるからな!!」」

 

マスクの目の部分が、コウは赤にヒムはオレンジに発光し、それぞれ開いていた口の部分が閉じた。

コウが加速する。ジェリーフィッシュが、その加速の隙を突くことができないほどの速さだった。超高速で接近し、ジェリーフィッシュを掴んで跳ぶ。

空気の摩擦によってジェリーフィッシュの身体が燃える。即座に再生と同時に攻撃をしようとするも、触手は次々と燃え上がる。コウの動きを止める為、コウが木々を足場にした瞬間に木に掴まって急ブレーキをかけたり、サイコバリアやサイコプレッシャーを使用して止めようとするも、コウは何もない空間で跳躍し、使おうとする超能力がことごとく妨害され、ジェリーフィッシュの目論見を外す。

 

(G2のサイコバリアにサイコジャマー!? 加速状態でもリンクを維持している? 違う、こちらの思考をジャックしているのね!)

 

燃える体を何とかしなければならないのだが、しようとする全てが、妨害される。

その間も、コウはさらに加速する。

 

(G1の方が、私の思考加速よりも速い!? このままでは、身体が維持できなくなる!?)

 

鋭く尖らせた触手を全身から放ち、強引にコウの拘束を逃れた。

即座に欠損した肉体を再生させるが、そちらに気を取られたジェリーフィッシュは、自分の落下地点にいるヒムに気付いていなかった。

 

「オラああああああああっ!!」

 

「うげええええええええっ!?」

 

四本の腕による嵐のようなラッシュに晒され、再び肉体を砕かれていく。

 

「パスだ!!」

 

その声とともに叩き込まれた頭突きによって、上空に飛ばされたジェリーフィッシュに向かって跳んだコウとすれ違う。その瞬間に、コウの手刀がジェリーフィッシュの首を落とした。

 

「ゲはぁっ!?」

 

頭と体から触手が伸びてお互いをつなげようとする。

 

「ヒム! 下は任せた」

 

「オウよ!!」

 

ヒムが、サイコバリアを利用して高く飛び、身体を回転させながら、蹴りを放ち、体を粉々に蹴り砕いた。

コウが、地面を蹴り上げ、舞い上がった石や木の枝を足場にして超高速でまるで稲妻のような軌道で跳び、残った頭部を蹴り抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 




ついに、紅月ウミを倒した。
だが、それが戦いの終わりとはならなかった。
最後の後始末の為、二人は止まらない。

次回 Double Guardian 最終話 「終演」
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