Double Guardian   作:nonota

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第二話 「共闘」

 

 

 

制服をなくして帰ってきた孫を祖父母は、優しく迎えた。

変身してしまった数日、特になにもなく過ごしていた。何かに触れる時、ふとした瞬間、あの力が出るんじゃないかと、恐る恐るになってしまう。

教室でチラチラとコウを見るが、コウは気にした様子もなく、普通に過ごしているように見えた。

 

「今日から教育実習の先生が来ることになった。なんでも、書類のミスがあって学校も今日になって急にわかったんだ」

 

担任は困ったようにそう言うと、細身の男性が入ってきた。男性がイケメンであった為、女子たちが歓声を上げた。

 

尢鳥キョウ(おおとりきょう)です。教科は数学です。宜しくお願いします」

 

爽やかな笑みに女子たちの喜びの悲鳴が沸き起こる。

コウは面倒臭そうに顔をしかめ、ヒムは言いようのない不安を感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暦の上でも夏となり、むしむしとする暑さに多くの生徒たちが、体育のプールの時間だけを心のよりどころにして授業を受ける季節に入り、目の前に迫った期末試験と、それで赤点を取った際の夏休み返上で行われる勉強会と追試におびえる時期となった。

 

「王白くん」

 

「あ、はい! 尢鳥先生、なんスか?」

 

「ちょっと、放課後、手伝ってほしい事があるんだ」

 

多くの生徒の類に漏れず、勉強会と追試におびえ、英単語帳とにらめっこしていたヒムに、キョウが声を掛けた。

 

「来週が実習最後だからね。ちょっと、サプライズをしようと思っているんだ。その準備を手伝ってほしいんだけど、ダメかな? ジュースくらいならおごるから」

 

申し訳なさそうに言うキョウにヒムは少し考えてから、頷いた。

 

「了解ッス」

 

「じゃあ、部活を見なくちゃいけないから、17時過ぎに進路指導室に来てくれ」

 

「はぁい!」

 

「じゃあ、僕はもう2.3人に声を掛けてくるから」

 

ヒムは、どうやって放課後の時間をつぶすか考えながら、キョウを見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「尢鳥先生が声を掛けたのってお前らかよ」

 

「ま、暇だったしね」

 

「……」

 

キョウに指定された時間に3階にある進路指導室の前に集まったメンバーを見て、ヒムは顔をしかめた。集められたのは、イノコとコウだった。

運痴のイノコでは、正直、足手まとい以外何物でもないし、コウと同じ空間にはあまりいたくない。

 

(尢鳥先生! この面子、お駄賃がジュースだけじゃ、割に合わないッスよ! せめてお菓子もつけてください!)

 

心の中で嘆き、進路指導室に入った。すでにキョウがいた。

だが、キョウの言っていたサプライズに使うような物など何もなかった。

 

「尢鳥先生?」

 

「やぁ、待ってたよ。半端者くんたち」

 

キョウの声は、実習中、教室で聞いていたさわやかな感じではなく、どろっとしたどす黒いものを感じさせた。

コウが、ヒムやイノコを押しのけて前に出た。

 

「途中半端に改造されて、しかも、組織にケンカを売ろうなど……片腹痛いわ!!」

 

キョウの身体が膨れ上がり、服が裂けて背中から大きな翼が生え、体中が羽毛に覆われ、口が嘴に変化する。両手が鋭い爪に変わる。

 

「ヒイイイ!! バ、バケモノ!!」

 

イノコが目を見開いて叫んだ。

 

「死ね!!」

 

翼を大きく羽ばたかせ、羽を飛ばした。羽が着弾した机に深々と突き刺さった様子から、その威力が伺える。

変身したコウが両手を前に突き出すと、羽は見えない壁にぶつかったように止まって床に落ちた。

 

「ほお、サイコバリアか。飛虫くん、中々、訓練を積んでいる様じゃないか」

 

再び、羽手裏剣を放とうとするが、それよりも早くコウは間合いを詰めて必殺の貫手を放つ。

 

「「ッチィ!」」

 

ギリギリで回避運動を取られ、脇腹を浅く切り裂いた。

コウは、今の一撃で仕留められなかったことに、キョウは、反撃をされたことに舌打ちをした。

キョウも鋭い爪を振り落すが、そのときすでにコウは爪の間合いの外へと逃げていた。

 

「飛び跳ねるしか能の無い虫の分際で! よくも!!」

 

キョウは、羽ばたいて外へと飛び出した。

 

「おまえたち、逃げろ!」

 

コウが背後にいる二人にどなりつける。

 

「あ、ああ! イノコ、逃げるぞ!!」

 

「ご、ごめん……こ、腰が抜けて立てない」

 

座り込んでいるイノコの手を引っ張るが、脱力している人間の体は、普段以上に重く、動かない。

 

「そら、ハチの巣になってしまえ!!」

 

「クソ!」

 

再び放たれた羽手裏剣をコウがサイコバリアで防ぐ。

 

「おや、飛虫くん、さきほどより、バリアのサイズが小さくなっているんじゃないかな?」

 

たしかに、先ほどよりも、羽が近くに刺さっている。

 

「「うわあああ!!」」

 

「くぅ…」

 

「そらそら、ちゃんとバリアを張らないと、お友達が死んでしまうぞ!」

 

休む間もなく、羽手裏剣が放たれる。段々と、受け止められる範囲が狭まっていく中、コウは、拳を床に叩き込んだ。その攻撃で床が抜けた。

 

「お、お助けえええ!!」

 

「わああああ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「飛虫、助かったよ… イノコ、大丈夫か?」

 

「あ、ああ、なんとか……」

 

「まったく、世話がかかる…」

 

床が抜けて落ちる中、背中に羽手裏剣を受けながら、コウが二人を抱えて着地したおかげでヒムとイノコは無事だった。

 

「おまえたちは、このまま、隠れていろ」

 

「勝てるのか?」

 

イノコが不安げにコウに聞くが、コウは首を振った。

 

「わからん。さすがにあの高さには届かないが、何とかする」

 

「飛虫、俺も戦う!」

 

「いらん。ってか、お前は自分で変身もできないだろ」

 

ヒムが身を乗り出すが、即座に却下された。

 

「前みたいに、お前に手伝ってもらえば…」

 

「……わかった。今は、猫の手でも借りたい」

 

コウの第三の眼が点滅する。それに合わせてヒムの身体が変化していく。

 

「ヒ、ヒム、おまえ……」

 

「悪いな、イノコ。実は、俺もバケモノだったんだ」

 

眼を見開いてヒムを見つめるイノコに頭を下げた。

 

「……俺が、精神を支えているから、暴走もなさそうだな」

 

「あ、うん。大丈夫だ」

 

「少しでも、違和感があったら言え。すぐに気絶させるから」

 

「助けてくれないのかよ!」

 

「気絶させてやるんだから助けだろ」

 

背中に刺さった羽を抜いてコウが立ち上がり、跳んだ。慌ててヒムも追いかけて跳ぶ。

2階から3階へ上がり、そこからさらに跳んで屋上へと出る。

 

「ほお、王白くんも変身したのか。だが、虫けらが一匹増えた所で! このイーグルに勝てるものか!!」

 

放たれた羽手裏剣を二人は左右に分かれてかわす。そして、ヒムは、落ちていた物を拾ってイーグルに向かって投げつける。

プロ野球のピッチャーが投げる剛速球よりも速いまさに弾丸となって飛んでいくが、イーグルは、それを軽々とかわす。

 

「中々可愛い反撃じゃないか」

 

(腕力だけで、あの速さかよ!)

 

コウは、ヒムの攻撃を見て、眼を見開く。そして、以前、暴走したヒムとの事を思い出した。

 

(確かに、あいつは、力があった……それを使えば…

ダメだ、後一手足りない)

 

羽手裏剣をかわしながら、4本の手で次々と石や瓦礫を投げつけるを横目で見ながら、コウも石を拾い投射した。

ヒムの攻撃に意識を向けていたイーグルは、コウの投げた石に反応が遅れて顔をかすめた。

 

(ッ! そうか!!)

 

『王白! 作戦がある、聞け!』

 

『うわッ! 何だこれ!?』

 

『テレパシーによる通信だ。とりあえず、手を休めずに黙って聞け!』

 

『わ、わかったよ』

 

『足場になれ』

 

『は?』

 

『俺とお前でジャンプして空中でおまえが俺の足場になる。そして、おまえの脚力と俺の脚力を同時に使ってあいつのところまで跳ぶ』

 

『そんなの、避けられて終りだろ』

 

『大丈夫だ。あいつは、反応できない』

 

『何を根拠に?』

 

『最初、あいつは、俺の攻撃をあれだけの機動力を持っているのに躱し切れなかった。たぶん、動体視力は、そこまで高くない。

あの高さでこちらの様子が見えるくらい眼は良いみたいだが、それにあいつは驕ってる。そこが、付け入る隙だ』

 

『本当に大丈夫なのか?』

 

『ああ、奴の行動がそれを示している。大丈夫だ』

 

「わかったよ! おまえを信じる!!」

 

ヒムがコウに向かって走り出し、コウもヒムに向かって走る。そして、二人同時に跳んだ。

 

「フン、貴様らの様な翼を持たない者が、ここまで届くものか!!」

 

二人が重なる瞬間にイーグルの羽手裏剣が殺到する。

それをコウがサイコバリアで防ぐ間にヒムが身体を180度反転させる。

ヒムの足にコウが乗った瞬間、ヒムがコウを蹴り出し、コウもそれに合わせて跳ぶ。

 

「何いいいぃっ!?」

 

「オオオオオオオオオオオオオオっ!!」

 

ヒムの脚力をプラスしたコウの跳躍の速さにイーグルは、完全に反応できず、繰り出されたコウのキックが腹部に直撃し、身体を引き裂いた。

 

(王白とのテレパシー、他のやつとするときよりも、クリアに聞こえた気がするが…同じバッタだったからか?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

校庭に着地したコウは、もう一度ジャンプして屋上へ上がった。

 

「おい、大丈夫か?」

 

「ああ、何とか…」

 

コウの大ジャンプの為にヒムは、地上に向かってジャンプしたようなものなのだ。勢いよく屋上に突っ込んだ様で、フラフラとヒムが姿を現した。

 

「戻るぞ」

 

「あ、ああ」

 

校内に戻り、コウに手伝ってもらい、人間の姿に戻ったヒムだったが、頭に手をやった。

 

「ど、どうしよう! 制服、また破いちまった!!」

 

「Nooooo!!」と叫ぶヒムに横からビニールに包まれた制服が差し出された。振り返ると、制服を持ったイノコがいた。

 

「制服、破けてたから、いるかと思って……」

 

「サンキューー!!」

 

ヒムは、喜々として制服を受け取って着るが、ハッとしてイノコの方を向く。

 

「怖くないのか? 俺たちの事……」

 

「怖くないって言ったら、ウソになるけど、助けてくれたんだし、やっぱり、ヒムは大事な友達だし…」

 

「おおお! おまえってやつは!!」

 

恥ずかしそうにそっぽを向くイノコに歓喜極まったヒムが抱きついた。

 

「そ、そう言えば、制服をとりに行った時も、誰とも会わなかったんだけど…」

 

「組織の奴が校舎から、人間を追い出したのさ」

 

「そんなことできるのか?」

 

「一定範囲の人間の脳にここにいたくない、いてはいけないと思わせる脳波を送って追い出したんだ」

 

「まるで超能力だ」

 

「超能力だ。俺たちのテレパシーだって超能力の一環だ」

 

「じゃあ、おまえにも、こんなことが出来るのか?」

 

「俺には無理だ。知り合いに、それが出来る奴はいるがな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

休みを挟んで登校日、あれだけ、暴れて壊したはずの校舎は元通りになっていた。

ヒムがコウに問うと、コウの仲間が何とかしたとのことだった。

そして放課後、ヒムとコウとイノコの三人は、誰もいなくなった教室にいた。

 

「改造人間とそれを作る秘密結社か…まるで、ヒーロー漫画の世界だ」

 

「生憎と、現実だがな」

 

説明を受けたイノコの感想をコウが鼻で笑った。

 

「ヒム、本当に心当たりはないのか? 不思議な出来事があったとか」

 

「そうだなぁ…」

 

記憶を呼び起こしながら、ヒムは何気なく窓の外へと目を向けた。部活に汗を流す生徒たちと激を飛ばす教師たちの向こう、校門の前を小さな子供が通るのが見えた。

 

(小さな子供……子供?)

 

「あッ! あった! あったぞ、不思議な出来事!」

 

「本当か!?」

 

叫んだヒムにイノコが飛びつく。

そして、神台村であった出来事を話した。

 

「なるほど……確かに、その時に王白が改造された可能性は高いな。

親が死んで、その村に行かなくなったため、第一段階以上の改造がされなかったと…

行ってみる価値はありそうだ」

(だが、その程度の理由で、せっかく改造した王白を手放したのか?)

 

「だよな!」

 

「待ってくれ。

もうすぐ期末試験だし、もし、赤点なんて取ったら、強制参加の勉強会と追試が待ってるんだぞ」

 

「王白、行くのは夏休みになってからだ。保護者に心配をかけるわけにもいかない」

 

「それもあるだろうけど、ヒム、試験大丈夫なのか? 去年、追試メンバーのレギュラーだったけど」

 

「うッ」

 

イノコの指摘にヒムは胸を押さえて膝をついた。

 

「あんまり、褒められた方法じゃないが、テレパシーで助けてやる。赤点をとらない最低限でだけどな」

 

呆れ顔でコウが、そう言うと、ヒムはコウに縋りついた。

 

「本当か!? ありがとう、飛虫さま!!」

 

「ええい、放せ! ったく、今回だけだぞ」

 

「あ、でも、飛虫って勉強出来んの?」

 

「こう見えても、勉強はできる方だ。この学校のレベルなら余裕だ」

 

イノコの言葉に失礼なと、コウはイノコを睨んでから、ハァっと息をついて席を立った。

 

「王白、ついてこい、今後の為に、自力での変身と変身中の意識の確保はできるようになった方が良いからな。特訓するぞ」

 

「了解!」

 

「僕も行くよ」

 

立ち上がったヒムに続いてイノコも立ったが、コウが制した。

 

「いや、来るな。こいつが暴走した時、守れるとは限らない。最悪の場合、死ぬし、王白に友人殺しをさせたいのか?」

 

「イノコ、これって本当に危ないから、な?」

 

「わかったよ。帰るよ。早く、ちゃんと制御できるようになれよ」

 

「オウ!」

 

教室を出ていったイノコを見送り、ヒム達もカバンを手に学校を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以前と同じ廃ビルに二人はやってきた。

 

「で、何すりゃいいんだ?」

 

軽く屈伸をしたりと、準備体操をしながら、コウに聞く。

 

「仲間を呼んでおいた。俺よりも遥かに高い超能力を持っている奴だ」

 

「へぇ」

 

しばらく、そこにいると、不意にコウが視線を扉の方へと向けた。

 

「あら、ホッパー、早かったのね」

 

「ホエール、遅いぞ」

 

いつの間にか、二人よりも年上の女性が立っていた。

 

(すっげぇ美人! そして、何てデカさ!!)

 

薄暗い屋内でも、光っているように見える金髪と白い肌、メガネの奥にある蒼い瞳、そして何よりも眼が行くのは、その大きな胸。

 

「王白、さすがにガン見はどうかと思うぞ」

 

呆れ顔のコウの指摘に、ヒムは慌てて眼をそらす。

 

「中々、面白い子ね」

 

「……ジャミングをかけて近づくな。反射的に殺しそうになったぞ」

 

「それは怖いわねぇ」

 

クスクスと笑ってから、ホエールと呼ばれた女性がヒムの方を向いた。ヒムは、慌てて立ち上がった。

 

「は、はじめまして、王白ヒムです。よろしくお願いします!」

 

「あら、元気ね。私は、ミヤコ・パイシーズよ」

 

「あれ? でも、飛虫がホエールって……」

 

「それは、改造された時につけられる名前よ。まぁ、丁度いいから、コードネームみたいに使っているんだけどね」

 

「それで、バッタに変身する飛虫がホッパーなのか。

あ、じゃあ、パイシーズさんも?」

 

「改造人間よ。私は、クジラの特性を与えられた。でも、能力だけで、外見的な変化はないんだけどね。それと、ミヤコでいいわ」

 

「なら、俺もヒムで」

 

差し出されたミヤコの手を掴み、握手を交わす。

 

「ヒムくんもそこのと同じ、バッタなのよね?

じゃあ、ホッパーがホッパー・アインス。ヒムくんがホッパー・ツヴァイね」

 

良いことを思いついたと言わんばかりに、ミヤコが言う。

コウは、どうでもよさげに、息を吐いた。

 

「なんで、ドイツ語なんだよ……

そんなことよりも、さっさと始めるぞ。時間を無駄遣いしている暇なんて無いんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「王白、服は全部脱どけよ。一々破いていたら、金がいくらあってもたんねえしな」

 

「あ、確かに…って、ミヤコさんがいるのに、マッパになんてなれるか!」

 

コウに言われるがままに服を脱ごうとして、ここ女性もいることを思い出し、ツッコミを入れた。

 

「あ、気にしなくていいわ。男の子の裸なんてよく見てるし」

 

「こいつ、こんなでも医師免許を持っててな」

 

ニコニコしているミヤコの言葉足りない部分をコウが補足する。

だからと言って、はいそうですかと脱げるわけがない。

相手が、恰幅の良いおばちゃんとかなら、平気だったかもしれないが、どっからどう見ても美女であるミヤコの前で全裸になる勇気は、ヒムには無かった。

仕方ないとコウが妥協案で、腰に巻くタオルを用意した。コウにしてみれば、これ以上、くだらないことで、無駄に時間を使いたくはなかったのだ。

 

「はい、脱げたところで、これからやることを説明するわ。簡単に言うと、私が、王白くんの精神に働きかけて擬似的に第二段階まで引き上げます。

その状態に慣れてもらうと同時に超能力の訓練をして自分でその状態にできるようになってもらうわ」

 

「そんなことできるんですか?」

 

「さっき言ったようにホエールは、脳の強化に批准が置かれた改造人間だ。その為、俺たちみたいな化物の姿に変化することはないが、高い超能力を持っている。

俺とおまえが、あのワシ野郎と戦った時、大分ボロボロにした校舎が綺麗に直っていただろう? あれは、ホエールが超能力を使ってその手の職の人間を操って直させたんだよ。

それに変だと思わなかったのか? あの時、あれだけ大暴れしていたのに誰も見に来なかった事とか」

 

「そういえば…」

 

イーグルと戦っていた時、そればかりに意識が向いていて気が付かなかったが、よくよく考えてみれば、校舎が壊れる音とがだいぶ大きな音であったはずなのに、誰も現れたり、悲鳴が聞こえるということはなかった。

 

「あれはたぶん、向こうにもホエールみたいなやつがいて、事前に人払いしていたんだろうな」

 

「なるほど…」

 

「納得したみたいだな。ホエール、後は任せた」

 

「ええ、任せて」

 

ミヤコがヒムの前まで歩み寄り、両手で頭を押さえて顔を近づけながら、眼を閉じる。

 

「え? ちょっと、これって!?」

 

近づいてくるミヤコの唇に真っ赤になりながら、ヒムも目を閉じる。だが、想像したような柔らかい感触は、口にはこず、額にコツンと何か当たった感触があった。

 

「あれ?」

 

恐る恐る目を開けると、目の前にミヤコの顔が合った額に当たったのは、ミヤコの額だったのだ。

 

「ちゃんと集中して。あなたがホッパーと同じなら、きっと超能力も使えるわ」

 

「それってどういう意味?」

 

「ホッパーは肉体をメインに改造されたのに、超能力も使える珍しいタイプなの」

 

「へぇ」

 

「話は、ここまで、集中して」

 

「え、あっ、すみません…」

 

「テレパシーの送受信は、額なの。その部分を直接あわせるのが、効果的なの」

 

コウは、あたふたしているヒムに同情の視線を向ける。

女性にあまり免疫のないヒムには、絶世という言葉が付きそうな美女であるミヤコにあれだけ近くにいられて集中しろとは、拷問の様なものだ。その事態を招いた身でありながらも、がんばれと他人事のように思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッチィ、途中まで追えたのに、ジャミングされた! バッタどもめ!

……いや、待てよ。こんなことができるってことは、奴らの味方に超能力特化型がいるということか、これはこれで情報として価値がありそうだな」

 

 

 

 

 




訓練を終え、自分の意思で変身することができるようになったヒム。
ついに神台村に旅立つ。
だが、組織は、黙って旅をさせたりはしなかった。
送り込まれた刺客に苦戦を強いられる二人の取った策とは?

次回 Double Guardian 第三話「旅路」
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