愉悦部VS文芸部   作:睦月スバル

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作者過労死バージョンとそのままが拮抗してんねぇ……。


至福と雌伏。それは似ているようでかなり遠い

 嫌な夢見だった。

 エアコンが付いているにも関わらずパジャマにはビッシリと汗が付いており動悸が酷い。

 

「……本当、嫌な朝だなぁ」

 

 殺す潰すと宣いながらも僕の神経は存外に細かったらしい。

 寝室の窓から外を眺める。天気は生憎の曇天だ。僕の心情を照らし出したかのようでもある。

 

 昨日の投身のせいで学校には警察が来ており本日は臨時休みだ。ただ休みとは言え気が休まる事は無い。僕には考えなければならない事が山ほどあるのだから。

 先ず、僕の行動を見られたかもしれない黒部ちゃんの対処。

 そして、ヤンデレちゃんの傀儡化と井上君の自殺回避だ。

 

 だがまぁ、どれもこれもそう急ぐ事はないだろう。黒部ちゃんが見ていた一件については幾らでも言い訳は効くし、自殺回避については井上君宅に定期的に手作りお菓子を持ちながら一声掛ければ良し。一番難しいのはヤンデレちゃんだが、こちらに関しては中学三年生と高校一年生の合計二年の猶予が与えられている。投身の関連を疑われる今のタイミングで動く必要性は感じられない。

 

「となると、次の目標は受験か」

 

 これからはまたまた雌伏の日々が始まる。そう思うと、なんだか少しだけ気分が塞ぐのは何故なのだろうか。

 

「……そう言えばそろそろオープンスクールの時期も近いか」

 

 なら、少し行って見てくるのも良いかもしれない。僕の最大の敵となるであろう天野遠子の元に。

 

♪ ♪ ♪

 

 時が流れるのは存外に早いもので夏休みに入り、高校のオープンスクールが始まる時期となった。

 そして僕は第一志望の高校であり原作の舞台でもある聖条学園へと足を運んでいた。……何故か、黒部ちゃんを伴って。

 事の起こりは黒部ちゃんについポロリと志望校を漏らしてしまった事からだった。原作に黒部子猫なんてキャラクターは登場しないからと油断していたのだが、どうやら黒部ちゃんの志望校も聖条学園と判明してしまったのだ。

 それからあれよあれよと言う間にオープンスクールが話題に上がり、ご一緒する日程まで組まれてしまった訳だ。

 

 しかし……。

 

「黒部ちゃん? 何か距離が近くない?」

 

「ん? 普通だけど」

 

 隣に立って理解した。黒部ちゃん、パーソナルスペースがとても狭いのだ。いや、僕のパーソナルがだだっ広いのかもしれないが。それにしたって距離が近すぎる。

 これではまるで中学生カップルがオープンスクールにかこつけてデートしているようではないか。

 と言うかそう見られても仕方の無い距離感になっている。

 とは言え、人のパーソナルスペースと言うなら何も言い返せない。

 こんな所を天野遠子に見られたらあらぬ妄想をされるに違いない。後々文芸部に入る身としてはそれは極力……。

 

「僕って運が悪いのかな……」

 

 避けたかったのだが運悪く文芸部のビラを配る天野遠子に遭遇してしまった。

 

「そこの貴方達、文芸に興味は無いかしら?」

 

 澄んだ声が耳に響き、猫の尻尾のような三つ編みがぴょこんと跳ねる。

 

 抜かった。確か原作の一巻でもビラ配りの描写はあった。それは偏に文芸部の人手不足であったから。となれば未来の新入生が来るかもしれないという場面に彼女が動かない訳がない。彼女のアクティブさを完全に失念していた。

 

 元々一度対面するくらいなら良いだろうと思っていたのだが、黒部ちゃんが無限に邪魔過ぎる。投身の一件を話すとは思わないが、将来的なラスボスと現時点の目の上のたんこぶが一堂に会すると思うと、正直病みそうになる。

 

「……文芸部。ん、ちょっと気になるかも」

 

「あ゛っ」

 

 しかし僕の思案をあざ笑うかのように先んじて黒部ちゃんが逃げ道を潰してきた。

 

「まぁ! それじゃあ一緒に部室に向かいましょう!!」

 

「……行こ?」

 

 そして僕は、黒部ちゃんと天野遠子によってドナドナされたのだった。

 

♪ ♪ ♪

 

 

 やって来たのは本の塚の連なる文芸部の部室。実際に来てみると古い紙独特の甘いような匂いがする。

 

「ここが文芸部の部室よ。沢山の本があってまるでスイーツのバイキングみたいで素敵でしょう!」

 

「は、はぁ」

 

 彼女は文を食べちゃうほど愛している文学少女だ。だから彼女にとってその表現は適切なのだろうがやはりコイツ普通の人間じゃない感が強い。

 

「ここは、何をする部活……?」と黒部ちゃん。

 

「ここでは実際に物語を書いたり、本を読んだりする部活よ。そうだ、折角だし貴方たちも何か文章を書いてみたらどうかしら!」

 

「文章って言っても何を書けば良いんですか!?」

 

「あら、そんなに気負う事は無いのよ? 文章は自然に書くのが一番なのだし。今貴方たちの感じているありのままを書いてみるのが良いんじゃないかしら」

 

 ……あ、この先輩完全におやつ狙いだ。

 先ず、天野遠子という妖怪は大の恋愛好きだ。そういった物語は食べると文字通り甘酸っぱい味がするのだとか。まぁそれはさてお勝手に恋愛相談ポストを設置する程度にはそういった話に飢えている。

 で、僕は現在黒部ちゃんをごくごく近くに置いている訳で。

 

 ……まず間違いなくカップルと勘違いされている。

 

 時間を巻き戻したい衝動に駆られるがそんなことが出来る筈も無く僕は無力にも椅子に座ると筆記用具を手に持つ。

 

 しかし天野遠子よ。

 貴女は甘ったるいラブストーリーをご所望なのだろうが、相手はこの僕だ。

 生前はワナビーとして生きた人間の力を舐めて貰っては困る。

 

 僕はペンを走らせた。

 僕の書くのはペルソナ4の足立さんサイドの話……からペルソナ要素をそっくり全摘出したような物語。

 ヤンデレちゃんの盗作を指摘した人間がやるような行動ではない?

 いいや違う。これはオマージュだ。ギリギリだがグレーゾーンに収まっている。完全パクリとは違うのだ。完全パクリとは。

 

 そんなこんな経過する事五十分。久しぶりに物語を書いたからか熱が入ってしまった。

 

「……ふぅ。……ん?」

 

 原稿用紙から顔を上げると黒部ちゃんと天野遠子が何やらびっくりした表情でこちらを見ていた。

 

「……凄い集中力だった。あんなに真剣な縣君初めて見た」

 

 

「そうね。書く量も多いし君は文芸部に向いてるんじゃないかしら」

 

 

「そ、そうですかね」

 

 

「そうよ」と言うと彼女は原稿用紙を手に取り読み始めた。

 

 

「さてと、書くもの書いてたら時間過ぎちゃったし。そろそろ行こうか黒部ちゃん」

 

 

「先輩の総評とか聞かなくて良いの?」

 

「まぁそれ聞いてちゃオーケストラ部の演奏に乗り遅れちゃうし、ね」

 

原作突入後はどっちが読みたい?

  • 主人公を井上君に変更。
  • 主人公そのまま。
  • 執筆速度落として良いから両方やって♡
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