愉悦部VS文芸部   作:睦月スバル

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兎と神とビタービタースイート(上)

 聖条学園。文学少女の主な舞台となる高校だ。オーケストラ部が代々強豪である以外は割と普通な共学の高校だ。

 普通であれば素晴らしい青春が送れるであろう高校。しかしそれは大きな間違い。

 この高校、矢鱈と病んでる奴やぶっ飛んでいる人間が多いのだ。そのせいでとんでもないスパンで自殺未遂やら人死が起きたりする。

 

 さて、そしてぶっ飛んでいる人間と言えば、目の前に座る獅子の如き女性、姫倉麻貴がその筆頭だろう。

 

「それで、部員が三人しかいないお宅達は一体どんな演奏を見せてくれるのかしら」

 

 原作突入まで一年を切った僕は、ヘラクレスもびっくり仰天な無理難題に挑むことを強いられていた。

 

♪ ♪ ♪

 

 僕と井上君は晴れて中学を卒業し揃って聖条学園への進学に成功した。

 合否の発表の日なんか、二人揃って合格した事を知るや否や井上母や井上父にめちゃくちゃ感謝された。ありがとうやら君のおかげやら何やら。

 ま、絶望への片道切符を掴ませただけなのだが。

 そんな訳で井上一家とズブズブしつつ井上君の様子を逐一ヤンデレちゃんにリーク。「悔しいでしょうねぇ」と煽りながら日々が過ぎ去った。

 あ、因みにヤンデレちゃんの投身は複雑骨折で済んだ。とは言えやはり自身で動く事は現状かなり絶望的で外の情報、取り分け井上君に関しては僕からしか状況を受け取れないようになっている。故に婉曲も改竄もし放題。うーん、実にエクセレント。

 

 そして井上君が文芸部に加入するタイミングで僕も便乗して入部した。

 地味に面白かったのが、僕が文章を食べる事を知らない体で部室に居るものだから井上君と天野遠子が所々で誤魔化すのに躍起になっているのだ。まぁ、毎度稚拙な誤魔化しに乗せられてあげるのだが中々に笑える。何せ僕は全部知っているのだし。

 

 とまぁ、ここまでは順調だった。

 

 そう、だっただ。

 

 文化祭の日が迫ったある日、天野遠子がこんな事を言い出したのだ。

 

「さぁ、心葉くん、縣くん。文化祭でバンド演奏するわよ!」

 

「「は?」」

 

 あれほど綺麗に「は?」が重なった事が今まであっただろうか。いや、無い。

 

「無茶ですよ遠子先輩。大体、先輩は五線譜とか読めるんですか!」

 

「あら、大丈夫よ心葉くん。私を誰だと思っているの。私はありとあらゆる物語を読んで来た文学少女よ。五線譜くらい簡単に読んでみせるわ」

 

「読めても演奏出来なければ意味ないんだよなぁ……」

 

 僕と井上君は揃って頭を抱える。

 本来なら、文芸部の一年次の出し物はクロスワードパズルの筈なのだ。それがどうしてこうなったのかサッパリ理由が分からない。

 

「だって、麻貴が『お宅は新入部員が二人で寂しそうね。文化祭も大した出し物も出来ないでしょう』って煽ってきたんですもの! だから、対抗して『私たちは少数精鋭だからバンドを組んで演奏する位朝飯前よ』って言っちゃって」

 

「馬鹿なんですか……。先輩、今から麻貴先輩に謝りに行きましょう。それで前言を撤回するんです」

 

 いやいやと駄々を捏ねる天野遠子を引っ張る井上君。はた目から見るととてもいちゃついているように見える。

 

「……これはヤンデレちゃんにリークしておこうかな」

 

 さて、無理ゲーの始まりだ。

 

 

♪ ♪ ♪

 

 姫倉麻貴。原作開始時点で三年生、つまり現在二年生。姫倉財閥が云々でこの学園の理事長の娘で云々。

 要するにこの学園に於ける特権階級の者だ。

 原作一巻から登場し、天野遠子に情報を渡したり色々やったりしたりと活躍の場面は多い。

 そして、作中屈指の鋼メンタルの持ち主であり、一定時期が来ないと絶望させることが出来ない唯一の人物でもある。まぁ今はそこらへんは置いておいて。

 

「それで、どうかしたのかしら。もしかしてさっきの言葉を撤回しに来たのかしら」

 

「だ、誰が撤回なんてするものですか」

 

「ちょ、ちょっと先輩。話をややこしくしないでください。縣君も先輩を止めて」

 

 やんややんや。

 

「ただ残念な事にお宅たちの為に良かれと思ってステージを押さえちゃってるのよね」

 

 ……出たよ、伝家の宝刀の強権。理事長の娘というネームバリューが強過ぎる。いや、そもそも彼女自身がとんでもなく強いのだけれども。

 

 

「あ、ありがとう麻貴……」

 

 これには天下の文学少女も表情が引き攣る。

 

「それで、部員が三人しかいないお宅達は一体どんな演奏を見せてくれるのかしら」

 

 ニコっと笑うのだが、僕にはそれがどうにも肉食獣の笑みにしか見えなかった。

 

♪ ♪ ♪

 

 そして部室。

 

「……それで、どうするんですか。文化祭までもう残り時間なんてありませんよ! それに縣君も先輩を止めるの手伝ってよ!」

 

「あ! 先輩に向かってその言い草酷ぉぉぉい!」

 

 カオスである。だが、うん。文学少女のノリって平時は大体こんな風だった気がする。

 とまぁ、一人で夫婦漫才を聞き流しつつ爆弾を投下する事にする。

 

「まぁ、僕一人ならどうにかなるんだけどね」

 

「へ?」

 

「いや、だからギターだったら僕出来るよ。こう見えて僕、こういうのは得意なんでね」

 

 実は、愉悦全く関係ないのだが、一年のうちにやってみたい事があったのだ。

 それは文化祭イベントの名シーンを体感する事。

 

 前世の僕は大変な夢想家で尚且つオタクだった。

 だから、常々思っていたのだ。二回目の高校生活があるのなら、Funny Bunnyとか、God knows...とかBitter Bitter Sweetを歌ってみたいと。

 

 そんな訳で今世ではギターを練習してみた。陰キャみたいな趣味をしていると他人から笑われる(前世の実体験)のでギターは趣味と実益を兼ねていたりする。

 

「最初は有志の枠で出るつもりだったんだけどね」

 

「縣君、そんな趣味があったんだ……」

 

「素晴らしいわ! それじゃああと一人集めればバンド完成ね!」

 

「……、待って下さい。バンドって四人必要なんでしたっけ?」

 

「ええ、最低人数は四人よ。これは良い機会だからもう一人文芸部に入部させちゃいましょう!」

 

 

 

 

 

 

「あ、外部ではありますけど、僕に心当たりはありますよ」

 

原作突入後はどっちが読みたい?

  • 主人公を井上君に変更。
  • 主人公そのまま。
  • 執筆速度落として良いから両方やって♡
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