『〝文学少女〟』の世界に於いてやってはいけない事が幾つかある。その一つは文学小説の構図の完成させる事だ。
これをされるとまず僕の目論見は天野遠子に砕かれる。しかし天野遠子は万能なんかじゃない。神に臨めど神にはなれないのだ。
なら、カウンターは幾つでも想像出来る。
だから、なってみようと思う。埒外の介入者に、無貌の神に。
♪ ♪ ♪
さてさてこれからどうするかについて話そう。僕はこの世界の原作キャラを誰にも気取られずに不幸に突き落としてやろうと思う。
初っ端からド畜生だが、ちょっと待って欲しい。
原作三巻の芥川君の独白パート。
あれに、何と書いてあった?
正解は『彼の脆くて傷付きやすそうな部分が、俺の苛立ちを激しくかきたてて、いっそ思い切り傷つけてやりたくなる』だ。因みに彼とは井上君の事だ。
僕は苛立っている訳ではないから動機は全く異なるが後は大体同じだ。脆いものは壊したくなる性分なのだ。
原作キャラでこれなのだし、僕も許されて然るべきだろう?
まぁ、同意は求めてないけれども。
で、先当たっては井上心葉の友人関係になり、朝倉美羽の協力者になろうと思う。
これにはキチンと理由がある。先ず、井上君。これに関しては原作主人公だからだ。積極的に関わらないと僕の本懐が果たせない為必ず友人関係を構築しなければならない。
そして朝倉美羽。こちらのヤンデレちゃんは中学になると学校の屋上で飛び降りて自殺未遂して井上君の表情を曇らせる特大級の爆弾になってくれるからだ。加えて付け入る隙が多いのもプラスポイント。関係を構築しない理由が無い。
「おはよう、えっと井上君?」
「あ、縣くん。おはよう!」
翌日一人で本を読む井上君に挨拶すると、元気な返事が返ってくる。
うん、表情曇ってない。原作で中々描かれていない無邪気な井上君はこれはこれでアリだ。が、曇った顔が最高なのでこれからは存分に曇って欲しい。
ニコニコとした営業スマイルを使いながら授業の話や前の学校の話をしていく。話している感じは好感触。
ただ聞きたい事もあるので適当に井上君にも話を向ける。
「それで朝倉さんがね。面白いお話を聞かせてくれるんだ」
朝倉。その名前を聞いて来たかと意識を集中させる。確か、割と早い段階で朝倉さん呼びから美羽呼びに変わっていたはずだ。となるとまだ知り合って間もない頃か。好都合だ。打てる手が更に広がる。
「そっか、面白いんだ」
「そうだよ! 朝倉さんのお話はすっごく面白いんだ」
今のうちに井上君に宮沢賢治に関する知識をインストールしてやろうかなんて考えが鎌首をもたげる。
毎日井上君にストーリーテリングを繰り返すヤンデレちゃんなのだが、途中でネタ切れを起こして宮沢賢治の盗作を仕出かしたりガチの窃盗やったりするのだ。
だから予めインストールしてやれば盗作が露見してヤンデレちゃんの絶望顔は見れるが……それをしない方が井上君が曇るので無しだ。井上君の表情が曇りまくる原作ルートに突入しない可能性が生まれるのは不味い。
「縣君も一緒にお話し聞く?」
「僕は遠慮しておくよ」
ここでうっかり「聞く」なんて答えたら早々にヤンデレちゃんの排斥対象になってしまう。
切り札を作る手立てはあるが目を付けられるのは単純に困る。
何にせよ今は雌伏のときだ。
「取り敢えず、これから宜しくね。井上君」
ああ、やはり未知を夢想するのは、楽しい。
原作突入後はどっちが読みたい?
-
主人公を井上君に変更。
-
主人公そのまま。
-
執筆速度落として良いから両方やって♡