愉悦部VS文芸部   作:睦月スバル

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猫です。よろしくお願いします。


世の中には二種類の人種がいる。モブか、それ以外かだ

 ――目もなく声もなく、心もない怪物の塊ニャルラトホテプ。

 僕がそれを知ったのは中学生の頃。やはりというか、『“文学少女”』がキッカケだ。

 度々話に出す『慟哭の巡礼者』の冒頭部分でクトゥルフの話が取り上げられたのに興味を持ったのがそもそもの始まりだ。僕はクトゥルフの呼び声に始まりラヴクラフトを始めとしてダーレス辺りの作品を読み漁った。そして、魅せられた。邪神界のトリックスター、ニャルラトホテプに。その恐怖に。その冒涜と涜神に。

 結局冒頭部分のクトゥルフ関連の話は井上君の夢オチで終わってしまうのだけど。

 さて、天野遠子はホラーが苦手。そして作品としての『ニャルラトホテプ』には救いが大凡存在しない。

 これしかない。

 僕はこれを目指すべきなのだ。

 故に閑静な夜に叫ぼう。絶叫を響かせるのだ。

 ああ、にゃる・しゅたん! にゃる・がしゃんな! にゃる・しゅたん! にゃる・がしゃんな!

 

♪ ♪ ♪

 

 僕は布団から這い出すと身体をゆっくりと起こす。時刻は朝の五時半。少し早めの時間帯だ。さてさて僕が少し早い時間に起きた理由。それは髪の毛をセットする為だ。どうでも良い話だが僕の寝癖という奴はかなり厄介で朝に丁寧に梳かさないと基本的に直らない。

 洗面所で櫛を片手に己の髪の毛と格闘する。

 

「にしても、最近糸目が悪化して来たなぁ」

 

 鏡に写るのはほぼ一本線になった目の僕。転校前は普通だったのだがこっちに来て以来段々と細くなってきて、今ではBLEACHに出てきた某十三キロの人みたくなってる。

 はっきり言って腹に一物抱えてそう感が半端じゃない。

 

「いっそ髪型そっちに寄せてみるのもアリかな?」

 

 そこまで考えて、止める。

 本日は小学校の卒業式なのだ。そこまで冒険する必要はあるまい。それに、やるにしても中学デビューからでも構わないだろう。

 

「よしと、こんなものかな」

 

 烏の羽根みたいな髪を梳くのをやめて改めて自分を眺めてみる。中々良い仕上がりだ。

 これから色々と派手に動く事を考えて体力作りの為にサッカー部に入ったお陰か少し男らしさが出てきた様な気がする。まぁ、全体的にひょろりとした感じだけども。

 

 そんなこんなしている間に時刻は六時。両親が起床し始める時間になった。

 

「さて、小学生最後の朝ご飯は何だろうなぁ」

 

 僕はそんな事を考えながらリビングへと向かった。

 

♪ ♪ ♪

 

 漬け物と味噌汁と卵かけご飯を食べて支度を終えた僕は登校班の集合場所に余裕を持って到着した。

 そんな僕の元に、

 

「おはよ」

 

「ん? ああ、黒部ちゃんかおはよう」

 

 黒部ちゃんが挨拶して来た。

 黒部ちゃんこと黒部子猫は女子バスケ部の主将を務めていたクラスメイトだ。名前の示す通り、猫目と黒のショートカットが可愛らしい女の子。しかし、可愛いらしいが騙されてはいけない。彼女はモブだ。

 まぁ登場人物の都合上モブ以外を探す方が難しい世界だから仕方ないのだが。

 

 しかし何とも妙な事になった者だと思う。

 彼女と知り合うきっかけは集団下校の時だった。家の方向が同じだから一緒に帰宅していたのだが、低学年の子が道路の真ん中ではしゃぎ始めたのだ。

 で、それを諌めようとした黒部ちゃんが危うく車に轢かれそうになったところを僕が助け、それが予想以上に彼女の琴線に触れてしまったらしく、こうしてちょくちょく話すようになった訳だ。

 うん、典型的な少女漫画の書き出しみたいだ。

 

 あ、因みに弁明しておくと。僕は誰彼構わず不幸になって欲しい訳では無い。寧ろモブ男君やモブ子ちゃんは出来れば普通の暮らしを甘受して欲しいとすら思っている。

 だって、モブ男君やモブ子ちゃんはかつての僕と同じく文学少女、天野遠子によって救われない側の人間なのだから。

 天野遠子はご都合主義の権化みたいなものだ。例えるならアークファイブのスマイルワールドみたいな。

 彼女が関わると大抵良い方向に話が向く。少なくとも最悪は起こらない。

 穿った見方かもしれないが、この世界は彼女と関わった人物のみが救われる世界なのだ。

 だから、彼女と関わらない大半の人間は救って貰えない。自力で助かる為にもがく必要がある訳だ。それを更に貶める程、僕は外道じゃない。

 僕はド畜生なだけで、外道ではないのだ。

 

 ……脱線した。

 まぁ兎に角、事故りかけた一件以来僕と彼女は友人関係になったという事だ。

 

「今日で小学校も卒業なの、寂しい?」

 

「いや、僕はそこまでかな。どうせみんな繰り上がりみたいなものだし」

 

「……そ」

 

 彼女も似たような感じなのか対応が何というか塩気味だ。彼女自身の表情も豊かな方では無いし半ばデフォルトではあるのだけれど。

 

「取り敢えず。お互いに、卒業おめでとう、だね」

 

「ま、そうだねぇ」

 

 あ、そうだ。今回の井上君の卒アルなのだが、僕とヤンデレちゃんの活躍によって寄せ書きの欄がとても悲しいことになっている。先生と僕とヤンデレちゃんと流れでサインしたあんまり関わりの無い男子が数名のみ。余白の白さがとても眩しかった。

 因みに僕は普通に寄せ書きのページが殆ど埋まった。流石にサッカー部に所属してると方々に友人が増える増える。

 自分の白い卒アルと比べて落ち込む井上君は素直に良かった。

 

「……縣君、楽しそうだけど。何を考えてたの?」

 

「愉しい事を少し、ね」

 

 さてこれからは中学生。

 ヤンデレちゃんが自殺未遂をやらかすまで、あと一年強だ。

 愉悦の日は近い。

原作突入後はどっちが読みたい?

  • 主人公を井上君に変更。
  • 主人公そのまま。
  • 執筆速度落として良いから両方やって♡
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