全てが上手く行っている。いっそ笑えてくる程に。
これまでの五、六年生の頃、僕はヤンデレちゃんの井上君包囲に加担しながら、少しずつ井上君を洗脳していった。手法はシンプルにヤンデレちゃんヨイショ。要するに窃盗を誘発させたのと全く同じ手口だ。
さて、何故今更そんな事をしたのか説明しよう。ズバリ、ヤンデレちゃんと井上君の精神を追い詰める為だ。
ヤンデレちゃんは窃盗の時に説明済みだから省くとして、どうして井上君の精神を追い詰める事に繋がるのかを説明していこう。
前提としてヤンデレちゃんは自殺未遂を必ずやらかす。となると、関係が近ければ近いほど心の傷は深くなって表情が良くなる訳だ。つまりそう言う事。
原作でも未遂した後の井上君はボロボロになった描写があるが、更にボロボロになって貰う。ただ自殺されたら台無しなので井上君が不登校になったら毎日毎日井上君の家に顔を出す予定だ。そこで僕は悲劇のヒーローを気取ってこう言うのだ。
「お願いだから僕の最後の親友まで死なせないでくれ」ってね。
僕は井上君の性格を熟知している。これなら自殺しようとしても踏み止まってくれる筈だ。
曇り顔と自殺のストッパーの両取りの出来る強欲な一手。
ああ、早くやりたい。愉悦を感じたい。
PS.
最近、猫が見ている気がする。
何なんだあれは?
まぁ良い。彼女も所詮はモブだ。僕の計画は悟られまい。僕の物語を読み解けるのは文学少女ただ一人だけなのだから。
♪ ♪ ♪
僕の中学生活は正に薔薇色……とまでは行かないにしろそれなりに明るいものとなっていた。春休みの内にイメチェンして完全に一◯スタイルに変えたのだがこれが結構良い感じにハマって今やクラスのややカッコいい男子枠になれた。
サッカー部の方は相変わらずパッとしないがそれでもある程度のコミュは築けているし、現状に暗雲は無い。
で、人生も二度目ともあれば中学程度の勉強は余裕だ。ただ高校の勉強となるとやや心許ない感じはするので予習……いや、この場合は復習だろうか? まぁ、取り敢えず勉強しておく。
さてそれで肝心のお二人だが。実に良い塩梅だ。ヤンデレちゃんはストレスからか井上君無しの時は露骨に目付きが悪くなってるし、井上君はずっとヤンデレちゃんばかり見ていて地に足が着いていない。そんなところがヤンデレちゃんを追い詰めているのだが、自覚はナシ。
素晴らしい。完璧だ。
ただ、少しの不満を言うのであれば。
黒部ちゃんがずっと僕の事を見ている。
猫のような目で、ただひたすらにじぃっと。
初めは勘違いかと思った。だが、それにしては此方を見る回数がヤケに多く感じられる。これは不味い傾向だ。
何が不味いって、身動きが取りずらい事……では無くこの世界があの『〝文学少女〟』の世界だからだ。
『〝文学少女〟』で起こる事件は大体恋愛が絡む。
もし黒部ちゃんが僕に対して恋愛感情を抱いていた場合一手のミスで何かとんでもない事件に繋がる可能性がある。正直ヤンデレちゃんの恫喝や井上君の洗脳以上に難易度が高い。
一応原作は開始前。けれどここでミスれば後々に暗雲が立ち込める事は想像に難くない。
しかし彼女はモブだ。彼女にもそのお約束が果たして適応されるのであろうか。
思案する。彼女に対する応対の方法を。
確かにこれは未知との遭遇だ。しかしこれに関してはリスクが余りにも大きい。応対をミスれば即詰みからの事件化も有り得る。
「……あはっ」
気付けば僕は笑っていた。理性は悩んだ様だが身体は既に解を出していた。
僕は賭けに出よう。ずっとパペットマスターを演じるのもそれはそれで退屈だ。それに何より知りたいのだ。この世界に無数に存在するモブの在り方って奴を。
だから、僕は敢えてこれに挑もう。
二人を精神的に追い詰めながら始まる恋愛頭脳戦。
その響きは中々に耽美に感じられた。
原作突入後はどっちが読みたい?
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主人公を井上君に変更。
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主人公そのまま。
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執筆速度落として良いから両方やって♡