かつて彼女は英雄だった 作:初月
昼食時に突然なった警報。
直後艦内放送がはいる。
『総員第一種戦闘配置!機械化歩兵部隊は直ちに出撃せよ!』
要するにスクランブルだ。昼食のことは放り出して私達は駆けだす。
幸いここからそこまで遠くもない。
だからこそ早くつき、まだ整備が終わってなくて出撃できる状態じゃなかった春風と旗風を置いて出撃した。
おかげで地獄だった。
『こちら朝風、ロ級1にイ級4を発見しました。単縦陣にて接近します』
『了解、こっちは朝風の後方50mにつくわ』
全速力で接近しつつレールガンを撃つ。
だが所詮は新兵の放った弾丸。
ほとんど当たることはなく、数発がイ級の胴体を掠めその威力のおかげで穴を開けただけに止まった。
「駄目かぁ···」
ちょっとした声が漏れた。
1隻を撃沈し、1隻を撃破したとはいえ多分こいつらは斥候。
あとにホ級かへ級が来るだろう。
対する我々は新型とはいえ強いとはいえない神風型だ。
『大丈夫でしょうか···』
つけっぱなしの通信にふと呟いた声が拾われる。
『最悪の想定はすべきだけどそんなこと考える余裕はないと思うわ』
保護機能が多いとはいえ死人が出るかもしれない。
暗にそう伝えられ、そして実感した。
更に10個増えた光点を確認して。
すぐさま飛んできた砲弾を回避しつつ残りのイ級を十字砲火で殲滅する。
着弾したときの水柱を見て事態が最悪の方向に進んでいることに気がついた。
敵は通商破壊艦隊どころか侵攻艦隊の斥候によく見られるへ級だ。
そういえば機械化海上歩兵は艦船扱いだから戦死ではなく沈没だった。
まあ死にかけて10分も浮いていることなんて無いから基本は轟沈となるけど。
軽い現実逃避もすぐ上での敵弾暴発で終わる。
耳当てと緊急消音装置によって耳鳴りは避けられたものの少し動きが鈍った。
その瞬間肉薄していたイ級から雷撃が行われる。
咄嗟に回避したものの一発を回避することが出来ずに被弾するのを覚悟した瞬間目の前の水面が爆発した。
多分レールガン。
味方の増援だろうか?
そんな淡い期待はすぐさま否定された。
『残念ながら私たちには絶望する余裕もないわ。それに勝手に死なれても困るの』
無線とともに松風は突撃していった。
こんな私でも隊長なのだ。
死ぬ気は無いがもしものことは考えるべきだろうか。
ふと後方より爆風が駆け抜ける。
どうやら私が離れたのを合図に死にかけのイ級に対して弾幕が展開されたようだ。
勿論即座にイ級は塵となり消えた。
『朝風、敵戦力が多すぎるわ。私たちだけじゃ無理』
既に接触を試みた松風からの要請。
レーダーで見たところ安全圏にはいるようだ。
これで攻撃要請の準備は良し。
『朝風からくろしおへ、データリンクの後支援攻撃を要請します』
『了解した、至急松風は朝風と合流しろ』
了解という声が重なる。
返信もかなり早いものだった。
対艦誘導弾による攻撃が一番有難いとは思ったのだけれど流石にそれは期待しすぎかもとか思っていると、低空をくすんだ白い煙を曳きながら何かが通りすぎていった。
レーダーから光点が3つ消えると同時にくろしおから通信が入る。
『弾着確認。朝風は突撃せよ。松風は朝風が接近するまで待機しろ』
通信終了と同時に私は全速で突っ込んだ。
同時に敵の頭に砲撃を始めた。
まだ射程ギリギリだが敵の弾幕を松風に任せるよりはましだろう。
小さな水柱を確認すると航路をジグザグに変更する。
予測が狂って大きな水柱が近くに上がっていく。
時間を置いて降ってくる海水を全身に浴びながら松風と合流した。
一部至近弾があったのか防御エネルギーのバッテリーが残り84%だが問題は無いだろう。
『単横陣でジグザグ航行で肉薄します。雷撃準備を』
『了解、攻撃タイミングは各自でいいわね?』
『ええ』
軽いやり取りのあと無線を切ると空に黒煙が立ち込めはじめた。
被弾した奴が炎上しているのだろう。
光点の減りと空の色から5、6隻は撃沈もしくは撃破したはず。
希望が見えてきた。
この程度の戦力差ならよくあることだ。
2名だけというのは不安だが死にさえしなければ増援がくる。
あとは味方の駆逐艦に砲撃させなければいいだけだ。
まあ、倒しておくんだけどね。
砲弾の雨の中そんなことを思った。
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