シンフォギアにゲッター系女子をinさせてみたかった 作:ぱんそうこう
今回で導入部はほぼ終わりです。
もうすぐゲッター線濃度を高められる……
二課で緊急のアラートが鳴る。それはノイズ出現の合図。
誰かを守れる、役に立てると喜び勇んで出撃した響だったが所詮は素人。
再び翼に助けられながらも、しかし無邪気に彼女は言う。
「翼さん!今はまだ足手まといかもしれないですけど、一生懸命頑張ります!だから一緒に……」
戦ってください、という言葉は喉元で遮られた。他でもない、共に戦ってほしい人に。
「…………そうだな。ならば戦おうか。私と」
「え……」
「何度も言わせるな。私とお前との戦いだ……構えろ」
響に刃を向ける翼。その目は本気そのもので響を見据えている。
「止めてください翼さん!戦うって、そういう意味じゃ……」
「分かっている!だがな、やはり私は受け入れられん。故に力を合わせ、共に戦うなぞ到底認められるものではない」
「貴様が纏うそれは無双の一振り――ガングニール。覚悟も無く遊び半分で戦場に出る者が纏うものではない!」
「さあ、アームドギアを構えろ。貴様の覚悟を私に示せッ!」
そうだ、最初からこうしておけば良かったのだと翼は一人納得する。
翼が立花響に抱いている感情は複雑だ。二年前のあの日の被害者であることについて罪悪感はあるし、思うところもある。しかし、その事と立花響を……新たなガングニールを共闘する装者と認められるか否かはまた別の話だと考える。少なくとも今は認められないし、認めたくもない。
もしも認める時が来るならば――それはきっと、真の覚悟を持つ者であることを示し、自らガングニールに相応しき者と証明した時だ。
「ノイズと戦う戦士というのは常に死と隣り合わせ。いつ戦場にて果てるやもしれぬという恐怖、いつ終わるとも知れぬ戦場に身を置き続ける苦痛を一身に背負わねばならん!故に並大抵の覚悟では務まらんのだ!」
立花響は自ら望んで戦場に出ることを選んだ。ガングニールを身に纏う戦士の道を選んだ。ならば当然覚悟がある筈なのだ。決意がある筈なのだ。戦う理由があって然るべきなのだ。
だが、もしも、何一つ無いのだとすれば――きっと、彼女は命を落とす。
「お前にその覚悟があるか見せてみろ……!」
「さもなくばここでそのギアを捨てるがいいッ!」
何としてでも、認めるわけにはいかない。戦場は戦士の住まう場所、そうでない者が踏み入れていい領域でも無ければ、そういった者と共闘するなぞ言語道断。
――何より、二度と
竜は今離れた場所で別の群れを相手取っている。おそらくまだここには来ないだろうが、しかしそれも時間の問題だ。よって事を運ぶなら今しかない。
「そんな……アームドギアだなんて、私まだ!」
「笑わせるな!アームドギアは常在戦場の意志の体現!意志と覚悟さえあらば呼び起こすのは容易い事ッ!……それともまさか真に遊び半分で戦場に出ているとでも言うつもりか?甘えるなッ!」
「その程度の覚悟で戦場に赴く貴様が……奏の、奏の何を受け継いでいるというのかッ!」
言うや否や、翼が高く飛び上がり、巨大化させたアームドギアを装着した蹴擊―天ノ逆鱗―を放とうとする。
響は反応できていない。奏の何を受け継いでいるのか――翼の言葉に衝撃を受け、呆然としている。
あわや直撃、というところで割って入ったのは弦十郎からの急報を受け、おっとり刀で駆けつけた竜。
全力の正拳突きを撃ち放ち、天ノ逆鱗に何とか拮抗する。
「何やってんだ翼!てめえこいつを殺す気かァッ!」
「ちぃっ……邪魔をするなッ!これは私の問題だ!貴様には関係ない!!」
拳と剣が拮抗する。本来ならば空中からの加速という地の利を得た翼の側に圧倒的に分がある勝負だが、翼が勝負を急ぐあまり狙いをそこそこに撃ち込んだこと、精神の乱れによる重心のブレが天秤を竜の側に傾けさせた。そして鍛えた竜の拳ならば重心のブレた剣を相手にするに不足はない。
「だとしても、これは看過できんぞ」
そうして生まれた拮抗を崩したのは両者のいずれかによるものでなく、第三者――ようやく到着した弦十郎――による武力介入。震脚で周囲のコンクリートと水道管に甚大な被害を及ぼしながら拳圧で二人をまとめて吹き飛ばし、二人の攻防を強制的に終わらせる。
「全く、何やってるんだお前たちは」
「お前らしくないぞ翼。ろくに狙いもつけずにぶっ放して……」
一度頭を冷やせ、と言おうとした時。水道管から吹き出した水に隠れて翼の顔に涙が流れているのを見つける。
「翼、お前……」
「泣いてなどいません!涙など私には……ッ!」
顔を伏せ、歯を食い縛って耐える。しかし止めようにも止められない。
「翼さん……」
翼が涙を流しているのは響も気付いていた。しかし響はまだ知らない。翼のことを。翼が涙を流しているのは奏の不在を今一度突きつけられたことだけでなく、己の不甲斐なさや無力感、自己嫌悪など、様々な感情がない交ぜになった結果であることを知らない。
故に「自分が不甲斐ないせいだ」「自分が奏の穴を埋められるくらい強くなればいい」程度にしか考えられず、考えうる中で最悪の選択肢を取ってしまう。
「翼さん、確かに今の私はダメダメかもしれません。だからこれから頑張って、奏さんの代わりになってみせます!」
響は知らない。二人にとって奏はただの仲間、ただの戦力では無いということを。そして、奏を失ったことが二人にどれだけ深い傷を与えたかを。「奏の代わり」……響と翼たちの間で、その言葉の認識にどれだけの差があるのかを。
翼と竜から怒気が放たれる。
翼は拳を握り、無言で響の頬を殴る。
その痛みに呆けている間に竜は響の肩を強く鷲掴んで顔を近づけると、
「おいひよっ子。そいつは俺たちの
口にするなら相応の覚悟をしな、そう言って響から離れていったのだった。
響は呆然とするしかなかった。頬と肩の痛みは残り、響の体を苛んでいる。
響はまだ装者となって日が浅い。それ故に彼女自身の無知を罪であると責めることはできないだろう。だがこの瞬間においてのみ、その無知は罪であった。
それから一月。三人は未だ噛み合わない。
竜と響が辛うじて連携らしきものを行えるが、それも竜が響に合わせる形でのこと。竜の戦力を大幅に下げることでようやく成せるものはとても連携と呼ぶことは出来ないものだった。
翼と響はもってのほか。響は翼に幾度も共闘してほしいと話しかけているが翼は聞く耳を持たない。今や響を無視して戦っており、連携なぞ考えることさえ出来ない状況だった。
竜と翼は相変わらずだ。せいぜい二人の会話が僅かに増えた程度に変化は生まれたこそしたものの、根本的には何も変わっていない。
戦闘中も連携を取れないことは無いが、それはこれまで積み重ねたものによるもの。互いの現在の実力とは噛み合っておらず、やはりぎこちないことに変わりはないのだった。
そんなある日の夜。世間では流星群に沸いている中、装者たちは変わらずノイズとの戦いに明け暮れていた。
そんな中、本部発令所で風鳴弦十郎は先日のミーティングのことを思い出していた。
――――――――――――
「それでは、本日のミーティングを始めよう」
この日のミーティングは弦十郎の提案により行われた。参加者は弦十郎、了子に加えてオペレーター陣からは藤尭と友里。そして装者全員である。
目的はここ一ヶ月における状況について、二課の首脳陣及び装者たちで認識を統一すること。特に、この二課及び日本を取り巻く現状について確認の意味を込めて響に説明するのが主だった。
「まずはこの地図を見てくれ。ここ一ヶ月におけるノイズ発生地点を纏めたものだ」
弦十郎がモニターに映した資料はリディアン音楽院を……二課を中心とした地図。そこにはノイズ発生を示す赤い点が何十と光っていた。
「どう思う?響くん」
「え!?えーっと、」
突然水を向けられて焦る響。思わず出たのは響自身も小学生並みの感想だと思うような言葉。
「い、いっぱいです」
「ふ、ははははははっ!!いっぱいか!確かにその通りだ!」
弦十郎の豪快な笑い声。それに呼応して藤尭や友里の顔も柔らかくなる。響が発した言葉は張りつめた空気を弛緩させ、発言を容易にする一手になったと弦十郎は満足げだ。
(もっとも、こちらはそうでは無いようだが……)
視界の端には翼と竜。竜は笑い声を殺して肩を震わせているからまだしも、翼の方は不機嫌そのものだった。
「響くんが言った通り、この出現頻度は確かに異常なほど多い」
「加えて、中心点はリディアン……いえ、この二課ですからね。何らかの作為があると考えたほうがいいのではないでしょうか」
「となると、やはり敵の狙いはデュランダル……?」
弦十郎、藤尭、友里が順に現状での考察を述べる。
リディアン地下にある二課。さらにその奥底にある"アビス"――そこで眠っている完全聖遺物、それこそがデュランダル。
「さて、置いてきぼりになってる響ちゃんに説明のお時間よ☆」
「まず、この二課にはデュランダルっていう完全聖遺物が保管されてるの。ここまではいい?」
「完全聖遺物、ですか?」
「そう。ギアにも使ってる聖遺物は欠片しかないけれど、ごくごく稀に、壊れていない状態の聖遺物が見つかることがあるの。それが完全聖遺物」
響のほえ~と気の抜けた声を聞きながら、了子がさらに続けた。
「これが起動すれば聖遺物の100%全部の力を発揮できるだけじゃなく、装者でなくても力を発揮できる――言ってしまえば、ギア無しでノイズを倒せるようになると考えられているわ。これも私が提唱した櫻井理論の一つだから覚えておいてちょうだいね?」
「凄いじゃないですか!じゃあ、どうして起動させないんですか?」
「いい質問ね。まず、完全聖遺物を起動させるには莫大なエネルギーが必要なの。それにとぉぉーーーっても貴重な代物だから、起動実験を行うにはお上に申請しなきゃいけないのよね」
「それだけならまだ良かったんだけど、今、米国が安保条約を盾にデュランダルの引き渡しを迫っているんだ」
「あそこは数年前にF.I.S……自前の大規模聖遺物研究所を事故で失っているし、それ以来引き渡しの要求が激しくなっていると聞くわ。下手に扱えば国際問題よ」
「二人ともご説明ありがと~!そういうことで、下手に起動なんてしたら大変なことになるの。お分かり?」
「えぇっと、つまり、起動させるのにエネルギーが足りなくて、起動させようとしても問題になる、ってことですか?」
響の目が情報量の多さでぐるぐるしている。その中でようやく絞り出した答えは些かの不備こそあれ、最低限のものとしては了子を満足させるには十分だった。
「理解が早い子は、大好きよ☆」
響の疑問符混じりの声と了子の満足げな声で説明会が終わりを告げる。
響の理解度には僅かに不安が残るが、ここまで理解できれば十分だろうと弦十郎も判断し、議題を次の段階へ進めようとする。
「しかし、ここまで形振り構わないとは、それだけ米国も必死ってことなんでしょうかね……待てよ、米国?」
「!そういうことね……司令。この件、米国政府が手を引いている可能性は?」
それにストップを掛けたのは藤尭のぼやきと友里の観の目。実際のところどうだったとしても、こうして真実へ向かおうとする行動は無駄ではないのだと確信して。
「ふむ…………結論としてない、とは言い切れんな。動機に状況証拠を鑑みれば、米国政府の関与は十二分に考えられる」
「それに、先日調査部からこの二課のメインコンピューターへの数万に及ぶハッキング試行の痕跡が確認されたという報告が上がってきた。敵の狙いがこの二課であることは間違いないだろう。無論これを安易に米国政府の仕業と見なすのも危険だろうから、調査は慎重に進めていくことになるがな」
「そして問題はこれだけではない。次の資料を確認してくれ」
二人の指摘に感謝しつつ、弦十郎はこの案件についての結論をまとめ次の議題へ移る。モニターにはノイズ特殊個体――二年前、ライブ会場を蹂躙した黒いノイズが映されていた。
「これは正式名称、ノイズ特異黒化個体――通称はブラックノイズ」
モニターを見る竜と翼の顔が険しくなる。特に、翼の目には憎しみの色が濃く宿っていた。
「ブラックノイズ……ですか?」
「そうだ。このノイズは二年前に観測されて以来未だに再出現が確認されていないのだが、いつ出現するかも分からない今、対策を練っておく必要がある」
「そんなに危ないんですか?見た感じだとただの黒いノイズですけど……」
「危険なんてもんじゃねえ。こいつこそ奏を殺った元凶だ」
竜の声に怒りが滲む。二年前、ライブ会場の惨劇。そこで発生したブラックノイズは驚異的な力を発揮し、装者たちを追い詰めただけでなく多くの人間を殺害した。二課の職員は直接ブラックノイズを見ていないが、その脅威は直接交戦した翼、その影響を受けた人間を相手取った竜からの報告で確認済みである。
「……そうだ。二年前にこの個体が出現した際には翼に重傷を負わせ、奏に絶唱を歌わざるを得ない状況まで追い詰めている。これだけの戦闘力を持ちながらも、それはこのブラックノイズの力の一端に過ぎないのだ」
「響くん。君はノイズについてどれくらい知っている?」
「ええと、まず無感情で、機械的に人間だけを襲うこと。襲われた人間は炭化してしまうこと、時と場所を選ばずに現れて周囲に被害を及ぼす特異災害として認定されていること……で合ってますか?」
「あら、全問正解。すっごい詳しいじゃない」
「実は今まとめてるレポートの題材なんです」
苦笑い。どうやらレポートが無ければ答えられなかったようである。
「それでは今響くんが挙げたものとこのブラックノイズの特徴を比較しよう」
「ブラックノイズの特徴は大きく分けて三つ。一つは人を炭化させても自らは炭化しない能力。二つ目はその再生能力を始めとする非常に高い戦闘力。三つ目は周囲の人間を狂わせる何らかの手段を有していること」
「少なくとも、普通のノイズとは完全に別物だと考えておいて頂戴ね?」
「さて、ここで何か気付いたことはないか?」
「気付いたことと言われましても……ええと…………炭化、ですか?」
おそるおそるといった具合に弦十郎に確認を取る。
「上出来だ。通常のノイズは人間を炭化すると同時に自身も炭化、消滅する。しかしこのノイズは炭化させても消滅しない……理論上人間を無限に炭化させられるということだ」
響の顔に緊張の色が走る。これまでのノイズの常識を覆すノイズ――ブラックノイズ。それが敵であることに不安を隠せていない。
「このノイズは二年前、ライブ事件当時に二体が出現したことが確認されている。その一方、ここまで出現しないとなると、出現には何かしらの条件があるのではないかと考えられる。遭遇した場合にはくれぐれも注意してほしい」
――――――――――
(ここ一ヶ月で頻発しているノイズの出現……しかし敵の狙いが見えん)
弦十郎は発令所で思案する。敵の狙いは何か。どうやって目的を達しようとしているのかを。
(二課、あるいは二課の何かが狙いなのは間違いない。しかしそれを手に入れる過程が見えん。ノイズで何をするつもりだ…?仮に揺さぶりをかける事が狙いだとしてもこちらは装者を有している。)
(あるいは、揺さぶるのはこちらではない……?)
「待ってください!現場にて高出力エネルギーを検知!これは……アウフヴァッヘン波形です!」
「何ッ!?波形の照合を急げ!!」
そして表示されたのは――
『Nehushtan』
「ネフシュタン……だと!?現場に急行するッ!必ず鎧を確保しろっ!」
その名はネフシュタンの鎧。二年前に暴走し、行方不明となった完全聖遺物である――――!
「よお。雁首揃えてノイズ退治ってか?ご苦労なもんだ」
それは白銀の鎧に紫の鞭。顔はバイザーで覆われていてよく見えないが、体つきと声からして少女といった歳だろう。それが挑発的な視線を三人に遣りながら暗闇の中より出て来る。
「てめえ……俺の目の前でそいつを持ち出すってのがどういうことか分かってんだろうな?」
「ネフシュタンの……鎧……!」
敵愾心を剥き出しにして襲撃者を睨み付ける竜と翼。特に竜はすぐにでも殴りかかる準備を整えている。
「へえ。てことはお前ら、こいつの出自を知ってるってわけだ」
「忘れるものか……!私の無力で奪われた命も!不手際で奪われたそれも!」
「今ばかりは同感だ翼。……てめえをぶっ殺してでもその鎧は剥ぎ取らせてもらう」
殺気をさらに強める。少女もそれを正面から受けながら飄々として挑発する。
「お前らに出来るもんかよ出来損ない共。ただの聖遺物の分際でこの完全聖遺物に勝てるもんか」
「ならば確かめてみるか?お前の体でな……ッ!」
一触即発。それを破ったのは響だった。
「やめてください翼さん!竜さんも!相手は人間なんですよ!?」
「「「戦場で何をバカなことをッ!」」」
偶然にも声が揃う。考えていることが同じだと悟った三人は揃って顔を見合わせている。
「よく分かっているではないか。どうやら、お前の方が気が合いそうだな?」
「へっ。だったら仲良くじゃれあってみるか?引っ掻き傷じゃ済まさねぇからよ」
「面白ぇ。その下らない減らず口、二度と叩けないようにしてやるぜ!」
戦意が少ない響を蚊帳の外にして激突する三人。鞭をしならせ、迎撃と牽制を同時に繰り出すネフシュタンの少女の戦いは純粋に巧い。如何に二対一と言えど、実際のところは一対一が二つあるような状態では攻めあぐねるは必定。
そして襲撃者は空いた間を利用して、「お前はこいつらの相手でもしてなッ!」と響にノイズをけしかけ、響と二人を分断させるのだった。
彼女の狙い通りに。
次回、テキサスマックリスちゃん参戦。