シンフォギアにゲッター系女子をinさせてみたかった 作:ぱんそうこう
早く主人公にはギアを纏ってもらって薄汚いトカゲ共ならぬノイズ共を皆殺しにしてほしいところです。
前回はゲッターロボ成分が強すぎたので今回はシンフォギア成分を強めてみました。
それでは第三話、始まります。
「う……ん………」
竜が目を覚ますと、そこは床に敷かれた布団の上だった。体には包帯が巻き付けてあり、手当を受けた痕が見える。体の調子を確かめながら起き上がる。
「ここは……どこだ……?」
少なくとも知らない天井なのは間違いない。背中に感じる地面の感触とい草の臭いから考えると、どこかの家の和室だろうと当たりをつける。
ぼうっとしているうちに自分がなぜ怪我をしているのかを思い出した。
「確かわけのわからない三人組に襲われて……そうだ!あのジジイ!」
記憶は黒幕らしき老人が近づいてきていたところで途切れていた。そこからあの老人が何かしたのか、まさか襲われてはいないだろうかと憤っていると、
コン コン
ドアを叩く音がする。
「失礼する」
と短く告げ、黒服の男が入ってきた。
「調子はどうだ」
「最悪だね」
「ご当主様が申し訳ないことをした。すまない」
「全くだ。それに謝罪はあのジジイが言えよ。それが筋ってもんだろ」
一呼吸置き、
「第一、ここは一体どこなんだ?何で俺はこんなところにいる?」
「ここは鎌倉の風鳴家本邸だ。君は気を失ったままご当主様にここまで運ばれてきたのさ」
「ご当主様って、あの顎ヒゲのジジイのことか?」
「その通りだ。あのお方の名は風鳴訃堂。今でこそ政治の表舞台からは姿を消しているが、それでもなお日本の国防に多大な影響力を及ぼし続けている政界の大物だ」
「そいつは今どこに?」
「この屋敷の中だ。君が目覚めるのをずっと待っておいでなのだが……何をするつもりだ?」
「あの野郎が俺をこんな目に合わせたんだ。あいつをとっちめて理由をはっきり聞いてやる」
「気持ちは分かるがまあ待て。そんなに怒ると怪我に響く。まずは服を着て、迎えが来たら何時でも出られるようにしておくといい」
「言われなくてもわかってるよ……ん?服?」
「ああ。着ていた服がどれも雨でやられていたからな。替えさせたんだ」
「ばっ!!!てめえコラ変態!服が濡れてるからってやっていいことと悪いことがあんだろ!」
「ん?……あっ!いや待て誤解だ!ちゃんとここの女中にしてもらったんだ、俺たちがやったわけじゃない!」
「いいから早く出てけ!!!」
「着替え終わったら声をかけてくれ~」という黒服のやや情けない声を聞きながら黒服を追い出し、急いで服を探す。幸い着替えは枕元に畳んでおいてあった。
「今日はなんて日だ……あいつと戦えたこと以外に何にもいいことが起きてねぇ。踏んだり蹴ったりもいいところだぜ」
着替えながらあの老人の目的について考える。
あの三人組が来たときは最初、父親へのお礼参りだと思った。葬儀は自分と弦十郎だけでやったから、近所でもなければ父親が死んだことは殆ど伝わってない筈だ。
だから当然、竜もそれが前提であると信じて疑わなかった。
ではその前提が間違っていたとしたら?
父親ではなく、自分が目的。そして顔を合わせたときのあの狂喜した顔。殺すだけなら手当する必要は無いのでその線はありえない。では殺す気がないのに刺客を差し向けたのか?三人も?
「……わからねえな」
明らかにあの老人は自分の理解の外にある原理で行動していた。もう考えても無駄だろうと思考を打ち切り、用意されていた着替えに腕を通し、外の黒服に声をかける。
「ほら、着替えたぞ」
「よし、じゃあこれから訃堂様の元へ案内する。着いてきてくれ」
黒服の後に着いて歩く。屋敷は非常に大きく広いため、到着までにもう少し時間が掛かりそうだ。そこで竜は、ずっと気になっていたことを聞くことにした。
「なあ」
「どうした?」
「さっき風鳴家本邸って言ってたよな?風鳴弦十郎って男は知ってるか?」
「無論だ。弦十郎様は訃堂様のご子息だからな」
「ふーん。なんというか、あんまり似てないんだな。性格とか」
「そうだな。訃堂様は長年政界で辣腕を振るう中で清濁を併せ飲み続けてきたお方だ。必要とあらば基本的に手段を選ばれず、時には非合法な手段に出ることさえ厭わない」
「だが弦十郎様は時に非情な判断を下されることもあるが、その本質は善性寄りだ。訃堂様の選択に納得されないことも多いだろう」
「どちらが良くてどちらが良くないという話ではないが、おそらくその違いを君は感じ取ったんだろう。見事な洞察力だ」
「これ、素直に喜んでいいのかね」
「大人からの称賛は素直に受け取っておくものさ」
そうこうしているうちに大きな扉の前に着いた。おそらく書斎だろうか?部屋の中からは僅かな灯りが漏れてきている。
「あまり無礼な真似はしない方がいい。訃堂様は怖いお方だからな。礼儀はきちんとした方が身のためだ」
「ご忠告どうも。それじゃ行ってくるぜ」
「健闘を祈ってるよ…………訃堂様、只今連れて参りました」
良い。入れ、という声を聞いて竜は部屋の中へ入っていく。部屋の中は案の定書斎で、周りの本棚を見れば幾つもの本やファイルが目に付いた。
喜色満面、好好爺のごとき笑みを浮かべた訃堂は両の眼で竜の姿を捉えると、
「良く来たな竜よ」
「怪我の具合はもう良いか?」
「お主にはこれから政府機関所属となり、防人としてノイズ共と戦ってもらう」
「訓練は厳しいが、お主の力があれば耐えられるであろう」
「もうよいぞ。お主が身を置く組織にも声を掛けてある故、直に迎えが来る手筈となっておる。」
一方的に捲し立てる。いやいや待て待て待ってくれ。俺の意思はどこ行った?
「冗談じゃない!俺はまだやるとは一言も言ってねえ。それにノイズと戦えだって?そんな無謀なことなんの説明も無しにやらせようなんざ虫が良すぎるってもんだろ」
「はっきり説明しろ!」
瞬間、訃堂の雰囲気がガラリと変わり、凄まじい威圧感とともに竜を睨み付ける。竜は今、かつて玄関先で親父共々弦十郎に睨め付けられた時に勝るとも劣らない圧力に見舞われていた。
(こいつ……出来るなんてもんじゃねえ。オッサンと同等か、それ以上の……)
「ほう?彼我の差を見抜くだけの知は持っておるか。ゲッターを纏うならそうでなければな」
「何を言おうとお主には何も分かるまい。儂の命に従え」
「一切の反抗は許さぬ。黙して儂の意に唯々諾々としておればよい。それこそがお主の為となる」
(体が……動かねえ……この俺が気圧されちまってる)
「まずはあの雑音共を始末し、己が力量を高めるのだ。」
「そして来るべき時に備えよ。全てはいずれ来る夷狄を滅する為よ」
「夷狄……だと……一体何が来るってんだ!?」
「今はまだ言う時ではない。いずれお主も理解する時が来よう」
「答えになってねえぞ!真面目に答えやが……」
瞬時に強くなる圧力。もはや呼吸さえも許さぬと言わんばかりの圧力に、竜も口を閉ざさざるを得なくなる。
「黙 し て 従 え と 言 う た は ず だ が ?」
(ぐ……か、は……)
息が出来ない。互いの力に圧倒的な差があるとこれほどまでになるのか。
「もうよい。下がれ」
その一言で威圧感は消え失せた。ほんの五分にも満たないわずかな時間で、竜は訃堂に勝てないということをその五体に嫌というほど思い知らされた。
(―――――――悔しい)
(悔しいが、これはチャンスだ。オッサンもだが、このジジイも必ずぶっ飛ばす。そのためにもっと力を付けなきゃならねえ。そのためには――――――)
「いいぜ、やってやる。だが、せめて俺がどうやってノイズと戦うのかだけは教えてくれ。じゃなきゃ訓練も何も出来たもんじゃねえ」
「……その程度なら構わぬか」
「よかろう。お主が纏うは"シンフォギア"なるものよ」
「シンフォギア?」
「いかにも。我が国にて開発された、雑音共を散滅するための対ノイズ兵装なれば、その力でノイズを一方的に滅することなぞ赤子の手を捻るより容易いことよ」
「ノイズを一方的に……?馬鹿な、そんなものがあるなら何故!」
「如何に崇高な理念であれ信念であれ、人はその性故にそれを汚さずにはおれんものよ。なればギアを知るものが己が欲のためにギアを求むるは必定!」
「それは我が国の為にも世界の為にもならぬ」
「そういうことか。得心がいったぜ」
「もうよいか?」
「ああ、これで終いだ。あばよジジイ」
あえてジジイ呼ばわりしたのはせめてもの反抗心だった。訃堂もそれを見抜いたが、この程度は可愛いものよとあえて見逃した。
ここに会合は終わり、竜は新たな戦場へ向かうことを決意したのである。
「終わったぜ」
「すごいな……あの訃堂様をジジイ呼ばわりするとは」
「そこかよ!それより、迎えってのはどいつだ?」
「ああ。もうこちらにお見えだ」
黒服の隣に長身の優男が立っていた。気配を消していたこともあるが、あまりにも自然に立っていたので竜はその男の存在に気づけなかった。それだけで目の前の男の戦闘力を高く見積もる。
「初めまして、流竜さん。僕は緒川慎次と申します。政府の特異災害対策機動部二課という組織に所属しています」
「これからよろしくお願いします」
そう言って右手を竜に差し出してくる。
「流竜だ。よろしくな。こっちに来てから初めてまともな人間と話した気がするぜ」
そう言って右手を握り返す。後ろで黒服が何かショックを受けているが見なかったことにした。
「それでは早速参りましょうか。車を用意してますから、ほんの一時間程度で到着するかと」
「何から何までありがとうよ。おかげで走って行く必要が無くなったぜ」
「おや、竜さんは体力に自信がおありですか?」
「まあな。これでも弦十郎のオッサンと数時間はぶっ通しで戦える自信がある」
もっとも、あっちはかなり手加減してくれてるんだろうけどな、と付け加える。
「そう卑下なさらないでください。司令と正面から戦えるというだけでもよほど稀ですからね。」
竜は初対面の緒川慎次にすっかり気を許していた。竜自身はそれを自覚していなかったが、黒服は目敏くそれに気づき、
「え、何これ同じ初対面でも俺と扱い全然違わない?」
「お前は変態だからな」
「え、そうなんですか?」と緒川。誤解だー!と喚く黒服を見て苦笑いしながら、別れを切り出す。
「それでは僕たちはこの辺りで。お見送りありがとうございました」
「じゃあな。あんたのことは忘れねえよ」
「へっ、俺はあくまで裏方なんだ。直ぐに忘れてもらっても構わないさ」
と軽口を交わして別れる。
無言の車内。竜がやや居心地の悪さを感じていると、ゆっくりと緒川が口を開く。
「さて、僕は……いえ、僕たちは貴女に謝らなければなりません」
その口からは先程までとは打って変わって謝罪の意思が溢れ出た。
「なんだよ急に。ジジイのことは別にもう何とも思っちゃいねえさ」
「いえ、そうではありません。僕たち二課はこれから貴女に平穏を捨てて命がけの戦場に行ってこいと命令するんですよ?」
「本来なら、例え百回地獄に落ちてもなお許されざることです。しかもそれが年端もいかない子供相手であればなおさら……」
「申し訳ありません。僕たち大人の力不足が生みだした業を、貴女に押し付けてしまう」
「なんだ、そんなことかよ」
「え……?」
「俺はあのジジイに目を付けられた時点でもう逃げられねえんだ。だったら、恨み言を吐く前にまずは出来る限りのことをする。」
「経過が何であれ、一度引き受けたことを途中で投げ出したり、無かったことにしちまったりってのは柄じゃねえのさ」
「……ありがとうございます」
外はすっかり闇の中。鬼が出るか蛇が出るか。どちらも見たから怖くはない。開き直った今の竜にあるのはただただ待ち受けるものへの楽しみだけだった。
――――――――――――
その頃二課はてんてこ舞いだった。訃堂から突然連絡が来たこともそうだが、何より内容が内容だ。これまで一人もいなかったゲッターの装者候補が現れたというのだから本当に驚いていた。特に竜の名前を聞いた弦十郎は非常に動揺していた。
天羽奏はそれを不思議に思った。もしかして知り合いだろうか。
「旦那。その流竜ってやつのこと、知ってるのか?」
「……ああ。彼女とは父親の代から付き合いがあってな、普段から手合わせをしていたんだ。まさかこんなことになるとは……」
「なるほどね。それでそんなに動揺してたのか」
「まぁ、こうなったらいっそ前向きに考えてみたらどうだ?新しい戦力が入って、アタシたちの負担を減らせるぞーとかさ」
「そう……だな。こうなったからには、俺もいい加減折り合いをつけねばならんか」
「すまないな、奏。心配をかけたようだ」
「いいっていいって。いつも旦那たちには助けてもらってるんだ、これぐらいどうってことないさ」
「だとしても、だ。むしろ助けてもらってるのは俺たちだからな。こちらこそいつも感謝している」
「おう。……まぁ、こっちはそうでもないみたいだけど」
そう言って己の比翼たる翼の方を見る。不機嫌なのか不満なのか、はたまた嬉しげなのか、随分と複雑な表情をしていた。
「むう……戦場を征く防人が増えることはありがたいのだが……うーむ……」
「翼ー。何か考え事かー?」
「奏……。その……私は防人が増えることはありがたいと思う。だけどお祖父様の推薦よ?絶対何かあると思うわ」
それはまさしく二課の総意だった。
「うーん……そこはもう会ってみるしかないんじゃないか?今どうこう言ったって始まらないだろ?」
「う。それは、そうなのだけど……」
「翼は一々深く考えすぎ!案外どうにかなるかもしれないんだから、そんな心配しなくても大丈夫だって!」
端的に言って、奏のこの考えは政界の怪物、風鳴訃堂を相手にするならば浅慮だと言わざるを得ない。しかし、奏の発言は同時に的を射たものでもあった。
「それとも……翼はそいつにあたしが取られる、なーんて思った?」
「そ……それは……その……」
「なんだなんだ可愛いやつめー!」
わしゃわしゃと翼の頭を撫で回す。
「もう!奏の意地悪!」
「あっはっは!悪い悪い!」
「でも、これで緊張はほぐれたんじゃないか?」
「あ……」
「……いつも、ありがとね、奏」
「ん、どういたしまして」
「ゴホン!あー、二人して仲が良いのは構わないんだが、こちらの話も聞いてくれないだろうか。」
「ダンナ?」「司令?」
「俺は少なくとも翼が危惧しているようなことは起こらないと考えている」
「竜くんはそういった陰謀とは無縁な性格でな。無論、親父のことで警戒は続けるが、竜くん個人には何もないと信じている」
「奏くんが言う通り、会ってみなければ始まらんというのもある。今の俺たちに出来るのは、まず新しい仲間を歓迎してやることくらいだろうさ」
「あら、随分その子と親しいみたいね、弦十郎くん。もしかして、ただ手合わせするだけの仲じゃないとか?」
そう言って茶化すのは櫻井了子。シンフォギアの基礎理論、「櫻井理論」の提唱者であり、二課の頼れる技術者である。
「茶化さないでくれ了子くん。敢えて言うなら、共に拳を合わせた者同士の共感というやつさ」
「ふーん。それってつまり、その子は弦十郎くんとまともに打ち合えてるってことかしら?」
「ああ!まだまだ荒削りだが、とても強い。あの年でこれだけなのだ、いずれは俺を超えるだろうさ」
「そ、そうなの~。それは期待できそうね~」
少しひきつった笑みの櫻井了子。その胸中は「弦十郎くん並みの戦闘力もちって、実はそんなに少なくないのかしら……?」とまだ見ぬ仲間に対して若干引いていたのだった。
早乙女レポート②
ゲッター線を新エネルギーとして活用するならば環境リスクを考慮しなければならない。如何に人体には無害だとしても、他の生物や森林資源等に対して多大な影響を及ぼすならば利用はまず不可能だからだ。
そうして動物実験の中で判明したのは、ゲッター線は一部を除く動物を溶解させる作用が存在したことだ。特にハ虫類に対してはこれが顕著で、逆に猿には殆ど影響が見られなかった。以上から、ゲッター線は性質上、「人類以外の生物に対して」有害なものであることが分かった。従って、ゲッター線の取り扱いは他の原子力関連と同等まで警戒レベルを引き上げることを推奨する。
―――――――――――――――早乙女賢博士より報告