シンフォギアにゲッター系女子をinさせてみたかった   作:ぱんそうこう

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思ったより奏さんの反響があって驚いてます。



後半推奨BGM:Synchrogazer


Listen to my voice

「司令。周辺区画のシェルターにて、生存者を確認しました」

 

「そうか!良かった……」

 

リディアン地下のシェルターで緒川から生存者の報告を受けた弦十郎は喜色を露にする。

竜、翼、クリスと三人が立て続けに命を散らし、残された響も戦えないという絶望的な状況の中で、その知らせは唯一の朗報であった。

 

「かっこいいお姉ちゃんだー!」

 

その中の一人、小さい女の子が小さなモニターに映る響の姿を見て、母親の制止も聞かずに駆け寄る。

 

「ビッキーのこと、知ってるんですか?」

 

安藤創世の質問に、女の子の母親はしばらく言い淀むと言葉を選びながら答えていく。曰く、この子は響に助けられたことがあると。危険も顧みず、対価も求めず。純粋な「助けたい」という想いに命を救われたことがあると。

それは彼女らもよく知っていることだった。響の人助けはリディアンでも有名だった。入学初日にして猫を助けたために遅刻したのは既にクラスメイトの間でも武勇伝的な扱いで語り草になっているほどには。

 

「かっこいいお姉ちゃん、助けられないの?」

 

女の子の純粋な目に、弓美たちの心が痛む。

分かっている。自分達じゃどうしようもないことぐらい。この場で、震えながら嵐が過ぎるのを待つことぐらいしか出来ないことぐらい。特に、最も錯乱していた弓美はそれを身をもって知っている。

力があるだの無いだの、そういう問題ではない。ただ、「戦えない」。戦うことへの恐怖。命を失うかもしれないという恐怖。それが彼女らに「無力だから」という言い訳を与えている。確かに無力なのは事実であろう。しかし彼女らはその事に罪悪感を覚えている。無力を理由にただじっとしているだけであることに罪悪感を感じている。本当は心の底から助けたいと思っているからこそ。

ようやく絞り出せたのは、「私たちにはどうする事も出来ない」という当たり障りのない言葉だけだった。

 

「じゃあ、みんなで応援しよ?」

 

しかしそれも女の子の無邪気さの前に敗れ去った。

続いてここから話しかけられないかと藤堯に尋ねる。だが藤堯の答えも芳しいものではなかった。何せここは対ノイズ災害用のシェルターである。現場からの距離も離れていれば、外へ届かせるための設備も無い。

そこに未来が待ったをかけた。

 

「ここから私たちの無事を知らせたいんです。それがきっと、響の助けになりますッ!……お願いします。響を助けたいんです!」

 

学校の設備がまだ生きていれば、あるいは。藤堯が提示した唯一の可能性。彼女たちはそれに賭けることを決めた。全ては、今戦っている友達のために。

 

 

 

四人が慌ただしく駆け出していく。戦う者たちのために、その心に火をつけるために。

周辺の生存者を除いて、この場に残ったのは弦十郎と友里、藤堯の三人。彼女たちが動いている間、引き続き戦況の観測を行おうとした時。友里が異常に気付いた。

 

「……待ってください。微弱ではありますが……新たなアウフヴァッヘン波形を確認しました」

 

「何だって?波形の照合は出来るか?」

 

「やってみます。これは……な、嘘だろ……?」

 

波形の照合はいともあっさりと終わった。しかしその結果は誰もが受け止められないものだった。

キーボードを打つ藤堯の手が震えている。他の二人も信じられないものを見たような目で見ている。

 

「ガン……グニール、だと?誰だ。誰が纏っている。響くんのものを誤認したのではないのか?」

 

弦十郎が珍しく動揺している。しかし現実は変わらない。目の前には二振り目のガングニールの反応が画面の中で躍っている。しかしこの世にガングニールは一振りしか残っていない……筈なのだ。

目を凝らし、あらゆるカメラからの映像データを目を皿にして追う。そしてソレに気付いた時、弦十郎の目尻から熱いものが一滴、こぼれ落ちた。

 

「…………奏」

 

シンプルに、ただその一言だけが絞り出すような声色で漏れた。

 

「お前は……死して尚、響くんを救う、ために———」

 

————————————————

 

 

「何故この世界に現れたッ!天羽奏ェェェッ!…………待て、私は今何と言った?この世界と言ったのか?」

 

感情を露にして目の前の天羽奏を問い詰めるフィーネ。しかし、彼女は自分が何を口走ったのかを疑問に感じ、戸惑いを見せていた。

まるで他の世界を認識しているような。まるで目の前の天羽奏がそこの住人であると知っているかのような。己の口が勝手に動き、己の本能がひとりでに理解しているという自意識とのズレ。ゲッター線についての本格的な研究を初めて以来、稀に表出することもあったその自覚症状は彼女にとっても全く未知の現象であった。

僅かに動揺するフィーネを前に、「天羽奏」はほう、と息を漏らした。

 

『少しずつ真理に近づいているようだな。だが、アンタ自身の怪物的な精神力がさらに深い領域まで踏み入ることを無意識に拒絶していたらしい』

『だがその感覚は正しいものだ。アタシは戦うためにこの世界に呼ばれたのだから』

 

「呼ばれただと……誰に!」

 

『ガングニールに!そして……ゲッターに呼ばれたんだ。この時のために』

 

フィーネの脳内が一瞬ホワイトアウトする。全てのものに意志がある。聖遺物にさえも。であるならばそれが何かを呼ぶこととて、必ずしも有り得ない話ではない。そして、そのいずれもに縁の深い人間といえば流竜か天羽奏、あるいは風鳴翼の三名。故に天羽奏が「呼ばれる」というのも納得がいくものであった。彼女が死人でさえなければ。

と、ここでフィーネは前提条件を変えることを考えた。例えばそう、「そもそも天羽奏が始めから死んでいなかったとしたら?」

辻褄を合わせるならば、その仮定しか有り得ないのではないか。

 

「……まさか、死していないとでも!?一度はその身を塵と変えながら!?貴様、まだ生きているのかッ!」

 

その問いを奏は肯定も否定もしなかった。ただ事実を告げるように、ただ確定事項を確認するかのように、淡々と語るばかりである。

 

『あるべき場所に還っただけだ。生命が生まれる前の、元のあるべき空間に。けど、こうして呼ばれた。ここにはそれだけの理由がある』

 

「まさかそれがゲッターの意思だとでも言うのかッ!?立花響を守護ることがかッ!?有り得んッ!ゲッター線は進化の道を歩む者を、私こそを選んだのでは無かったのかッ!?」

 

『進化は自らの手で勝ち取るものさ。ゲッター線はその導き手なだけだ。アンタは確かに進化を望んだのだろうが……そこまでだっただけのこと』

『ゲッター線は何もしない。ただ、ヒトと共に在るだけだ』

 

奏はその人柄に見合わない、超然とした様子で淡々と述べる。

故にフィーネは彼女が本当に「天羽奏」なのか測りかねていた。この超越者じみた振る舞いは「天羽奏」というよりもかつて彼女が見たカストディアンの在り方に近しいものであり、むしろ他の神々が天羽奏の肉体を依代に顕現したと考える方が寧ろ自然だとさえ思っていた。

 

しかし奏はそれを気にも留めない。槍で以って斬りかかり、単独でありながらフィーネと互角の戦いを繰り広げていく。LiNKERも無く、歌を歌うこともなく。

そのシンフォギアと思えない性能にフィーネは内心舌を巻いた。何者が改造を施したかは知らないが、明らかに自身の設計を超えた全く異質の存在へと変わり果てている。

さらにギアを血液のように流れるあの翠色の光はおそらくゲッター線。ギアとゲッター線の共存を為せたのは今までに「ゲッター」をおいて他になく、その点でもこの改造を施した者は、実に、実に遺憾ながら、ギアに関連する技術において自身を超えている。

そう歯噛みしたところで、奏が槍の穂先から翠色の光線を発した。熱線に変換したが故の紅色ではなく、エネルギーそのものをぶつける翠色。「ゲッター」が放つものより数段ほど威力を増しているそれは、フィーネが感じている限り確かにゲッターエネルギーによるものだった。

 

「やはりこれは……ゲッタービームか。失われしガングニールを鎧ってきたことも驚いたが、よもやゲッター線を操る術も得ていたとはなッ!」

 

『全ては意志の力だ。それこそが生命を進化させる鍵』

『全てを説明しようとしても無駄だ。理解するには永劫の時が必要となる』

 

「ならば私は永劫の時をかけて解明しよう。貴様が現れた意味を。いや、ゲッター線の正体も、何故存在するのかさえもッ!」

 

『理解しようとしてできるものじゃない。それらは全て心で感じるものなのだから』

 

フィーネの宣言を否定しながら、続け様にゲッタービームを乱発する奏。フィーネもこれにはたまらず後ずさった。

その隙に響へと話しかける奏。その表情は優しさよりも厳しさが多く含まれていた。

 

『立て。今戦えるのはお前だけだ』

 

「何で、何が起きてるんですか……?だって、だって奏さんは、わたしの目の前で、わたしを守って……」

 

『死んだわけじゃない。ただあるべき空間に還っただけだ。……だが今はそんなことはどうでもいい。お前は何故諦めようとしている』

『まだ終わってない。生きている限り、まだ戦いは終わらない。お前がやるしかないんだよ』

 

奏の厳しい言葉に、身体を震わせながら響は首を横に振った。

 

「……ダメなんです。竜さんも、翼さんも、クリスちゃんも、みんなみんな、いなくなって。もうわたししかいないのに、一人ぼっちになったのに。諦めたくなかったのに。もう立つ力も残ってないんです……」

 

それは心の弱い部分を刺激された響の弱音だった。

フィーネが言った通り、この戦いで彼女は多くのものを失った。尊敬する人も、頼れる人も、ようやく分かり合えた仲間も、守りたい人たちも、帰る場所も、心の支えも。その全てが、この一夜にして失われた。その心の痛みが生み出す弱みが、響の心に傷を刻んだ。そしてフィーネは、その傷口に手を入れ、掻き回し、抉り、ぐちゃぐちゃにした。諦観へと誘う甘い誘惑によって。

 

『だとしても。何を失ったとしても戦いつづけるんだ。命ある限り。愛する者を守る、ただそのためだけにでも』

 

「愛する、者を守る……」

 

その愛する者を、立花響は失った。

それでもと。それでも戦い続けろと奏は言う。愛する者を失ったのならば、愛する者が愛した物を守れと。愛する者が遺したものを守れと言う。

 

『それは何よりも残酷な未来かもしれない。だが、ヒトはきっと乗り越えられる』

 

『運命と戦い続けろ。どの時間、どの空間、どの世界でも、それこそが生命ある者の使命』

 

『思い出せ。お前の力の根源を。お前は一人じゃない』

 

その時、瓦礫の山の中から音が聞こえた。始めは、ただのノイズでしかなかった。しかしそれは少しずつ、少しずつ音として調律され、調音されていく。

それは、校庭のスピーカーから流れる歌だった。

 

――仰ぎ見よ太陽を よろずの愛を学べ――

 

――朝な夕なに声高く 調べと共に強く生きよ――

 

黄金の光が粒子となって、その一帯に舞い上がる。

その一つ一つが生命の温かさに満ち溢れていた。優しく穏やかな熱。その一つ一つが語りかけてくる。ただ一言、「頑張れ」「負けるな」と。

その温もりを受け止めて、思いっきり顔を上げた。

 

「あ……ああっ!これ、リディアンの、校歌……!じゃ、じゃあ、みんな、そっか、良かった……みんな、生きててくれたんだ……」

 

『分かるか?お前はまだ何も失っちゃいないんだよ。だからまだ終わってない。生きている限り、お前はまだ負けちゃいない。……そうか、アタシはこの為に呼ばれたんだな……ならば』

「手を貸してみな。アタシの歌をくれてやる」

 

「奏」の声からノイズが取れる。明瞭に聞こえる彼女の声のままに手を差し出すと、奏は掌をそっと重ね合わせた。重なり合った手の向こうからは温かい熱と共に、「光」がギアの中へと流れ込んでいく。——流れ込むと共に、奏の身体も光になって消えようとする。

何も言わず消滅を受け入れようとする奏。それとは対照的に、響は焦って彼女を止めようとしていた。

 

「奏さん!それ以上したら……せっかく生き返ったのに!翼さんや竜さんとだってまだ会えてないんですよ!?」

「良いんだよ。元々ここに居られるのもほんの少しだけだったんだ。響にだけでも会えて嬉しかったよ。……ふふ、本当に立派になったな」

 

奏が優しく響の頭を撫でる。

笑う奏と泣く響。

救う者と救われる者。

守る者と守られる者。

二年前と同じ構図で、同じ行為が今行われようとしている。

 

「奏さん!」

 

奏を止めようとするその一言に、どれだけの想いが詰まっていただろうか。

 

「アタシは死ぬんじゃない。また元いた場所に還るだけだ。だからそんな顔するなよ。……待ってるぜ。みんながここまで追いつく時を。生きることを諦めない限り、進化の道はその先にこそあるんだから」

 

そしてあ、そうそう。と、思い出したようにあっけらかんと言い放つ。

 

「あいつらにも伝えといてくれよ。また会おうな、ダチ公……ってな。——負けるなよ、信じてるぜ」

 

そうして奏は今一度無に還っていった。かつてと異なるのは、塵と化したのではなく、光と化したこと。そしてその目には確かな希望が宿っていたこと。そしてかつてと同じなのは——

 

「奏、さん……ありがとう、ございます……!」

 

立花響に、希望を与えたこと。

もう寝てはいられない。託された愛に応えるために。

立てなくても何とかしろ。気力が無いなら振り絞れ。限界を超えたその先にこそ未来はあるのだから。

 

「ここまでお膳立てされちゃ……なおさら、諦める訳には、いかないじゃあないですか……ッ!」

 

うつ伏せになっていた身体を一度仰向けにする。視界に映るのは無数の煌めき。人の心の光が、星のように輝いている。

 

「き、れい————」

 

思わず呟く。そしてその光は、今まで立花響が積み重ねてきたものの結晶でもあった。

光を求め、無意識なままにその手を伸ばす。光たちは彼女を拒絶しなかった。それどころか、触れるほどに彼女の体内に入り込み、少しずつ身体に熱を与えていく。

 

「良かった……ありがとう、生きていてくれて。わたしにはまだ、帰る場所があったんだ——」

 

空へと伸ばした手を強く握りしめた。身体の痛みが消える。

 

「みんな、ずっとここにいてくれたんだ」

 

だん、と握った手を地面に叩きつける。震える足に鞭打って、ゆっくり身体を起こす。

 

「ここにいて、わたしを信じて待ってくれてるんだ」

 

折れた左腕を庇いながら、両脚でしっかりと大地を踏みしめる。

 

「だから――まだ立てる」

 

「まだ歌える」

 

「戦えるッ!」

 

空間を漂う黄金の光が、フォニックゲインが、人の心の光が。響の胸元の傷に吸収されていく。その先にあるのはガングニール。どこまでも意志を貫く撃槍。

同じ現象が他の場所でも起こっていた。外壁が蠢くカ・ディンギル跡地では天羽々斬とイチイバルが、外れた森の中ではゲッターが、それぞれ光を吸収してゆく。その光に呼応して、三人は歯を食いしばってゆっくりと立ち上がる。

 

「バカなッ!何が貴様を動かす!?既に立てる気力さえ絞り尽くしたはずッ!」

「何だ……何が起こっているッ!?天羽奏はッ!奴は一体何をしたァァァ!」

 

「ほんの少し、力をくれた。立ち上がる力を、勇気を、生命をッ!」

「ゲッター線は関係ないッ!ここにある力は、ヒトの絆の力だァァァァッ!」

 

 

 

「「「「うおおおおおおおおおおおッッッッッッ!!!!!」」」」

 

昇る朝日と共に、四人が天高く飛び立つ。

三人は白を基調とした新たな姿のギアと、天使のような翼を備えて。

一人は、更に深い真紅に染まったギアと、さながら竜か悪魔かを思わせるような、幾何学的な形状の禍々しい機械の翼と尾を備えて。

 

今ここに、戦士たちは飛び立つ。

 

 

———Listen to my voice———我らが胸の歌を聞け。ここに集いし願いを見よ。

 

 

「目ン玉見開いてよく見やがれッ!これが、これこそが人の意志ッ!」

 

「生命の意味ッ!戦い続ける意義ッ!」

 

「全力全開、何もかも全部全部解き放った、究極のッ!」

 

 

 

 

 

「「「「シ・ン・フォ――ギィィィィアァァァァァァア!!!!!!」」」」

 




主人公のXDモードはゲッター1(適者進化体)をイメージしています。ちょうどスパロボ30に参戦したばかりなのでタイムリーですね。
後は『』と「」で奏さんのキャラが違うように見えるのは仕様です。

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