シンフォギアにゲッター系女子をinさせてみたかった 作:ぱんそうこう
その代わりシンフォギアライブでブチ上がったので、このモチベの赴くままにこれから書いていきます。
その日の夜、関東で休火山が火を噴いた。
そして、そこから逃れるべく白衣を着た老人が全速力で車を走らせている。
それそのものは大して語るべき事象ではないだろう。敢えて言うなら、不幸な老人が一人、不意の噴火から逃れようとしているに過ぎない。せいぜい翌朝のニュースで「不幸な事故」として流され、人々の記憶に一瞬だけ留まった末に五秒もすれば消えるような、その程度のものだ。
しかし、事態は思わぬ方向へと向かっていった。
噴火は更に強さを増し、火山弾が車を押し潰すように降り注ぐ。
そして老人の意識がそちらへ向いた瞬間、大地が割れて巨大な影が姿を見せる。その余波で砕けたアスファルトが車を完全に押し潰し、中の老人を傷つけ、逃れるための足を失わせた。
血を流しながらかろうじて脱出した老人は見た。巨大な影の正体を。その鋭い牙を、その長い首を。
影の名は竜脚類、あるいはブラキオザウルス。恐竜と呼ばれ、かつて地上を支配しながらも絶滅を強いられた種族のあり得ざる姿が、老人の命を奪わんとする。
うう、とその威容に押され呻き声を上げながら、すぐそこに迫った己の死を確信しながら、それでも負けじと相手を睨みつける。
「くそっ」
「くそッ!殺せッ!」
「わしを殺しても人類は負けんぞッ!」
「人間を甘く見るなよッ!きさまらのことについて知っている人間はいくらでもいるぞッ!」
それだけを言い残し、老人は影に食い殺された。
「…………ゲッター?」
それと時を同じくして、「ゲッター」が微かに輝いた。
そしてその日を境に、「ゲッター」は新たに飛行能力を獲得した。
何かを感じ取ったように。
何かに警戒するように。
————戦いが、始まる。
——————————————————
ルナアタックから数ヶ月、世界は大きく変わった。
ルナアタック時に存在が暴露されたシンフォギア、その根幹たる「櫻井理論」は、公表こそされたものの未だ世界は理解に至らず、さらなる情報公開の要求が日本政府を襲っている。
また、同時期に観測された宇宙放射線、即ちゲッター線に関して日本政府は頑なに「調査中」として沈黙を保ち続けており、それが他国との間で溝を作り出している。
それに対して中国やロシアは「聖遺物等による利益を日本が独占することはあってはならない」として日本政府を非難、米国も舌鋒鋭く国際世論を煽り、日本に対しさらなる要求を重ねていた。
そんな中で、突如として米国政府は態度を一転させて国際協調を唱え始めたのだ。
遡ること五年前、米国における聖遺物研究機関、F.I.Sが突如壊滅するという事件が発生した。それによりフィーネの協力の元蓄積されていた聖遺物技術はその多くが散逸、在籍していた人員も当時出勤していたスタッフを始めその多くが死亡、あるいは行方不明となるなど、その損害は計り知れないものがあった。
その為、ルナアタック以前より米国は日本に対して表裏問わず聖遺物技術の確保を目的とした暗躍を重ねていた。表のデュランダルの引き渡し要求、そして裏の広木大臣暗殺もその一つであったが、事ここに至って米国は協調による共同開発の提案を日本政府に打診、国内外からシンフォギア保有による非難を浴びる日本もそれに同調。この度、日本が確保したサクリストS、即ち「ソロモンの杖」を米国と共同で研究することが決定したのであった。
「そいつは、ソロモンの杖は、そう簡単に扱っていいものじゃねーよ」
ソロモンの杖輸送作戦。特殊な輸送列車を使い、シンフォギア装者を護衛としてソロモンの杖を陸路で輸送する任務。
雨が降りしきる中で決行されたその作戦の最中、雪音クリスはそう言った。
ソロモンの杖、それ即ち彼女の過ちの象徴。世界の為に、平和の為にと起動させたそれは、平和を脅かすための道具に過ぎず。
怒りもした。絶望もした。嘆き、悲しみ、「こんな筈では」と張り裂けるほどに叫んだ。だからこそ、力は人々のために、正しく使われなければならない。その言葉は彼女の贖罪の想いの表れだった。
「分かっていますよ。この聖遺物は持ち主を変えてしまう。当然でしょう、ノイズを操るということは即ち人類の生殺与奪を握ることと等しいのですから」
「ソロモンの杖があれば人類を救う神にも、逆に滅ぼす悪魔になるも自由自在……ソロモンに因んで、『魔神』とでも呼びましょうか。そういう存在へと変えてしまうのですから、なればこそこの杖の扱いはより慎重にならざるを得ません」
「……分かってるんならいいさ。尤も、あたしに言う資格なんか無いのかもしれねーけど」
「いえいえ。僕とて聖遺物の危険性は重々承知しています。——僕、実は旧F.I.Sの生き残りでしてね。むしろ身が引き締まりました。後は、母国がこれを正しいことに使ってくれることを祈るばかりですよ」
そう答えたのは米国側の使者……ジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクス。気軽にウェル博士とでも呼んでください、と初対面からフランクに名乗った彼への印象を、二課からの輸送役として同行している友里は内心上方修正した。
旧F.I.Sといえば今となっては存在しないものの、米国における聖遺物研究の頂点である。そして二課としてはフィーネ、即ち櫻井了子がそこへ二課が保有するデータを流していた先であり、その意味で言えば因縁ある組織である。フィーネ亡き今、米国の聖遺物研究は別組織が完全に政府の傘下で行っていると聞いていたが、文字通りゼロからのスタートということもあって旧F.I.Sの僅かな生き残りを集めることで漸く形だけは成っているといった惨状であるとも、あるいは旧F.I.Sと比して聖遺物に対する危機感が不足しているとも、いずれにせよまともなものではない、というのが彼女の率直な感想だった。
しかし目の前の男は若干の胡散臭さを抱えこそすれ、ソロモンの杖を単に「ノイズを操る聖遺物」としてではなく、より踏み込んだものとして語っていた。それが擬態である可能性も捨てきれないが、それでも彼女はもう少し彼の考えを聞いてみたいと思った。
「……やはり、米国政府はソロモンの杖を自身の管理下に置きたい、と?」
「ええ。聞くところによれば、上はルナアタックの折、フィーネに対して再三『ソロモンの杖』の起動と引き渡しを催促していたようで。そして今回のこの共同研究の提案でしょう?僕としては少々キナ臭いものを感じるわけですよ。まぁ、一研究者の僕にはどうしようもないことですがね」
「博士はこの共同研究にあまり乗り気では無いのですか?」
「研究自体は喜んでさせてもらいますよ。聖遺物に携わる者として、実物の完全聖遺物に触れられるなんて光栄ですからね。しかし折角拾った命ですから有意義な使い方をしたい。少なくとも、怪しげな事件に巻き込まれて蜥蜴の尻尾になるなんて御免です」
いやはや、宮仕えというのも楽じゃないですねえ、と肩をすくめるウェル。その姿はふざけているようでもあったが、同時にそうしなければやってられないという本音が見え隠れしているようであり。実際にそういった例を知る友里も、そういう汚い世界を知るクリスも何も言うことが出来なかった。
列車内に流れる微妙な空気。何も知らない響が「え?え?」と困惑しているのを見て取ったウェルは頭の後ろを掻きながら苦笑いすると、
「おっと失礼。今まさに宮仕えをしている方々に言うことでもありませんでしたね。忘れてくれると助かります」
と言って場を流そうとした。友里もその意図を察し、速やかに話題を別の方向へと逸らす。
「それにしても、よろしかったのですか?其方の内情を話してしまって」
「構いませんよ。それにこの程度は二課の皆さんもとっくに掴んでらっしゃるでしょう?なら別に隠すことでもありませんよ。何、僕からのちょっとした誠意のようなものとでも思っておいてください」
何せこれからが大変なんですからね、とウェルが小声で呟く。
(任務中に一定の節度を守りながらも仲良く戯れて……おそらく普段からその日常を過ごしているのでしょう。ですがここからは彼女らの想像を超えた戦い。果たしてどこまでそのままでいられるのやら……)
三人はウェルの呟きには気付かなかった。
しかし呟いた瞬間、列車が大きな音を立てて揺れる。
クリスと響は堪らず体勢を崩して壁に身体を打ち付ける。友里はなんとか踏みとどまったが、ウェルは完全にバランスを崩して顔面から転んでしまった。
「ッ!?大丈夫ですか博士ッ!?」
「え、ええ!しかしこの揺れ、只事ではないようですッ!」
「竜さん!?聞こえる!?外で何が!?」
『……ああ。ばっちり聞こえてるぜ。だが妙なことになってやがる』
友里は咄嗟に外で待機していた竜に声をかける。
新たに飛行能力を獲得した「ゲッター」に身を包み、列車の直上で腕を組んで佇む彼女は、ここにありえないものを見た。
『……恐竜だ』
「「「…………はい?」」」
『俺の言うことが聞こえねえのかッ!?確かに目の前で恐竜が飛んでやがるッ!お前らプテラノドンぐらい聞いたことはあるだろうがッ!』
いや、聞こえてるけど。
それが三人の総意だった。
しかし恐竜が攻めてきた。そう聞いて、信じられる人間がどれだけいるだろうか。少なくとも、クリスと響には信じられなかった。
「お前なぁ、そりゃさすがにあたしらのこと馬鹿にしすぎじゃねーのか?まだノイズの群れって言われた方が信憑性があるぜ」
「そうですよ。何かおっきな鳥と見間違えたんじゃないんですか?いくらわたしでも恐竜が絶滅したことぐらい知ってますよぉ」
『いいや、竜くんが言っているのは事実だ』
しかしそれを弦十郎が否定する。突きつけられるは過酷な現実。いかなる幻想よりも遥かに創作めいた奇妙な現実は、今まさに二課の司令室を困惑へと叩き落としていた。
『こちらでも確認した。今、その車両はプテラノドンに襲われているッ!』
直後、再び大きな揺れが車両を襲い、鋭い鉤爪が車両の天井を貫いた。
鉤爪の主は車両を引き倒しはじめ、一方的に負荷を掛けられた線路が車輪と擦れて火花を散らす。
「うわああああああ!?」
「——ッ!二人とも、博士を急いで前の車両にッ!」
友里に急かされるまま、二人がウェルを連れて前方の車両へと急ぐ。
間一髪と言うところで渡り終えた直後に竜が連結部を破壊して事なきを得たものの、ここが危地であることに変わりなし。むしろ逃げ場を狭められている時点で事態は刻一刻と不利へと向かっていた。
「おらァッ!どこから湧いたかは知らねえがお呼びじゃねえんだよ鳥野郎ッ!」
その中にあってもせめてもの抵抗として竜が空を駆け、翼竜の顔面をブン殴る。これには翼竜もたまらず鷲掴んでいた車両を離すが、その生命力故に復帰が早い。体勢を整えると再び襲いかかってくる。しかも手放した車両には既に興味を失くしており、真っ直ぐに一行が乗っている車両目掛けて翼を広げて飛翔したのだった。
それだけではない。横合いの森の中からはさらなる増援の翼竜が飛び立ち、加えてどうやって潜んでいたのか、ティラノサウルスがその大きな頭を振り上げ、竜を噛み砕こうと大口を開けて襲い掛かってきた。
「あぶねっ……。どこに潜んでやがったんだこのデカブツがッ!……オッサンッ!」
『分かっているッ!このままあの恐竜たちを放置していてはどこまで被害が及ぶか分からん。加えて明確にこちらを狙っている以上、敵性体である事に疑いはないッ!』
『よって装者三人には迎撃を命ずるッ!敵恐竜を撃破し、博士の身の安全を守れッ!』
「そいつを、待ってたぜェッ!」
「今度はティラノサウルスかよ。つくづく現実の方がおかしくなってきやがったッ!」
「生き物相手はやりにくいけど……それでもやる事は変わらないッ!ソロモンの杖も、みんなの命も必ず守るッ!」
弦十郎の指令のもと、響とクリスがギアを纏う。そして車両の上に三人並び立ち、指の関節を鳴らすと手ぐすね引いて迎撃の時を待つ。
「メインアタッカーは頼むぜ。あたしらの中で飛べるのはお前だけなんだ」
「言われなくても分かってら。お前らこそ、飛べねえことを言い訳にすんじゃねえぞ」
「ともあれ、近づいてきたらぶっ飛ばす、ですねッ!」
「よっしゃあ、行くぜッ!」
竜の声が合図になって、三人が揃って配置に着いた。クリスは翼竜へ向けて弾丸を撒き、竜は背中のマントを翻して細かく軌道を変える事で敵の鋭い歯を躱していく。恐竜は確かに大地を走る機動性こそ優れていたが、その巨体が災いして小回りが効かないため竜を捉えきれていない。とは言えその巨大なアギトと牙の脅威は健在。仕留めきれなければその餌食となるのは火を見るより明らかであった。
「クソッ!恐竜ってのはこんなに早えのかッ!?バッチリ列車のスピードに着いてきてやがんじゃねえかッ!」
『いいや。昔の映画ではしばしば自動車に追いつく姿が描写されていたが、近頃の研究ではそれほどの速度を出せば脚の骨が保たないことが指摘されている。いや、それを込みにしてもこの列車に追いつけるのは明らかに異常だ。考えられるのは『そのように』進化を遂げたか———』
「まさか改造されたってかッ!?それこそ映画じゃねえんだぞッ!ティラノサウルス生き返らせて兵器運用なんざマトモじゃねえッ!考えた奴は相当頭がイカれてんなァおいッ!」
『だがスペックが映画の『ソレ』に近しいなら戦い方もまた同じッ!あからさまな大顎を避け、喉元や尻尾を狙えッ!』
「簡単に、言ってくれんじゃねえかッ!」
『だが出来るだろう?』
「応よッ!俺様を誰だと思っていやがるッ!」
一時的に距離を離した竜が、今度は真っ直ぐに突っ込む。ティラノサウルスも牙を剥いて真っ向から襲い掛かるが、噛み付いたところで竜の姿が視界から消えた。
「やっぱりな。肉食の獣って奴は視界が狭いって言うが、恐竜もおんなじらしいなァッ!」
直後、ティラノサウルスの顎の下に感じた事のない衝撃が走る。
衝撃は直接脳へと響き、大きくのけ反った身体は二本の脚では支えることもままならず、胴体を無防備にも大きく晒してしまう。
「おおおおおおおおぉぉぉりゃあああァァァッ!」
その隙に竜が足下へ潜り込み、極太の尻尾を脇腹で挟んでガッチリと固める。そしてそのまま力任せにブン回す、人呼んでジャイアントスイングで思いっきり投げ飛ばした。
「こいつでトドメだッ!ゲッタァァァーーーー!!!ビィィィィィーーーーームッ!」
最後の締めはやはりこの技。足場を失い、ただ慣性に従って飛んでいくだけの木偶には、その負荷はあまりにも大きく、後には骨しか残っていなかった。
「さて、アイツらと合流すっか!待ってろよ……何考えてるかは知らねえが全員ぶっ潰してやる!」
一方で、響とクリスは目の前の空を飛ぶ敵を相手に苦戦を強いられていた。
「当ったれぇぇぇええええッ!」
向かってくる翼竜を相手にクリスがボウガンの矢をバラ撒く。向こうはそれに対して、敢えて矢の雨に向かってくる事で躱してくる。見た目よりも素早い機動を見て取った彼女は追加でさらにミサイルを発射した。狙うは翼膜、翼竜にとってのアキレス腱足りうる部位である。
「!?!?!?!?!?」
群れの何頭かは辛うじてこれらを受けずに済んだ。しかし、運の悪い一頭がまともに直撃を受けたことで翼膜に穴が空き、空中という絶好の逃げ場を失ったのである。
そして飛行能力を失った翼竜は刺し違えるつもりだったのか、クリスの元へ突っ込んだのだが———。
「とおりゃああああああッ!」
自由に飛べぬ者が、響の拳から逃れることは叶わないのである。これによって翼竜たちは響とクリスから一旦距離を取り始めた。その知能の高さに、思わず舌を巻くクリス。同時に、この恐竜たちがここまで賢いということそのものにも違和感を覚え始めていた。
「こいつら、思ったより賢いみてーだな。だったら……逃げ場なんかどこにもねーって事!思い知らせてやるッ!」
クリスの意志にアームドギアが応える。ボウガンが巨大化し、番えた矢を束ねることで一本の矢がより強く、より大きくなる。
巨大な矢を二本、まとめて一度に空へと放てば、解放された矢は幾条もの矢へと分裂し、翼竜の姿を上から捉える。そして一瞬、滞空して狙いを定めると、キラリと輝き光となって、そのまま翼竜たちを貫いていく。
「こっちにかまけて、頭の上がお留守だぜ」
【GIGA ZEPPELIN】
一頻り矢の雨が止んだところで、クリスは戦果を確認した。襲ってきていた翼竜は軒並み倒されたようで、周りに飛んでいるものは何もいない。
だからこそ、だ。だからこそ、彼女は気付いた。さっきまで襲ってきていたものとは明らかに毛色が違う、体の一部を機械化された翼竜がこちらを窺っているのを。
「……!おいおい今度はプテラノドンメカかぁッ!?一体どこのどいつだあんなもの造ったのはッ!」」
瞬間、機械仕掛けの翼竜がクリスを見る。視線が合ったのか、声が聞こえたのか。様子を伺うだけだった翼竜は翼をはためかせると真っ直ぐ二人を標的として捉えた。
「来てるよクリスちゃんッ!」
「ああッ!きっとあいつが取り巻きを率いてやがったんだッ!」
翼竜の攻撃に対し、二人は迷わず正面から立ち向かった。両手の弓をガトリングへと変化させ、弾丸をバラ撒きながら牽制を入れ、弾幕をさらに増やしていく。それに対し翼竜がしたのは至ってシンプル、すなわち「何もしない」ことであった。
弾幕が、ミサイルが、弾丸が、翼竜の体に吸い込まれる。爆炎が翼竜を包み込み、煙がその体を覆い隠す。しかし翼竜は全くの無傷のまま、爆煙を突き破って向かってきた。
「無傷だとォッ!?」
「だったらあああああああッ!」
真っ直ぐ狙われていると言えど一歩も引かずに弾丸を撃ち続けるクリス。しかしその攻撃は全く通っていない。
それもその筈だろう。弾丸と翼竜とでは質量が違いすぎる。質量が違えば必要な破壊力も大きく変わる。そして、彼女の弾丸とミサイルでは内包する破壊力が足りていないのだ。故に決定打にはなり得ない。なるとすればルナアタックでも活躍した大型のミサイルだが、これを使うには敵の機動力を殺さなければ当たらないだろう。
それを直感的に理解したのか、響がクリスを守るべく前に出た。両足のジャッキで大きく飛び立ち、翼竜とクリスの間に身を滑らせる。そして腕のバンカーを強く引き、拳を大きく振りかぶるとその胴体に叩きつけた。
ガン、と大きな金属音が響く。並のノイズならば余波だけで炭化する筈の一撃を受けたことで直撃した装甲が凹み、軌道も外れてクリスの横を素通りしていった。しかし撃墜にはまだ足りない。
「今の手応え……ホントに金属だよクリスちゃんッ!やっぱりあれってメカなのかな?」
「だろうな。その割にゃ頭が生身っぽいが……オッサン。何か知らねーか?」
『此方の分析もクリスくんが感じた通りだ。あの翼竜は頭部と尻尾は生身に近いが、翼と胴体は機械が用いられている。おそらく、サイボーグに近い存在なのだろう。装甲材も未知のものである可能性が高い以上、出来る限り生身に近い部分に狙いを定めるんだッ!」
「了解ですッ!」
「けどよ、どうやってお前のを一撃お見舞いしてやるんだッ!?言っちゃあなんだが、今のあたしの火力じゃ誘導だって厳しいぞッ!?」
「それは……ってクリスちゃん後ろッ!後ろッ!」
「ゑ?うわっ!うわぁぁぁぁッ!」
と、二人が作戦を練ろうとしたところで、列車がトンネルに差し掛かった。
ギリギリで気づいた響が咄嗟に足場にしていた列車の屋根をブチ抜き、クリスを抱えたことで事なきを得たものの、間抜けな叫び声を出してしまったことでクリスが若干赤い顔をしている。
「ぎ、ぎりぎりセーフ……!」
「わ、悪い。助かった……って、あいつはどうなった?追っかけて来てるか?」
「それは……」
響が車内からちらりと顔だけ出して背後を見ると、彼女の視界はトンネルの中まで追ってくる翼竜の姿を捉えた。
そしてガシャリ、と翼竜の背中から銃口がせり出し、一秒に何十発という速度で銃口が火を噴いたことも。
「うそぉッ!?」
それを視認した瞬間、反射的に顔を引っ込めて車両の壁の影に隠れた。そうすると数秒としないうちに弾が命中する金属音がけたたましく鳴り始める。
ガラスが割れ、金属が擦れる不快な音が雑音として二人の耳を侵していく。
それだけにとどまらず、時折車両の壁を貫通した鉛弾が直接二人を傷つけようと目論み、ギアのフィールドに守られて墜ちる。
——冷や汗が一滴流れ落ちる。ギアが無ければ死んでいた、と。
「ちっくしょうッ!攻めあぐねるとはこういうことか……!」
「……いいやッ!ピンチこそ最大のチャンスッ!こういう時こそ師匠の戦術マニュアルを実践する時ッ!」
「おいおい、マニュアルっつったってオッサンの面白映画だろ?それが何かの役に立つのか?」
「もっちろんッ!こういう時は、列車の連結部を壊してぶつければいいんだってッ!」
「……なるほどな。確かにこの中ならあいつも逃げられねー筈。ノイズじゃねーから通り抜けも出来ないか。だったらあたしにも一枚噛ませろ。どうせぶつけるなら、最大火力の最大パワーをぶつけてやった方が都合がいいだろ?」
「りょーかいッ!それじゃあタイミングだけお願いッ!」
「ああッ!トンネルを抜ける前にカタを付けるッ!」
クリスが矢で連結部を壊し、響がそれを足で向こう側へ押し出す。そしてトンネルの出口で待機して、「その時」を待った。響は拳を引き絞って、クリスはエネルギーを集中させて生み出した巨大なミサイルを四機、発射台に構えて。
無論翼竜もそれを破壊する為に火力を集中させてくるが、車両は穴だらけになるだけで止まらない。そして激突する直前、ついにミサイルが放たれる。
「いっけえええええええええッ!」
クリスの号令で発射されたミサイルは狙いを誤ることもなく、四機が全て同時に着弾した。そして巨大な爆炎を撒き散らし、車両を一つの質量兵器として機能させる。熱と煙が翼竜の眼を焼き、鼻を潰し、完全な闇へと引き摺り込む。更には翼竜を焼き尽くしたのを合図に響がそこへ突っ込む。
バンカーを引き絞り、背中のバーニアも全開のパワー全開で、恐れることなく炎の中へと身を投げる。一つの予感に従って。
しかしてその予感は正しかった。炎の中から満身創痍の翼竜が苦しみながら抜け出てきたからである。しかし五感の殆どを失い、機械の鎧もまた無数の亀裂と焼け焦げた痕で黒くくすみ、ただ闇雲に暴れるだけのそれは最早脅威でもなんでもなかった。
「———君だけを、守りたい。だから強くッ!飛べぇぇぇぇッ!」
そして不幸なことに——というより響が狙ったことであるが——その拳が炸裂したのは、翼竜が爆炎を抜け出した直後だった。
ぐしゃり、と生身の部分にクリーンヒットした拳は響に殴った感覚をストレートに伝え、同時にバンカーが炸裂する。———生々しい感触に顔を歪めながら———頬に突き刺さった拳を通して貯蔵されたエネルギーが爆発する。そして迸るエネルギーは行き場を求め、翼竜の歯を折り、肉を焼き、骨を中の機械ごと砕きながら力の限り吹っ飛ばす。それで完全に限界を超えた翼竜はバチバチと火花を散らせると共に爆発。焔の中へと消えていった。
「はぁ……はぁ……今のって、一体……」
「ああ……間違えようがねえ。アレは普通の生き物じゃない。たぶん、恐竜を誰かが改造して兵器にしたんだ」
「……ッ!まさか、ソロモンの杖を奪うために……!?」
「ありえない話じゃねーな。けど、そんな科学力があるんならソロモンの杖に頼らなくてもいいような気もするけど……ともあれ、まずはあっちと合流しようぜ。あたしらの目的は、あくまでソロモンの杖とあの博士を送り届けることなんだからな」
戦いが終わり、感じた疑念を二人が共有する。そうしていると、上から戦いを終えた竜が降り立った。
「……っと。お前らももう終わったか?案外早かったな」
「お前の手を借りるまでもねーってことだよ。そっちこそ、案外手こずったんじゃねーのか?」
「あのティラノ野郎、強さは大した事ねえが、案外遠くまで俺と車両を引き離してたらしい。おかげでちょいと遅れちまったぜ」
「ふーん。ま、そういうことにしといてやるよ」
「言いやがるなこいつ!」
そうして三人は列車に戻るべく足を進めた。
それを見る何対もの視線に気付かずに。
もう既に原作乖離が激しいですが誤差だよ誤差。
恐竜を改造して兵器にする……一体どこがヤッタンダロウナー(棒読み)
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