シンフォギアにゲッター系女子をinさせてみたかった 作:ぱんそうこう
すっかり更新が遅くなってしまった拙作に、今年も付き合ってくださりありがとうございます。
それでは良いお年を。
輸送任務は、何事も無くとは言えなかったが無事に終わった。
友里が引き渡しの手続きを終えるとようやく一同に安堵の色が見えた。
「確かめさせてもらいましたよ、ルナアタックの英雄と呼ばれるその力」
「英雄!?そんな、もっと褒めてくれてもいいんですよぉ?むしろ褒めちぎってくださあいたぁ!」
「調子乗んな。そういう所が褒められないんだよ」
「いたいよくりすちゃあん」
ははは、とウェルが朗らかに笑う。彼はソロモンの杖が入ったケースを両手に抱え、基地の責任者に庇われるように立っていた。おそらくこれから研究施設へ運ぶか、一時的にこの基地で保管してから持っていくのだろう。
そして彼は上機嫌そうに言葉を紡いでいく。
「今の世界に英雄と呼べる者は殆ど残っておりません。貴女方のように、如何なる困難、如何なる脅威にも屈することなく、全て踏み越えて明日へ進み続ける者というのは実に少なくなった。だからこそ人は求めてやまないのですよ、そのような英雄の姿をね」
「そんなもんじゃねえ。俺たちはただ、目の前の敵をぶっ潰してただけだっての」
そう語る竜の顔には誇るような喜色は無い。同時に悔いるような慚愧も、謙る謙虚さも無い。ただフラットに己のしてきたことを受け入れるのみ。それだけ、ただそれだけなのである。
——守れなかった生命があった。救えなかった仲間がいた。
けれど取りこぼさなかったものも、確かにあった。そしてそのおかげで今の己があることも。だから全てを糧にする。前へと進む燃料にする。ただそれだけは、諦めない。
その態度が琴線に触れたのか、それとも彼女の意志を感じ取ったのか。
ウェルは満足そうに頷いた。
「これは我々が責任を持って研究します。これが人類の明日に繋がることを信じて」
そう語る姿は誇らしげだった。先程の英雄に関する持論を聞いて彼への警戒レベルを少し上げたクリスは真剣な表情でそれを見つめている。
「頼んだぜ。……本当に」
それに彼は顔色一つ変えず、一度首肯することで返答とした。
そしてこの場を後にすべく後ろを振り返ったその直後に。
爆発音が辺りに響く。
ぎょっとしたクリスが発生源を探すとウェル達が向かおうとしている方角———今いる岩国基地が煙を吐いているのが見えて、顔色が蒼白になる。
「報告!報告!武器庫周辺で爆発ですッ!」
「何だと!?警備は何をやっているッ!いや、その前に貴様ら本当にきちんと管理していたのか!?こんな失態、この基地始まって以来だぞッ!」
「も、申し訳ありませんッ!」
「すまないが、博士とあなた方は避難を。これは我々の管理問題、解決次第原因究明と其方への謝罪、説明をさせていただきますので、どうかこの場はお任せください」
基地側の責任者が頭を下げる。
竜とあおいは顔を見合わせた。武器庫の爆発、火災ともなれば相当の被害である。基地内部の銃火器だけでなく、さらに殺傷力の高い兵器へ引火したともなればその人的、物的損失は計り知れない。
(どう思う?まさか、罠じゃねえだろうな)
(……いえ、ありえないわ。ここで私たちを嵌めたところで旨味がない。信用と協力を失う対価が研究できるか怪しいソロモンの杖一つでは向こうが何も得られない。独占して運用するにしてもここまであからさまだとやり方がお粗末に過ぎるわ)
(ならよ、万が一の大惨事になる前に、せめて爆発しそうなものとかは離しといた方がいいんじゃねえか?)
(うーん。今回は向こうから手出し無用とは言ってきてる。だから手助けすれば逆に向こうの顔を潰すことになるかも……)
しかし、二人が小声で話し合ったこの時間は無駄になった。
————ぽとり。
「うん?失礼。…………なんだ、いもりか。一体何の悪戯だ?」
————ぽとり。ぽとり。
「何だ!悪戯にしてはタチが悪すぎるぞ!お客人が来ているというのにこの様では全く以て示しというものが————!」
その言葉を言い切る前に、男は空から降ってきたいもりの大群に襲われ、その中に埋もれて消えた。
「何だ!?」
「博士とサクリストを守れ!」
「何!?何なの!?これって何が起こって……!」
「そんな事より、向こうと分断されちまったッ!これじゃ博士達を守れねえッ!」
「恐竜の次はいもりかよッ!一体どうなっちまったんだッ!」
無数と、そう呼ぶことさえ憚られるほどのいもり。それが今大河を作り、装者たちと博士たちを分断する。
飲み込まれた者は生きているだろうか。そんな事を考えている暇も与えず、大河は流れを変えてウェルの方へと濁流を向ける。護衛の二人が博士を守るために咄嗟に前へ出て発砲したが、しかしあっさりと飲み込まれてしまった。
「博士ッ!」
「うおおおおおおッ!逃ィィィげるんですよォォォォーーーッ!」
「あいつ、囮になる気かッ!?んな無謀させるかよッ!」
ウェルが妙に綺麗なフォームで走り出そうとするのを追うように、竜が気を昂らせながら聖詠を唱え、ゲッターを纏う。そうして飛んで博士の元に合流すると、ゲッタービームで大河を纏めて焼き払った。
「竜さんッ!」
「クソッ!どこか安全な場所はねえかッ!お前らも早いとこ……うおッ!」
さらに地響きが一つ、二つと鳴り渡る。それに呼応して同時に爆発が基地全体を襲い、次々と設備を破壊していく。
そしてその爆発源からは次々と先程のいもりが現れた。無数に蠢く二対の眼が光り、その先にはソロモンの杖が入ったケースを捉えている。
不味い、と竜が冷や汗を垂らす。ゲッタービームで焼き払うことは出来る。しかしこうも数が多すぎると間違いなく撃ち漏らしが出る。そうなれば博士も杖も守りきれない。
しかし彼女の判断よりも、博士の判断の方が早かった。
「こうなればやむを得ませんね。そぉぉれえええええッ!」
「!?何やってんだ博士ェッ!」
ウェルがソロモンの杖が入ったケースを明後日の方向にぶん投げた。
その暴挙を前に、クリスは思わずケースへ手を伸ばそうとし、竜はウェルの胸ぐらを掴む。
「てめ、自分が何やったか分かってんのかッ!」
「分かってますよッ!ですが奴らの目的があれなら人命には代えられないでしょうがッ!」
「それで何人死ぬと思ってんだッ!」
「あなた方が死ぬよりマシだッ!それにもう手は打ってありますッ!ここであれを失ったとて、問題はありませんッ!」
ウェルが言った通り、いもりはケースに目が行っていて此方には一瞥すら向けない。しかし、この過剰なほどの意思統一のなされ方は彼女らには逆に不気味でもあった。
「まずはここを脱出しましょう。連中が気を取られている今がチャンスですッ!それと友里さん、あなたにはこれを」
ウェルが何かをあおいに投げ渡す。うまく両手でキャッチした彼女がよく見ると、それは拳銃のように見えた。
「ウチで開発した携帯式の火炎放射器です。護身用ですが、奴らを焼き払ってしまうには十分ですよ」
それを聞いた彼女は身を強張らせた。どこでそんな物を作ったのか。そして何故そんな物を持ち歩いているのか。ただの輸送任務に、何故そんな物が必要だと思ったのか。そして、なぜこうも準備がいいのか。
———この任務、何かがおかしい。そう直感した。
しかし考えている暇は無い。響もクリスも既にギアを纏っている。少なくともこの二人の安全は確保されている以上、まずはここを脱出するのが先決である。
五人は走って逃げ出した。目指すは出口、ただ一つ。
まずはこの恐怖のいもり地獄を切り抜ける。
ケースをどこかへ運んでゆくいもりの姿を視界の端に捉え、ある者は歯軋りをするほどに悔しさを噛み締めていた。
走り続ける最中で、竜がウェルに問うた。
「お前、あいつらのこと何か知ってるなッ!まるでこうなるって分かってみてえな振舞いしてよッ!」
「おおよそ、ウチのトップの予測通りですよッ!尤も、いもりなんて物を使ってくるとは思いませんでしたがねッ!しかしこれでわかりましたッ!どうやら、向こうもとうとう本腰を入れてきたようですッ!」
「向こうって、まるで敵がいるみたいな言い草だなッ!」
「当たり前ですッ!あの恐竜を貴女も見たでしょうッ!既に我々人類以外の生物の世界に変化が始まっているのですッ!奴らは二十年以上前からずっと、何度も人類に対して干渉してきましたッ!ですが今度のように、ここまで狂ったように攻撃してきたのはこれが初めてですッ!」
「奴らってのはッ!」
「侵略者ですよッ!明確に人類を敵視し、霊長たる地位を簒奪せんとする挑戦者ッ!調査によれば欧州は既に奴らの実験場になりつつあるとかッ!」
「お前らは一体何なんだッ!」
「生憎と、今はまだ禁則事項なのですよッ!幸い迎えは寄越してくれているので、そこで説明してもらえるかとッ!」
この時点で全員が悟っていた。この男は、
米国側の人間を装いながら別の組織に所属し、尚且つ侵略者とやらと戦っている——しかしそんなもの聞いた事もない。あおいが弦十郎に尋ねても、彼も何も知らないという。
「……っ、と。先回りされましたか。どうやら、目撃者は全員消す方針なんでしょうかね?」
「下がってください博士ッ!」
目の前に再び現れたいもりの群れを前にあおいが前に出る。
そして火炎放射器の引き金を引いたところで彼女は二度、驚いた。
一度目は手の中の兵器の威力。それは明らかに拳銃サイズに収まっていいものではなく、もっと大型の、タンクを背中に背負っていて然るべきと言うような火力を目の前に吐き出している事。
そしてもう一つは。
(この引き金……私はこれを引いたことがある?)
引き覚えのある引き金。兵器に特有の癖、というべきか。まるで製造者の意図が直接乗り移ったような使用感。彼女は手の中の兵器にそれを感じていた。それも実戦ではない。もっと昔、例えば二課が発足した辺りに訓練で感じたような。
(ああ、そういうことですか。二課の前身は確か————)
目を細める。目の前の男の所属に見当がつく。
問題は、何故それを上は黙っていたのか。それだけに尽きる。
「博士。あなたの所属はもしや————」
「うわああああああああああッ!」
何かに気づいた彼女の言葉を、しかしクリスの悲鳴が遮った。
目の前でいもりが燃やされている。その向こう側に、その「悲劇」は待ち受けていた。
「何だよ……一体何がどうなってるんだよぉッ!」
「そんな、酷い……こんなことって!」
「う、ううううううう」
「おあ、あーーうーーー」
「あわあ、あ!」
そこにあったのは先ほどよりも数を増したいもり。
そして。
口の端から涎をだらだらと流し、正気を失った目で近づいてくる、身体中をいもりに集られた
「いもりが、人間を操ってるッ!」
侵略者が、悪意の牙を剥き始めた。
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世界の歌姫「マリア・カデンツァヴナ・イヴ」。
デビューからわずか二ヶ月で全米の頂点に君臨した女。
舞台裏の控室で共演者……風鳴翼への挨拶を終え、そのことに小さく安堵の溜息を漏らす彼女のもとへ、恰幅のいい中年の男が歩いていた。
「おう。話は終わったかい?」
「弁慶さん。ええ。挨拶も終わったし、後は本番を待つだけよ。そちらは?」
「ああ。会場の仕込みは万全だ。後のフォニ、フォニ……なんとかのことは教授たちが何とかしてくれる手筈だ」
「フォニックゲイン、よ。となると、後は向こうの出方次第、ってところかしらね。……本当に来るのかしら?」
「隼人の予測だ。まず外れる事はねえだろうさ。外れたら外れたでこれほど嬉しい事もねえしな」
「あら、心配してくれてるの?」
「当ったり前よ!おめえの晴れ舞台だ、何事もねえのが一番いいに決まってる!……研究所さえ無事だったらなあ」
「動かないものを当てにしたってしょうがないわよ。戦えるのが私たちだけなら、それで何とかするしかないでしょう?」
「そりゃあそうだがな……やっぱ心配だ。お前もそうだが、調と切歌だってまだまだガキだぞ。こんな生命の切った張ったなんかやらせたくねえ。寒い時代だぜ、全く!」
「変わらないわね、あなたは。それがどれだけ救いになるか……」
「お前さんも変わっちゃいねえさ。最近は隼人に似て、隠すのは上手くなってきたがな。でも教授の目はまだまだ誤魔化せねえよ」
「神さんは顔色変わらなすぎなのよ。ホント、心配するあなたの事も少しは考えてほしいわ」
「しょうがねえよ。あいつは何でもかんでも抱えちまう。多分、俺らが知らない事だって沢山抱えてるに違いねえ。だったら話してくれるまで待つさ。あいつが話さないってことは、まだその時じゃねえってことだ」
「あの秘密主義をそう捉えられるなんて、流石は早乙女研究所からの付き合いね」
「へへ、茶化すなよ。…………俺はこのまま警備に入る。背中は任せて、お前は思う存分歌ってこい!」
「ええ。いつか、何も考えずに歌える日が来るように、ね」
「気をつけろよ。絶対、生きて帰ってこいよ。お前らには生きていてほしい奴らがいることを忘れんなよ」
「ありがとう。…………行ってきます」
彼女たちが最初の悲劇と直面しているその裏で。
歌姫たちのステージが始まろうとしていた。
裏にある意図を隠しながら。
裏にある陰謀を隠しながら。
それは人類に、何を見せるのか。
最近AIのべりすとでお絵描きを始めました。なかなか面白かったんでついつい課金までしてしまい。
せっかくなのでずっと未定だった拙作主人公のデザインを考えてたんですが、気付いたら女版剣鉄也みたいなのが爆誕してて笑っちまいました。
ところでこれらのデザインを挿絵で出す需要ってあるんですかね?
追記:需要あるっぽいのでぶん投げます。
もみあげが実にダイナミック。
【挿絵表示】
感想・評価お待ちしてます。