シンフォギアにゲッター系女子をinさせてみたかった   作:ぱんそうこう

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お待たせしました。ちょっとキャラクター解釈その他の考察で書くのが予定より遅れてしまいました。

そして遅れといて何ですが、今話は(も?)人を選ぶ内容になっています。脳をゲッター線漬けにしながらご覧ください。


覚悟を込めて、刃を握れ

 

己のステージへ向かう翼を見送る慎次は、妙な胸騒ぎを感じていた。

何かよくないものが近づいてきている。

岩国へ向かうチームが恐竜らしきものの攻撃を受けたと報告された時からか?それとも件の歌姫マリアが挨拶に来た時か?

 

否、そのどちらもでありどちらでもない。

例えば、歌姫マリアの出自は不明瞭なところが多い。

デビュー前はアメリカにいた事は分かっている。しかし、ある年齢から急に姿を消しており、ほんの数ヶ月前に突如歌手デビュー。

そしてデビューするや否や僅か二ヶ月で全米チャートの頂点に君臨した彼女は歌唱力、表現力共に風鳴翼に引けを取るものではない。彼女はそれだけの才能を何処で磨いたのか?

さらに今回のステージイベントとて、世界中が待望していたものではあったが、その実態はマリア側からの強い要望があってのことだった。しかし事前の打ち合わせに来たのはマリア一人で向こうの事務所からマネージャーや社長といった立場の人間が出てきた事が無い。彼女一人で回せると言われてしまえばそこまでなのだが……。

 

しかしこういった場における調整に慣れきった彼にはどうにも拭いきれない、戦場に立つ時とは異なる不安が湧いてくるものである。

 

そこで、何となく。

本当に何となくなのだが、気分を変えることにした。

 

翼が散らかしかけた楽屋の片付け。

ステージ後の段取りの整理。

そしてそれに向けた準備。

 

手慣れたそのルーティーンをすることで、まずは自分の精神を整える。

それらを一通り終えると、今度は音声機材の確認への参加。会場のスタッフが優秀なのは分かっているが、そこにも顔を出しておく。

予定より若干早い時間ではあるが、このそこはかとない不安を誤魔化すには丁度良かろうと体を動かし続けることにした。

とはいえ機材を納めた部屋は楽屋から少し離れている。時間もまだあるので急ぐ事もなし、歩いて階段を登ろうとした時。

 

彼はここに居ないはずの人間と出くわした。

 

 

 

 

「……車弁慶一佐?」

 

 

偶然ばったり出くわした中年の男は小柄な黒髪の少女を連れていた。

彼とは二課の仕事での擦り合わせで面会した事もある。一課の巴武蔵とよく似た特徴的な体型をしていて、彼とは先輩後輩の間柄らしい。

向こうはあちゃあ……という顔をしていて、隣の少女はじとーっとした目で彼を見つめている。

 

人と出くわすことは決して珍しい事ではない。しかしここはイベント関係者以外立ち入り禁止の空間。決して、関係者ではないはずの自衛隊の一等陸佐がいていい場所ではない。

 

そして何より、何よりだ。

 

 

 

 

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「…………悪いが、見なかったことにしてくれるか?」

 

「もう遅いと思うよ弁慶さん」

 

「だよなぁ……」

 

その手に小銃を抱えているにもかかわらず、緊張感の欠片もなく途方に暮れる男と、冷静にツッコミを入れる少女一人を目の前にして。

急速に慎次の頭は冷えていき、戦場に立つ時のスイッチを入れた。

 

 

 

 

「詳しく」

 

 

 

 

「詳しくお聞かせ願えますか?何故そんなものを持ち込んでいるのか」

 

 

 

 

 

「僕は今冷静さを欠こうとしています」

 

 

 

 

 

 

 

—————————

「いもりが、人間を操ってるッ!」

 

響が震える声で悲鳴を上げる。

襲い来るいもりはただの生物ではなかった。

人を襲い、人を操り、人を殺させ、また人を操る。そんな吐き気を催すようなおぞましい悪意に満ちた生物兵器。それがこの大軍の正体であった。

 

「お願いですッ!目を覚ましてくださいッ!」

 

「うう〜〜〜〜〜〜」

 

響が涙を浮かべながら必死に訴えかけるが、その声は届かない。

さながらゾンビのようにおぼつかない足取りで一歩一歩距離を縮めてくる。

ゆっくりゆっくりと距離は縮まっていく。

不規則に縮まる距離が恐怖を煽る。これに捕まればどうなるか、身体から生えているが如く纏わりついているモノに取りつかれればどうなるか。

その末路はすぐ目の前にある。それだけは避けなければならない。ウェルの話が正しいならばこのいもりは侵略者とやらの尖兵。そんなものに己の尊厳に加えギアまでもを渡すわけにはいかなかった。

 

うぎゃあ、と断末魔じみた叫声を上げながら傀儡が飛びかかる。そのスピードは如何に軍人とは言えどもとても同じ人間とは思えないほどであり、踏み込んだ足の筋肉が破れて血を流している。そして人の形でありながら人の心を失い、獣と成り果てたソレに言葉は届かない。脳を侵され、五感を侵され、尊厳を奪われた者が尖兵として、固まる響とクリスを仲間に迎え入れんとする。

 

「うるっせえッ!失せろゾンビもどきがッ!」

 

それを竜が間に入り、上段回し蹴りで傀儡の側頭部を捉えるとそのまま地面に蹴り落とした。

その衝撃で蹴られた部分が裂け、中から血と肉が漏れ出ているが痛がる様子は無い。ただ顔中から体液を垂れ流しながらゆっくり起き上がると、がくがく身体を震わせつつまた同じように迫ってくる。それはさながら壊れたレコードを繰り返し再生するようで。

それを見た竜は舌打ちすると、響たちにこう告げた。

 

「こうなりゃ埒が開かねえ、お前らは先に行け。俺も後から追いつく!」

 

「そんな、竜さんを置いてけませんよッ!」

 

「良いから行けッ!最悪俺は空を飛んで合流できるッ!けどお前らは走ってくしかねえだろうが!ここにあおいとウェルがいるのも忘れんなよッ!」

 

響は言葉を飲むしかなかった。

竜が吐いた言葉はこの場において正論である。

シンフォギア装者であればまだ脱出は容易であろうが、常人の二人は囲まれてからではもう遅い。故に装者に連れられての脱出しなければならない。尤も、逆に装者が着いているのなら脱出は容易なのだろうが。

 

だが、問題はそれだけではない。

このいもりはどうするのか。そしていもりに操られた人間はどうするのか。

少なくとも放置は出来ないだろう。後始末する人間が要る。竜はそれに自ら立候補したのだ。

 

では、その方法は?

その答えを彼女は示さない。ただ、何も言わずに友里を抱きかかえて響に放り投げ、後を任せるのみである。

 

「うわわわわわっ!急に荒っぽいことしないでください!友里さん、大丈夫ですか?」

 

「私は大丈夫!でもそれより竜さんを!」

 

「今は時間がありません。彼女の言う通りにするのが先決かと」

 

「違う!違うの!そうじゃなくて!」

 

「お小言だったら後でたっぷり聞いてやるよ!だがそれも生きてなきゃいけねえ。ほら、分かったらとっとと行けッ!」

 

「……すまん。絶対戻ってこいよッ!」

 

クリスの号令で四人は脱出を始めた。元々出口には近かった場所だったため、逃げ切れるのは確実だろう。竜が足止めしているなら尚更である。

 

響は、その真意に気付かなかった。竜が何も言わなかったのもある。しかし、それ以上に彼女は竜のことを信じすぎていた。敵には容赦が無く、罵詈雑言も度々口に出す竜だが、それは敵に対してだけだ。だから、敵ではなく、「被害者」でしかない彼等のことを悪いようにはしないだろう、と。

 

一方でクリスはそこまで楽観的にはなれなかった。まず第一に、彼女にはどうやってあの「被害者」たちを救うのかが分からない。……否、一つだけ分かっている。しかしそれをするには勇気が足りなかった。再び自分の歌で他人を傷つければ、受け継いだ両親の夢を裏切ることになるという気持ちが、彼女の行動にブレーキをかけさせた。

だからこそ、彼女は竜が何をしようとしているのかを察することができた。察していながら、何も言えなかった。そしてそんな自分を卑怯者だと恥じ、歯軋りをするほどに自己嫌悪を募らせていた。

 

ウェルは内心で口笛を吹いた。流石、あの風鳴訃堂が選んだだけのことはある、と。彼女の思惑を正確に読み取った彼は、その判断の早さと気遣いの仕方に感嘆の声さえ漏らしかけた。

彼の思想として、如何なる現実に直面してもなお前へ進み続ける者を英雄と呼ぶならば彼女もやはりそうなのだろう。一方で、他の装者二人はまだそうではない。素質はあるが、まだ前へ進むための「覚悟」が足りない。雪音クリスはあと一歩だが、立花響はまるで遠い。だからといって彼はそれを毛嫌いしないし、むしろ楽しみですらあった、彼女たちが、その素質をどう開花させるのかが。

 

———もしも「英雄」になれないなら、いっそ死なせてあげた方が親切でしょうか。

それは彼の率直な感想ではあったが、同時に彼は開花を促し、待つ心もまた、持ち合わせていた。

 

そして友里は、響の腕の中で罪悪感に苛まれていた。

 

「違う。違うの……戻らないと、止めないと……」

 

彼女はこの場の状況を最も正確に把握していたと言ってもいい。

自分たちが足手纏いであること。

この場を切り抜けるには誰かが残り、後始末をしなければならないこと。

そして、本来ならばそれは自分がやらねばならないことも。

 

同時に、彼女の手元にはそれを成すための道具があった。

(彼女の推測であるが)風鳴機関製の携行型火炎放射器。それで焼き払ってしまえばそれで終わる話だった。しかし彼女は引き金を引くことに一度躊躇いを覚えた。

彼らが被害者であること。そして子どもたちにそういった場面を見せるべきではないという、至極真っ当な人間としての感性が判断を躊躇わせた。

そして竜はそれを理解していた。二課は真っ当な大人の集まりであるから、子どもに「そういうこと」をさせないし、汚い部分だって背負ってみせるだろう。しかし真っ当だからこそ出来ないこともある。

 

ならば、それは自分がやるべきだろう。真っ当ではない自分が。

後ろ指を差されようと、人に恨まれようと、仲間に詰られようと。

 

(そうだ、それでいい。響の手は綺麗すぎる。汚すには勿体ねえ。あのガキは血を見慣れてるだろうが、今更見せたって何も良いことはねえ。あおいも迷ってたようだし、だったら俺がやるしかねえよな)

(汚れ役は初めてだが、こういうのを必要悪とでも言うのかね。オッサン達ならなんて言うんだろうな)

 

竜が諸手に武器を構える。次は蹴り落とすなどと悠長な真似はしない。きっちりと、痛みを感じさせる前に、苦しませる間もなく———その生命を断ち切る。

加害者と成り果てた被害者をまっすぐ射抜くように睨みつけると、無駄だと分かっていながら敢えて警告する。

 

「死にたくねえなら止まれ。死にたい奴から前に出ろ」

 

当然ではあるが、竜の警告は意味を為さず、傀儡は再び向かってきた。

そうなることぐらい初めから分かっていた。しかしそれでも言ったのは二課への義理立てか。それとも本当は殺したくないからか。案外後者かもな、と竜は内心で分析した。

それもそうだ、いくら介錯目的であるとはいえ、好き好んで無辜の人を殺すことなど誰がしたいと思うか。

 

(そう思うと俺にもまだそういう人間らしいところもあるもんだな)

 

竜は苦笑した。弦十郎には自分を「マトモ」ではないとは言ったが、まだまだ自分の人間性も捨てたものではないらしい。やっぱオッサンにゃまだまだ敵わねえわな、と肩の力を抜くと、すぐに頭の中身を切り替えた。

これまでの「戦う」覚悟から、「殺す」覚悟へと。

今まで暴力は何度も振るってきた。父に連れられてのヤクザの事務所への殴り込みで、さらにそのお礼参りで、不良とのケンカで。今までの戦いだって、広義の意味では暴力だろう。しかし、相手を殺そうとすることはあっても、実際に確信を持ってこれから殺す、というのは彼女にも初めてのことだった。

 

「警告はしたぜ。……あばよ」

 

斬、と脳天から手斧を一閃。それだけで決着は着いた。それで意識ごと断ち切ると、ゲッタービームでいもりを骸ごと焼き払う。そして空へ飛び上がり、今度はマントを身に纏いビームをその中で乱反射、広い範囲に拡散させて残党を焼き払う。

地上に降り立った竜は、人体が焼ける様を、目に焼き付けるように真っ直ぐ見つめ続けていた。

 

(悪いな。こうなったのは侵略者とやらのせいだが、お前らの未来を奪ったのは俺だ。恨んでくれていい)

 

ぎり、と歯軋りをする。自分で手を汚したことに後悔もなければ、悲しみもない。ただあるのは怒り。こうしなければならないような状況に彼らを陥れた者へ向けた純粋な感情。

だが黒幕はここにはいないだろう。どこかの安全地帯から、同族殺しを強要しながら此方を嘲笑っているに違いない。

この行き場の無い怒りを込めて、彼女は黒煙が伸びる空に叫んだ。

 

「よくもこんな胸糞悪いことさせやがったな!この借りは絶対に熨斗つけて返してやるぜ。見てろよ顔も知らねえ下衆野郎がァァァッ!」

 

 

 

 

 

——————————————

 

無事に脱出した四人は走っていく。ギアを纏う者が纏えぬ者を抱え、ウェルの案内のもと暫定的な目的地へと走る。

そして空から来た竜と合流してから程なく、彼女達を待つ者が現れた。

 

「待たせたなお前ら!こっちだ!早く乗れッ!」

 

「えぇっ!?武蔵さん!?なんでここに!?」

 

「話は中でしてやるッ!まずはこのまま会場まで超特急だッ!」

 

それはかつて、響に戦う意味を気付かせた巴武蔵だった。

一課にいるはずの彼が何故ここに。そう問う暇もなく、ウェルが彼女らをヘリの中へと急かす。

武蔵は先に中へ入り、コックピットでヘリを離陸させる用意をしている。

 

「会場って、まさか!」

 

「応ともッ!()()()()()()とお前らんとこの風鳴翼、あの二人の晴れ舞台だッ!そこに行って——無粋な邪魔者どもをぶっ潰してやんのさッ!」

 

ウチのマリア。その言葉が指す意味とは、彼らは何らかの組織であり歌姫マリアもまた、その構成員であるということ。

 

「何も言わなかったことは申し訳ないとは思ってますがね。敵を騙すにはまず味方から、とも言うでしょう?まずは乗ってください。詳しい説明は僕たちの上司がやってくれますよ」

 

これは何のための任務だったのか。まさか米国を騙くらかしたのか。

そしてこれは計画立ったものなのか。まさかとは思うが、ソロモンの杖を失うことさえ想定内なのか。

 

 

「さあ、ネタばらしの時間です。僕たちが何者で、何を目的としているのか。何のためにこの輸送任務が計画されたのか。……これしか道が無いことも含めて、です」

 

 

この一連の事件は、初めから彼らの掌の上だったのではないか?

その疑念が湧き上がる。だとすれば、岩国基地での犠牲者はなんだったのか。

 

 

「ですが先にこれだけは言っておきましょう。僕たちは敵ではありませんよ。人類守護の砦、その隠された二番手です。尤も、二課とは違ってノイズが専門ではありませんがね」

 

 

 

どうです?極秘の秘密戦力なんて、実に「英雄」らしくありませんか?

 

 

 

冗談めかしてそう語るウェルは少し得意げですらあって。

 

その一方で、装者たちは相手への警戒心を強めていた。

 

 

 




ウェル博士のキャラに違和感があると思いますが、この世界の博士は原作と比べて辿ってきた人生が大きく違います。そうなると英雄に対する考え方も変わってくるだろうなーと思いこんな感じになりました。いつもの並行世界クオリティとも言う。


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