シンフォギアにゲッター系女子をinさせてみたかった   作:ぱんそうこう

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はちゃめちゃに遅れました。もう12月ってマジ……?

そして申し訳ないですがその割にはあまり進んでません。


暗雲と誓い

「うぉ、っと」

 

「あ痛つつつつ……」

 

どん、とそれなりに大きな音でぶつかる女子生徒がふたり。

ここはリディアン音楽院の片隅。学園祭の準備に沸くここで起こった、ちょっとした事故。

片方は尻餅をついて、もう片方は手に持っていた道具を思わず廊下にぶちまけた。

 

「脇見しつつ廊下を駆け抜けるとは、あまり感心しないぞ。——雪音」

 

じとーっとした目で翼が相手を見る。その視線に気付いた側も自分の落ち度を自覚し、目を逸らしながら申し訳なさそうに答えた。

 

「……!わ、悪い。今あいつらに追われてるんだ。もうすぐそこに……げっ」

 

さっ、と身を隠すクリス。翼はよもや、と身を強張らせた。

まさか、まさか恐竜帝国の魔の手がここにまで———と思ったものの。

ちら、と角の向こうを見れば、いたのは走り回る女子生徒だけ。それもさほど必死さは感じられない。視線をしきりに動かして、まるで誰かを探しているような。

 

「なんやかんやと理由をつけて、あたしを学校行事に巻き込もうと一生懸命なクラスの連中だよ」

 

ああなるほど、と翼は得心した。要するに、素直に輪に加わるのが気恥ずかしくてついつい逃げ回っているだけか、と。

 

ルナアタックが終わり、雪音クリスはリディアン音楽院に編入となった。

以来、学院の中で顔を合わせることもそれなりにあり、彼女の人となりはそれなりに分かりつつあった。故に思う。微笑ましいものだ、と。

 

「……こないだの件であたしらは地獄を見た。あたしらに、こんなことしてる暇なんかねえだろ。……って、そっちは何やってんだよ」

 

「見ての通り、雪音が巻き込まれかけている学校行事の準備の只中だ。……戻ったとてこのまま巻き込まれるのだ、ならば少し付き合ってもらおうかな」

 

「なっ……ぐぬぬ……」

 

「そう悔しがるな。……雪音とは、二人で話もしたかったからな」

 

「……あのバカのことか?」

 

翼は首肯した。そして静かに身を翻すと、空いている一室へクリスを先導し、装飾を作る作業に取り掛かった。

 

「……立花はどうしている?」

 

「どうしたも何も、最近やっと学校に出てきたところだよ。しばらくはマトモに飯も食えなかったらしいしな。まあ、無理もねーよ。あんなモン見ちまったら……」

 

「そう、か……学祭の楽しさで少しは気を紛らわせてくれると良いが。……斯く言う雪音はどうなのだ?そちらも立花と同じものを見たろうに」

 

「あたしはいいんだよ。……地獄は、とっくに見慣れてる」

 

「だからとて平気なわけでもあるまい。むしろ思い出したくもないものを思い出す、ということもあるだろう」

 

「それは……」

 

そこから先を、クリスは紡げなかった。

気怠そうにしながらも、丁寧に紙の花を作っていた手が止まる。

 

翼の指摘は的を射ていた。

連れ去られた人たち。死体の山。そしてそれを作って嗤う外道共……いずれも、彼女の心の柔らかいところを抉るには十分すぎた。

止まった手が、静かに卓の上に置かれる。作りかけの花が、開ききる前の花が。静かに台の上に戻される。

 

「……やっぱ、こんなことしてる場合じゃねーよ」

 

「居ても立っても居られない、そう言いたげだな」

 

「そりゃそうだろ。あんただって、早く連中を止めなきゃならねーって事ぐらい、分かるだろ!?」

 

「だが現状、私たちに出来ることは少ない。焦ったところでなんの解決にもならない」

 

「そりゃまぁ、そうだけどよぉ……」

 

「それに、こうした日常を大切にしてこそ守るべきものが見えてくる。これはいざという時、絶対的な力になるものだ」

 

「そういうもんか?……そういうの、あたしにはよく分からんね」

 

「いずれ分かるさ。ここでの生活に馴染めば、特によく」

 

「まるで馴染んでない奴に言われたかないね」

 

「ふふ……確かにそうだ。しかしだな……」

 

と。二の句を継ごうとしたところで三人ほどの生徒が、朗らかな声を上げながら教室へ入ってきた。

翼を探していたという三人は、彼女を見つけると迷いなく手伝いを申し出る。戸惑う翼を他所に、三人は和気藹々と、軽やかに装飾を作り出した。

 

「正直ね、ちょっと前までは翼さんのことちょっと近寄りにくいなって思ってたんだよね〜」

 

「あ、私もそうかも」

 

「孤高の歌姫って言えば、聞こえはいいんだけどね〜」

 

「も……もしかして聞いていたのか?」

 

本来の目的はあくまで学祭の準備。しかし雪音と恐竜帝国絡みの話をする都合上、誰かに聞かれないように人気のない教室を選んだはず……!と翼がわたわたと慌てだす。

その様子を見て、くすくすと笑い出す三人。

 

「可愛い下級生に言われちゃったところからだけどね。……そりゃあ、芸能人でトップアーティストだもん。私たちとは違う世界の人なんじゃないかって、ね」

 

「けど、思い切って話しかけてみたら私たちと同じなんだって、よく分かったもんね」

 

「そうそう。最近は特にそう思うよ。ほら、さっきみたいに可愛いトコロ見せてくれるようになったし?」

 

「かわっ……!あ、あまりからかわないでくれ!」

 

「ざーんねん。本当なんだけどなー」

 

今までの先輩風が嘘のように、同級生に弄り倒される翼。

その様をクリスはニマニマしながら高みの見物を決め込んでいた。

 

(何だよ。案外人気者じゃねーか)

 

 

 

(ああ、いいなあ。あたしも、こんなふうにあったかいところにいられるのかな)

 

 

 

(もう、こんなのは夢でしかないって思ってたけど)

 

「あたしも、もうちょっとだけ頑張ってみっかな……」

 

夕焼けの空は、静かに彼女の横顔を照らし続けていた。

 

 

 

 

———————————————————

 

恐竜帝国の地下基地、マシーンランド。地下のマグマ層を漂うその要塞こそハチュウ人類にとっての最後の砦。

自らの生存を賭けた方舟である。

その玉座において、帝王ゴールの声が木霊する。

 

「ええい忌々しいシンフォギアどもめ……。無駄な抵抗などやめて、大人しく消えておれば良いものを!」

 

ゴール自身の考えでは、地上侵略と人類の殲滅は容易いことであるはずだった。そして唯一阻止し得るのはゲッター線の存在だけであるとも。故に早乙女研究所を妨害し、ゲッター線の研究をやめさせようとした。

結果的にその企みは成ったが、しかし続いて異端技術という不安要素が突如として浮かび上がってきたのだ。

異端技術は恐竜帝国の技術から見ても未知の領域。故にF.I.S.を襲い、手に入れ、己が手に収めようとした。あるいは、メカザウルスの強化も出来るやもしれぬと皮算用をしながら……だがそうはならなかった。

 

手に入れたのは「櫻井理論」なる資料。破損していたがシンフォギアの現物。そしてその装者の候補者たち……それらを以てしてもなお、完全な再現とまでは行かなかった。出来たのはせいぜい破損したギアを修復した程度……人類にとっては難題だとしても、遥かに進歩した恐竜帝国の技術ならば容易いことであって然るべきなのだ。それこそが人類より遥かに優れたハチュウ人類の誇りなのだから!

そして敵のシンフォギアのためにわざわざ対策を取らされているというのがいかに屈辱的か!

 

……恐竜帝国は全てにおいて人類の上を行く。この一手さえ成れば、シンフォギアの全滅も成る。それまでの辛抱なのだと自分を納得させ、ゴールは玉座にて来客を待つ。

そして待ち人は来た。

 

「科学技術長官ガレリィ、こちらに。お呼びでしょうか、ゴール様」

 

自らを科学技術長官と呼ぶガレリィという小柄なハチュウ人類。それは恐竜帝国における最高の科学者であり、メカザウルスの開発や奪取した異端技術の研究を一手に担う帝国に欠かせぬ人材である。

 

「うむ。すでに聞いていようが、例の新型の進捗はどうじゃ」

 

「ははっ。既に完成しておりまする。ゴール様に改良を命ぜられ早一年……改良に改良を重ねようやく新種が生まれ申しました」

 

「おおそうか!では、あの異端技術のエネルギーにも対応しておるのであろうな!?」

 

「無論でございます。こちらをご覧くだされ」

 

そう言ってガレリィが指を鳴らせば、兵士が巨大な水槽を引っ張り出してきた。その中には一匹のクラゲが静かに揺蕩っている。

そして二度指を鳴らすと、今度は兵士たちの身長よりも大きな砲台が引き出されて来る。

 

「これが我らが苦心して造ったゲッタービーム砲でございます。……さあ撃て!」

 

号令一つで砲台の先端から、覚えのある忌々しい色の光線がクラゲに向けて照射される。本来ならば、クラゲは耐えられず死ぬだろう。しかし。

 

「お、おお!こ、これは!」

 

ゴールは喜色を顕にし、その様子を見守っている。

水槽の中では、ビームを吸収したクラゲが刻一刻と大きさを増している。

 

「次はレーザー砲と火炎放射器を放てっ」

 

号令を合図に、命令の通りの兵器が次々と撃ち出される。しかしクラゲはびくともしない。むしろ喜んでいるかのように、放電を撒き散らしながらさらにさらに目に見えて巨大になってゆく。

 

「お主も来るのだ!攻撃に参加せよッ!」

 

三度ガレリィが指を鳴らせば、既にアガートラームを装着したジャンヌが気だるそうにしながらも、アームドギアを変形させた荷電粒子砲をクラゲに撃ち放った。

三種の武装による三方向からの集中攻撃。しかしそれすらもものともしないその性能に、ゴールは既に目を奪われている。

 

「ううっ……す、素晴らしい……。これならゲッターを、シンフォギアを斃すことが……否、地上の全てをこの一匹で破壊できる」

 

「それだけではございません。これまでの奴らのデータを元にすれば、例の合体攻撃にすら耐えられる計算でございます」

 

ガレリィの報告に、もはやゴールは有頂天だ。もう誰にも止められないほどに。

その一方でジャンヌは冷ややかな目でその熱狂を眺めている。

既に勝ったつもりでいる帝王を。

 

「ふははははははは!勝った!勝ったぞ!ジャンヌよ。この戦い、もはや貴様の出番も無いようだな!早速コレを地上へ送り出せッ!」

 

「……分かっているのだろうな?例えこれで勝ったとして……」

 

「承知しておるわ。たとえ下等なサルとのものであれ約定は果たす。それが誇り高き帝王というものだ」

 

「ならいい。…………さて、本当にそう上手くいけばいいがな」

 

そう溢し、ジャンヌはゴールの元を辞した。行き先はマシーンランドの奥、機密の物品を扱う区画。そこに、彼女の戦う理由が眠っている。

 

 

 

————————————————————

 

 

「メル。調子はどうかしら?」

 

目的の場所に辿り着いたジャンヌの第一声は、これまででは信じられぬほどに優しさに溢れていた。

しかし答えは帰ってこない。メルと呼ばれた少女は、液体に浸された水槽の中で静かに眠っている。

それを眺めるジャンヌの姿はゴールや他の装者たちに見せたものとは打って変わって慈愛に溢れ、相手への親愛の念がとても強いようだった。

 

「生きてたわ。マリアも、調も、切歌も。皆、元気そうだった」

 

その表情はとても穏やかで、装者たちに見せた負の感情は一切伺えない。

 

「でもごめんなさい。私はもう戻れない。私はもう……あそこにいた大人以下の、外道になってしまったから。あの頃に帰れないのが……残念でしょうがない」

 

郷愁の念が表情に浮かぶ。例え幸福ではなかったとしても、あの頃は望んだものがあった。家族がいた。笑い合える仲間がいた。同じ想いを共有できる友人がいた。

けれどそれらはもういない。否、自らの手で捨て去った。全てはこの地獄から抜け出すために。例えさらなる地獄に叩き落とされるのだとしても。

 

「だからせめてあなただけでも生かして帰すわ、何があっても。その為なら私は喜んで地獄に落ちる」

 

覚悟はある。きっと自分は永遠に後ろ指を差されるのだろう。

同じ人間からは裏切り者として狙われ、ハチュウ人類からは人間だからと信用されない。

負けたら命は無いだろう。米国の恥部であり、人類の恥部でもある自分は世界が死を望むに違いない。そもそも、その前に命が残っているのか怪しい。

例え勝っても、奴隷としてこき使われるのが関の山かもしれない。永遠に太陽は拝めなくなることだってあり得る。

ここに連れて来られたあの日から、もう私に未来は無い。だからせめて、あなただけは。

私の愛する最後の家族である———あなただけは。

 

「ゴールから約束を取り付けたわ。この戦いに勝てば、あなたを自由にすると。……笑ってくれていいわ。これが私に出来る精一杯だった」

 

分かっている。恐竜帝国が勝つとはどういうことか。

人間は全滅するだろう。地上に生きられる環境など無くなるだろう。月は落ち、果ては地軸までもが狂ってしまうかもしれない。そんな中に放り出されたところでどれだけ生きられるか。

それでも。ああそれでも。求めずにはいられない。短い人生で、ほんの一時さえもなかった時間を。常に脅かされ、掠め取られてきたもの———自由を。

誰のためでもなく、好きなように生きて、好きなように死ぬ。ただそうするだけの時間を、あなたに。

それだけが今の私に遺せるたった一つの贈り物。

あなたを救うことができない私の、たった一つの償い。

 

「何があっても私はずっとあなたのことを愛しているわ。待っててね……私の大好きな妹」

 

 

 

 

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