シンフォギアにゲッター系女子をinさせてみたかった   作:ぱんそうこう

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お待たせしました。第五話、完成です。

ようやく大まかなプロットも完成したので、正式に連載という形になりました。
これからも本作をよろしくお願いします。


課題

竜の暴走から一夜明けた二課。そこでは主要な構成員による緊急会議が行われていた。

 

 

「司令、本当に彼女を戦力に数えるおつもりですか?」

 

 

会議は友里あおいの疑念から始まった。

この中で直接装者たちの戦闘に関わるのは友里あおい、藤尭朔也を始めとするオペレーター陣だ。したがって、この懸念が彼らの中から現れるのは至極当然のことであった。

 

「現状では何とも言えんな。奏がLINKERを必要とする都合上、完全に適合した装者は貴重だ。それに鎌倉からも早急に実戦投入すべしと要求が来ている」

「しかし、暴走が起こることを考慮すれば、まず最初に身の危険にさらされるのは装者である竜くんだろう。それを無視することはできん」

 

 

会議室の中が沈黙に包まれる。この時、全員の頭にはかつて多くの犠牲を出した暴走事故のことが過っていた。

 

 

「そのことなのだけど、ちょ~っといいかしら?」

 

 

沈黙を破ったのは櫻井了子。その手には紙の束が握られている。

 

「了子くんか。解析は終わったのか?」

「ええ。これから報告するから皆も聞いてちょうだい」

 

 

その言葉と共に、プロジェクターを通して解析によって得られたデータが映像として出力される。その時、参加者全員の顔が改めて引き締められた。

 

 

「まず一つ目。彼女は天然ものの適合者で確定ね。これは非常にありがたいことだと思うわ。データだけを見れば、だけど。」

 

最後にやや声のトーンを下げる。

 

「それで二つ目の暴走した理由なのだけど……この映像を見てもらえるかしら」

 

そうして了子がリモコンを操作すると、映像は竜がガラスケースをぶち破ってゲッターを掴んだ瞬間を写し出し、さらに竜の顔を拡大し始めた。

 

「はいここ。竜ちゃんの目の下から顎の両脇にかけて何か緑色のラインが走ってるのが見えるかしら」

 

「見えるが、それがどうかしたか?」

 

「これ、どうもゲッターからのエネルギーが逆流したみたいなのよ」

 

「逆流……だと?」

 

困惑の色を隠せない弦十郎。過去のデータを見ても、ギアから人体へのエネルギーの逆流に類するものは絶唱などによるバックファイアくらいしか聞いたことがない。

 

「ええ。そしてこれと同じ現象が実戦テストの最中にも起きてることが確認されたわ。」

 

「それはつまり、絶唱のようにギアからのバックファイアが起きている、ということか?」

 

「似てるけど、そうではないわ。これはむしろギアの中で無秩序に溢れたエネルギーが竜ちゃんの体内に流れ込んでいる、と見た方が近いみたい。その結果、あの子の中の闘争心が刺激されたことで暴走したと推測されるわ。だから人体にかかる負担は暴走時の行動で肉体にかかるものを除いておおよそゼロに近い。」

 

一呼吸置く。

 

「この原因については、竜ちゃんとゲッターの親和性が高すぎるせいではないか、というのが私の結論ね」

 

「それはつまり、ゲッターと適合しすぎた、ということでしょうか?」

 

「その通りよ藤尭くん。これを解決するには竜ちゃんがゲッターを完全に制御するしかないと考えているわ」

 

ここでずっと黙って聞いていた緒川が手を上げる。

 

「それは技術的アプローチでは解決出来ないのでしょうか?」

 

「難しいところね。確かにギアに幾らかの制限を掛ければ不可能ではないわ。でもそれじゃあ根本的な解決にはならない」

「どうしても機能に制限を掛ければいずれ必ず限界が出る。そうやって制限を解除した時にそのまま暴走されちゃ堪ったものじゃないしね」

 

 

これでギアの限定解除がされたらと思うとぞっとするわ、と言って締めくくる。

あの戦闘力は魅力的であるし、現在の装者二人の負担を減らせるという点でも戦場で起用しない理由はない。しかし、「暴走」という二文字が全員の判断を迷わせていた。

 

再び沈黙が会議室を支配する。それを見て徐に口を開いたのは、やはり司令官の風鳴弦十郎だった。

 

 

「……ならばこの件。俺に任せてもらえないだろうか」

「あの実戦テストを始める指示を出したのは俺だ。暴走の原因は俺にもある。その責任は取らねばならん」

 

「しかし暴走の原因は……」

 

「ゲッターからのエネルギー逆流、だろう?だからこそ、だ。竜くんから誘いを受けた時点で、俺は彼女が闘争本能に呑まれつつあったことに気づけなければならなかったんだ」

「俺が何としてでもゲッターを制御出来るようにさせてみせる。だから少しだけでも猶予を与えてほしい」

 

頼む、と言って頭を下げる。

 

 

「そうするのはいいのだけれど、」と了子。

「おそらくそんなに長く時間は取れないわ。暴走がそう何度も起きるならこちらのバックアップにも限界がある。それに、制御出来たときに後々必要になるであろう装者二人との連携訓練や鎌倉からの要請との調整、出来なかったときに必要な処理なんかもあるから、取れるのはせいぜい二週間程度だと見てちょうだい」

 

櫻井了子は基本的に、弦十郎に対して全幅の信頼を置いている。そんな彼女が明確に時期を指定した。これは彼女からの事実上の勧告だ。つまり「二週間で制御できなければ、こちらも相応の手段を取らざるを得ない」という類いの。

 

そのことを知ってか知らずか弦十郎は、

「助かる。それだけあれば十分だ」

と、自信に満ちた表情で笑ってみせる。

その笑みには、相も変わらずこの男に賭けてみたいと思う気持ちを掻き立てる強さが宿っていた。

 

ならば、答えはひとつ。

 

「そこまで言うなら、私は弦十郎くんを信じるわ。必ずやり遂げて頂戴。皆もそれで構わないかしら?」

 

 

了子さんが言うなら、とやや不承不承気味ではあるが了承の意を示すあおい。それに追随して場がある程度賛同で大勢が決した。

 

 

「すまない。皆の厚意に感謝する」

 

 

その言葉と共に会議は締め括られた。

 

会議室を出た後、竜の病室へ足を運ぼうとする弦十郎。その顔は会議前と比べれば幾分晴れやかになっていた。

 

 

 

 

「うぐ……あ痛てててて……」

 

その頃竜は病室のベッドの上で全身の痛みに悶え苦しんでいた。

(全身が痛ぇ。多分オッサンにやられたせいだろうが、昨日の俺はどうしちまったんだ?)

 

自分が何をしたのか。自分の中の闘争心のままに戦い始めた辺りは覚えているが、気がついた時には裸でアリーナの天井に頭から突き刺さっていた。そして櫻井とかいう茶髪の女が自分を引っ張り出そうとした辺りで記憶は再び途切れている。

 

「ゲッターが俺に何かしやがったのか?まさか無理矢理引っ掴んだからキレた、とかじゃねえだろうな」

 

だとすればまだもう少しへそを曲げちまってるかもな、と誰に聞かせるでもなく呟く。当然といえば当然だが、近くにギアペンダントは無い。再び回収されたようだ。

そうして考え事をしていた最中、

 

 

「よっ。目が覚めたみたいだな」

 

病室の扉を開けて入ってくる橙色の影。二課のギア装者、天羽奏である。

 

「誰だ?あんた」

「アタシは天羽奏。シンフォギア『ガングニール』の装者だよ。要はアンタの先輩ってこと。これからよろしくな」

「おう、よろしく。」

 

気さくな様子に少しだけ警戒心を緩める竜。その姿に奏は野良猫みたいでちょっとかわいいなこいつ、と内心で溢す。

 

「体の調子はどうだ?」

「良くはねえな。まだ体が痛くてしょうがねえ」

「アハハ。ギアには装者を保護する機能があるけど、ダンナの全力はさすがに受けきれなかったみたいだな」

 

その言葉に反応して目を剥く竜。全力を出していたのか?そんなもの俺との組手じゃ食らったことがない。どうせなら自分の意識がある時に打ってきてほしかったと悔しく思うとともに、なら今度は自分だけの力で引き出させてやるとこみ上げてくる熱があった。

 

 

「それで俺に何の用だ?まさかただの見舞いってわけじゃないんだろ?」

「いやいや、そのまさかさ。なんたって新しい仲間が出来たんだ、これくらい普通だろ?」

 

その言葉に竜はポカンとした表情をする。

 

思えば、ここしばらくは竜にとって予想外の出来事があまりにも起こりすぎていた。

帰宅したと思えば妙な連中に殺されかけ、何とか退けたかと思えば訳のわからない老人に拉致され、しまいには自分がおかしくなるという始末。もう何があっても驚かねえぞ、と身構えていた矢先の、あまりにも普通すぎる理由での訪問。貴重すぎて反応に困ってしまったのであった。

 

奏も、実戦テストの時の狂気じみた笑顔から打って変わって初めて見る竜の顔のあまりの落差に思わず声を上げて笑ってしまう。

 

「てめえ何人の顔見て笑ってんだよ。失礼なやつだな」

「ごめんごめん、まさかそんな顔すると思ってなくてさ」

「そんな面白い顔してたかよ?」

「そりゃそうだ。テストの時と落差がありすぎて……くくくっ」

 

テスト。そうあまり思い出したくはないが、自分は実戦テストの時に頭がおかしくなった。闘争心が昂り、誰にも負ける気がしないと全能感に頭をやられ気がつけば意識を失っていた。

 

「……テストの時はそんなにヤバかったのか?生憎と途中から何にも覚えてねえんだ」

「そうなのか?まあ、あの様子じゃ無理もないか」

 

あの完全に正気を失った目、歯を剥いて襲い掛かる様はまさしく獣のそれだった、と奏は相棒から聞いたことをそのままに伝える。

竜は悔しさを滲ませながらも黙ってそれを聞き続けていた。

 

 

 

 

それからしばらくして、再びドアを叩く音。

今度の客は二名、いつもの弦十郎と風鳴翼である。

二人が入ってくる所を見た竜は、弦十郎の背後にいる青い髪の少女の姿を見て「見慣れねぇ顔だな」と気の抜けた感想を抱く。

 

「元気か?竜くん」

「これが元気に見えるなら病院行きな、オッサン」

 

その言葉に翼が少し眉をひそめる。

 

「いやはや、すまない。何せギアを纏った君を相手にするんだ、全力でなければ優に受けとめられてしまいそうだったのでな」

「お前は俺をなんだと思ってるんだ」

「それだけ俺が君の力量を認めているということだ」

 

いやいや、と

「別に無理矢理気絶させられたことはいいんだけどよ、何でソレをいつもの組手でやってくれねえんだよ」

 

つまんねえの、と溢す。弦十郎は竜が珍しく見せる年頃の女の子めいた顔に一瞬呆気に取られると声を上げて笑う。

 

「おいおい……俺が言ったことって、そんなに可笑しいかよ?」

「そりゃそうだ。ダンナの全力を生身で受けてみたいなんて言う命知らず、アタシ初めて見たぜ」

 

しかもそんな顔で、と肩を震わせる。

 

ふむふむ、そんな顔。どんな顔かはよくわからないが、このまま自分がネタにされ続けるのも癪だし、このままでは埒が開かないだろう。そこで話を進めるべく、

 

「だぁーもう!いいから早く何しに来たか言いやがれオッサン!」

と急かす。

弦十郎もスイッチを切り替えたようで、先程とは打って変わってとても真剣な顔で話し始める。

 

「そうだな、では本題に入ろう。まず、緒川からいくらかは聞いていると思うが、改めて自己紹介だ。俺達は政府の組織、特異災害対策機動部二課の者で俺はここの司令を務めている。そしてこの二人が、」

 

 

「シンフォギア"ガングニール"の装者、天羽奏だ、改めてよろしくな」

「シンフォギア"天羽々斬"の装者、風鳴翼よ。よろしく頼むわ」

 

「特異災害対策機動部二課の使命は特異災害、すなわちノイズによる被害から人々の命を守ることにある。言わば人類守護の最後の砦なのだ」

「そして竜くんは我々が保有するシンフォギア"ゲッター"の適合者となった。そこで君に頼みがある。我々と共に人類を脅かす者と戦ってくれないだろうか?」

「おう、もちろんだ」

 

ノータイムで回答する竜。あまりの迷いの無さに弦十郎の方が戸惑ってしまう。

 

「……こういうことを言うのも何だが、もう少し考えてからでもいいんじゃないか?」

「そういうわけにも行かねぇよ。何せ俺はあのジジイに目を付けられちまったんだ。どうせ逃げられないんなら、徹底的にやってやるまでよ」

 

「ちょっと待って。ジジイってまさか、お祖父様のことじゃないでしょうね?」

 

「ジジイ」という単語を耳にした翼は嫌な予感が止まらない。よもや、よもやだ。よもやその「ジジイ」とはかの怪物、風鳴訃堂を指す代名詞ではあるまいな。

 

「お祖父様?ああ、そうか。あんた、風鳴って言ってたな。風鳴のジジイと言えばそいつしかいねぇだろうさ」

 

翼は眩暈がした。まさかこの世にあの恐ろしいお祖父様をあろうことか「ジジイ」などという言葉で呼ぶ人間が居たなんて!

 

「第一、お前も孫ならなんか言ってやれよ。あのジジイ、俺を勧誘する前に訳のわからん連中を差し向けて殺そうとしやがった。おかげで家がメチャクチャになっちまったんだよ」

 

どうしてくれるんだよ修理費、と文句を垂れる。

奏は「そこじゃない、そこじゃないだろ」とげらげら笑っている。

しかしそれ以上に風鳴家の者たちは頭を抱えたくなった。風鳴機関のエージェントが頭を抱えていたのはこれのことか!何してらっしゃるんですかお祖父様、これはひどいと、二者で異なる感想を抱いたが、どちらも目が死んでいたことだけは共通していた。

 

「その……ごめんなさい、私の祖父がとんだ無礼を……」

「俺からも謝らせてくれ。本当に済まない」

 

別にお前らは関係ないから気にすんなと竜は返す。

 

「それで?まだ他にあるか?」

 

何とか平静を取り戻した弦十郎。

「そうだな。もう一つは昨日の君の暴走の件についてだ」

 

その言葉に竜は姿勢を正し、静聴する構えを見せた。

 

「まず暴走の原因についてだが、これは君がゲッターと過剰に適合したため、というのが結論だ。従って、以後も暴走する恐れは十分にある。そのため、君には期限となる二週間以内に訓練を通して出した結果を元に、制御可能か否かを判断することになった。ここまでで何かあるか?」

 

「失敗したらゲッターはどうなるんだ?」

 

「さて、な。おそらく封印が妥当ではないだろうか。」「君の場合、ゲッターとの相性が良すぎたが故に出力が一気に上昇、その際のエネルギーが君の体内に逆流することで暴走が起きた、と考えられているため、理論上は君の働き次第で制御可能であると考えられる」

 

「つまり、完全に制御不能ってわけじゃねぇんだな?」

 

「その通りだ。そして俺は、制御出来る可能性は決して低くないと考えている」

 

「了解だ、喜んで受けるぜ。俺ももう二度とあんな醜態は晒したくないんでな」

 

 

―――――――――――――――

 

「よし、これで話すべき事項は全てだ。それでは訓練は明日から行う。今は二人と親睦を深めるといい」

 

そう言って弦十郎は出ていった。残されたのはギア装者三人。最初に口を開いたのは翼である。

 

「そういえば、テストの時の貴女の姿は見させてもらったわ」

 

その言葉に嫌な顔をする竜。もはや思い出したくもない思い出と成り果てているようである。

 

「よしてくれ。あんな無様な姿、見たくも見せたくもねえ」

 

「ううん、そっちではないわ。正気だったときのことよ。あの時の動き、何か武道を修めてる動きだったけれど」

 

その言葉を聞いて露骨に安心する竜。いい加減黒歴史を掘り返されたくはないのである。

 

「なんだそっちかよ、びっくりさせやがって」

「確かに、俺は空手をやってる。もっとも親父に仕込まれただけだから道場とかは行ってねえんだがな」

 

お前はどうなんだ?と聞かれる翼。

「ええ、私は剣を学んでいるわ。折角だし、今度手合わせ願えないかしら?」

ギアありの時とギアなしの時で、と二回分も戦いの予約をしようとする。

 

「おう、いいぜ。何度でもやろうじゃねえか」

竜もそれを快諾する。目の前の相手の立ち振舞いから中々「ヤル」ことはわかっていたので、この提案がなければ自分から行こうと思っていたからだった。

 

 

 

 

そこにアタシもやーりーたーいーと駄々をこねる奏も混ぜながら一日が過ぎて行く。

 

 

 

 

 

一日ぶりに得る平和は、とても気持ちのいいものだった。




早乙女レポート④

ゲッター線が先か、ゲッターが先か。非常に興味深い。我々は"ゲッター"を見つけるまで一度もこのゲッター線を発見することが出来なかったというのに、"ゲッター"の研究を始めた途端に多くの新発見があった。これは喜ぶべきことではあるが、同時に懸念もある。

そも、我々はなぜこの聖遺物を"ゲッター"と名付けたのか。まるで大きな何かに突き動かされたような心持ちがする。

―――――――――――――――早乙女賢博士より報告
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