シンフォギアにゲッター系女子をinさせてみたかった   作:ぱんそうこう

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日常回って書くの難しいですね……


前回とは別の意味で難産でした。
それでは第七話です。どうぞ。


前奏

「ほう……ようやく、か。ずいぶん遅かったではないか」

 

ここは鎌倉、風鳴家本邸。護国の防人たちの総本山とも言うべきこの地で、風鳴訃堂はゲッター制御の報告を受けていた。

 

「よもや最後には儂らが寄越した資料無しで辿り着くとは。やはり儂の目に狂いは無かった。あやつこそゲッターに選ばれし者」

 

報告によればゲッターの制御に成功、装者の流竜も無事に戦場での覚悟と心構えを身につけたという。

 

「あれの死は僥幸であった。やはり目前で親しき者と死別するは人を鬼へと変えるに最も適した手段なれば」

 

佐々木達人。あのエージェントが竜と顔見知りになり、あの時あの場におり、なおかつ上手く目の前で死に、覚悟を決めさせる。まさしく理想的な流れだった。

 

「あるいはこれもまたゲッターの導きやもしれん、か」

 

部下の命は失われたが、感傷はどこにも存在しない。ただただ無感動に受け止めるのみ。

一人の命でゲッターが十全に活動出来るならこの程度は安いもの。ゲッターに関わる者ならばこの程度の人死になぞよくある話故、代償としてはあまりにも安すぎる。

否、例え千、あるいは万人が死のうと安いことに変わりはないのだ。故にこれは犠牲に非ず。果てなき進化の礎なり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜がゲッターの制御に成功してから二ヶ月。

竜は生活の基盤を二課のあるリディアン周辺に移した。件の三人組の襲撃によって住んでいたボロ家は穴だらけになり、まともに住める状態でなくなったことに加え、二課から近い方が急な召集でも対応できるからである。

 

現在竜は二課の職員見習いという扱いである。一時はリディアン音楽院に編入した方がいいのではないかという案も出たが、既に18歳であるため編入したとしても学生生活もそう長くは無いこと、竜が「気が進まねぇ」と固辞したことから二年後に二課の正規職員兼リディアン用務員として働くことで決定した。そのため来るべき日に必要なスキルを身につけるべく、訓練の合間に座学を受けていたのであった。

 

 

「はい、これで今日の分の座学はおしまいです。お疲れさまでした」

 

「悪いな、慎次。何度も付き合ってもらっちまってよ」

 

「いえいえ、これも僕の仕事のうちですから。それに、もし悪いと思うならその分を二年後に返して頂ければそれで構いませんよ」

 

「ああ。勿論そうさせてもらうぜ」

 

竜が緒川慎次から受けている講習の内容は大きく分けて二つある。

一つは法律。二課の活動に当たって遵守すべき法律について、異端技術関連で他人を拘束する必要が生まれた際に則るべき手順などが主な内容である。

 

もう一つは用務員に必要な掃除などのスキルである。竜は知る由もないが緒川は魔窟と名高い風鳴翼の汚部屋を見事チリ一つなく掃除してのける漢であり、その処理能力は装者三人を遥かに凌駕している。その点で言えば最適な人選だった。

 

座学の際の竜は普段の立ち振舞いとは打って変わって非常に大人しい。一度緒川に迷惑をかけてはいまいかと翼が様子を見にきたことがあったが、イメージとあまりに違いすぎて入り口でたっぷり数分間は固まっていたほどである。

その時の翼の第一声が、

「貴女……勉強できたの?」である。

当然竜はキレたのだった。

 

 

 

座学の部屋を出て慎次と別れ、トレーニングルームへ向かう。まだ飯時まではやや遠いため一汗流すことにしたのである。

 

ルームには先客が一人。

 

「よう。待たせたな」

 

「お疲れ様、竜。それじゃあ始めましょうか」

 

「応よ。今日は一日座りっぱなしだったんでな。体が鈍ってしょうがねえ」

 

翼である。

この二ヶ月の間、対ノイズ戦は常に三人で出動していた。現時点での竜の戦闘力は奏や翼と比較しても決して見劣りするものではない。しかし連携という観点では未だ未熟な点もあり、しばしば時間を取ってはこうして連携の特訓をしていた。

 

「そういえば奏はどうした?」

 

「奏なら一度医務室に寄ってから来るわ。先に始めていいって言ってたから、早速始めるわよ」

 

「そうかい。ならお言葉に甘えさせてもらおうか」

 

 

目標は複数体のノイズ。ゲッターはゲッタービームという中距離武装を保有しているものの、アームドギアは近距離武装である。従って、剣を有する翼との連携は前衛二人で切り込む形になる。

 

 

「竜!前に出過ぎよ!それでは被弾するじゃない!」

 

「当たらなきゃどうってことねえ!」

 

「敵との距離が近すぎるのよ!それじゃ避けられるものも避けられないでしょう!」

 

「んなもん気合いで避けりゃいいんだよ!」

 

「そういう問題じゃないの!」

 

 

駄目そうである。それでも互いに一度の被弾も許していない辺り両者の戦闘能力が窺えるが、翼から見れば危なっかしくて見ていられなかった。

 

 

奏がアリーナに入ったのは、二人がシミュレーションのノイズを全て倒し終えた辺りであった。

 

「おーおー、やってるな?二人とも」

 

「奏!」

 

こういうときに相棒は反応が早い。すぐに奏の元へ近づく姿に、奏は犬の尻尾を幻視した。

 

「奏。ずいぶん遅かったじゃねえか」

 

「悪い悪い。アタシはギアを使うのにLinkerが要るからさ、こうしてちょくちょくチェックを受けなきゃいけないんだ」

「ところで少し揉めてたみたいだけど何かあったのか?」

 

「あぁ。何でも翼は俺のやり方が気にくわないんだとさ」

 

「そうなのか?翼」

 

「だって、竜が前に出過ぎるんだもの。フォローする私の身にもなってほしいわ」

 

「きっちり全員ぶっ倒したからいいじゃねえか」

 

「だからそういう問題じゃ……」

「はいはい落ち着きなよ」

 

見かねた奏が割って入り、翼のことを胸元で抱き締める。

 

「要するに、翼は竜が前に出過ぎて危なっかしいし、連携もとりにくいからもっと慎重になれってことだろ?」

 

「………………うん」

 

「でも竜ってそういうタイプじゃないよな?」

 

今度は竜に水を向ける。竜もよくわかってるじゃないかと言わんばかりに同意する。

 

「そりゃあな。まずは前に出てぶっ倒す。じゃなきゃ何にも始まらねえ」

 

「だから……むぐむぐ」

翼が何か言いたげだったが、奏はより強く抱き締めることであえてそれを封殺した。

 

「うんうん、気持ちはわかるな。アタシも同じだ。倒すべき敵は誰よりも早く、真っ先にぶっ倒したいもんな」

 

「その通りだ。話が分かるじゃねえか」

 

「だったらさ、翼の言うことも少しは聞いてやりな。前に出るならもう少し息を合わせるとか、やりようはいくらでもあるだろ?何せ一人より二人の方が早くぶっ倒せるんだから」

「三人で力を合わせれば尚更、じゃないのか?」

 

「う……分かったよ」

 

「それに、翼だって単なる注意で言ってる訳じゃない。竜の戦いかたがいつまでも危なっかしいから、見てて心配なんだよな?」

 

「そうなのか?翼」

竜の問いに対して奏の胸の中にいる翼は無言だった。しかし、奏だけはわずかに顔が上下したのを感じた。

 

 

直情的で本能的な竜に対して真面目で冷静に物を見ようとする翼が突っかかる。そしてそれを奏がたしなめ、二人の折衝役として二人の意見をまとめる。こんな光景はここ最近では殆ど日常と化していた。

 

「じゃ、今度は三人でやろうか!アタシも二人に負けてられないしな!」

 

再びシミュレーターを起動、先程よりもさらに数を増やしたノイズと戦い始める。こうして三人は少しずつ息を合わせていく。そうすればきっと多くの敵を倒し、より多くの命を救えるはずだ。三つの心が一つになれば、一つの正義は何十何百、あるいは千や万倍の力にもなるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

発令所。弦十郎と了子、加えてオペレーターのあおいと朔也がここ二ヶ月のことを話し合っていた。

 

「あの三人、なかなかいいチームになりそうじゃないですか?」

 

「ああ。竜くんも、あるいは昔の奏のようになってしまうかと危惧していたが、どうやら取り越し苦労だったらしい。」

 

 

竜がゲッターを制御したときのことは既に報告を受けていた。あの怒りの咆哮のことも、親しくなった者がノイズによって目の前で殺されたことも。

 

だからこそ、ここの面子は危惧していた。竜がかつての奏のように、ノイズへの復讐鬼となってしまうことを。

しかしその当時の奏のような余裕の無さもなければ、毎日のメンタルケアにおいても特にそういった兆候もない。それ故に安堵していたのであった。

 

「それに三人で出撃することが増えて以来、三人で過ごす時間が増えたようです。翼ちゃんとはぶつかることもあるようですが、それも奏ちゃんが間に入ってくれていますしね」

 

「そうね~。この様子なら例の計画にも間に合いそうじゃないかしら?」

 

そういう了子の手元には、『project "N"』と書かれた書類が握られている。

 

「……このまま、何事も無ければいいのだがな。」

 

「司令、何か心配事でも……?」

 

「ああ。……奏の先がもう長くないというのは知っているな?」

 

その瞬間、弦十郎が何を言わんとしているのか、全員が悟る。

 

「もしも、もしもだ。奏が命を落としたとき、あの二人は果たして良きチームのままで居られるのか、と思ってな。あまり考えたくはないが、そう遠くない未来だと思うとどうしても、な」

 

 

 

その言葉は、この場の三人の耳にいやに残った。




櫻井了子より、SG-00"ゲッター"について報告

聖遺物"ゲッター"について分かっていることは少ない。この分野についての先駆者である早乙女賢博士が亡くなられて以降、ゲッターは研究対象ではなく、シンフォギアへの加工が優先されていたためである。
ギアと化した今、ゲッターは他のギアと、聖遺物と一線を画する存在感を示している。
例えばそれはゲッターが発するエネルギー、ゲッター線。フォニックゲインとは根本から異なるそのエネルギーはギアに新たな可能性を示すだろう。
しかし代償としてゲッターは装者に通常のギアを遥かに上回る負荷を与えている。間違いなくあれは常人に扱うことは不可能だろう。
――――――正規装者、流竜を除けば。
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