悪鬼も泣きだす すぺしゃるえでぃしょん   作:ぐーたら

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鬼いちゃんをお求めの皆様、ごめんなさい。
ロールプレイまではしばらくお待ちください。


本編
それは夢のような現実


 

 

 それは不思議な体験だった。

 全てが本物に感じるような…。

 

 

 いつもと変わらぬ日常。疲労が襲う身体で帰宅する。食事を摂って風呂に入った(のち)、寝所へ倒れ込んだ。

 今日も疲れた…。

 

 重すぎる瞼に従い、すっと目を閉じる。

 ずっと同じような日が続くのだろう。

 柔らかな寝具に身を投げ、吸い込まれるように意識が遠くなる––––––。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーー…のだが。

 求めていた安眠は何処にいってしまったのか。

 

 磯臭い匂いが鼻を(くすぐ)る。

 

 がばっと()ね起きた。

 付いた手からは湿り気の含んだサラサラと触り心地の良い砂の感触。

 風が吹き、また磯臭さと潮の匂いが漂う。鳥の鳴き声が聞こえる。

 

 辺りを見渡す。空は青が澄み渡るような晴れ。

 周りには目が眩むくらい一面に白い砂浜と光り輝く海が広がる。

 

 先程の鉛が伸し掛かるが如く重い眠気はどこへやら、五感を刺激して止まない光景に頭が冴えていく。

 

 あら、素敵な場所。

 

 

 …えっ。

 

 

 

 

 ここどこですかーー!?

 

 

 

 

 (心の中で)叫ばずにはいられなかった。

 

 ーーーーー…ふぅ。

 少し冷静になった。

 

 しばし考える。

 自分はつい前まで床に就いていたはずだ。

 となればこれは夢–––ならそれで話は終わりのはず…はずなのだが、なんかこう夢というには不思議な感じがする。

 目を刺す光が、匂いが、感触が–––––全身を刺激するこの感覚は妙に現実味がある。

 

 今までに無い経験、だがしばらくしてから思い出す。心当たりがあるとするならば…だ。

 

 〝明晰夢(めいせきむ)

 

 夢の内容が現実に感じ、願えば望む通りになるという、まさに夢のような夢。噂で聞いた程度で半信半疑だったがこれがそうなのかもしれない。

 今自分は夢を見ているのか。

 

 初めての経験。

 …そうなのだとすればこのまま目覚めるのはもったいない気がする。

 

 色々と私生活でストレスが有頂天だったこの頃。自分が求めていたものは都会から離れたこういった環境だったのかもしれない。

 折角の機会、次があるか分からない。

 存分に享受しようと海へと駆け出した。

 

 

  

 

 よーし!お兄さん()張り切っちゃうぞー!

 

 

 

 

 …………。

 

 

 いやおかしい。

 (いい歳して)一頻り騒いでいる途中でまた冷静になる。

 この夢は楽しい、楽しいのだがそれよりも気づいたことがある。

 

 

 自分が自分じゃない()

 

 

 ……。

 あ、いやごめんなさい 違うんです。

 ふざけてないんです。ホントなんです。

 

 気づいたのは違和感からだった。普段見える目線よりやけに高い。

 現実の自分も高身長(見栄)故に高いがそれを大きく越える。

 

 身長伸びた…?

 

 ふと頭や身体に目が移る。

 少し伸びている前髪からちらちら映る白髪。

 紺色のベストに黒のコートとズボン、それとブーツ。

 …主観なので全体図は分からないがどこかで見た事がある気がする。叫んだ時の声にも聞き覚えがあるような。

 服装には独特な装飾と意匠が施されている。

 顔にも変化があるのかと思ったが鏡など持ち合わせてはいない為確認は出来ない。

 

 え、なにこれ コスプレ…?

 今までこんな格好で表に出ていたことに軽く羞恥心で悶えた。

 だがすぐに我に返る。

 

 何を恥ずかしがる必要があるというのか。

 

 これは夢である。

 そう、これは夢なのである。

 

 全ては一時(ひととき)の幻、案ずることはない。

 この衣装や髪色を見ると胸騒ぎがする。

 遥か昔に抱えていた病––––具体的には中学二年で患う流行り病が再燃しそうになるが気のせいだ。

 古傷が疼くだけである。この姿は自身の深層心理を反映した結果なのだろう。

 自分って(この歳で)コスプレしたかったのか…。

 また悶えそうになる。

 

 うん、些細なことである。

 現実でないのならこの問題は解決した(逃避)。

 

 取り敢えず海辺で暴れまくって満足したは良いが目覚める気配はない。

 夢だと認識しているのに自分の意思で覚醒できないのは疑問が残るが、そういうものだと深くは考えなかった。

 それならまだ楽しめるはず、次は何をしようか。

 

 海の反対側の陸地に目を向ける。

 鬱蒼とした草木とこれまた立派に生え揃った竹林。

 その間を縫うように獣道が続いている。街道のように整備などされていない場所。

 視界を埋め尽くす和の緑に興味を惹かれる。

 

 あっちに行ってみようかな…。

 

 好奇心には勝てず、獣道へ足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ワー スゴイナー キレイダナー

 

 迷った(震え声)。

 なんてこった。そんなバカな。

 

 奥へ進んだ先で自分は目を奪われた。

 自身を囲んで余りある深緑、血管のように広がり幾重にも垂れ下がる枝葉とそこから漏れる日の光。風が吹いて草が擦れ合う音が聞こえる。

 緑が拓けた先まで足を運ぶと小川が見えた。

 せせらぎが聞こえる。陽光の反射で光り輝き、思わず手に掬うと包み込む冷たさと透き通った水が実に清らかだ。

 

 すんばらしいマイナスイオンである。

 日本の自然最高。

 この景色にテンションは再上昇。

 

 あ゛! 小鳥だ!

 あ゛っ! 花だっ!

 あ゛っ!? 川だァッ!

 

 こんな感じでフラフラとずんどこ奥へ突き進んでしまったが故に御覧の有様だ。元来た道すら分からぬ始末。

 子供のように騒いだ挙句がこれである。己の頭はあっぱらぱーなのかと。酷い話だ。

 

 ここまでジ◯リめいた風景が見られるとは思わなかった。

 これが見れたなら結果オーライだと思うことにしよう。

 

 しかしこの状況、完全に遭難である。

 自分の夢で遭難とは()如何(いか)に。

 

 (しばら)く周りを歩いてみたが来た道の行方は知れず。

 埒が明かないので明晰夢の特性に(なら)って、試しにこの森の出口への道を念じてみる。

 が、繋がるかと思いきやそんなことはなかった。

 

 何も起きない。

 望む通りと言っても限度や範囲があるのかもしれない。

 この夢の世界がどこまで自由でどれほどの規模なのか気になるところではあるが…。

 

 まぁ 如何様な目に遭っても時間が経つか、ふとした拍子で目が覚めるはずなので大丈夫だろう。

 慌てる必要は無い。なんせこれは夢なのだから。

 

 

 特に根拠のない根拠(哲学)。

 

 

 この時の適当さを後悔することになろうとは、能天気な自分では予測など出来るはずもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スーパー明晰夢生活––––四日目。

 

 

 ヴェ゛ェ゛…(白目)

 いや冗談だろお前、いや冗談じゃねーよ!(自問自答)

 バカヤロウ!モウヤメルンダッ!(錯乱)

 

 おかしい、夢から覚めない。

 

 なんで野宿してんの…?

 初日だったあの後は時間を忘れて散策していた。気づいた頃にはもう夕方。そこでも『ユウヒガキレイダナー』だなどと感動していたらあっという間に夜も更けてしまった。

 たが待てども目覚める予兆すらもない。

 一般人の自分では野宿の際の知識なんぞ持っているわけもなく、月の明かりだけを頼りに夜の森で震えながら一夜を過ごした。

 

 …しかしホントにこれが一夜だけで済めばどんなに良かったか。

 

 その一夜が二回、三回––––。

 日が沈んで月が出て、月が隠れて日が顔を出して…。

 

 死んだような顔で数えて早四日目を記録した。

 

 “死んだような”と言ったが、これが比喩でもなんでもない。実際に死にかけていた。

 

 どうやらこの世界は空腹や疲労等、人間の生理現象まで忠実に働くようだ。

 つまり、オラ腹ぁ減ったぞ。

 慣れぬ環境と現実に戻れない不安で身も心もくたくただ。疲れで眠気も襲っている。

 夢の中なのに眠気を感じるのもおかしな話だが、しかしこんな状況ではとても寝れやしない。

 

 清潔だけに関して言えば、水脈が豊かな土地だった為に欠かさず利用することができた。水の純度も綺麗で安心である。

 水源が豊富なだけに、水である程度飢えを凌げたのだが…限界まで時間の問題だ。

 

 そこらに自生している植物や菌糸類は怖くて今まで避けてきたというのに、場合によっては手を出す勇気が必要になるかもしれない。

 

 誰がここまでやれといった(半ギレ)。

 癒されたかっただけでサバイバルに興じたいとは言っていない。

 

 

 

 

 

 そして四日目の夕暮れ。

 うごごごごごご…っ。

 現実のマイベッドが恋しい、温かい食事を口にしたい。

 極度の疲労が伸し掛かる。頭も働かないまま、幽鬼のように歩みを進めていた。

 

 

 半ば諦めていた。そんな自分の目の前に飛び込む、見通しの良い眺め。

 遂に森から拓けた場所に出られたのだ。

 

 夜目を凝らして周辺を展望する。

 その奥部には月の光とはまた違う灯りが照っていた。他にも田畑や伝統的な日本様式の民家が見える。

 村落。

 ここで初めて自分以外の人の気配を感じさせた。

 

 安堵と感動が胸に込み上げ、疲れなんて忘れて走った。息を切らせながら近づいていく。

 叶うならば寝床か食料を恵んでほしい。

 

 

 

 

 村の(そば)まで着いた。

 

 早速人を探そう。

 そう思ったその時に感じる違和感。

 

 夜に差し掛かるとはいえ生活音も無く、閑散としすぎている。

 

 何かがおかしい。

 念の為に自分から一番近くだった民家の様子を竹垣の裏からそっと窺う。

 家の戸口は開いていた。中から木片や家財らしきものが散らばっており、壁や柱も破壊されている。

 

 まるで災禍に見舞われたかのような惨状。

 そしてその残骸の上から絵の具をぶち撒けたように塗れた–––赤色。

 恐る恐る確認する。鼻を刺す鉄の臭い。

 どうしようもなく平穏に染まった環境にいた自分でも分かる。

 これは、血だ。だが人は居らず。

 

 慌てて別の民家も確認する。

 細部は違うが、どの家も似たような有様。

 しかしその何処にも人はいなかった。つい先程まで生活していた痕跡があるというのに。

 

 天国から地獄に突き落とされた気分。

 遭難した事といい、今度は悪夢を見させられているのか。ここでいったい何が起きたのか。

 地理も無ければ連絡手段も無い、助けを呼ぼうにも呼べない。

 望む通りになる夢などと(はしゃ)いでいた自身に腹が立った。

 

 明晰夢云々はもうどうでもいい。

 この夢から抜け出したい。

 

 必死探し回るも、懸命も虚しく道中でも人影すら見えない。

 異常な状況でたった一人取り残されたかのようで恐怖と孤独が心を蝕む。膝が折れそうになった。

 

 

 その時不意に聞こえた––––重く鈍い物音。

 

 

 閑散が故によく響いた。

 人か否かはともかく、何者かの存在を予感させる。

 

 方向は確か、彼処だ…!

 

 

 

 (はや)る気持ちを抑えきれないまま、音の方へ向かった。

 

 

 石段を走り抜ける。

 辿り着いた先には庭園と日本家屋が佇んでいた。この村落の中では特に立派な建物に見える。整備されていたであろうが今や他と同様に荒れ果てていた。

 確かこの辺りのはず。

 

 「–––––誰かいるか…!?」

 

 声を張り上げて呼びかけるも…返事はない。

 期待していたが、気のせいだったのだろうか。

 

 …やっぱり、いない。

 

 気落ちして俯く。そう思った時に家屋の奥から気配を感じた。

 

 もしや、と顔を上げる。

 

 期待はまたも裏切られた。

 否、誰も居なかったのではない。

 

 

 

 –––––其処に居たのは()()()()()()()

 

 

 人型。

 しかし見る者誰もが人とは思えぬその姿。

 

 瞳が縦に割れた眼球が突出し、爪は鋭く伸び、身に付けているボロ絹から見える灰色の肌。

 不気味に嗤う口から刃物の様な歯が覗く。両手からは地面に伝う程の血がこびりついている。

 

 目の前に現れたのは異形だった。

 

 決して友好的ではない、此方を見る視線は明らかに〝獲物〟として捉えている。

 

 この状況に只一言。

 

 

 

 

 

 違う、お前じゃない(全ギレ)

 

 

 

 

 

 色々と心の中の臨界点を超えていた。

 

 

 




夢ってなんだっけ。
現状、夢だと勘違いしてコスプレして遭難して不法侵入して鬼に出会しているだけの主人公。

シリアスとギャグの配合の割合が解らん。
(色々と)鈍感系主人公


国語弱すぎて辞書で調べながら書いてたら遅くなってしまいました。
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