悪鬼も泣きだす すぺしゃるえでぃしょん   作:ぐーたら

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早速迷走中から投稿です。
 
クオリティは察してください。


運命の出会い

 

 宵の刻。

 鎹鴉(かすがいがらす)から知らせが届く。

  

 集落に〝鬼〟が出た。と

 

 闇夜に蔓延る非道羅刹。

 人の血肉を餌とし、悪逆に命を踏み躙る獣

 –––––それが鬼。

 聞けば、村民の中で既に犠牲になっている者が出ているという。知らせを耳に入れ、悲しみで滂沱の涙をそのままに己の得物を携える。

 

 〝鬼殺隊〟

 鬼が出ずるならば、それは我らの務め。

 

 南無阿弥陀仏––––。

 

 安寧を脅かす悪鬼は全て滅殺せねば…。

 鬼の居る集落へと急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 –––––だがこれはどういうことか。

 

 

 刻は幾つか過ぎ、闇夜が広がる。

 隊士を率いて急行した先で鬼を相手に闘う者が居た。

 常人では敵わぬ脅威。

 其れに相対しても一歩も引かぬ、()()()()()

 

 果敢に殴り掛かる姿に過去の己と重ねてしまった。何振り構わずに闘う(さま)、その胆力。

 死に急ぐかのような少年に私は涙が流れた。

 

 

 あの子を、助けねば。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ばけものが あらわれた!

 

 

 

 –––は?

 

 

「––––ダレだオマエは?ココらで食ったヤツらとは違うナァ」

 

 

 …は?

 

 

「ヒヒ。中のガキ共の前にオマエも餌になるカ?」

 

 

 は?

 

 

 奴の言葉なんて耳に入らない。

 (ようや)く、漸く人が居たと思ったのに…。

 

 四日振りに誰かと触れ合えた筈が、当の相手は人ではないナニか。

 奴は台詞と両手の血で察するに自分を『餌』的な意味で此方を見ている始末。

 

 全く嬉しくない。

 

 此方を頂くことしか考えていない相手を歓迎できるわけがない。

 

 どうにかしないと–––––

 

 

「–––––死ネ」

 

 

 –––––っ!?

 

 

 化け物を前に身構えていた所に化け物は飛び掛かってきた。

 

 かなり素早い動き。

 咄嗟にしゃがむ––––頭上で何かが空を切る音、そのまま化け物と入れ替わるように避ける。

 自分の位置が家屋の入り口の前に移る。

 

 かつてない異常事態。

 

 今の動きを見て察してしまう。

 あの身体能力と肉食獣を彷彿とさせる歯や爪、生身でどうにかなるような相手じゃない。そこらの散らばっている残骸を使って抵抗しようとしても護身にもならないだろう。

 

 自分は楽観的が過ぎたようだ。

 アイツは、マズい。

 

 距離を取る為に化け物から離れようとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 –––––後方。

 家屋の中から気配を感じた。

 

 

 思わず視線を向ける。

 

 

 入り口から覗く家屋の奥。

 

 そこには––––––()()()()()()

 

 

 …え?

 

 

 その光景に身体が硬直する。

 

 あの化け物とは違う存在。

 

 この世界で初めて見る〝人〟

 互いに抱き合い震えながら此方に向ける目には、恐怖と怯えが視て取れる。

 

 驚きも束の間。

 今の自分は化け物にとって狙うには充分な隙だった。

 

 ––––此方へ走る足音。

 

 

 っ!まずッ–––!

 

 

 反射的に後ろに跳び退く。

 

 –––––皮膚を貫く、鋭い熱。

 

 切磋に右手で押さえて目線をやる。

 左肩から胸にかけて皮膚を衣服ごと切り裂かれていた。血が服を濡らし、遅れて強い痛みが突き刺さる。

 

「…チッ。惜しかったナァ」

 

 化け物の右の爪から滴る血。それを口に含み、愉快といった貌で嗤う。

 

 後少し避けるのが遅ければ骨まで持っていかれただろう。

 

 息が詰まり、心臓が激しく拍動する。

 

 それは恐怖だった。

 

 

 

 

 –––––『死』

 人生の中で考えたこともなかった概念。

 今、無慈悲に自分に突きつけられている感覚だった。

 

 現実のような夢の中で死んでしまったら、どうなってしまうのだろうか。

 夢から覚める…? それとも––––。

 

 限りなく現実に近い、この世界で経験した感覚は自身の感情を煽るのに充分過ぎた。巫山戯ていられる余裕はなかった。

 

 危機を前にして思考が揺さぶられる。

 

 幻だとしても死にたくなんてない。恥も見聞も投げ捨てて此処から逃げ出したい。

 

 その思いが心を支配した––––。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 –––––が…い、助けて…っ

 

   

 

 恐怖で溺れていた心によく響いた。

 振り向く。

 

 

 その声。

 女の子––––その年嵩(としかさ)の方の子だった。

 

 

 自分と同じく恐怖に壊されそうになっても、絞り出した声は救いを求めていた。

 

 子供が必死に命を乞いている。

 

 名も知れない誰かに縋ることしかできない。

 

 訴えかける眼差し、溢れる涙––––。

 

 

 

 –––––それは目が覚める思いだった。

 

 この子達を見捨てたなら命は助かるかもしれない。だが、その選択をした自分は一生後悔するだろう。

 例え此れが幻のものであってもだ。

 

 あの化け物に振るう武器など無い。

 

 抗う技術も–––––無い。

 

 

 一つ、(ただ)一つ。

 可能性が有るとするならば––––イメージだ。

 

 この世界で今のいま迄自分の望み通りになることはなかった。

 

 そう、化け物を退(しりぞ)けるだけの力を…。

 心の中で、ある人物を思い浮かべる。

 

 

 架空の人物––––強さを何処までも追求した男。

 

 

 青のコートを翻す姿を幻視する。

 左手を強く握り、己自身に彼はこう言った–––––。

 

 

 

 

 

 

 

 

 I need more power(もっと力を)–––––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 頭の中で何かが切り替わる音がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鬼にとって些末な事の筈だった。

 

 日が沈む時を乗じて村を襲い、粗方人間共を食い尽くした。

 

 悲鳴、怒声の阿鼻叫喚。

 血飛沫を浴びて食欲のままに暴れるのは実に満たされる気持ちだった。

 

 そして最後に目に付いた家屋で、二人の女子(おなご)を庇う夫婦(めおと)を殺した。

 夫婦共々怯える二人を喰らおうとする。

 

 しかし其処で邪魔が入る。

 

 家屋の外には変わった格好をした男が居た。高い長身、白髪に黒の外套を羽織っている。

 ––––冷たく此方を威圧する視線。

 

 鬼はその目が気に入らなかった。己の餌になった者達と同じように爪を振るう。

 一度は避けられたが、余所見をしていた所を再び狙った。

 

 肉を引き裂いた感触に嗤わずにはいられない。

 

 恐怖に歪み、苦痛に喘ぐ姿を想像する。

 

 だが傷付いた男の視線は変わらない。

 それどころか鬼を襲う凄まじい–––––殺気。

 

 無意識に慄く程のもの、嗤っていた口から無意識に悲鳴が出る。

 

 殺気を向ける男に鬼の認識は変わる。

 『餌』から、鬼を脅かす『脅威』へと。

 

 喰らう為でなく脅威を排除する為に男へ襲いかかった。

 

 

 

 

 

 –––––瞬きの間に男の姿が目前に映る。

 

 

 鬼は間抜けた声を漏らした。

 鬼自身から移動したが故の光景ではない。

 

 男が一瞬で懐まで潜り込んでいる。

 

 鬼は動きの起こりすら見る事が出来なかった。

 

 接近した男は腰を捻って左の軸足を回す。

 遠心力が加わった右脚が鬼の胴体を捉えた–––。

 

 

 「––––Take this(砕け散れ)

 

 

 一蹴り毎に軸足を変えて高速で回転する。

 

 –––––キック13(サーティーン)

 

 全身を削られる衝撃が鬼を打ちのめした。

 

 

 




妄想の力ってスゲー

何嶼さんが主人公の格好を認識していたのは同行していた隊士の説明を受けて把握したという事にしてください。
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