招待状なしで来たのはびっくりしたけど、クラウドが招待状扱いされてて流石に草
グラブルの鬼滅コラボに熱中して遅れました。
少し飛ばしぎみの文です。
あれから色々なことがあった。
あの時に化け物と対峙した自分は、対抗する手段として〝彼〟を自身に投影する方法をとった。
要は自己暗示、他人になりきるようなもの。
何故そんな方法を思いついたのかは分からない。
なんの力も持ってなどいない自分にとって〝彼〟は強さの象徴だったのかもしれない。
せめて心だけは強く振る舞いたいと夢に願い、最強をイメージする。
架空のものに願うなんてバカげていると思う。
しかし自分に出来ることはそんなことしかない。
『自分は––––〝
そう頭の中で連呼する。
この祈りが届いたのか。
そのときふしぎなことが起こった。
素早く思えた奴の動きが異常に遅く映る–––否、奴だけではない。
落ちる葉も、流れる雲も、風も全て。
これなら或いは…。
接近する為に地を蹴りつける。
––––なんと一瞬で奴に近づくことが出来た。
驚異的な運動能力に驚きつつ、見様見真似の足技の連撃を繰り出す。
直撃する度に足から何かがへし折れる音と肉を潰す嫌な感触が伝わる。
最後に顔面を渾身の力で殴ると、奴は吹っ飛んで地面に叩き付けられた。
息を吐く。
––––のも間も無く、あの化け物は無理矢理立ち上がろうとしているのを目にする。
明らかに重傷なのにも関わらず、だ。
その光景に戦慄を覚えるが、これが化け物なのだと認めざるを得なかった。
また襲いかかられでもしたら、自分も––––そしてなによりあの子達が危険に晒されてしまう。
必死。
その一言だった。奴が起き上がる前に殴り付ける。奴の血が付いても、自分の拳の皮膚が裂けても…。
何度も何度も何度も何度も––––。
どれだけ経ったのかは覚えていない。
力が入らずに足が震えて後ろに下がる。
乱れた呼吸を整えていたその時。
自分の頭上から何かが飛来する。そのまま化け物を押し潰したのは巨大な
地に衝突した音が耳を
化け物は悲鳴をあげる暇も無く潰された。
潰した鉄の塊––––棘付きの
奴との決着はなんとも呆気ないものだった。
突然の出来事に呆然とする。
鉄球に繋がれた鎖の跡を追うとその先に人影、よく見るとその後ろにも複数の影が確認できる。
月明かりに照らされて顕になったのは体格が大きな〝人間〟の男性。
黒の詰襟と黄緑色の羽織。特徴的なのは手に持つ数珠、額の傷跡と瞳孔の無い白眼。
後ろの人達も同じような詰襟を身に纏っていた。
白眼の男性が此方に歩み寄り、二言。
『もう大丈夫だ。よく、堪えた』
––––その言葉に不思議と安心感を覚えて一気に力が抜ける。精神的にも体力的にも限界だった自分は、そこで意識が保てずに失った。
目が覚めると其処は
自分は布団に寝かされていた。起き上がると肩と胸の傷が痛んで顔が歪む。
目線をやると、その傷は包帯が巻かれて処置が施されている。上の服は脱がされ、枕元に畳まれて置かれていた。
誰かが治療してくれたのだろうか。
しばらくすると右の襖が開いて白衣を着た人が入ってきた。見た目からして医者だと分かる。
その人は軽い問診と聴診を済ませると『
…ひめじま?
誰だろうと思っていると、今度はあの白眼の男性が部屋へ訪ねて来た。
その男性から自己紹介をされる。
彼の名前は
医者の人が言っていたのはあの時自分を助けてくれた方だった。彼は自分の横に正座して身体の調子の程を聞いてくる。
それに対し、少し硬い口調で答えてしまった。
ニ、三度やり取りをした後に彼から質問された。
君はどうやって村まで来れたのか、親はいるのか、
…えっ?
質問に違和感を覚える。
親…? 自分の国…?
親がいるかなんて…なんだか子供に対する聞き方みたいだ。帰る国は自分、純日本人なんで貴方と一緒というか多分この国だと思うんですけど…。
そこで気付いた。
あ、そういや自分、妙ちきりんな格好してたわ。
この姿じゃあ、違う国の人と間違われてもしょうがないわ。
思い出したついでにふと
あの時確認できずにいたが、自分の顔はどうなっているのだろうかと。
悲鳴嶼さんの質問に答える前に訊いてみる。
ごめんなさい〜、悲鳴嶼さん。
答える前に大変申し訳ないんですけど鏡ぃとか貸して頂けないでしょうかー…?
唐突なお願いに彼は首を傾げるものの詮索せずに、
受け取り、自分の顔を覗く。
彫りが深く鼻がスッと伸びた端正な顔立ち。
青い瞳。少し目つきが鋭いせいで悪役顔っぽい印象を受ける。
感想。あら、イケメン
………。
––––え゛っ
びゃあ゛ぁ゛゛ぁ あにきぃ゛ぃぃ゛ぃ゛⁉︎
鬼と戦い、気絶した少年を介抱する。
治療を依頼する為に我々鬼殺隊に協力して下さる診療所へ運んだ。
あの惨劇––––。
駆け付けた時に集落で生き残っていたのは家屋に居た二人の女子だけだった。他の者は血痕のみで亡骸すら残らず、全てあの鬼に喰われたのだろう。
保護した二人も診察した後、親戚の元まで送られた。鬼という存在に父母を殺された事を彼女らの親戚には伏せた上で。
今はまだ鬼という異形に震えているが、時間が経てば両親を失った悲しみに暮れることだろう。
鬼の理不尽が起こす悲劇を目にしたのは、これで何度目か。
そして、あの少年。
私は少年の事をどう処理するべきか悩んでいた。
外見から察するに外の国から来たのだろう。集落の一員ではないことは二人の女子から聞いている。親も見かけない。年端もいかない子がどのように彼処まで来たのか疑問が残る。
〝お館様〟にご相談するべきか…。
決めかねていた時に例の少年が目覚めたとの報告を受け、彼から話を聞くことにした。
部屋を訪ねると布団から身体を起こしていた少年が此方を見つめている。
「目が覚めたか」
「––––あぁ、礼を言う」
「具合はどうだ?」
「問題は無い」
鬼に襲われ怪我まで負ったというのに冷静に答えている彼が異質に見えた。感情の起伏がほとんど見られない。
声色も冷たく、無機質であった。
彼の反応はともかく、聞きたいことがある。
少年に尋ねる。何故集落に居たのか、身寄りがあるのか、故郷に帰る手段があるのかを。
この少年が何処から来たかの事実確認と保護した責任として、元居た場所へ帰さねばならない。
しかし私の問いかけに彼は答えず、急に姿見はないかと訊いてきた。
何故?
突然の要求を疑問に思う。だが真剣な彼の視線を感じる。少年とって重要なことなのだろう。
『しばし待て』と伝え、診療所の方に手鏡を借りて彼に手渡した。手鏡を受け取ると彼は無言のまま時間が過ぎる。
確認は出来ないが、鏡で自分自身を見ているのだろう。
暫くした後に少年が口を開く。
「–––––何も、何も…分からない…」
溜め息と共に吐かれた言葉––––。
まるで諦観している
鬼にも臆さない少年が見せた弱音。
『何もわからない』
言葉から推し測るに–––––記憶が無いのだろう。
自身の故郷も家族も分からぬ中に未知の環境に放り込まれる。
その孤独は、酷にすぎる。
少年は続けて集落までの
海辺の浜で目覚めてから森の中で四日程も彷徨い、辿り着いた先があの集落だったという。
浜で目覚めた、か。少年の身に何が…?
彼が何故その場所に居たのか、記憶が無い以上は考えても憶測の域を出ない。
––––それ以上は話すのを止めさせる。
置かれている状況に彼は口には出さぬものの混乱している筈だ。今は整理する時間が必要だろう。
お館様にご助力を願うことも視野に入れる必要があるか…。
手鏡を見て思わず叫びかけたのを
心の中では大絶叫だ。
空いている側の手で顔を触りまくる。
……。
確かにそうだ––––
ついでに気づいたけど、海辺の時も最初なんか変わった物着てると思ってたらコレ兄貴の服装だわ。
身体に引っ張られているのかは謎だが、口調も兄貴特有の冷たいものになってしまう。頭に浮かんだ言葉を勝手に翻訳されて口に出している感覚だ。余り気分の良いものではない。
化け物にムーブかましてたらホントに兄貴になっていた件について。
状況が状況だけに驚きしかない。
頭が混乱してきた。後々整理する必要がある。
取り敢えず悲鳴嶼さんに此処までの事を説明した。夢については敢えて言わずに、知らない場所で目覚めたとだけ。
理由はある。
––––薄々感じていたことがある。
この世界は夢でもなければ自分の居た世界でもないのではないかと。
現実と違わない感覚の時点で勘づくべきだった。
前触れ無く姿が変わり、知らない地に放り込まれてたった一人。普通ならあり得ない現象に夢だと誤解していた。
しかし、あの化け物との遭遇。怪我をして気を失っても尚、夢から醒めなかった。疑念に変わるのも当然だった。
何故、自分の姿がバージルであるのか。
全てに確証はない。
あるのは何も、分からないことだけ。
伝え終わると悲鳴嶼さんは腕を組み、黙り込んでいる。真偽の程を確かめているように見えた。
やっぱり、怪しいと思われたか…。
これまで経験したことを話しても正直、
逆の立場であれば自分だって怪しいと思う。
混乱しているのを察していたかは分からないが、追求してくることはなかった。
『もういい。今日は休め』と言い残して彼は部屋を出て行く。
…へ?
思わず呆気に取られる。
何も言ってこないなら…いいのかな。
しかしその時は疑問より疲労が
次の日の朝。
「君には、私と共に来てもらいたい」
任意同行を求める言葉から始まった。
…もしかして身元不明扱いで警察にでも身柄を引き渡したりするのだろうか。
「何処へ連れて行くつもりだ」
「…我々が所属する組織–––––––」
––––––〝鬼殺隊〟を束ねる、お館様の御屋敷だ。
え、きさつたい?
なにソレ…?
自己暗示強化型主人公。