破界僧〜鬼滅の世紀〜   作:ヤン・デ・レェ

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だんだんと和らぐサイコ。
そろそろ綺麗?な童磨が完成します。

今回は童磨の闇を完全に殺す回です。


一緒 四

一緒 橡が笑う

 

 

 

 

 

その日から毎夜何処からともなく男は少年の寝室に現れる様になった。

 

毎夜風呂敷に土産と話の種とを包んで。

 

昼間は大人の身の上話を流し聞き、涙を流してやる。

 

夜には男の用意した菓子や果物、手製の小料理などを肴に男の話す不思議で滑稽な話に聴き入っては、声を潜めては涙が出るほど笑う。

 

男が"治療"を施してから身体は健康そのものだったが、連れ回した件で一日中少年の周りには信者の男数名が護衛と監視につくことになっていた。

 

だが、男は必ず少年の部屋に現れてはその日起こったことや少年が望む話を聴かせてくれるのだ。

 

少年は男の話す恋と愛の話がお気に入りだった。

 

驚き、寂しさ、怒り、残念、不満、面白い、楽しい……。

 

どれも男が少年の人生に現れてからは自然と湧いてきた感情だ。

 

男と共にいる間だけは、平坦で快不快の無い現実が綺麗さっぱり消え去って、代わりに鮮やかな別世界に連れて行って貰える様だった。

 

少年はしかし自身のうちに芽生えた感情のことを男に教えることは決してなかった。

 

男は優しく、温かく、そして唯一自分の内側にまで踏み込んできた存在だった。

 

男が少年に望むことは楽しいや悲しい美味しい、そんな普通を知り、人生を楽しんでくれることだった。

 

少年は男が少し鈍いことをその聡い頭で的確に推察し、また自身が内包する歪な感情と喜怒哀楽の本質が目の前の男にのみ適用される限定的幸福であると理解していた。

 

男の消失は少年にとって単に血の通った生涯を送るために必要不可欠な存在から、自身の理想的幸福そのものを体現する、謂わば信仰と恋愛の対象へと変貌しつつあった。

 

 

故に、少年は日々募る幸福と消失の不安の狭間にあって男の語る恋と愛の物語から独自の恋と愛の概形を形成しつつあった。

 

皮肉にも男の愛情は少年の明るい前途のみならず、望まずして少年に新たな扉を開かせることとなった。

 

ある意味では良い影響とも言えたが、少なくとも男からしたら重大な問題であった。

 

が、その生涯において幾度となく同様の経験があるこの男は予測感知能力にだけは恵まれなかったようである。

 

少年の心中を知ることもなく幾歳月が過ぎていった。

 

その間にも信者は順調に増えてったようだった。

 

少年は青年に成長していく。

 

 

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気づけば男は十数年もの間寝室に通っていた。

 

無垢な少年は今では秀麗な青年へと立派に成長した。

 

昼夜の生活内容はここ十年間何事もなく継続している。

 

変わったことといえば彼の父親が信者の女に手を出そうとしたところ、それが男の逆鱗に触れて一悶着あった位である。

 

少年が父親との交流を持ってみてはいかがか?という男の提案を意識して入信の少ない日に、心配した男同伴で両親の寝所を尋ねたところ全くもって運がないことに所謂"良いではないか〜"の真っ最中に直面したのである。

 

顔を淫らに歪めた醜い父親の姿と、涙を流しながら許してくれる様に懇願する信徒の女性の痴態が眼に飛び込む。

 

布こそ最低限に纏っていたものの痴態には違わない。

 

男の脳裏に古い記憶が蘇る。

 

遥か昔のある世界のある時代において基督教会の役立たず共が破門をチラつかせ酒色を貪らんとしていた記憶である。

 

状況の把握と記憶のフラッシュバックでプツンした男は100分の一秒単位で行動を始めた。

 

まず光の速度で男が少年の目と耳を塞いだかと思うと少年を外に遣り、倒れていた女性の涙を0.2秒間かけて丁寧に拭ってやる。

 

次の0.5秒で女性の肌蹴た身嗜みを整えた。

 

0.09秒で彼女を少年のいる廊下にやると静かに襖を閉め切り情操教育の敵に向き直った。

 

ぴっ!

 

そんな声を情操教育の敵こと少年の父親(仮)があげたかと思うと男は全力で両手の拳を合わせた。

 

皮膚が高圧でぶつかり合い甲高い破裂音を響かせた。

 

男は全身の力を自身の剛指に注ぐと身を屈めて伝説の剣士継国縁壱の抜刀速度の約20倍の速度で突貫。

 

あまりの速度に変態こと少年の父親は頭を守る体勢をとったが、これがこの変態の人としての…いや、雄としての最期となった。

 

超高速で変態の背後に回り込んだ男はその合わせた両手から屹立させた二本の人差し指という名の日輪刀を亜音速で変態の膏肓に突き込んだ。

 

 

 

 

 

ア"ッ"ーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!

 

ア"ア"ア"ア"ッお"お"お"お"ォォォォォォォおンンッッッ!!!!!!

 

約1秒間の間にソレを20数往復。

 

変態は死んだ。

 

最強のPTAを自負する男は一仕事終えたことを確認すると、時速換算で約20万キロ、雄穴…もとい汚穴から神速で指を引き抜くことで指に付着した凡ゆる俗世の不愉快を滅菌した。

 

斃れ伏す少年の父親だったソレは自身の下半身から煙を立ち上らせながら泡を吹いている。

 

当然の報いだとばかりに仁王立ちしていると目の前の少年を避難させた方とは反対の襖から少年の母親が登場した。

 

斃れ伏しSiriから尋常にあらざる煙をもうもうと燻らせる夫、堂々と何一つ恥じることなく泰然自若に大地を踏みしめる男。

 

大事件である。

 

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……結局のところ少年の父親は摩擦熱で生殖能力を失い、以前とは打って変わって女性的になった。

 

有り体に言うと丸くなった。浮気やお手つきをキッパリやめて布教と労働に愉しみを見出している。

 

母親の方はというとその場で気絶、男が去ったのちに目を覚まして夫の看病を始めたという。

 

記憶が幾つか飛んでしまったとのことで、謂わばショック療法が働いたことで嫌な記憶が消滅したという。

 

心を病んでいたものの、先述の記憶の喪失に加えて夫の目覚ましい改悛と性格の代わりように戸惑いつつも背を押される形で改善した様であった。

 

その後は夫婦ともども教祖の座を退いて仲良く隠居しており、これこそ万世極楽の境地だと信者の間でも好評とのことだった。

 

そして、これらの事情により青年がいよいよ教祖様とやらになりあそばされるらしい。

 

ある日の夜にそう本人から教えられた。

 

両親の跡を継ぐ形になるが、彼の表情に陰りはなかった。

 

男からしたら青年が人生に楽しみを見つけられるのなら教祖でも何でもよかった。

 

ただ、気がつけば随分と長居したものだと、そう感慨深げに呟いた。

 

「俺はそろそろ去る。坊も立派になったことだしな。」

 

いつでもそうだ。

 

出会いは別れを演出する為の積み上げに過ぎない。

 

終わりは必ずくるのだ。

 

青年は如何にも残念といった具合に顔を顰めると、立ち上がろうとする男に徐に近づくと、正面から抱きついて懇願した。

 

「いかないで。俺の側にいて欲しい…。」

 

男からすると其れは青年の激しい感情の振動を強く感じられて嬉しいばかりだったが、男は直感的に近々嵐が来ることを察知しており、長居することは自身にも青年にも得策だとは言えないことを経験上理解していた。

 

それから男は幾度となく優しく青年を諭したが、青年は尚も縋りついてはどうか共にいてほしいと懇願し、温かい涙さえも溢して別れまいとするのだ。

 

ならば、と男が提案したのは一つだけ何でも言う事を聴くというものだった。

 

涙に肩を震わせていた青年の動きがピタリと止まったかと思うと顔をぬるりと男の顔に向けた。

 

口元に三日月を浮かべた青年が求めたものは思いの外容易いものであった。

 

必ず会いに来ること、男のことを父と呼ばせて欲しいこと。

 

そして、一時離れていても良いから"ずっと一緒"にいてくれること。

 

そして、最後に男の"血"を少し貰いたいということ。

 

男は喜んで承諾した。

 

次の日、男は再び放浪の旅に発ち、青年は教祖として万世極楽教の信徒を順調に増やしていった。

 

彼はいつでも赤い液体の入った小さな瓶を大事に大事に懐に入れていたという。

 

 

 

 

 

 

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若道は一つの確立された美であると思います。
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