全体では童磨をも超える琴葉さん…俺の悲劇破壊欲とヤンデレ大好き欲が火を吹くZEっ!!
悪いな雑魚鬼…行冥さんと寺の子達には幸せになって貰うよ。
家族
手を繋ぎませんか?
そう言いたかったのかもしれません。
彼は何も言わずにそっぽを向きながら冷たくなった私の手を片方ずつ握ると、自分の手から手袋を外して私の手に被せてくれました。
折角貸してくれた手袋は指先まで冷えていました。
彼は手袋で手を包んだ上から私の手を擦ったり、握りしめたりした暖かくしてくれようとしたんでしょうけどそれが全然暖かくならなくって。
でも、私は心持ちがとても温くて指先が冷えるのなんて気にせずに軍帽から覗く彼の真剣な表情を見つめていました。
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家を出るまでの不安は駅の前に佇むあの方の姿を目にしてからはすっかり消えていました。
あの後のことはよく覚えてないんです。
私はスッカリ安心して、機関車の中で彼と肩を寄せ合って眠ってしまったようです。
私の膝には毛布がかけてありました。
隣にはあの方が座っていらして、私の寝顔を眺めておられたのか私が目を覚ますと繕うように外方を向かれました。
私は可愛らしい方だなとつい思ってしまいました。
何だか不思議ですね、数えられるくらいしかお話をしたことも無かったのにもうすっかり心奪われている心地でした。
伊之助のことは私が抱いていたつもりでしたけれど、隣に座るあの方の腕の中にすっかり収まってスヤスヤと眠っておりました。
はっとして、あの子は何処にと心配もしたのですが、私が眠っている間に彼がかわりに大事にしてくれたようで安心しました。
その後はお互い何を言うこともなく、ずっと汽車に揺られておりました。
彼は帽子を脱いでいて、昼間胸につけていた煌びやかな勲章も外されておりました。
後々考えてみると胸に抱いてる伊之助の顔に当たるので外されたのかもしれません。
ただ、彼はずっと伊之助の寝顔をじーっと見守っておられましたよ。
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「此の子は可愛いね。」
汽車に揺られて1時間も経つ頃に彼がそう言ったんです。
私はついつい。
「えぇ。伊之助は可愛いんです。あったかいんですよ。」
と衆目も憚らずに大きな声で自信満々に言ってしまいました。
彼は目を丸くする素振りもなく「そうか。なら此の子は幸せだね。」と言われたんです。
彼はその後顔を私の方に向けて言いました。
「琴葉さんはどんな所に住みたいですか。」
「好みの食べ物は何ですか。」
破茶滅茶な方だなぁ、失礼ながらそう思いましたよ。
だっていきなりかけ離れた話をポンと出されたんですから。
でも私は気難しい方でも、威張り散らすような方でもないんだ、私の見る目は間違いなかったと安心しました。
私は彼に微笑んで「お洒落なお家には憧れますね。」だとか、「天ぷらが好きですよ。」と答えました。
私が答えると彼はパァッと顔を明るくして「それは良いですね。僕も天ぷらは大好きですよ。」と言ったり、「向こうに着いたらお洒落なお家を買いましょう。」なんて言われるんです。
とっても楽しくて不思議な気持ちでした。
私も彼もお互いに何度か会ったきりなのにこうして肩を寄せています。
なのに、肩を自然と寄せ合うような仲になったのに私と彼は初めてお見合いした時のようにお互い顔を赤くしたりしながら話しました。
汽車の中が暑い気がしますね、なんて差し障りのないようなお話をしながら駅に着くまで喋り放しでした。
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「それからは行冥さんもご存知の通りですよ。」
「あぁ。あの時は夜遅くに家が出来るまで泊めて欲しいなんて言われるものですから本当に驚きましたよ。」
「いゃ〜すまん。あん時はどっちに行くか迷ったんだが、近場に在るのが君の寺だったもんでね。」
「あの時はお世話になりました。主人は思い切りが良いもので。」琴葉は俺の腕をとってそんなことを言う。
間違いじゃないから腹を立てる気なんてないけど…うーん。ぐうの音も出ないね。その通りだもの。
「いえいえ!とんでもない!有り難いばかりでしたよ。というより寧ろ申し訳ないくらいでした…もともと古い寺でしたから子供たちにも寒い思いをさせていた所を一緒に住むなら寺の子供達も家族だと仰って隙間風も通らないように建て直して頂いて…本当にありがとうございました!!」
「いい、いい!気にするな!俺は伊之助と琴葉がいたから壁を張り替えただけだって言っただろ?それに寺の増築だって、偶々誰かの財布に入ってた200円がお前さんの枕元に落ちてたからそれを拾ったお前さんが正しく使っただけだ!そうだろ?」
俺はな〜んにも知らん。たまたまヘソクリを丸々どっかに落としちまったくらいしか知らんぞー。
「し〜。あなた、子供たちが起きてしまいますよ?」
俺はつい琴葉に言われて口を手で押さえた。
声を張ってしまったようだ…いけねぇ。
「…すまん。酔いが回ったみたいだ…。」
酒は飲んでないけどな。
…琴葉と初めて逢った時の話から始まって、今の生活になるまで長いようであっという間だったな。
俺は晩酌(甘酒)のお供にと行冥から聞かれた琴葉との馴れ初め話を俺、琴葉で交互に話して聞かせた。
正直恥ずかしいので所々省きながら話したのだが行冥は泣いている。今日はやけに泣くな…。
「…運殿…やはり貴方は大した御方だ。」
鼻を啜った行冥がそんなことを言い出した。
「いきなり煽てられても何も出ないぞ?ほらっ、甘酒でも飲め飲め。」
「うぅ…忝い。…美味しい。」
「ふふふ…甘酒が出ているじゃありませんか。」
琴葉は俺の洒落を理解できる数少ない人間だ。
俺は酒を飲まない。煙草も吸わない。別に大した理由もないが、子供たちに酒臭いとか煙臭いと言われるのだけは我慢出来ないのだ。あとは節約だな。
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伊之助は運さんと一緒になってからすくすくと成長していきました。
今では風邪も中々ひかない健康な子に育ってくれているのは行冥さんの元でお世話になった時間が長かったからでしょう。
運さんはとにかく豪放磊落で、宿に泊まった晩も私があの子の為にお湯を頂いて来た時には彼が伊之助を抱きしめて眠りこけておりました。
肩を揺するとハッと目を覚まして伊之助の体を拭くのを手伝ってくれて、私が寝ようと横になると伊之助を自分と私の間に挟んで自然と眠っておりました。
次の日の朝に目が覚めた時はやはり彼が伊之助を抱きしめていて、伊之助もすやすやと眠っておりました。
私たちは駅に着いてからは運さんがとってくれた宿に一晩泊めてもらった翌朝から行冥さんのお寺がある山に登りました。
私はあまり山を登ったことも無かったのですが、朝からピチッと軍服に身を包んだ運さんはとても頼もしく見えて不安もそこまで大きくないままに山に入りました。
山の自然豊かな風景を伊之助は気に入ったようでした。
色んなところに手を伸ばしたり、目をキラキラさせていました。
それを見るたびに運さんは嬉しそうに落ち葉を拾ってきたりどんぐりを拾ってきたりして、私は朝のピシリとした格好良い彼の姿との差が可笑しくて笑って見ていました。
伊之助はどんぐりが特にお気に召したようで、気に入ってもらえた彼も喜んでニコニコしてらっしゃいました。
そろそろお寺だというところで運さんが休憩を入れてくれました。
彼が用意してくれた握飯とたくあんとを3人で食べました。
あぁ…伊之助はまだお乳でしたね。
ふふふ…彼は私が「伊之助にもご飯をあげようね〜」と言うと顔を真っ赤にして体を向こうに向けてました。
彼は耳まで赤くして体を向こうに向けておにぎりを食べつつ頻りに伊之助〜いっぱい食べて大っきくなれよ〜なんて上ずりながら声を掛けていました。
可愛い方だなぁ…なんてやはり想ってしまいました。
お昼を軽く済ませてからまた登り始めたのですが、途中で大きな猪に出会ったんです。
大きな猪はお母さんのようで、可愛らしいウリ坊を私たちから庇うように威嚇していました。
暫くして私たちが何もしないと分かると彼女たちは山に入って行きました。
伊之助もウリ坊みたいに可愛いねぇ〜なんて声をかけてみたり。伊之助はどこか誇らしげで可愛らしかったです。
そのあとはもう寺まで目前という所で大事件が起きてしまいました。
伊之助のおしめを変えなければならなかったんです。
寺で替えせてもらおうかとも思いましたが、直ぐそばに丁度良い切り株がありましたから、そこで替えようと思ったんです。
運さんは直ぐ近くの川に洗濯に行ってくれると言うので、私は替えのおしめを風呂敷から取り出していたんです。
中々おしめが見つからず、やっと見つかってさぁとり替えようと思って振り返るとそこに伊之助がいなかったんです。
私はあっ!と声をあげてしまって、急いで周りを探しました。
けれど全然見つからないのです。
川から洗濯を終えて戻ってきた運さんに此のことを話すと、私の何倍を驚かれて顔が真っ白になったかと思えば「伊之助ぇぇぇ!!!!」と絶叫されて、軍帽を振り落としたのも気にせず山に飛び込もうとする勢いでした。
どうにか諌めてどこを探しましょうか、とかお寺のお知り合いにご協力をお願いできないかとかを話し合いました。
しかし二人とも気が気じゃありませんから話すのもそこそこに暗くなってきたから一人は危ないと彼が言い二人で山に入りました。
三時間は過ぎたでしょうか。辺りは真っ暗で、一寸先の木の幹にも顔をぶつけてしまいそうでした。
それでも、偶々運さんが持参したランタンに助けられてなんとか探し続けていました。
今頃寒い思いをしているんじゃなかろうか。
何か獣に襲われてはいないか。
変な病気をもらってはいないか。
祟りや神隠しさえも脳裏をよぎりました。
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あれから更に一時間が過ぎました。
私は半泣きになって探していましたが、立っていられなくなってしまいました。
ランタンを持って運さんが私を負ぶって懸命に探してくれていますが、私の心胆は凍えるようでした。
もうダメなのかと思ったそのときです。
ガサガサガサガサッッ!!
⁉︎
「熊か⁉︎」
運さんがそう声をあげると帰ってきたのは「だぁーぶぅー」
という赤ん坊の声でした。
「伊之助ぇっ!」
そう運さんが大声をあげると彼は私を負ぶったまま茂みまでの数メートル跳躍しました。
ガサガサっ!
「あぁ…よかった!」
そこにいたのは確かに伊之助でした。
顔や体はどろんこだらけでしたが大きな傷もなく本当に安心しました。でも誰がここまで連れてきてくれたんでしょう?…「伊之助は一人でここまでたどり着いたの?」と私が尋ねると…フゴッ!!という応えが帰ってきました。
「「えぇ⁉︎」」「フゴッ!フゴフゴ!」
私と運さんは二人して素っ頓狂な声をあげて今回の犯人もとい解決してくれた張本人を見ました。
昼間に見た母猪がそこにはおりました。
伊之助は母猪や他のウリ坊達から擦り寄られて体が冷え切らずに済んだのでしょう。
伊之助は器用に母猪の背中を攀じ登ると誇らしげにフン!と鼻息を荒くして見せてくれました。
可愛い可愛いウリ坊だこと、とほっこりしてしまいます。
一塊の茶色いモコモコを前にして驚きと不思議で笑いが込み上げてきて二人で笑いが漏れました。
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猪の家族と別れた後、やっとの思いで元来た道を辿りそこから石段を登って目的のお寺に着きました。
夜遅くだったのですが、何度も来たことがあるという運さんは勝手知ったる我が家とばかりに裏口を見つけるとそこから入って囲炉裏を囲んでいた行冥さんに「ごめん。泊まらしてくれない?」と声を掛けました。
行冥さんは誰がきたのかを裏口から入ってくるという癖からわかっていたようで、快く迎えてくれました。
それから約五年間を行冥さんのお寺で過ごしました。
お家自体は初めの年に見つかったのですが、運さんが伊之助と遊べるからという理由で山に囲まれた行冥さんのお寺を痛く気に入ってしまい二年三年とお世話になることになったのです。
運さんは朝が弱いので仕事がある時は前日に街の方に買った新しい家で一人で生活し、自分が帰って来るまでは必ず部下の軍人さんを寺に常駐させておくといった感じでした。
運さんに呼ばれる軍人さんは決まって地方から来た人が多く、貧しさも山遊びもよく知っていて寺の子供達にも優しい人が多かったので安心でした。
必ず一週間の半分は寺で過ごすということもあって、運さんはあっという間に古かったお寺を快適に改装してしまいました。
大工さんを呼ぶこともありましたし、金具屋さんを呼ぶこともありましたし、とにかくお金に色目をつけませんでした。
行冥さんも流石に冷や冷やしていたそうですが、それに気づいたあの人は自分のヘソクリを私にも隠してこっそり行冥さんの枕元に"落として"きたんです。
私は知っていましたから。次の日に行冥さんがうちの人と言い合う姿に笑いを堪えるので必死でした。
行冥さんは「貰えない!!」あの人は「落ちてたから俺のじゃない!!」って昼になるまで言い合ってました。
結局最後は「俺はこれから伊之助と山でご飯を食べなきゃならないから、君は俺のお遣いを頼まれてくれ。」とうちの人が言い、行冥さんが「しかし!お話はまだ!」と言い出すのを待たずに…
「あぁ!そーいえばー行冥はー目が見えないんだったーこりゃー悪いことを言ったー!すまんなー!けれどーお遣いはしてほしーしなー!あっ!子供達と一緒に行けば良いじゃないかー!そーだ!そーだ!それがいい!ウム!…じゃあ俺はこれで。頼むぞ行ぅ冥!あっ、言い忘れがあったな。良い子にはお菓子を買ってやらんとな!!じゃっ!」
あの人はそういうと日向ぼっこしていた伊之助を抱いてさっさと山に行ってしまいました。
丸っきり嘘のつけない人ですから、演技したつもりでも酷い棒読みになっていて私の我慢も限界で噴き出してしまいました。
そのあとは想像に難くなく。
"お遣いに行く良い子にはお菓子を買ってやらんとなー!"という声がもう一度遠くに聞こえたかと思えば、ドタドタと寺の子供たちが集まってきて行冥に私がお遣いに行くのだと言い出しました。
行冥さんはどの子を特別扱いしたりすることのない公平な人ですから「わかった、わかった。…それじゃあ皆んなで行こうか。」と言って寺の子供たち皆んなを連れて街まで降りて行きました。
私はお夕飯の支度をしておきますよと言って、みんなの帰りを待ちました。
その日の夕食は賑やかでとても楽しかった。
なんだかんだと言っていた行冥さんも、日頃甘やかしてやれないからと子供たちの一人一人の欲しいものや食べたいものを強請られた端から買ってやると言った具合で、もういいと言われてもあの人に使い過ぎたと謝ったりしておりました。
あの人はいいって言ったら良いんだ!と怒鳴る割には楽しかったか?美味いもの食べてきたか〜?と寺の子達に食べ終わっても寝るまで話しかけていました。
話しかけられた子達もその子達でとても楽しそうにやれ飴を買ってもらった、羊羹を食べた、流行りの歌を覚えたと楽しそうに語っていました。
夜も遅いし寝ようと大人たちが言っても中々寝付けないのか、笑い声が聞こえたりしました。
伊之助は今日もお父さんと野原を駆け回って遊んで疲れ切ったのか一人熟睡でした。
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三年が経つ頃には寺のみんなが家族といった様子でみんな益々仲良くなっていました。
伊之助はこの頃になると山野を一人で駆けては例の母猪のとこに行って大きくなったウリ坊と遊んだりしていたようです。
何を猪のお母さんにお話しするの?と聞くと山のことを教えてもらったり、お父さんとお母さんの話をするんだと言っていました。
山のこと…はよくわかりませんでしたが兎にも角にも楽しそうに笑う伊之助が見れて母さんは幸せです。ほわほわしてしまいます。
お寺に来てから二年目のある日にいつもの様に縁側からあの人、伊之助、私で川の字で寝るように布団を敷いていると、明日は仕事がないので帰ってきたあの人が茶褐色の軍服のままに私の所まですごい勢いで来たんです。
あの人が何かを思い付いた時によくある事でしたから、私も落ち着いて「御夕飯の支度はしてありますから、今お布団を先に敷いてしまっても宜しいかしら。」と聞いたんです。
そしたらあの人が「夕飯は勿論食べる!だけどそっちじゃ無いんだ!布団だよ布団!…えぇい!ここの襖が邪魔だぁ!」
捲し立てるようにそう言うと、あの人は襖を外し始めたんです。
だから私は「何かお仕事で気に触るようなことがあったんですか?」と、そう聞きましたの。
するとあの人は首をぶんぶん振って「あったとしても俺がお前に当たるわけがないだろう。…すまんな、一旦落ち着こう。」と言って深呼吸を3回ほど繰り返しました。
3回目が終わる頃になって行冥さんがいらして、「おぉ。おかえりなさい。夕飯は天ぷらですよ。」と何時もの様に言うとあの人は「そうだなぁ。ご飯食べてからにしようかな。」といって着替え出したんです。
何も差し支えが無いんでしたら良いのですが、と思いつつ私は布団は後にして私も夕飯をいただくことにしました。
行冥さんのお寺での御夕飯は基本的に自分で食べる分を自分で盛る。お米を自由に粧って良いけど盛った分は残さない。
そういうルールをあの人がお寺でみんなと暮らし始めてから決めたんだそうです。
これは私もあの人も勿論適用される様で、あの人は一度も私に飯を粧えとか酒の酌をしろとかとは言いませんでした。
昔のことを思い出して、運さんのそんな所にじ〜んとくる時は決まって彼に惚れなおす時でしょうね。
あの日から自然と、気づけば何も支えることなく穏やかで幸せな日々が続いていることは本当に有難いことです。
こうして口に運ぶ一匙一匙のお米にも楽を見出せてしまうのは、全てあの時の御誘いに乗ったからなのでしょうね。
口を動かすことも忘れていると、子供たちはおかわりに殺到していました。食べ盛りの内にひもじい思いをするのは本当に辛いことですから。
自分で盛りなさい、その言葉の意味もどちらかというと好きなだけ食べて良いんだよという思いの表れなのでしょう。
伊之助も食べ盛り…なのに伊之助は行っていないようでした。
野山で猪と戯れるような元気な子です。お腹は一番減っていてもおかしくありませんのに。
伊之助はいかないの?そう聞こうとすると、隣で黙々と食べていたあの人が箸を置いて声を張りました。
「ん"っん!お前タァァチっ!!今日から皆んなで寝るぞぉぉぉぉ!!!」
行冥さんはキョトンとしていますが、すぐに気づいたのかまた涙を流し始めました。本当に涙脆い方です。この時は別格に酷くて数珠まで合わせ始めたのには驚きました。
その場は一先ずは食べ終わってからと言う空気になりました。
お風呂も上がり皆んなを集めて貰うとあの人が言葉足らずだったなと謝り詳しく説明してくれました。
彼曰く、端っこを俺、真ん中を行冥、囲炉裏の近くに私が布団を敷いて寝ろと言うのです。
子供たちは3人の大人の間に日にち毎にそれぞれ挟まれて眠るということにしよう、と彼は締めくくりました。
伊之助は目をキラキラさせながら彼に抱きつきました。
他の子供達もピンと来ていない様子でしたが、行冥さんも皆んなで寝ようと言うので彼の言う通りに布団を敷きました。
案の定彼の言っていた通りに襖を外しました。
また、このことで後々に改築することになるのですが横の幅が足りないと言うことで、皆んな横になって寝るために一人くらいずつ大人の布団に入って寝ることになりました。
おやすみなさい。そう言って私はわからないまま床に入りました。
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…次の日の朝になって、私はやっと彼の言いたかったことが分かりました。
次の日から伊之助はおかわりにも皆んなと一緒に行くし、山や猪とだけでなく寺の皆んなに混ざって遊ぶようになったのです。
……行冥さんのお話では、この寺の子達は孤児です。
…皆んな両親が居ない中で、一人だけ両親がいる。
…寝る時も皆んなは子供同士で、大人に囲まれずに寝ているが、自分は両親に見守られて寝ている。
私はこの寺のなかった全てが一つの家族のようだと感じていたけれども、寺の子供達にとって家族は行冥さんだけで、私たちは同居している違う家族でしかなかったのかも知れない。
彼は、あの人は私達と行冥さん達を本当の家族にしたかったんですね。…いままで、私は全く考えたこともありませんでした。
だから伊之助は気を遣っていたんだね。
伊之助は優しいね。
伊之助は繊細で優しい子なんだね。
「…お母さん、ちゃんと見てあげられてなかったんだね。」
「おかあさん?」
愛しい我が子の声に顔を上げました。
優しい夫と、優しい私の子が二人で私の顔を心配そうに覗き込みました。
どうやら口に出てしまっていたようです。
「伊之助。お母さんに抱っこしてもらおうな。」
肩車していた彼は頭を抱くようにしてしがみつく伊之助に語りかけました。
「う?うんっ。」
戸惑いながらも彼が肩から伊之助を下ろして私の胸に預けました。
「おかぁさん?いのしゅけ、あったかい?」
伊之助は喋れるようになりました。…もうこんなに大きくなったんだね。
「うん。っ伊之助はあったかいねぇ…うん、あったかいよ。」
私も行冥さんの泣き上戸がうつったみたい。涙が頬を伝って止まらないの。
「琴葉、伊之助のこと二人で一緒に沢山沢山見ていこうな。」
運さんは莞爾として笑うと私の腕の中の伊之助の頭を撫でつつそう言ってくれました。
えぇ!…ずっと、ずっと一緒に見守りましょうね…あなた。
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今回は、私が勝手に創始してる(誰にも勧めてない)病ンデレ哲学の理論で言うところの非表面発現型が真骨頂を発揮するための準備回という感じです。
曲運坊は全てを病ませるぞ!
例え前振りに二十話近く割こうとも(Fateで実践中)、至上の病ンデレのためならば俺はそれを厭わない!
だって底(其処)に愛があるから!