母性と思慕は全く別の感情だと思ってます。
拝欲・崇慕・蝕愛
ある時、何かを感じたあの人がお仕事を放って私を寺まで迎えに来てくれた。
私を街に連れて行って、慣れない様子でお店を見て回ったり、着物や櫛、簪を私が見ていると
「どれが好きですか?」なんてまた初めて会った時みたいな敬語で聞かれて、
「これが好きです。」って私も彼の真似をしてかたい答え方をしてみたり、彼は
「なら買いましょう。是非買いましょう。」と言って私が好きだって言うものを私を置いてけぼりにしてそそくさと御会計に持っていくんです。
それが三軒も続いて私は買って下さるのは嬉しいけれど、それ以上に申し訳ないと伝えるんですけれど、彼は頑固で「で、デートというやつですから!」って言ってましたっけ。
その日は寺でお世話になって1年経とうとする時に買ったといっていたお家に泊まりました。
元々は家族で住むつもりで買ったのに山が楽しいってだけで彼が仕事に行く時にしか使ってなかったんです。
だから私がそこで寝泊まりしたのは初めてのことでした。
いつもとは違って自分達の家のはずなのに他所の家に泊まるみたいで変な感じでした。
でも、寺も良いけれどあの人の匂いや生活感を一杯に感じられるその家が、初めてきたのにとても好きになったのを覚えています。
夕食は外で洋食尽くしでした。
慣れていないと胃がもたれてしまいそうな豪勢な食事でした。
運さんってば店員さんの前だとキリリと瀟洒な男前になるのに、私と二人だけになると途端にふにゃりと笑う優しげな雰囲気になるです。
彼はとても若々しいのに威厳があったり、見た目よりもうんと可愛らしくなったりするんです。けれど、そこも運さんの素敵な所なんです。
…夜は初めて二人きりでした。
灯りを消して、布団を二人で隣り合わせにして眠ります。
いつもは伊之助を二人で両脇から抱きしめて寝るので二人並ぶのも初めてでした。
私は眠ろう眠ろうとしても目が覚めてしまって眠れません。
きっと隣にいるこの人も一緒なんだ。そう思ってずっと胸に秘めていたことを言葉にしたんです。
「運さん。私はあなたと一緒になれて心の底から幸せです。けれど、だからこそ私はあなたに頂いてばかりなのが怖いです。」
外から聞こえる虫の声が嫌と言うほど大きく聞こえてきました。
鼓動は渾身を揺さ振るみたいに激しくて、私は胸を手で押さえました。
私は自分の布団をゆっくりと捲り、隣で向こうを向く彼の暗闇でもわかるほど赤く色づいた耳に口を寄せました。
一時一時を惜しむように口を耳元から離さないようにして、身体を布団に滑り込ませました。
手を彼の胸に這わせ、脚を彼の足に絡ませる。
一つの布団の中で二つの心臓の鼓動が、互いの赤み付いた肌を通してカラダの一番奥深くに響いた。
息遣いが五、十、十五と彼の鼓膜を震わせ、静かだった彼の息遣いが私の鼓膜を震わせる程に節操を無くした頃になってやっと、私は言葉を紡ぎました。
「あなたも私に何かを…いいえ…私を、求めてくれませんか?」
私は渇いてはりつく喉を如何にか震わせて彼の耳に想いを注ぎました。
彼は喉を鳴らすと私の方に振り向きました。
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ー
その夜に、やっと私はあの人のモノになれたんです。
伊之助も、やっとあの人の子になれたんです。
私は…私は本当に幸せ。
伊之助の本当のお父さんも最初からアナタだったんです。
そして私の最初で最後の心から愛する主人もアナタだけ…。
…あの夜、最後に交わした言葉は、彼の「もう貰ってる…。俺は…とっくの昔に貴女と伊之助をもう貰ってるんだ。」という言葉でした。
そうですよ…私と伊之助はアナタに貰って頂いたんです。
アナタは翌朝、狸寝入りする私の耳元で静かに「お慕いしています」と、そう言ってくれました…
私もっ、私もお慕い申し上げておりますよ…アナタ。
私はアナタのものですよ…私はアナタのありのままを受け入れます。可愛らしいところも、子供好きなところも…全てが慕わしい。
たとえアナタの芳しさに惹かれる存在が私の他に在ろうとも…私の心は糸を通す程に弛むこともありません。
私はアナタへの碧血丹心を誓います。
何故なら、あの日あの時から…アナタは常に正しいということを私は、私だけは知っております。
…ねぇ、アナタ?私がアナタのためにできることは何でしょうか?私はアナタに何か一つでも捧げられているのかしら…。
どうかな?R15を限界まで使い切った描写を心掛けました。
もし良い!って感じてくれたら嬉しいです。創作の励みになります。
R18じゃなく、清潔なのに芳醇な描写を磨いていけるよう頑張ります。
次回は明後日か明明後日になると思います。
Fateは明後日、進撃は今日中に上げます。