ボウズ ミーツ ボウズ
投獄を免れた後はとんとん拍子で無罪放免。
俺は馬を厩舎に戻してきてから行冥と都心の百貨店を目指していた。
しかし遅々として目的地まで進まない。
何故なら人混みと行冥のしつこいくらいの感涙に狭まれているからだ。
「何と御礼申し上げれば良いかっっっ!!!」
もはや泣き喚く勢いの行冥さん。
「いやぁ、気にするな。俺と君は友であろう。」
それにたじろぐ俺。もう泣かないで。
「しかしっ!!」
いや引き下がれよ!お願いします。気持ちは嬉しいけれど!
「ほらっ!もうその話はお終いだ!折角当日に帰れるんだから早く子供達に元気な顔を見せてやれ!」
お前は子供達のためにも早く帰らなきゃでしょが!といいたいところだが…
「あ、土産を買ってから帰るぞ。金は気にするな俺の奢りだ。今は金子など持っとらんだろう?」
十日も会ってないからな。俺も子供に美味しいものでも買っていきたい。
「…何から何まで本当にっ、なんとお礼申し上げればっっっ!!」
おのれ泣き上戸め…ゾーンに、というかツボに入ったらしい。
ここは都会の街中だぞ!涙ダバダバの大漢の手を引く軍の将官の組み合わせって…土産買いに来たようには見えねぇよ!
俺が泣かせたというか連行してるみたいじゃんよ。
「ほら!シルクのハンケチだ!」
泣き止まない行冥にポッケから取り出した布切れを渡す。
「ハンケチ?手拭いですか?…しかしそんな大切なものをお借りするわけには。」
これだから清貧坊主は…。
「ん!貸してやるっつったんだ。ケチケチ使わずチーンってしていいぞっ!」
「っ忝い!」チーンっ!
いや、するんかい!
遠慮するのかと思ったら普通にチーンっしちゃったよ。
まぁいいけど。
「そら!行くぞ!先ずは菓子でも買っていこう!」
「はい。…この御恩は永劫忘れません。」
「うむ。…まぁ今までの君の徳が報われたのだとでも思ってくれ。」
「…子供達に感謝せねば。ありがたや。ありがたや。」
「はぁ〜、まぁそれでいいか!」
気にせずに歩き進めることにした。
人混みて東京の街中は賑やかだ。
ふと振り返ると私に手を引かれた盲目の彼は綺麗な瞳で私に微笑んでいるようであった。
百貨店が見えてきたが、行冥はザ・僧侶といった格好だというのを忘れていた。
仕方ない。呉服屋にでも先に寄ろう。
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「こんな肌触りの良い着物までは流石にいただけない!どうかご勘弁を。」
「何をいうのかカモメさん!日露ん時の俺の前線兵装の方がまだ風通しが悪いぞ!さぁ!こいつも買う!これは今回の勲功者たる沙代ちゃんに買う!だが、そのためには海軍的ハンモックナンバーに則り君が良いものを着にゃぁならん。そういうことじゃないけどそういうことに私がしたのだ!」
「…貴方は何故そこまで…。ありがとう。」
「あのぅ…軍人さん、それはお買い上げに?」
「うむ。これを、あとこのセルロイドの櫛もお願いね。」
「はい!お買い上げありがとうございます!」
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会計 ・着物 (特大) 男性用 40円
・お仕立て手数料 5円
・セルロイドの櫛 3円
総計 48円
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チャリーンッ!
「私は!拙僧はこの恩をどうお返しすれば…!」
「気にするな!」
もはや笑顔である。
さて、行冥がピシリと反モダニズム的な縮緬の着物を着た所で百貨店へと参ろうか。
「百貨店ですか?どのような食べ物が流行なのでしょう。わたしには皆目見当がつきません。」
「じゃろうな。まぁまぁ、そうかたくならずに入ってみよう。」
肩がガチガチになっている行冥の手を引いて突入した。
俺も久しぶりである。
さてさて。何を買おうか、な。
「おおお、ガヤガヤと周りが音で溢れている。賑やかな所ですね。」
「そうだなぁ。まずはお土産を買おう。早く買わなきゃ店仕舞いされそうだからな。」
「はい。しかし…私は何をすれば。」
「あの子達の好みそうなものを教えてくれよ。何と言ってもあの子達へのお土産だからな!」
「あぁ、見えなくても安心しろ!口に突っ込んでやるから美味い甘いで決めてくれていいぞ!」
「私がいただかなくても貴方が召し上がれば良いのでは?」
「いや、だから…強情だな。まずは君に体験してほしいって言うことだよ!」
「成程…忝い!」
口に突っ込んでやる!とは言ったものの、何から食べさせようか。
「このままでは日が暮れるな。さぁ一つ目だ!」
先ずは都会の菓子をご馳走しよう。
「すみません。」
「はいっ⁉︎いらっしゃいませっ⁉︎(デケェ)」
「すみませんな。コレを一つ。」
「(デケェ)…っは!はい!ただいま!」
パタパタパタ!
呆然としていた給仕の女の子が厨房に駆け足で戻っていった。
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厨房
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「わーわーーわーー!でかーい!」
「お、おた、落ち着いてください!」
「いやいやいや!あれを見てみろ!軍人と力士だぞ!角界のスキャンダルとの接点なんか持ちたくないよ!」
「いやいやいや!それこそあり得ませんよ!きっと大丈夫ですって!それより、早く器に盛り付けないと溶けちゃいますよ!」
「あ、そうだった。むむむ、ならお前が配膳してこいよ!俺は関係したくないぞ!」
「はぁ〜。わかりましたよ。」
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「なんだか賑やかな厨房ですな。」
「そうだなぁ。」
夫婦でやってるんだろうか。
というか遅いな…まだかな?
「お待たせしました〜。どうぞ召し上がれ。」
「お、ありがとうございます!」
「ありがとうございます。」
「それ!行冥よ口を開けてくれ。」
「ではお願いします。」
「それ。」
「?…⁉︎な、なんだっ⁉︎コレは?」
驚いとる驚いとる。
「コレは雪なのですか?しかし、それではどうして甘いのか?…コレは!甘い雪なのですか⁉︎」
「ぶっふーっっ!アッハハハハ!!成程そうきたか!」
「違いましたか??」
「いやな、見えないゆえ仕方ないのだが、コレは動物の乳と砂糖とを冷たく冷やして固めたものでな、アイスクリンと言うんだ。」
「愛救輪…徳が高いお名前だ…。」
「そ、そうか?…まぁいい。で、どうだ?美味いか?」
「山は冬だと酷く冷えます。しかし、コレは心地よい冷たさですね。子供達は甘いものをとても喜びますので、これを是非あの子らにも食べさせてあげたい。」
「そうか。そうか。なら今度みんなで来て食べることにしようか。お土産となると溶けてしまうからな。届けてもらえることは出来なくもないが、折角店で食べられるんだ。来た時に食べるとしよう。」
「えぇ、そうすべきです。しかし本当に甘露ですね。舌が溶けるかと思いました。」
「ははは!さぁ、残りも食べたら次に行こう。ほれ、スプーン。」
「えぇ。ありがとうございます。」
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厨房
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「いやいやいやいや…バッチリ食べさせあいっこしてるじゃん!」
「いえいえ!一方的な食べさせあいっこを食べさせあいっことは言いません!何言ってるんですか⁉︎恥を知りなさい!」
「えぇぇ…食べさせあいっこでそこまで言われるのぉ?」
「当たり前です!私の推測によると、あの食べさせ方はきっとあの背の高い人を軍服の人が驚かせたかったんですよ!これは間違いなく友情の食べさせあいっこってやつですね!」
「いや。うん。よかったね。」(遠い目)
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今回は息抜き回です。
次で結構内容を盛った感じです。
まぁ、いつも通りぼちぼちストーリーと時間か進みます。
読んでくれたら嬉しいです。