それが私のヒーローアカデミア   作:ゆーえゆ

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5話目です。


#05 雄英高校

「実技試験の総合結果出ました!」

「いやー、今年の受験生は粒揃いだったねえ」

「総合1位、総合2位ともにヴィランポイントのみでこの得点とは」

「しかも二人、動き方としては対照的だったですよね」

「『爆破』の“個性”の子は試験中動き続けて、後半他の動きが鈍ってきても寄ってきた仮想ヴィランを倒し続けていた。タフネスの賜物だ。この子、昨年のヘドロ事件の時の子だろう?」

「2位の子は、こりゃあなんだい。『石化』かい?」

「どうやらそのようですね。それもかなり遠距離からでも発動できるようだ。そのおかげで最初は何が起きているのか試験官である我々もよく把握できなかったが」

「この子は『爆破』の子とは真逆で自分はほとんど動かずに高いところからヴィランを探索し続けていた。自分のやり方をきちんと考えて、周囲に流されずに試験に臨んでいるのは高評価じゃないか?」

「でもそのおかげで試験中はほとんど他の受験生と関わりがなく、レスキューポイントはつけられませんでしたよ」

「そこは不安要素だねえ。1位とは別の意味で、単独先行する人間はヒーローとしていかがなものか」

「その点はさほど問題にならんでしょう。ヒーローにも効率が求められる時代だ。コミュニケーションに問題がありそうなのであれば入学させてから見れば良いだけのことです」

「おやイレイザー、あんたが受験生個人を目にかけるとは珍しい」

「その2人に対しヴィランポイント0で総合8位のこの子は……」

「ああ! 大型ヴィランに対して立ち向かった生徒は過去にもいたが、ぶっ飛ばしてしまったのは長らく見てないねえ」

「しかし自身も反動で大ダメージ……まるで“個性”が発現したばかりの子供だ」

「粒揃いな分、今年は色々と大変なことも増えそうですね」

 

 

 

 

 入試が終わり、数日後。

 孤児院のリビングにて、私は光羽やオーナーたちと一緒に雄英から届いた合否通知の手紙を前に座っていた。

 

「心配いらないって。話を聞く限り、目立つ失敗はしなかったんでしょ?」

 

 光羽が言う通り、筆記の自己採点では合格ラインは超えていたし、実技もある程度やれた自覚はある。

 それでもなお、手紙を持つこの瞬間は緊張で手が震える。

 ある意味試験本番よりも、この手紙1枚を読むことの方が私にとっては恐ろしい。

 勇気を振り絞って封を切る。

 

『私が投影された!』

「「「!?」」」

 

 手紙の中から転げ落ちたホログラム投影装置から出た映像に映ったのは、No.1ヒーロー、平和の象徴ことオールマイトだった。テレビでよく見る威圧感のあるマッスルボディに、普段のヒーロー衣装ではなく今にもはち切れそうなスーツ姿をしている。

 

「え? どうしてオールマイトが雄英からの手紙に」

『HAHAHA! 実は今年から雄英に教師として赴任することになってね! こうして私が合否通知を届けるのはそういうわけだ!」

 

 実際には録画映像なので会話が成立したわけではないが、私たち側の反応は予測済みだったということか。というか、オールマイトが教師に?

 

『さて、月見少女! 君の入試の結果を伝えよう!』

「っ!」

 

 心臓が爆発したかと思うほど脈動しているのが自分でもわかった。

 

『結論から言うと、君は合格だ!』

 

『筆記試験は合格者の平均以上の得点。

 そして実技試験でのヴィラン討伐による獲得ポイントは75ポイント。これは受験生の中で第2位の高得点、非常に優秀な成績だ!』

 

 私は安堵のあまり机に突っ伏してしまう。

 

「やったじゃん瞳子! これで一緒に雄英に通えるね!」

「……う、うん」

 

 私の肩を光羽がパシパシと叩く。

 正直言ってまだ実感が湧かない。そんな私に対してオールマイトは衝撃の発言をする。

 

『おっと、もう一つ言っておかねばならないことがある!』

「え……?」

『実技試験ではヴィランポイントの他に、ヒーローとして人を守るために行動できるかという能力も見ていた! それを試験官の審議によって救助(レスキュー)ポイントとしてつけさせてもらい、試験中他の受験生を助ける姿があれば、それによって加点していたのさ!

 残念ながら、月見少女の救助ポイントは0ポイント! もっと頑張ろう!

 それでもヴィランポイントだけで上位の成績なのは素晴らしい実力と言えるが、雄英に入学して今回の試験で見せられなかったそれを学び、我々に知らしめてくれるとありがたい!』

「…………」

 

 上げて落とされる、とはこういうことを言うのだろう。

 私は絶望して、手紙を放り出して自室に戻ろうとする。

 

「わー待った待った!!? 瞳子どこ行くの!」

「……だって、私は試験中他の受験生には関わらないようにして、1人でヴィランを探していただけなんだよ? 救助することも評価の内だなんて、考えもしなかった……」

 

 救助ポイントが0点、それはヒーローとしての素質がないと言われたも同然のことだ。

 こんな私、ヒーローに相応しくない。

 持っていた“個性”がたまたま試験の内容に向いていただけ。他の頑張っていた人たちに申し訳ない。

 

「雄英は辞退して、滑り止めの高校に行く……」

「だー、何を言い出すかと思えばこの子は!! そんなの通るわけないじゃん!!!

 中学の先生だって、あの雄英に受かったのに急に辞退するなんて言い出したら泣いちゃうよ!」

「で、でも……」

「ネガネガしないの!!! 瞳子には目標があるんでしょう、あたしと一緒にヒーローになるって夢がさ! 夢を叶えたくないの? それともあたしと一緒の学校に通うのがいやなの?」

「それは……光羽と一緒のところがいいけど……」

「じゃあ決まり! 瞳子はあたしと一緒に通うこと。いいじゃん雄英に合格したんだから。オールマイトが言ってたみたいに、失敗はこれから学べばいいの!」 

 

 私は光羽に半ば強制的に座席に戻される。

 

『というわけで、我々雄英高校は君の入学を歓迎する。

 4月からの学校生活を楽しみにしているように。それではまた会おう!』

 

 オールマイトはそんな言葉を残し、映像は途切れた。

 

 

「……私、ほんとに雄英に行っていいのかな」

「いいって言ってるでしょ? 誰が文句言うのよ。いい加減にしないと怒るからねあたし」

「まあ試験では色々あったようだが、これでうちの子2人とも雄英高校に合格か。親としていずれ成長した2人の姿を見るのが楽しみだ」

「ええ、ええ。よく頑張ったわね瞳子ちゃん。私も誇らしいわ」

 

 周りのみんなはこう言ってくれるけれど、私は今後の学生生活が暗雲に包まれたように感じていた。結果の良し悪しではなく、自分が目標とするヒーロー像を自分で裏切ってしまったことに対する後悔。私は本当に良きヒーローになれるのだろうか。

 誰かを助けるヒーローとしては前途多難な始まり。

 私は手紙に同封されていた通知書を引っ張り出しながら、私はそう思うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 春。

 私と光羽は雄英高校の制服に着替え、孤児院の玄関にて待ち合わせていた。

 雄英高校、登校初日である。

 

「うん、似合ってるじゃん。かわいいよ瞳子」

「……光羽もね」

 

 私たちの晴れ姿を見ていたアヤメさんも笑顔になる。

 

「あらあら、素敵よ2人とも。今日から花の女子高生ね」

 

 でもちょっとヘアピンが曲がってるわ、と言ってアヤメさんは私の髪に手を伸ばす。くすぐったさに耐えながらなすがままになる私だったが、光羽がそろそろ行こうと言い出す。時計を見ると確かに登校しなければいけない時間が迫っていた。

 

「あら、それじゃ瞳子ちゃん、光羽ちゃん、しっかり頑張ってくるのよ? 学校で友達できたら帰ってきてから教えてね?」

「頑張ります。自信はないけど……」

 

 ヒーロー科に集まったエリートたち、私はその中に馴染めるだろうか。

 

「はいはい、それじゃいってくるねママ。瞳子行こう」

「いってきます」

「はい、いってらっしゃい」

 

 光羽に右手を引かれながら、残った左手で手を振る。

 

 

 

「うう、緊張する……」

「大丈夫だって多分。あたしはB組で瞳子はA組だっけ? クラスが違うのは残念だけど、まあ何とかなるよ」

「光羽はそうだろうけど……私ちゃんと喋れるかな?」

「最初の挨拶しっかりすれば問題ないって。A組にはあたしと同じ推薦で入った子もいるはずだけど、推薦入試の時に会った時の印象はいい子そうだったよ?」

「ならいいけど……」

 

 到着した雄英高校にて、私と光羽は指定されたクラスに向かいながら話す。

 雄英の校舎は凄まじく広く、それは“個性”の影響で体格が大きい学生も差し支えなく利用できるようにとの配慮によるものなのだろうけれど、ともすれば迷いそうになる。

 

「あ、あたしこっちだ。それじゃ瞳子、また放課後にね!」

「え? ああ、うん」

 

 交差する廊下で光羽と別れる。

 私もA組の教室に行かなければ。

 

 A組の教室の入り口に立つと、その威容に震えが走る。

 

「……大きい」

 

 私は女子の平均身長と比べて少し低いくらいなので、巨大なスライド式のドアが高い壁のようにも思えてしまう。

 よし、と自分に気合を入れてドアを開ける。

 教室に入ると、まだ生徒は半分ほど来ていないようだった。まばらに席に座っていた生徒たちがこちらに目を向ける。何名かは私の眼帯を見て驚いたような顔を見せる。

 私は縮こまりながら、おはようございます、と小声で挨拶した。

 

「む! 君は確か帰りの電車の時に話した眼帯女子……そうだ! 月見くんと言ったか! 君も合格していたのだな!」

「……ええと、飯田くんだったっけ」

 

 私がどこに座るべきかと教室を見回していると、横から聞き覚えのある堅物そうな声がかけられた。

 そちらを向くとやはりというべきか、入試の日に少し話した眼鏡の男の子、飯田くんがいた。

 私は気まずい空気の教室の中で僅かながらも知った顔を見つけ、多少気が楽になる。

 

「同じクラスになるとは奇遇だな! お互いに最高峰の学び舎に通うことになった身として、これからの学校生活を切磋琢磨して行こう! よろしく頼むぞ!」

「ああ、うん……よろしく」

「席は名簿順になっているぞ。月見くんはあそこだな!」

「あ、ありがとう」

 

 彼がビシっと指をさした席を見て、私は彼に礼を言う。

 私はその席に向かい、机にカバンを下ろす。しばらく手持ち無沙汰気味にしていると、私の斜め前の席に新しく来た生徒が座る。爆発したかのようなツンツンした髪の男の子だ。

 何となしに観察していると、その生徒はガバッと足を机の上に投げ出し、不遜な感じで頭の後ろで手を組んだ。うわ、不良だ……

 注意する気も起きず私がスルーを決め込もうとしたとき、どうやら委員長気質なのであろう飯田くんがやってきて、彼を見咎める。

 

「君、何をしているんだ! 机に足を乗せるんじゃない!」

「ああん? ンだてめえ端役が」

「はやっ!? ……俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ!」

「聡明ぃ? クソエリートじゃねえか。ぶっ殺し甲斐がありそうだな!」

「な、ぶっ殺し甲斐!? 君ひどいな! 本当にヒーロー志望なのか!?」

「ケッ」

 

 どうでもいいけど、私の近くでやらないで欲しい。

 私が見ていたことに気づいたのか、不良くんはこちらにガン垂れてくる。

 

「んん!? てめえ眼帯女何見てやがんだてめえからぶっ殺してやろうか!」

「おい君! 女子に対してなんたる言い草だ! 月見くん、大丈夫か!?」

「……確かに、ヒーローとは何かを考えさせられる言葉遣いだね……」

 

 私の返答にその子はああん!? と威嚇してくる。

 

 と、そこでまた新しい生徒が来たのか、ドアが開く音がして私たち3人は入り口の方を向く。そこに立っていたのは、見覚えのある癖毛の男子生徒だった。

 

「おや、君は……」

「!」

「……確か、入試の朝転びそうになってた子……?」

 

 飯田くんはずかずかとその生徒の元に歩いていってしまう。

 何となく残された私が不良くんの方を見ると、彼は癖毛の子をすごい目つきで睨んでいた。

 

「ねえ、あの癖毛の子、不良くんの知ってる人……?」

「ああ!? 誰が不良くんだコラ。なんで俺がクソデクのこと知ってなきゃなんねーんだクソが!!!」

「やっぱり知ってるんじゃない……。それと私あなたの名前知らないし」

 

 不良くんと話しながら入口の方を見ていると、さらに後ろの方から、これまた見覚えのあるショートボブの女の子が来るのが見えた。

 

「あー! そのモサモサ頭は、地味めの!」

「え? あ、入試の時の! 君が試験の後直談判してくれたおかげで僕は合格できたんだ!」

「えー!なんで知っとんの?」

 

 癖毛の子とショートボブの子、私が入試の日の朝に少し話した生徒たちも、奇遇ながらA組の生徒のようだった。2人、あの時以外にも試験中で何かあったらしい。

 ショートボブの子は試験で怪我をしたと聞いたが、無事合格できていたようだ。

 

「あれ? そこにおるんは試験の朝にあった眼帯の人! 同じクラスやったんや!」

「え、本当だ! あの時の!」

 

 教室入り口で話していた2人だが、ふと私を発見を発見して声を上げる。私は自分に集まる教室中の視線に萎縮しつつ、小さく2人に手を振った。

 

「……お友達ごっこがしたいなら他所へ行け。ここはヒーロー科だぞ」

「「!?」」

 

 私のことを見ていて気づかなかったのか、背後から聞こえてきた低い声に2人がビクッとする。

 私の位置からではよく見えないが誰かが廊下にいるようだ。

 

「……ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限。君たちは合理性を欠くね」

 

 そう言いながら教室に入ってきたのは、適当に伸ばした黒の長髪に無精髭を生やした、一見くたびれたように見える男性だった。教師にもプロヒーローにも見えない姿に教室にいた生徒たちがざわつく。

 

「担任の相澤消太だ。よろしくね」

 

 担任、という言葉に驚きを隠せない私たちだったが、相澤先生は意にも止めないように、

 

「早速だがジャージ(これ)着てグラウンドに出ろ」

 

 と告げた。

 

 

「ねえねえ、更衣室、一緒にいこ?」

 

 相澤先生が教室を去り、生徒たちも動き出そうとしている時、私は声をかけられた。

 あのショートボブの子だ。

 

「入試以来だね! 私、麗日お茶子っていうの。あなたは?」

「月見瞳子。麗日さん、これからよろしくね」

「うん! ……瞳子ちゃんって呼んでいい?」

「う、うん。大丈夫」

 

 私たちは会話しながらクラスの女子たちとともに更衣室に向かう。

 ジャージに着替えるために私が制服を脱ぐと、周囲から奇異の視線が集まった。

 

「……瞳子ちゃん? その身体……」

 

 私の体の数カ所には、幼少時に巻き込まれた事件の際に負った古い傷痕が残っている。……当然といえば当然ながら、最近は誰かに見せることもなかったので忘れていた。

 心配そうな目で私を見てくる麗日さんに対し、私はそっと片手で腹部の傷を隠す。

 

「……小さい頃大怪我することがあって、その時の傷なの。変なもの見せちゃったね。ごめん」

「え、あ、私の方こそごめんなさい! 不躾なこと聞いて」

 

 まあ一般的に年頃の少女の身体にあるには不釣り合いなものであるとは理解している。

 

「ひょっとしてというか、聞いていいのかも分からんけど、その眼帯も……?」

「これはちょっと別で……私の“個性”に関わることなんだけど」

「そうなん? なんかこういう言い方するのは変かもしれんけど、クールでかっこいいね!」

「ク、クール? そうかな……」

 

 怖がられることは多々あっても、かっこいいと言われることは滅多にない。

 私はなんだか恥ずかしくなり、無言で眼帯に触れる。

 ……せっかく高校に進学したんだし、もっとおしゃれなのに変えてくるべきだったかな?

 

「皆さん、そろそろ着替えを済ませてグラウンドに向かいましょう! 相澤先生、時間に厳しいお方のようですから」

 

 私たちが話していると、背の高いポニーテールの女子がそう声を上げる。綺麗で発育のいい子で、自分と比べ色々と本当に同じ高校生なのかと思ってしまう。

 言っていることは至極納得のいくものだったので、私たちは急いで着替えて、更衣室を飛び出した。

 

 

 グラウンドに集まった私たちは、相澤先生から行う内容を伝えられる。

 個性把握テスト。

 登校初日にして、私たちはそこで雄英の洗礼を受けることになるのだった。

 

 

 




5話目。合格通知〜登校初日まで。少し詰め込んだので体力テストは次回に回します。




何がとは言いませんが主人公は控えめ〜平均くらいのサイズです。耳郎ちゃんと仲良くなれそう。
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