それが私のヒーローアカデミア   作:ゆーえゆ

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6話目です。
ちょい長め。


#06 個性把握テスト

 

 

 

 

「「「個性把握テスト!?」」」

 

 体操服に着替えてグラウンドに集まった私たちを迎えたのは、相澤先生のそんな言葉だった。

 

「入学式は!? ガイダンスとか、やらないんですか!?」

「せめてクラス内の自己紹介とか……」

 

 登校初日、新入生用のガイダンスとか、入学式、始業式なんていう定番のイベントを想像していたけれど、いきなりテストとは。

 

「ヒーローを目指すのに、そんな悠長な行事をやっている時間はない」

 

 相澤先生は私たちを眺めてそんなことを言う。

 流石に国内随一のヒーロー養成校。一般的な型にはまらない。

 

「雄英は自由な校風が売り文句。そしてそれは先生方もまた然り」

 

 相澤先生の言葉は揺るがない。それはつまりカリキュラムや通常の学校行事なんかも担任の先生方の匙加減ひとつで変わるということであり、あまりの自由さに私はぽかんとする。

 他のクラスメイトを見回しても、困惑している者が多いようだった。

 相澤先生は私たちの反応を気にも止めないようにテストの内容の説明を始める。

 

「お前たちも中学の頃にやっただろ? ソフトボール投げ、立ち幅跳び、50m走、持久走、握力、反復横跳び、上体起こし、長座体前屈。“個性”禁止の体力テスト。

 国は未だに画一的な記録を取って平均を作り続けている。合理的じゃない」

 

 まぁ文部科学省の怠慢だな、と愚痴るように言う相澤先生。

 “個性”が人々の日常になってからは、そんな平均は意味がない、ということだろうか。

 

「実技入試の成績トップは爆豪だったな」

 

 声をかけられたのはなんとあの不良くんだった。爆豪という名前らしい。彼が入試1位だったのか。

 

「中学の時のボール投げの記録、いくつだった?」

「……67m」

「じゃ、個性使ってやってみろ」

 

 ソフトボール投げのフィールドに入った爆豪くんは、軽く準備運動した後、思い切りボールを振りかぶる。

 

「んじゃまあ……

  ————死ねえ!!!」

 

 投げた瞬間彼の手のひらが爆発し、ボールは爆風に乗ってはるか上空に打ち上げられた。

 

「……『死ね?』」

 

 癖毛の子がボソッと呟く。

 体力テストに使われるとは思えない掛け声に私たちはドン引きしていた。

 

「まずは自分の『最大限』を知る。……それがヒーローの素地を形成する合理的手段」

 

 相澤先生が計測器の結果を見せてくれる。そこには705mというとんでもない数字が記録されていた。

 私たちはどよめく。

 そもそも“個性”なしの時点で67mというのも相当な身体能力を表していると思うけれど、それに強力な“個性”が掛け合わされて飛距離が文字通り爆増している。

 それを素直にすごいと思う一方で、私は自分の中学時代の記録を思い出す。確か25mくらいだったか。女子の中ではいい記録だったと思うけれど……

 私の“個性”は身体能力を伸ばすものではないので、このように人間離れした記録を出されるととてもではないが追いつけない。

 

「なにこれスッゲー面白そう!!!」

「705mってやべえな……」

「“個性”を思い切り使えるのか! さすがヒーロー科!」

 

 周囲のざわつく声を聞きながら、自分の“個性”を思い出して憂鬱になっていると、相澤先生はさらに恐ろしいことを言い出した。

 

「……『面白そう』か。ヒーローになるための3年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?

 じゃ、テストのトータル最下位は見込みなしと判断して除籍処分としよう」

 

「「「!?!?」」」

 

 除籍処分!?

 冷や汗が背中を伝う。

 “個性”ありの体力テストというのは、私にとって著しく不利なものだ。

 

「除籍処分って……! 入学初日ですよ!? ていうか初日じゃなくっても理不尽すぎる!」

 

 麗日さんがそんな反論をする。

 私もそれに同調し、思わず声を上げてしまった。

 

「そ、そうです! どんな形であれ入試を通った生徒たちが、それぞれの“個性”によって種目ごとに有利不利のつきやすい形式のテストで除籍になるのは納得がいきません!」

 

 しかし相澤先生はまるで私たちを煽るかのように、

 

「……自然災害、大事故、そして身勝手な(ヴィラン)たち。いつどこから訪れるか分からない厄災たち。日本は理不尽で溢れてる。

 そういうピンチを覆していくのが『ヒーロー』だ。

 生徒の如何は先生(おれたち)の自由。3年間雄英は君たちに全力で苦難を与え続ける。

 ————これが雄英高校だ。

 ……月見、お前は入試で2位だったな? ヒーローの活動は状況によって有利不利がつくことなんてあって当然だ。お前にとっての有利な形式が入試で、今回はそうでなかったとしても、文句は誰も受けてはくれないぞ」

「……っ!」

 

「それじゃデモンストレーションはここまで。本番始めろ」

 

 ど、どうしよう。

 

 

 

 最初は除籍というワードに驚いていた生徒たちだったが、いざテストが始まるとみんなそれぞれ自分の“個性”を使ってそれぞれの種目に取り組み始めた。

 そうなるといくら私がこのテストに不向きと言ってもやらないわけにはいかない。

 幸い、運動自体は別に苦手というほどではない。50m走や持久走といった走る競技はむしろ得意な方だ。

 私は周囲を見回す。

 手から爆発、足にターボエンジン、複数に増えた腕、背中に生えている尻尾。

 

「……私、やっぱり埋もれてる」

 

 “個性”が使えない状態では、私の記録は一般の女子よりちょっと上くらいでしかない。

 

「次! 月見と常闇! 50m走」

 

 私の名前が呼ばれる。一緒に走るのが誰かと思って見ると、カラスのような頭をした私と同じくらいの身長の少年だった。

 

「ええと、常闇くん、っていうの? よろしく」

「その眼帯、貴様もこちら側の人間か……?」

「……?」

 

 何を言っているのかよく分からない。

 

「じゃあ位置について……スタート」

 

 思い切り走る。

 結果は7秒01。女子にしては相当いい記録が出たのではないかと思うが、今までのクラスメイトたちの記録に比べればかなり遅い方だ。

 隣を見ると、常闇くんは私より数瞬早くゴールラインを駆け抜けている。やっぱり男の子と素の身体能力比べじゃ敵わない。

 

「常闇くん、足速いね……」

「む、そういう月見こそ、女子にしてはかなり速い。なかなかやるな。

 ……その力、やはり貴様は闇の眷属……」

「や、闇の眷属……?」

 

 やっぱり何を言っているのかよく分からないけれど、どうやら褒めてくれたようだ。見た目はちょっと冷たい感じはするがいい人らしい。

 

 

 

 

 その後も体力テストは続く。

 

「おお、すげえ記録∞が出たあ!」

「自分で万力を作って握力測定!? アリかよ!」

「大砲でボールをぶっ飛ばしたあ!?」

 

 皆がいずれかの種目で突出した記録を出す一方で、私は大したことがない記録しか出せていない。

 

「…………もう無理かも」

 

 ここから逆転の手が思い浮かばない。

 私は半ば絶望しながらボールを投げた。集中力に欠く投擲の記録は24m。中学の頃より落ちてる……

 

「次、緑谷!」

 

 呼ばれたのは例の癖毛の男子生徒。

 ……そういえば、彼も今のところ目立った記録を出していないような気がする。私と同じくテストに活かしにくい“個性”なのだろうか。

 その緑谷くんが待機サークルに入る。

 

「しかしまずいぞ緑谷くんは。このままでは最下位に……」

「ったりめーだ。 "無個性”のザコだぞ」

「“無個性” ? 何を言っているんだ君は!? 彼が入試時に何をなしたか知らんのか!?」

「はあ?」

 

 飯田くんと爆豪くんの会話が耳に入る。

 緑谷くんが“無個性”なのかとか、彼が入試で何をしたとかは知らないけれど、彼と記録がそう変わらない私もまた流れ弾を受けて心が沈む。

 私もこのままじゃ最下位になってしまうかもしれない。

 そうなると除籍だ。

 

「……せっかく合格したのに、やっぱり私はヒーローに向いてなかったのかな……」

「ひ、瞳子ちゃん。大丈夫?」

 

 麗日さんが心配そうに私に声をかけてくれる。私はその優しさにほろっときたが、先ほど彼女がボール投げで∞を出していたのを思い出して再び心にダメージを受けた。

 と、そこで緑谷くんが、気合を入れた掛け声とともにボールを投擲する。

 

「……46m」

「っ!? 今確かに使おうって!?」

 

 見ると、相澤先生が緑谷くんの方を睨んでいる。

 先生は首の周りに巻いていた包帯をスルスルと伸ばし、緑谷くんを拘束した。

 

「っそうか、見ただけで人の“個性”を抹消する“個性”……聞いたことがある!

 抹消ヒーロー『イレイザーヘッド』!!」

 

 緑谷くんの言葉に、クラス中の注目が相澤先生に集まる。

 だがあいにくと、彼について詳しく知っている者はいなかった。カエルっぽい女の子によれば、アングラ系のヒーローとのこと。あまりメディアに出てこない人のようだ。

 私は相澤先生の“個性”に少し驚く。「見る」という発動条件は私と同じだ。見たものが“個性”を消されるか、石化するかの違い。

 

 その後の話を聞くに、どうやら緑谷くんの“個性”はなんらかのリスクがある増強系の“個性”のようで、制御できていないことを危険視した相澤先生がストップをかけたらしい。

 

「……同じ蛮勇でも、お前はひとりを助けてデクの棒になるだけ。お前の力じゃヒーローになれないよ」

 

 かなり厳しいことを言われているようだ。

 

「お前の“個性”は戻した。ボール投げは2回だ。さっさと済ましな」

 

 そんな言葉とともに緑谷くんは再び円の中に戻される。

 彼はブツブツと何やら呟きながらもう1度ボールを構える。その頼りなげな姿を見て、一瞬私は自分の立場を忘れる。

 彼は一体どうするつもりだろう。

 

「(……これまで通りじゃ、僕はヒーローになれない、僕は誰よりも頑張らなきゃいけないんだ! だから今は全力で、僕にできることを……!)SMAAAASH!!!」

「「「うおおお!」」」

 

 緑谷くんが全力で投擲したボールは、あの爆豪くんが投げた姿を彷彿とさせる勢いで高々と舞い上がる。

 

「……705m」

 

 その記録は初回に爆豪くんが投げた時とほぼ変わらない長大な数字だった。

 投げ終わった緑谷くんは投げた手の人差し指を押さえている。その指はボロボロになっていた。

 

「やっとヒーローらしい記録が出たよ!」

「指が腫れているぞ? 入試の件といい、おかしな個性だ……」

「デクてめえ!! どういうことだオイ!!」

 

 周囲が様々な反応を見せる中で、私は彼がやったことを分析する。

 

「(もしかして、調整が効かないほど大きなパワーを、腕を壊さないために一本の指に集中させたの……?)

 ——すごい」

 

 失敗の許されない土壇場で、“次”に備えるためにとった決死の策だろう。最小のダメージで、最大の効果を上げるために。

 彼の“個性”は体を壊すほどの超パワーで、おそらく出力の制御ができていないのだろう。

 人にとって幼い頃から共にあるはずの“個性”がコントロールできていないというのは少し変だが、まあ私も似たようなものだ。

 コントロールできない中で、相澤先生に注意されたことをなんとかやりこなした。

 私は彼の努力と集中力の凄さを理解する。

 私と同じく体力テストで結果を残せていない中で、彼も確実に焦っていたはずなのだ。

 自身の問題と向き合い、諦めず成果を上げようとする意思。

 

「……私も、このままじゃだめだ」

 

 たとえ最下位になって除籍処分を受ける結果は変わらないとしても、自分にやれることをやらずに終わるのだけはだめだ。

 

「次! 月見、常闇、轟、葉隠の4人、持久走だ」

 

 スタートラインに並ぶと、相澤先生が私に言う。

 

「……月見、お前の“個性”がどんなものなのかは入試で見た。こういった試験じゃ機能しにくいことも知っている。だがそれで自棄になるのは許さん」

「……大丈夫です。わかってます」

「! ほう」

 

 もう投げ出したりはしない。緑谷くんの姿を見て、私も最後まで全力でやる覚悟を決めた。

 私はレーンに向き合う。

 これが最後でもいいから、全力で走ろう。

 終わってから後悔しないように。

 

 

 

 

 

 体力テスト終了後、相澤先生が順位を公開する。

 

「……葉隠……峰田……緑谷……月見」

 

 表を見て、その欄を最後まで見てようやく自分の名前を見つける。

 案の定、私は最下位だった。

 

「瞳子ちゃん……」

「月見くん……」

 

 私のことを、みんなが不安そうな目で見ている。

 たった1日ではあったけれど、こうして雄英に通えて、分不相応な夢を見れた気がする。

 光羽には後で謝らなきゃ……

 

「相澤先生、それにA組のみんな。短い時間ですがお世話に……」

「ちなみに除籍は嘘な。君らの“個性”を引き出すための合理的虚偽」

 

 ……はい?

 

「「「はああああ?!?」」」

 

 私はヘナヘナとグラウンドに座り込む。

 

「当たり前ですわ。そんなこと、少し考えればわかるでしょう?」

 

 今回の体力テストで1位になった八百万さんが言う。確かに嘘である可能性もあったけれど……

 私は相澤先生を見る。

 ……最下位が除籍になる、というのは結果的に嘘であったけれど、見込みがないと判断されていれば本当に除籍になっていたのではないかと思う。そんな気がする。

 

「良かったね瞳子ちゃん! これからも一緒に勉強できるよ!」

「うむ! たった1日で学校を辞めなければならない羽目にならず良かった! 相澤先生も人が悪いな!」

 

 麗日さんと飯田くんが声をかけてくる。

 

「2人ともありがとう」

 

 立ち上がると、近くに立っていた緑谷くんと目が合う。

 

「えっと、あの」

「緑谷デクくん……だったっけ?」

「ええ!? ああいや、違うよ月見さん! デクっていうのはかっちゃんがバカにしてつけたあだ名で、本名は出久って言うんだ」

「なんと、蔑称だったのか!」

「私もデクっていうのが本名だと思っとった……なんかゴメン!」

 

 確かにデクって名前だったら酷い、と思っていると麗日さんが

 

「でも、緑谷くんの『デク』ってなんか、頑張れって感じで、なんか好きだ私!」

「デクです!」

「緑谷くん!? 浅いぞ! 蔑称なんだろう!?」

 

 麗日さんの素敵な笑顔。

 そうだ、彼に言わなければいけないことがある。

 私は緑谷くんに頭を下げた。

 

「緑谷くん。ありがとう。

 君がボール投げで見せた姿がなければ、私は最後まで頑張れなかった」

「!?!? ええ!? いやそんな僕は別に何も……!」

 

 緑谷くんがあたふたしているが、私はそのまま言葉を続ける。

 

「……私の“個性”ってこういうテストになんの役も立たないもので、テスト受けながら半分諦めかけてたんだけど、緑谷くんが諦めずに結果を出してるのを見て、私も最後まで全力でやらないとって思えたんだよ」

 

 最下位にはなってしまったけれど、除籍されずに済んだのは相澤先生がそれをわかってくれたのだと思う。

 

「だからお礼を言っておかなきゃと思って」

「なるほど、素晴らしい心掛けだな! 月見くん!」

「せやったんか……確かにボール投げ、すごかったもんねえ」

 

 いや、それは記録∞の麗日さんも十分すごいと思うが。

 

「というか、緑谷くん指は大丈夫なのか!? ボロボロじゃないか!」

「え? あ、思い出したら痛みがががが」

「緑谷くん!?」

「ご、ごめんなさい変に時間取らせて、早く治療しに行かないと!」

「緑谷は保健室のリカバリーガール(ばあさん)のところに行って直してもらえ。明日からはもっと過酷な試練の目白押しだ。覚悟しとけ」

 

 相澤先生が緑谷くんに言う。

 雄英の養護教諭であるリカバリーガール。なんとなく緑谷くんは今後もずっとお世話になりそうだなあと思いながら、私は自分の体操服についた土埃をパタパタとはたき落とす。

 

 

 

 波乱の個性把握テストが終わり、初日の放課後。

 私が帰るために校舎を出たところで光羽を待っていると、緑谷くんと飯田くんが出てくる。2人は友達なのかな?

 

「あ、月見さん! 今帰るところ?」

「え? ああ、ちょっと人を待ってて。緑谷くん指大丈夫だった?」

「うん、リカバリーガールのところで治してもらったから大丈夫だよ」

 

 彼の指には痛々しい包帯が巻かれている。

 

「なんかすごい“個性”だったけど、自分もダメージ受けるのは大変だね」

「う、うんコントロールができてなくてすぐ体を壊しちゃうんだ……早く制御できるようにならないと」

「ふむ、そういえば体力テスト中は見れなかったが、月見くんの“個性”はどのようなものなんだ?

 差し支えなければ教えてくれないか?」

 

 まあ、気になってるか。

 私は眼帯の位置を直す。

 

「あ、確か相澤先生が入試の成績2位って言ってたよね! あの入試内容でかっちゃんに次ぐくらいの成績ってことはすごい“個性”じゃない?」

「……まあいずれ知るだろうしいいか。私の“個性”はね……」

 

 私が言葉にしようとした時、校舎からショートボブの女子学生が顔を出す。

 

「あ、瞳子ちゃんに、飯田くんに、デクくんや!」

「う、麗日さん!?」

「3人ともこれから帰るところ? 電車、おんなじ方向なん一緒に帰ろ?」

 

 緑谷くんのことはすっかりデクくんで定着したようだ。

 

「あ、ちょっと待って私打ち合わせしてる人がいて、もうすぐ来るはずなんだけど……」

 

 言いつつ校舎の方を見ると、まるで呼び声に応えたかのように見慣れた茶髪の女子が出てくる。

 

「光羽」

「ゴメンお待たせ! ヴラド先生の話が長くってさ!」

 

 光羽が私の元に駆け寄ってくる。

 当然、一緒にいた緑谷くんたちと顔を合わせることになる。

 

「ん? 瞳子この人たちは? A組のお友達?」

「え、ああうん。麗日さんと、緑谷くんと、飯田くんっていうの。

 えっとみんな、この子は薬師光羽っていって」

「ハローA組のみなさん! あたしはB組の薬師光羽。気軽に光羽(みう)って呼んでくれていいぜ」

「ええ!? 瞳子ちゃんもうB組の知り合いがおるの?」

「知り合いっていうか……」

 

 光羽のことはなんと紹介したものだろうか、と思っていると、

 

「あたしと瞳子は同じ孤児院で育った幼馴染だよ」

「ちょっ!? 光羽!?」

 

 サクッと事情を喋ってしまう光羽。なんというか、私はあまり家のことを学校の人たちに話すつもりはなかったのだが、登校初日にして一気に3人も……

 案の定というか、孤児院という反応に困るワードに対して3人とも固まってしまった。

 

「ご、ごめんなさい! 驚くよねいきなり孤児だなんだとかって……」

「瞳子はあんまりあたしたちの家のこと人に話したがらないもんね」

「わかってるのに言わないでよ……」

 

 私は気まずい空気になってしまった中、3人に向き直る。

 最初に硬直から解けたのは飯田くんだった。

 

「そう、そうなのか。いや、こちらとしては気にしてはいないのだが……」

「う、うん。瞳子ちゃんが黙っといて欲しいなら、おうちのことみんなに言いふらすとかは絶対せんから安心して……」

「いや、別に知られてもそんな問題があるわけじゃないんだけど……言うと大抵の人に気を遣わせちゃうから言わないだけで」

「あたしも瞳子も、実の親がいないことは今ではそんなに気にしてないからさ、だから御三方もあんまり気にせずあたしたちと友達付き合いしてほしいかな」

「え、ええ? それならいいけど……」

 

 困惑する3人。それはそうだ。私が彼らの立場でも今日知り合ったばかりのクラスメイトの複雑な家庭事情なんかあまり聞きたいものではない。

 

「ま、なにはともあれ、あたしと瞳子の関係はそんなとこ。雄英には2人で合格できたんだけど、クラスが違っちゃってさ」

「な、なるほど……? ええと、薬師さんは」

「光羽でいーよ、緑谷クン」

「み、光羽さんと月見さんは、2人とも同じところの出身で雄英に合格したんだ……すごいね!」

「……私と違って光羽は推薦入学だけどね……」

「なんだと!? 薬師くんは推薦組なのか! 一般入試よりも狭き門じゃないか!」

「すご……エリートやん!」

「なーに。そんな大したもんじゃないって」

 

 ひらひらと手を振る光羽。

 天下の雄英高校ヒーロー科の、たった4枠しかない推薦入学が大したもんじゃなかったらなんだと言うのだろうか、と私は思う。

 光羽の話を聞いているうちに、だんだん3人とも打ち解けたように話がつながり出していく。

 

「ところで登校初日だったけどどうだった? A組はなんかやった? B組はねえ……」

「……A組は体力テストとか……」

「あ! そろそろ電車の時間に間に合わんくならん? みんな行こうよ!」

「うむ! 乗り遅れては大変だからな!」

「い、飯田くん、あんまり大声出さないで……」

 

 みんなで帰りの道を歩き始める。

 私は光羽が喋り倒すのを時々拾ったり流したりしながら、今日1日を思い出す。

 ……なんだか色々なことがあった1日だったけれど、こうして高校最初の日に一緒に下校するような友達ができてよかったな、と思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに、個性把握テストにまつわる除籍の話とその顛末を光羽に話したら大笑いされた。

 




というわけで体力テストの回でした。
主人公はデク以下の最下位からのスタートです。
主人公は運動神経が悪いとか体力がないわけではありません。むしろ高い方で、A組女子の中だと芦戸さんと変わらない程度は動けます。“個性”抜きならですが。


個人的には常闇くんと主人公の絡みが書きたいポイントでした。せっかく名簿順も並んでいますしね。
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