ポケットモンスター糸   作:糸の花

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5話 奇々怪々のカイキ団!

 相手が繰り出したのはゴビットとカゲボウズ。こっちはコリンクとツタージャ。

 ラクナが言うには、相手は2匹ともゴーストタイプだ。ゴーストタイプって⋯⋯あれ、何が効くんだっけ?

 

「とにかく先手必勝!コリンク、カゲボウズにたいあたりよ!」

「待ってリコ!ゴーストタイプにノーマルタイプの攻撃は意味がないんだ!」

 

 コリンクは急には止まれない。コリンクのたいあたりはカゲボウズの体をすり抜けてしまう。カゲボウズはそれを見て愉快そうにケタケタと笑った。

 

「あっはは!アンタ、タイプ相性を知らないのかい!?」

「初心者トレーナーが粋がってんじゃねぇぞ!ゴビット!そいつを捕まえてメガトンパンチだ!」

 

 カゲボウズの後ろに居たゴビットがコリンクを捕まえる。そして拳を振り上げ、力を溜める。

 

「危ない!ツタージャ、つるのムチで妨害して!」

「させないよ!カゲボウズ、いやなおと!」

 

 カゲボウズが聞くに耐えない酷い叫び声をあげる。コリンクだけでなくゴビットまで苦しんでいるが、ツタージャは平気そうにつるのムチを操り、ゴビットの足を引っかけて転ばせる。

 ゴビットの腕から脱出したコリンクはジャンプしてあたしの前まで戻ってきた。

 

「何で効かないのさ!?」

「こいつ、卑怯だぜ!あいつから潰すぞ!」

「オッケー!カゲボウズ、かげうち!」

「ゴビット、シャドーパンチで追撃だ!」

「ツタージャ、かげうちを避けて!」

 

 カゲボウズの影がぐん、と伸び、ツタージャの後ろまで回り込むと実体化する。鋭い爪を持つ影の化物はツタージャにその爪を突き立てようとするが、ツタージャは陸上を泳ぐような動きでそれをかわす。

 

「バカめ!シャドーパンチからは逃げられないぜ!」

 

 ゴビットの腕からは拳の形をした影が発射される。それはぐにゃりと軌道を変えてツタージャを追い詰めていく。

 

「コリンク、あの影にかみつく攻撃!」

 

 ツタージャを追いかける影の塊にコリンクが噛みつき、霧散させる。

 

「てめぇ!やっぱりあいつからだ!」

「はぁ!?結局どっちなのさ!?」

「コリンクだよコリンク!あのうざってぇのを狙え!」

「助かったよ、リコ!」

「こっちこそありがとね、ラクナ!」

 

 影の塊をかみつくで打ち消したことで思い出した。かみつくはあくタイプの攻撃。確かあくタイプは、ゴーストに強かった筈!

 

「一気に行くわよ!コリンク、カゲボウズにかみつく!」

「おい、あれやるぞ!」

「はいよ!カゲボウズ、まもる!」

 

 向こうにも何か作戦があるみたいだ。カゲボウズはバリアを作り出して自分を包み、守りの体勢を取る。

 

「ゴビット、じならしだ!」

 

 ゴビットが足元を殴る。ゴビットを中心として震動が広がっていく。じめんタイプの攻撃だ!

 守りを固めたカゲボウズにじならしは効かない。あいつら、それを狙って!

 

「コリンク、よけ――」

「ツタージャ、つるのムチでコリンクを投げて!」

 

 あたしの指示よりもツタージャが早く動く。コリンクにつるのムチを巻き付けると、それを空へ向けて投げ飛ばす。

 空中にいるコリンクにじならしは当たらない!

 

「くそがよぉ!」

「ツタージャにはじめんタイプの攻撃はいまひとつだよ!」

「さすがラクナ!あたし達も負けられないわね!改めてかみつく攻撃!」

「ツタージャ、ゴビットにつるのムチ!」

 

 じならしを凌いで守りを解いたカケボウズの頭にコリンクが噛みつく。同時にツタージャが首元から生やしたムチを叩きつけ、ゴビットの頭が地面に激突する。

 

「カゲボウズ!」

「チッ、使えないポケモンめ⋯⋯戻れ!」

 

 カイキ団の2人がポケモンをボールに戻し、別のダークボールを取り出す。

 

「なっ、2対2じゃないの!?」

「あぁ2対2だぜ?トレーナーはなぁ!さぁ来い、ゴース!」

「あのくさタイプ、厄介ね!やっちゃえ、フワンテ!」

 

 新しく現れるポケモン達。黒い球体に毒ガスが纏わり付いた様なポケモンがゴース、紫色の風船の様なポケモンがフワンテだ。

 

「⋯⋯まずい」

 

 ラクナがポケモンを見て冷や汗を流す。

 

「ゴースはゴーストとどくタイプ、フワンテはゴーストとひこうタイプ。どっちも僕のツタージャと相性が悪いんだ⋯⋯」

「なら大丈夫よ!あたしがカバーするから!」

「ありがとう、リコ!いくよツタージャ、にらみつける!」

 

 ツタージャがゴースとフワンテを睨み付ける。

 その鋭い眼光にあてられた2匹は怯えて竦んでいる。

 

「使えねぇなぁ!何をビビってやがる!ゴース、ベノムショックだ!」

「根性見せなさいよフワンテ!かぜおこしで吹っ飛ばしちゃって!」

 

 ゴースの吐き出した毒の塊がフワンテの起こした風に乗り、ツタージャへ向けて飛んでいく。

 

「避けてツタージャ!」

 

 ツタージャはジャンプするが、風によってバランスを崩し、地面に墜落してしまう。そこにベノムショックの追撃が襲いかかる。

 

「ツタージャ!」

「っはははは!効果は抜群だぜ!」

「フワンテ!アンタ最高に輝いてるよ!もいっちょかぜおこし!」

「ベノムショックだ!再起不能になるまで叩き潰せ!」

 

 ツタージャは倒れたまま。このままじゃ回避すらまともに行えない。

 不味い、このままじゃツタージャがやられちゃう!

 

「コリンク、ツタージャを庇ってでんきショック!」

 

 コリンクがツタージャの前に立ち、でんきショックでベノムショックを弾き返す。かぜおこしは完全には防げないけど、でんきタイプにひこうタイプはいまひとつ!

 

「良いわよコリンク!フワンテにでんきショック!」

 

 コリンクが体を震わせ、フワンテに向けて小さな雷を飛ばす。

 

「ちょっ、フワンテ!?」

 

 ビリビリに感電したフワンテは目をぐるぐると回して地面に落ちていく。

 

「次はゴースよ!コリンク、かみつく!」

「チッ、空中に逃げろゴース!」

 

 コリンクはジャンプしてゴースにかみつこうとするが、ゴースはより高い位置へと逃げ出してしまう。これじゃ攻撃が当たらない⋯⋯!

 

「そのまま一方的に痛め付けてやれ!おにびだ!」

 

 ゴースの目の前に青白く燃える炎が現れる。それはコリンクに向けて発射され、コリンクを不気味な火が包み込む。

 

「コリンク!」

「いいぞいいぞ!弱り目にたたりめだ!」

 

 ゴースが笑い、コリンクの足元に紫色の影が現れる。

 

「まずい、たたりめだ!」

「たたりめ⋯⋯?」

「たたりめは相手が状態異常ならダメージが高まる危険な技だよ。コリンクはさっきのおにびでやけどを負ってる!」

 

 コリンクを取り囲んだ影が今にも攻撃を始めそうだ。

 空中にいる相手にはでんきショック⋯⋯いや、そうだ!

 

「ラクナ、ツタージャのつるのムチを貸して!」

「⋯⋯!分かった!ツタージャ、コリンクにつるのムチを!バネの様に!」

「おいおい同士討ちかぁ!?」

 

 コリンクがジャンプして空中に浮かぶ。ツタージャはコリンクの足元まで走ると、つるのムチをぐるぐると巻いてバネを作り出す。

 

「コリンク、かみつく!」

 

 ツタージャがつるのムチでコリンクを押し飛ばす。コリンクはそれを踏み台に、ゴースの元まで飛び掛かる。

 

「何っ!?」

 

 コリンクがゴースに噛み付き、そのまま落下して地面に叩きつける。ゴースはその一撃で目をぐるぐると回して気絶した。

 

「何でこんなダメージが⋯⋯!?やけどしてる奴は攻撃力が下がる筈じゃ⋯⋯!」

 

 コリンクは青白い炎に包まれながら、殺気立った目でカイキ団を睨んでいた。

 

「これは⋯⋯こんじょう?」

 

 ラクナがコリンクを見て呟く。

 

「コリンクの特性はこんじょうなんだ。この特性を持っているポケモンは、自分が状態異常の時に攻撃力が高まるんだよ」

「へぇ!あなた凄いのね、コリンク!」

 

 コリンクが嬉しそうにあたしに応える。

 カイキ団2人は悔しそうな顔をしてゴースとフワンテをボールに戻した。

 

「や、ヤバイんじゃない?こんな初心者トレーナーにボコボコにされたって知られたら⋯⋯!」

「マズいぞ畜生!叩き潰すしかねぇよなぁ!」

「アタイはもうポケモン持ってないんだよ!」

「問題ねぇぜ!俺にはこいつがいるんだからよ!出てこいオーロット!」

 

 男がダークボールから繰り出したのは、朽ちた木の様なポケモンだ。黒い影が木の中から顔を覗かせている。

 

「まさかこいつを出すことになるとはよぉ!後悔するなよ!?お前らも!お前らのポケモンも!2度と動けなくなるくらいぶっ潰してやるからよぉ!オーロット、ウッドハンマー!」

「コリンク、かみつく!」

 

 オーロットの腕が大きく成長し巨大な木の様になる。

 オーロットはそれを大きく振り上げると、コリンクに向けて叩きつける。コリンクはそれを受け止めようとするけど、すぐに押し負け倒れ込んでしまった。

 

「コリンク!」

「ハッハッハ!ざまぁねぇぜ!そっちのツタージャにもウッドハンマーだ!」

「ツタージャ、つるのムチで受け流して!」

 

 ツタージャが叩きつけられる大木をつるのムチで受け流そうとするが、相手の威力が高すぎる。ツタージャもすぐに押し負けてしまい、地面に押さえつけられている。

 

「やれオーロット!ぶんまわす!」

 

 オーロットはツタージャを掴むと、それを持ち上げて振り回す。地面に叩きつけ、壁に叩きつける。

 

「ツタージャ!」

「いいぞいいぞ!2度と立ち上がれなくしてやれ!」

 

 コリンクはもう戦えない。ツタージャも⋯⋯。

 あたしは膝を地面についてしまう。体が動かない。ぶんまわされるツタージャの恐怖感があたしにも伝わってくる。

 嫌だ。

 死にたくない。

 

「あなた達!何をしてるの!?」

 

 聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「ジョーイ、さん」

 

 コラバシティのジョーイさんが、ダルマッカを連れてやって来ていた。

 

「ダルマッカが見送りに行きたいって言うから来てみれば⋯⋯これはどういうことなの!?」

「あぁ?アタイ達は売られた喧嘩を買っただけさ」

「そうさ!こいつらにちょっと教えてやってたのさ!バトルってのがどういうものかをなぁ!」

「もうそのツタージャは戦闘不能よ!戦えない相手に追い討ちをかけるなんてバトルじゃないわ!」

 

 ジョーイさんのそんな必死な言葉も、カイキ団には効いていない様だった。

 

「わりぃわりぃそうだったな!離してやれオーロット!海の底になぁ!」

 

 オーロットはツタージャを海の方向へと投げ捨てる。

 

「ツタージャ!」

 

 ラクナが走る。投げ飛ばされたツタージャを抱き抱え、海に落ちていく。

 

「ラクナ!」

「酷い⋯⋯あなた達、トレーナーの風上にも置けないわ!」

「お前から評価される必要なんかねぇんだよ!」

 

 ボロボロのコリンクをボールに戻す。もう、あたしに戦う力なんて⋯⋯。

 

「⋯⋯ダルマッカ?」

 

 ジョーイさんの足元を離れたダルマッカが、あたしを庇うように立つ。

 

「おいおいどうした?そいつもお前のポケモンか?」

「ダメよダルマッカ!あのオーロット、凄く強いの⋯⋯!」

 

 ダルマッカはあたしに振り向くと、陽気にダンスして見せる。あたしを元気付けようとしてくれている。

 

「おいおい、それはちょうはつのつもりか?」

「ばっかだねぇ!進化もしてないポケモンが、このオーロットに勝てるわけ無いじゃんか!」

「お前の力を分からせてやれオーロット!ウッドハンマー!」

 

 再びオーロットの腕が巨大化する。

 

「危ない、ダルマッカ!」

 

 ダルマッカは自分に向けて振り下ろされる大木を見て、全身を炎で包み込んだ。

 

「何!?」

 

 そのまま回転を始め、車輪のように走り出す。あれはかえんぐるま⋯⋯!?

 炎の車輪になったダルマッカは大木を伝い、オーロットの本体にかえんぐるまを喰らわせる。

 

「オーロット!?」

「凄い、凄いわダルマッカ!」

 

 ダルマッカは嬉しそうに小躍りすると、今度はその小さな手に氷のエネルギーを溜める。

 腕は大きな氷の塊に変わり、それをオーロットに叩きつけた。

 

「あれはれいとうパンチ⋯⋯!あなた達の見つけたダルマッカ、凄い子なのね」

 

 オーロットはカチコチに凍りつく。

 カイキ団2人は唖然とした表情でオーロットを見ていたが、すぐに我に返る。

 

「も、戻れオーロット!な、何なんだお前!?」

「不快、不愉快、もう限界!」

「てめぇら、覚えてやがれよ!」

 

 オーロットをボールに戻し、2人はどこかに走り去っていく。

 何とか、なった⋯⋯かな?

 

 

 

「はい、あなた達のポケモンはもう大丈夫よ」

「ありがとうございます!コリンク、元気になったね」

「ありがとうございます。ツタージャ、頑張ってくれてありがとう」

 

 あたし達はポケモンセンターに戻っていた。

 ジョーイさんにコリンクとツタージャを回復してもらい、ずぶ濡れになってしまったラクナは着替えを済ませていた。

 

「いい?あの人たちが許せないのは分かるけど、危ない人に勝負を挑んじゃダメ。まずは警察に連絡を、ね?」

「ごめんなさい⋯⋯」

「気を付けます⋯⋯」

 

 ジョーイさんはあの後警察に連絡したりと色々と後始末をしてくれた。

 カイキ団と言っていたあの2人。あたし達は知らなかったけど、カイキ団は有名なポケモンギャングなんだそうだ。10年前に今のチャンピオンに半壊させられたみたいだけど、しぶとく残った残党が組織を建て直しているらしい。

 

「昔ほどの力は無いけど、今でも悪い人達な事に変わりはないわ。これからのジムチャレンジでも気を付けるのよ?」

「はい!」

 

 あたしの足を何かがつつく。足元を見てみると、そこにはダルマッカが居た。

 

「ダルマッカ、ありがとね!あなたのお陰よ!」

「僕は見てなかったけど、凄く強かったって聞いたよ」

「そうなのよ!あのオーロットをあっという間に!」

 

 ダルマッカは少し照れ臭そうにそっぽを向くと、赤くなった顔を振り払うように頭を振り、踊り始めた。

 

「そのダルマッカ、連れていってあげたらどうかしら?」

「あたし達が、ですか?」

「ええ。あなた達にもう一度会いたいって、私を引っ張って行ったのよ。あなた達の事が大好きなのね」

 

 ダルマッカがジョーイさんの前の机に立ち、あたしをまっすぐ見つめた。

 

「ねぇ、ダルマッカ。あたしと一緒に旅をしてくれる?」

 

 そう聞くと、ダルマッカは凄い勢いで頷く。

 あたしはボールをダルマッカにコツン、と当てる。ダルマッカは光に包まれてボールに収まった。

 

「嬉しい!これから一緒に強くなろうね、ダルマッカ!」




ここまでお読みいただきありがとうございます!
カイキ団の戦闘BGMはスカル団戦のイメージです。



――以下設定――

カイキ団
バキリス地方で幅を利かせるポケモンギャング。「愉快、痛快、奇々怪々!」をスローガンにポケモンを悪事や金儲けに使う。漢字で書くと怪奇団。
10年前はもっと大きく凶悪な組織だったが、当時のボスがダフネに敗北したことで半壊した。しかし現在そのボスの息子が新しいボスとなり、再び力をつけ始めている。
名前の通りゴーストタイプのポケモンを良く使う。
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