ポケットモンスター糸   作:糸の花

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7話 開催!バキリスリーグ!

「早く早く!遅れちゃうわよ!」

「時間は全然余裕あるってば!」

 

 バキリスリーグ開催当日。あたしはラクナの手を引っ張り、セントラルスタジアムのあるテケラオシティに向かっている。

 セントラルアイランドはモナルダ島やダリア島と比べて小さい島で、町と町を繋ぐ道路は無い。ラオイシティのすぐ隣がテケラオシティになっている。

 頂点を決める町テケラオシティ。バキリス地方で最も有名なセントラルスタジアムのある町だ。町とは名ばかりで実際に住んでる人はあんまり居ないし、町の面積の大半をスタジアムが占めていて町自体はかなり小さい。

 それでもここに来る人々の熱気はバキリスで1番だ。あたしは参加登録は既にネットで済ませているけど、当日登録するトレーナー達が沢山集まり列を成していた。

 

「凄い人の多さだね」

「うんうん!流石はバキリスリーグね!ワクワクして来ちゃった!」

「これだけの数の人が毎年参加して、それでもファイナルトーナメントに挑めるのはごく一部⋯⋯改めて凄いなぁ」

 

 集まったトレーナー達を眺めてラクナがびっくりしている。

 でもそれはあたしも同じ事だ。テレビで見ていた光景とは全然違う。ここにいる皆が、あたしのライバル。そう思うとなんだか緊張してきてしまう。

 そう顔を強張らせていると、足元にいるコリンクがあたしの足に頬擦りする。

 

「コリンク?」

 

 あたしが問いかけるとコリンクは元気よく鳴いた。やる気は満々。うん、あたしが弱気じゃだめだよね!

 

「コリンク、励ましてくれたのね!大丈夫よ。平気平気!」

 

 コリンクを抱き上げ、あたしも頬擦り。わずかに静電気を含んだ毛がパチパチと刺激を与えてくれる。

 

「目指すは優勝!そしてチャンピオンよ!」

「その意気だよ、リコ!」

 

 そうやって闘志を高めていると、少し離れたところから複数の笑い声が聞こえる。

 

「「「ぎゃははははは!」」」

「聞いたか?優勝だってよ!」

「無理無理!あんな弱っちそうなやつがさぁ!」

「そうっすよね!ロサンドさん!」

 

 ロサンドさん、と呼ばれたのはあたし達より少し年上の男の子。紫色の髪の毛をショートスパイクにしている。さっきの笑い声は彼の取り巻きらしき3人だ。

 

「ちょっと何よ!文句あるわけ?」

「リコ、落ち着いてってば」

「いーや、文句なんか無いぜ!」

「バカみたいなこと言ってるなって思っただけさ」

「「「ぎゃははははは!」」」

 

 無性に苛立ってきた。あたしが3人を睨みつけていると、ロサンドが取り巻きを押し退けてやってくる。

 

「お前、チャンピオンにでもなるつもりか?」

「そうよ!」

「⋯⋯フン、チャンピオンになるのはこの俺様だ。さっさと諦めな」

「何ですって!?」

「リコ、ストップ!」

「離してラクナ!その喧嘩買うわよ!?」

 

 取り巻きだけじゃなくてこいつも嫌な奴!

 あたしがロサンドに掴みかかろうとしてラクナに止められる。

 取り巻き達があたしを笑いながら聞いてくる。

 

「お前、ロサンドさんが誰だか知らないのか?」

「知らないわよ!こんなトゲトゲ野郎!」

「ロサンドさんはなぁ!あのリーグ委員長、マーギャンさんの息子なんだぜ!」

「その気になればすぐチャンピオンになれるのに、自分を高めるために3年間修行してきたすげぇトレーナーさ!」

 

 ロサンドは取り巻きを呆れたように見て、ため息をつく。

 

「ぺちゃくちゃ喋り過ぎだアホ共」

「「「すみませんっした!」」」

 

 マーギャン。バキリスリーグの実行委員長。このバキリス地方で1、2位を争う大富豪だ。昔はとても強いポケモントレーナーだったって聞くけど、まさかこのいけ好かない奴が⋯⋯?

 

「親父の事なんて関係ない。俺様は俺様だ!それで?喧嘩、買うんだよな」

「ええそうよ!やってやろうじゃない!」

「⋯⋯開会式が終わったら俺様はコラバシティに向かう。お前達もラオイシティの港に来い。そこでバトルしてやる」

「ふん!目にもの見せてやるわ!」

 

 ロサンドはまだ何か言いたげな取り巻きを制すると、スタジアムの中に入っていく。

 

「リコ、大丈夫なの?彼すごく強そうだけど」

「平気平気!あんなの口だけに決まってるわ!お金持ちの子供だからっていい気になっちゃって!」

「⋯⋯そうかな?彼、お父さんのこと嫌ってる様子だったけど⋯⋯」

 

 ラクナがロサンドの背中を見つめている。あんな奴の事を考えていたってやな気持ちになるだけだ。気を取り直していこう。

 

「さて、あたし達も行きましょうか!」

 

 スタジアムに入る。建物の中も凄い人ごみだ。リーグ参加者だけでなく開会式を見に来た観光客、スタッフさんが忙しそうにあっちこっちを走り回っている。

 

「コリンクは戻っていたほうが良いわね。迷子になるといけないし」

 

 コリンクをボールに戻し案内板を見ていると、スタッフの呼びかける声が聞こえてくる。

 

「バキリスリーグ参加者、参加登録済みの方はこちらでーす!」

 

 ラクナはリーグには参加しないからここで一旦お別れだ。

 

「じゃあラクナ、行ってくるね!」

「うん。僕も観客席で見てるよ。終わったらスマホロトムで連絡しよう」

 

 ラクナと別れスタッフのお姉さんの元へ。

 

「はいはい!あたし、参加登録してます!」

「こんにちは。それでは、登録情報を確認しますね。スマホロトムをお借りします」 

 

 お姉さんはスマホロトムを受け取ると、それを手元の機械にセットする。

 

「⋯⋯はい、確認できました。マウリタウンのリコさんですね。まずは、好きなタイプはありますか?」

「タイプって⋯⋯ポケモンのですか?」

「はい」

 

 お姉さんはそう答えて微笑む。好きなタイプ、かぁ。特にこだわりは無いんだけど、せっかくだしコリンクに合わせよう。

 

「でんきです!バチバチって感じで!」

「でんき⋯⋯ですね。はい!ではこれらをお受け取りください」

 

 お姉さんが渡してくれたのはリーグ参加に必須のセット。ジムバッジを入れるバッジケース、ジム戦の時に使うユニフォーム、ジムチャレンジについての説明が記されたパンフレット。

 そして、黄色い糸で作られた⋯⋯輪っか?

 

「そちらはバキリス名物、バキリスミサンガです。手首につけておいて、ミサンガが切れたとき持ち主はトレーナーとして大きく成長できる、って評判なんですよ」

「へぇ!」

 

 もしかして好きなタイプを聞いたのはこのミサンガの色を決めるためなのだろうか。

 

「今お渡ししたユニフォームに着替えたあと、参加者控室でお待ち下さい」

「分かりました!」

 

 お姉さんに案内されて更衣室へ。渡されたユニフォームのサイズはばっちり。

 このユニフォームはジム戦や、最後のファイナルトーナメントでも使う大事な衣装だ。正確に言えば着なきゃいけないルールは無いんだけど、これも1つの醍醐味だ。

 忘れずにミサンガを手首につけ、更衣室のドアを開け参加者控室へ。そこには同じユニフォームを着たトレーナーが沢山集まっていた。

 あたしと同じくらいの年齢の男の子に、ベテランの風格を漂わせるおじさん、はては腰の曲がったおばあちゃんまで。本当に色々な人が来てるんだなぁ。

 

「おぉー。うちと同い年かなぁ?」

 

 誰かに声をかけられる。振り向くと長い黒髪の女の子がこちらをうかがうように見ていた。

 あたしと同じユニフォームを着ている。身長はあたしの方が少し高い。ピンク色のミサンガが可愛らしい。

 

「えっと、あなたは?」

「あぁー堪忍な。うちはヤエ。ジョウト地方のエンジュシティ出身なんよ」

 

 ジョウト地方!確かここからずっと北にある地方で⋯⋯どんなポケモンがいるんだっけ。後でラクナに聞いてみようか。

 ヤエちゃんはあたしより2つ下の10歳。バキリス以外の殆どの地方では10歳でトレーナーになれるっていうのは本当だったらしい。

遥々ジョウト地方からバキリスリーグに参加しに来たようだ。何という熱意だろう。

 

「じゃあリコはんは2歳先輩って事やなー」

「トレーナーになったばかりだからそんなこと無いわよ。それより凄いわね。バトルのためにこんな所まで」

「あはは、皆に言われるわ、それ。でもちゃうねん。うちは観光に来ただけよ」

 

 ヤエちゃんが少し照れた様子で手を振る。

 

「観光?その為にリーグに参加したの?」

「そうなんよ。ほら、空飛ぶタクシー……やったっけ?あれリーグに参加すると無料になるやろ?ポケモン育てながら観光も出来るなんて、こりゃチャンスや思うてな」

 

 バキリス地方は観光地としても有名だ。何と言っても綺麗な海。そして自然。ラオイシティには色々なアミューズメントもあるし、リゾート地として確固たる地位を築いている。

 ヤエちゃんは観光が目当てなのだろう。育てながら、ってことはジム戦をしない訳ではないんだろうけど、本当に色々な人がいるんだ。

 

「そう、じゃあチャンピオンを目指してる訳じゃないのね」

「うちそんな強くないからなぁ。リコはんはチャンピオン目指しとるん?」

「あったり前よ!絶対優勝して見せるんだから!」

「おぉー。その意気やで、応援しとるわ」

「ありがとう!ヤエちゃんも頑張ろうね!」

 

 そんな風に世間話をしていると、あっという間に開会式が始まる。控室に備えられたテレビには上空から撮影されたセントラルスタジアムの様子が流されている。

 数え切れないほどの花火が打ち上がる。ピカチュウにイーブイ。色んなポケモンの顔をかたどったポケモン花火だ。観客達のボルテージがぐんぐんと高まっていく。

 実行委員長のマーギャンがスタジアムの中心に立ち挨拶をする。この間のエキシビションマッチと同じような内容だ。でもここからは違う。

 

「それでは、ジムチャレンジ参加者の皆様は列になってご入場下さい」

 

 スタッフの案内する声が聞こえ、皆我先にと列になり始める。あたしとヤエちゃんも急いでその列に加わり、入場の時を待つ。

 

『それでは皆様、拍手でお迎え下さい!今年度のバキリスリーグに参加するチャレンジャーの入場です!』

 

 一列になって入場していく。

 ラオイシティから見たときはそこまで大きく見えなかった山は、スタジアムの中からはより大きく、威圧的に見える。

 ドローンに入ったロトムがカメラを構えてあたし達を撮影している。

 この開会式だけじゃない。バキリスリーグで行われる全ての戦いはテレビ中継されるのだ。

 ポケモンと力を合わせ戦うトレーナーの姿は、例えチャンピオンのものじゃなくても需要は高い。毎年この時期になるとどのチャンネルでもジム戦の様子が放送されていた。

 デレビの中にしか無かった世界が、今あたしの目の前にあるんだ!

 

『それでは選手一同、心の中で構いません。あなた方がどんな戦いを繰り広げ何を目指すのか、我々を見守るサバンマウンテンに宣誓を』

 

 サバンマウンテン。それがこの山の名前。チャレンジャー達はその山に向かい目を瞑り、一心に祈りを捧げる。

 あたしは勝ちます。勝って、絶対にチャンピオンになる。

 

『⋯⋯ありがとうございます』

 

 マーギャンの言葉が聞こえると同時に目を開ける。威圧感しか感じなかったあの山が、なんだか頼りになるように思えた。

 

『このサバンマウンテンは3000年前、このバキリス地方を作り出したポケモンが、最初に作り出したものだと言われています』

 

 マーギャンがサバンマウンテンを背に語り始める。これも毎年のお話だ。あんまり面白くなかったからはっきり聞いてはいなかったけど、今改めて聞いてみると、ラクナの探している伝説に関係している気がする。

 3000年前、小さな島しか無かったこのバキリス地方に大きなむしポケモンがいた。そのポケモンは糸で山を作り上げ、それを中心に島を作り、さらにそれを3つに切り分ける。

 ある日3つの島を襲った大きな災いにより多くの命が消えていった。その災厄の最中、島を作り上げた創世のポケモンも姿をくらましてしまった。

 協力して災厄を乗り越えた人々は このスタジアムの前身となる闘技場を作り上げ、自分達の復興の象徴としてポケモンバトルをサバンマウンテンに捧げるようになった。いつかそのポケモンが、再び姿を現す事を信じて。

 それがバキリスリーグの始まりである。

 マーギャンが話を終え、一礼する。そして手を上げてスタッフに合図を出す。

 

『それでは、ジムリーダーの皆様に入場いただきましょう!なお、ここからの司会進行は我らが名司会者、アマリさんにバトンタッチしましょう』

 

 一瞬会場が暗転し、やがて空中をスポットライトが照らす。そこに居たのは、大きなジバコイルを模したドローンに乗りマイクを握ったスキンヘッドの男の人だ。

 

『はいはいはーい!ご紹介に預かりました!ワタクシ、アマリと申します!それでは改めまして、ジムリーダー、入っ場っですっ!』

 

 最初にスタジアムに足を踏み入れたのは、黒い髪のイケメン男性。髪型はウルフカットで、20歳位に見える。白いシャツに黒いスーツパンツ。その上に暗い紺色のエプロンを身に着けている。彼が登場すると観客席から黄色い歓声が巻き起こった。

 

『コラバシティジムリーダー!ノーマルタイプの使い手!日々勉学!日々鍛錬!自分を律し成長し続けるエターナル・ルーキー!ノーフルだっ!』

「やぁ、皆!今年はどんなチャレンジャーが来るのか楽しみだよ!いい勝負をしよう!」

 

 ノーフルさんが爽やかに笑い、チャレンジャーに向けて手を振る。

 チャレンジャー側からも黄色い歓声があがった。流石は女性人気1位のジムリーダーだ。

 

『続いてはトゥアナタウンジムリーダー!怠惰な瞳に唯一映るのは勝利のみ!彼女を目覚めさせるトレーナーは現れるか!?ほのおタイプの使い手!眠れる火山、ソムニア!』

「⋯⋯もう帰っても良いかしら?」

 

 腰まで伸びた黒いロングヘア。所々交じる赤いメッシュが、まるで火山から溢れるマグマのようだった。

 臍を露出した黒いシャツにダボダボのズボン。ダンスでもしそうな容姿とは裏腹に気だるそうな彼女は、もう立っているのが精一杯な様子で司会を睨みつけている。

 

『残念ながらまだ帰れませーん!さて、3人目はご存知この男!ウオウアタウンのジムリーダー!彼が目指すのは故郷から見える大きな木!どっしりと構えるこの男に、あらゆる逆境は意味を成さない!くさタイプの使い手!大樹の如き男、ゼルマン!』

「いいか君達!雨にも負けず、猛暑にも負けず、そして吹雪の前にも屈することなく!逆境に耐え己を鍛え――」

『すみませんゼルマンさん、尺が押しています!一言で!』

「なんだとぅ!?よし!かかってこい!」

 

 何とも暑苦しい人だ。身長は2メートルあるんじゃないかと思える大男。農作業に使う緑色のつなぎを着ている。銀色の丁寧に整えられたソフトモヒカンが彼の内面の几帳面さを表している。

 全身の筋肉がこれでもかと主張しており、まさに大樹みたいな男の人だ。

 

『お次はなんと今回初参加のジムリーダー!姉の後を継ぎ最年少でテヌアタウンのジムリーダーになった少年だ!彼は一体、どんなバトルを見せてくれるのか!みずタイプの使い手!大海を知る若き天才、ブルース!』

「えっと、皆さん!ジムリーダーとしてのお仕事は初めてですけど、よろしくお願いします!」

 

 そう言って頭を下げたのは、あたしと同じくらいの歳の少年だ。今年が初参加と言うことで、あたしもテレビで見たことがない。

 金色のショートヘアーに、海のように蒼い瞳。サスペンダーのついた短パンを履いた、お坊ちゃまみたいな服装だ。まだ観衆に慣れてないみたいで照れくさそうにしている。

 

『次は――』

 

 その瞬間会場がブーイングに包まれる。ヤエちゃんはその突然の光景に困惑しているようだった。

 

「なんじゃなんじゃお前ら!ワシが出るときだけ文句言いおって!ワシに勝てん雑魚共めが!」

『落ち着いて下さいサワギさん!観客の皆さんもどうか、冷静に!』

 

 アマリさんがとりなして漸く会場が落ち着き始める。

 

「⋯⋯リコはん、あの人って?」

「サワギさん。バキリス地方で1番お金持ち。あたしはよく知らないんだけど嫌われてるみたいで⋯⋯毎年こうなの」

「ようそんな人にジムリーダーが務まるなぁ⋯⋯」

 

 文句を言いながら現れたのはジムリーダー最高齢の男性、サワギさんだ。全身金色のスーツに、宝石が沢山ついたゴージャスなサングラスをかけている。髪の毛だけは⋯⋯貧乏だ。

 

『気を取り直してこの男!バキリス地方で1番の大金持ち!そのあくどいバトルは批難殺到!なのに何故か高視聴率!今回は一体何人の心を折ってしまうのか!?アウアタウンのジムリーダー、あくタイプの使い手!極悪非道の大社長、サワギ!』

「ワシがサワギじゃ!トレーナーを辞めたくなけりゃ、ワシとは戦わんことじゃな!ガッハッハ!」

 

 チャレンジャーに向けて啖呵を切ると、満足した様子でブルースさんの隣に並ぶ。ブルースさんと普通に会話してるあたり根っからの悪人では無いんだろうけど⋯⋯。

 

「「「うぉぉぉぉっ!」」」

 

 男の人達の歓声があがる。次はあの人か。

 

「「「L・O・V・E!ラブ、ユー、ティミラちゃーん!!」」」

 

 一箇所に集まった男の人達が愛の言葉が書かれた幕を振っている。ノーフルさんが女性人気1位なら、次は男性人気1位のジムリーダーだ。 

 

「はーい!みんな、応援ありがとー!」

『元気よく登場だぁ!ニマウアタウンのジムリーダー、タレント、そしてポケモンブリーダー!様々な仕事を一身でこなす大忙しな彼女は我らが元気の源!かくとうタイプの使い手!バキリスの応援隊長、ティミラ!』

「今日はチャレンジャーの皆にエールを送るよ!フレ、フレ、チャレンジャー!ゴー、ファイ、ウィーン!」

 

 アッシュブラウンのポニーテールを揺らしてあたし達を応援してくれる。服装は青と白の対比が爽やかなチアリーダーの制服。藍色の瞳が観客席に向けられる度、誰かの叫び声が聞こえる。目が合ったのだろうか。

 

『そして7人目はオノウアタウンのジムリーダー!バキリスにいくつもの流行を巻き起こす台風の目!そのエレガントでエクセレントなバトルは見る者全てを魅了して止まない!むしタイプの使い手!胡蝶の貴婦人、ゼツ!』

 

 歓声。ティミラさんやノーフルさんの時とは違う。どちらかと言えば落ち着きのある大人達の歓声だ。

 水色のドレスの上に、赤色とオレンジ色の混じった燃えるような色のケープを羽織っている女性。シワの入った顔は年齢を感じさせるが、それでも尚若々しさと美しさを感じさせる。

 

「わたくしはゼツ。あなた達は一体、どんなバトルを見せてくれるのかしら?」

 

 そう言って優雅に一礼し、ティミラさんの隣に移動する。ティミラさんと談笑しているようだけど、仲がいいのかな。

 

『そして最後にして最強!ラオイシティジムリーダー!その美しき瞳は未来を見る!チャンピオンのライバルにしてエスパータイプの使い手!無限の瞳、リナリアだぁっ!』

 

 歓声を浴びて現れたのは、エキシビションマッチにも出ていた女性だ。ジムリーダーの中で最も強いと言われている。   

 毎年のようにチャンピオンへの挑戦権を獲得し、それでもあと一歩及ばずの敗退を繰り返しているけど、その実力は本物だ。

 

「今年はどんなチャレンジャーが来るのか、とても楽しみにしています。どうか皆さんの未来が希望に満ち溢れたものになりますように」

 

 ベージュの髪のフィッシュボーン。淡いクリーム色のセーターに赤いフレアスカートの映える清楚な出で立ち。

 リナリアさんは語り終えると、母親の様な優しい笑顔をチャレンジャーに向け、礼をした。

 

『以上8名がバキリスリーグの誇るジムリーダーでございます!続いて、ジムチャレンジのルールについて説明しましょう!』

 

 ジムチャレンジはバッジを8つ集めたトレーナーが一定の数になるまで続けられる。

 チャレンジャーはどのジムから挑んでも良い。ジムリーダーは相手がいくつバッジを持っているのかを主な参考として相手に合った手持ちを準備し、ジム戦が行われる。

 期間内にバッジを8つ集めきったトレーナーはこのセントラルスタジアムで行われるファイナルトーナメントへの参戦権を獲得する事になる。ファイナルトーナメントにはジムリーダー8人も加わり、最終的にファイナルトーナメントで優勝したものがチャンピオンへの挑戦権を獲得。チャンピオンマッチの結果によってその年のチャンピオンが変わることになる。

 アマリさんがルールの説明を終える。なるほど。期間は短いわけじゃないけど限りがある。なるべく早くバッジを手に入れるのも大切なのね。

 

『では最後にあの方――我らがバキリスリーグチャンピオン、ダフネの登場です!』

 

 今までのどのジムリーダーよりも大きな歓声が上がる。誰もが皆、彼女の登場を心待ちにしていた。

 小さな爆発が起こると同時にファンファーレが鳴り、煙の中から彼女は現れる。

 焦げ茶色のセミロングヘアに赤い瞳。彼女専用のユニフォームはデザインこそ他のユニフォームと同じだけど、色は全然違う。黒をベースに金色の装飾で飾られた服は高級なイメージを持たせる。

 彼女と背中を合わせるようにして立っているのは、彼女の相棒のポケモン。ゲッコウガだ。

 

「オーサム!」

 

 彼女がそう叫ぶと、観客から同じ言葉が帰ってくる。オーサム⋯⋯素晴らしい、すごい!っていう意味の言葉だ。

 

「皆、今日は集まってくれてありがとう!私はダフネ。バキリスリーグ現チャンピオンです。今年はどんなトレーナーが挑戦してくるのか、楽しみにしてる!」

 

 ダフネが右手を上げて指を鳴らす。それを合図にたくさんの花火が上がり、会場を盛り上げる。

 

「ここに、バキリスリーグの開催を宣言します!」




長くなってしまいました。
ジムリーダーの詳細な情報は本格的に登場してからで⋯⋯。


――以下設定――

テケラオシティ
頂点を決める町。セントラルアイランドの中心。サバンマウンテンの麓に作られた町。シティの名を冠しているもののサイズは他のタウンとあまり変わらない。町の面積のほとんどをスタジアムが占めておりバキリスリーグの開会式やファイナルトーナメントはここで行われる。

バキリスリーグ
バキリス地方で1年に1度行われるポケモンリーグ。ポケモンジムでの勝負に勝ち、8つのバッジを集めたものがセントラルアイランドで開催されるファイナルトーナメントに参戦でき、優勝者はチャンピオンに挑戦する事が出来る。
ジムに挑む順番は自由だが、初心者トレーナーには1番道路から順々に進めていくことを推奨されている。

バキリスミサンガ
バキリス地方のお土産。かつてこの地方を作り出した伝説に倣い、虫ポケモンの糸で編まれた可愛らしいミサンガ。このミサンガが切れるとき、トレーナーとして大きく成長できると言われている。
各タイプを模した色に染められている。
バキリスリーグに参加したトレーナー全員に希望の色のミサンガが配られる他、各地のお土産屋でも販売されている。
ポケモンのアイテムにもなり、色によって対応したタイプの技を強化する。
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