ポケットモンスター糸   作:糸の花

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9話 コラバシティのジムリーダー

『さぁやって参りましたコラバシティ!ここは様々な露店が立ち並び活気あふれる港とバザーの町!コラバジムには毎年デビューしたてのフレッシュなトレーナー達が集まり、人生で初めてのジム戦に挑みにやってきます!今回は一体どんなバトルが繰り広げられるのか!?実況はワタクシ、アマリがお送りいたします!』

 

 スタジアムに響く歓声。

 ロサンドとのバトルでジムチャレンジに乗り遅れたあたし達は、ジム戦の予約を済ませるとポケモンセンターで部屋を借り、コラバジムでの試合をスマホロトムで見ていた。

 

「始まったね」

「うんうん。ノーフルさんはどんなバトルをしてくるのか⋯⋯勉強しておかないと!」

 

 今日の分の予約は埋まってしまったから、挑戦できるのは明日になる。

 スマホロトムの小さな画面を2人で覗き込む。スタジアムは満員だ。

 コラバジムはそこまで大きくないとはいえ、こんな沢山の人を集められるのは流石の人気と言える。他にもトレーナーになったばかりの未来のチャンピオンを見たいという人も多いのだろう。

 各テレビ局も注目しており、ここで目を付けられたトレーナーは特集が組まれたり、旅の資金の提供と引き換えにジムチャレンジ中の密着取材を依頼される事もある。

 

「チャレンジャーが入場してきたよ」

 

 ラクナがそう言う。コラバジム中心にあるバトルコートの東側から、見覚えのある男の子が走ってくる。

 彼はバトルコートに立つと、観衆に向けてはしゃいで手を振っていた。

 

「トム!?」

 

 5番道路でバトルした短パンの男の子だ。

 いや、そうだよね。トレーナーなら皆バキリスリーグに挑戦する。居たっておかしくは無い。

 

「確かホルビーと一緒にいたトレーナーだよね」

「うんうん!⋯⋯あ、来たわよ!」

 

 バトルコートの西側から人影が現れ、スタジアムが黄色い歓声に包まれる。

 

『初めまして。僕はコラバジムのジムリーダー、ノーフルです』

『俺はトム!バトル、よろしくお願いします!』

『うん。元気でとても良い。バトルが始まる前に1つ聞いてもいいかな?』

『なんだ?』

 

 トムはきょとんとしてノーフルを見る。

 

『皆に聞いている事さ。⋯⋯君は、チャンピオンになりたいかい?』

『なりたいじゃない!なる!だぜ!』

『うんうん。よければ理由も聞かせてくれるかな?どうしてチャンピオンになるのか』

『そんなんカッコイイからだよ!俺は相棒と一緒にカッコイイチャンピオンになる!』

『ふむふむ、ありがとう。君の事を学ばせてもらったよ』

 

 対戦前の挨拶を終えた2人は、ボールを手に取り構える。

 

『ではここでルールの説明です!コラバシティ出身のトム君は現在バッジを所有していません!そのため今回のバトルは2対2で行われます!きずぐすり等トレーナーがアイテムを使用するのは禁止!技以外によるポケモンの交換はチャレンジャーのみ認められます!』

 

 観客のざわめきが収まっていき、スタジアムに緊張感が張り詰める。

 

『それではバトル、開始っ!』

『ゆけっ!ドーブル!』

『来い!俺の新しい仲間!マンキー!』

 

 ジムリーダーが繰り出したのはドーブル。尻尾の先が筆の様になった絵描きさんみたいなポケモンだ。一方トムが繰り出したのはマンキー。確かかくとうタイプのポケモンだったはず。

 

『ジムリーダーが繰り出したのはドーブル!それに対しチャレンジャーはかくとうタイプのマンキーで応戦だ!』

「ドーブルにマンキー⋯⋯トム君は対策を立ててきたみたいだね」

「そうね。そういえばドーブルってどんなポケモンだったかしら」

 

 ラクナのスマホロトムを借りて、ドーブルについてのページを開く。

 

 

【ドーブル】 えかきポケモン

ノーマルタイプ

尻尾の先から滲み出る体液で独自のマークを描き、縄張りをアピールする。

 

 

「ドーブルはとてもすごいポケモンなんだよ」

「そうなの?」

「うん。ドーブルはこの世に存在する全ての技を覚えられるって言われているんだ」

 

 ラクナがドーブルをキラキラした目で見つめている。あまり見たことないし、珍しいポケモンでもあるんだろう。

 

「全ての技⋯⋯って凄いことよね!?」

「うん!ドーブルはスケッチっていう技を覚えるんだけど、この技は直前に放たれた技をコピーして自分のものに出来るんだ」

 

 見たもの全てをスケッチして覚えることができる。何をしてくるか分からない、厄介なポケモンね⋯⋯。

 

『なるほどマンキーか。1番道路で捕まえてきたのかな?』

『そうだぞ!ノーマルタイプにはかくとうタイプ!バトルの基本だ!』

『うん!素晴らしい!ちゃんと基本は出来ているんだね。でも基本だけじゃ勝てないのがジムバトルさ!さぁ、かかっておいで!』

 

 トムはニッ、と笑ってマンキーに指示を出す。

 

『行くぞマンキー!からてチョップ!』

 

 からてチョップはかくとうタイプの技。ノーマルタイプはかくとうタイプに弱いから効果は抜群だ。

 

『ドーブル、みずでっぽう!』

 

 ドーブルが尻尾を手に持って振るうと、絵の具の代わりにみずでっぽうが吹き出しマンキーを迎え撃つ。

 マンキーは反撃を受けながらも距離を詰め、ドーブルの頭にからてチョップをくらわせた。

 

『みずでっぽうに怯みもしない⋯⋯かなりゆうかんな性格なんだね』

『大丈夫かマンキー!?負けるなよ!もう一度からてチョップ!』

『さて、それじゃあお勉強の時間だ!相手の対策を取ってきたのは素晴らしい!でも、こういう事もある!ドーブル、サイケこうせん!』

 

 ドーブルが再び尻尾を振るう。今度は水流では無く、虹色に輝く光線が発射されマンキーを吹っ飛ばした。

 

『マンキー!?』

「なるほど⋯⋯!」

「どうしたの?ラクナ」

「サイケこうせんはエスパータイプの技なんだ。かくとうはエスパーに弱い。つまり、」

『相手の対策を対策するのも立派な戦術だよ。対策の対策をさらに警戒するのも、ね』

 

 効果は抜群だ。マンキーはボロボロになりながらも何とか起き上がり、ドーブルを睨み付けている。

 対策の対策⋯⋯。ノーマルタイプの弱点を突きにくるかくとうタイプを倒すためにこの技を⋯⋯。

 

『ノーマルタイプの特徴は弱点が1つしかないこと、そして覚えられる技が多い事。弱点が1つしかなければ、その対策も取りやすい。ノーマルタイプは決して弱くは無いよ。言わなくとも分かっているとは思うけどね』

『強い⋯⋯流石はジムリーダーだ⋯⋯!でも負けられないぜ!マンキー!距離を詰めるんだ!』

 

 マンキーが頷き、ドーブルに向けて走り出す。

 

『もう一度サイケこうせん!』

『かわしてからてチョップ!』

 

 放たれたサイケこうせんを横に避け、すれ違い様にからてチョップが放たれる。

 効果抜群の技を受けたドーブルはその場に倒れ、目を回していた。

 

『決まったぁぁっ!ドーブル戦闘不能!セオリー通りの堅実かつ豪快なバトルだ!ジムリーダーのポケモンは残り1匹!果たして何を繰り出すのか……!?』

 

 手持ちはお互いに2匹。次が最後のポケモンだ。

 

『君のバトル、とても参考になるよ。僕もまだまだ学ぶ事は多い』

 

 ノーフルは新しいボールを手に取り、構える。

 

『次は僕が教える番だよ!君のポケモンの戦い方を!ゆけ、メタモン!』

 

 新しく現れたのは、ピンク色のゼリーの様な体のポケモン。

 

「ノーフルさんの手持ちはメタモンね」

「メタモン⋯⋯相手に変身する能力を持つポケモンだよ」

「変身できるの?」

 

 ドーブルといいメタモンといい簡単に弱点をつかせてくれる訳じゃないみたいだ。

 

 

【メタモン】 へんしんポケモン

ノーマルタイプ

全身の細胞を組み替えて見たものそっくりに変身する。力が抜けると元に戻る。

 

 

『め、メタモン!?』

『おおっとジムリーダー、メタモンを繰り出した!』

 

 トムもこれには予想外だった様で、メタモンを見て目を丸くしている。

 

『さぁ行くよメタモン!へんしんだ!』

『ノーフル選手が繰り出したメタモンが変身する!変身したメタモンは相手と全く同じタイプになり、同じ技を使えるぞぉっ!』

 

 メタモンが体をぐにゃりと曲げ、全身が光に包まれていく。

 光の中から現れたのは、目の前のマンキーと全く同じポーズを取るメタモンだった。

 

『からてチョップ、カウンター、ヨガのポーズ、アンコール⋯⋯把握したよ』

 

 ノーフルさんは変身したメタモンの技を確認する。

 

『まずは……アンコールだ!』

 

 メタモンがマンキーに駆け寄り、すごい勢いで拍手する。

 マンキーは何をされているのか良くわかっていないようだけど、ご機嫌になって来ている。

 

『なんだ?その技?俺使ったこと無いんだよなー』

『そうかい。ならこの技の強みをよく学べると思うよ!』

『何でもいいぜ!マンキー、からてチョップ!』

 

 マンキーはハッと正気に戻ると、すぐそこにいたメタモンの頭にからてチョップを振り下ろす。

 

『それを待ってたよ!カウンター!』

 

 メタモンの体が赤い光を纏う。からてチョップを受けたメタモンは、右腕に力を込めたアッパーパンチを繰り出し、マンキーを殴り飛ばす。

 

『カウンター炸裂ぅ!これは大ダメージだぁっ!』

「カウンターは受けた攻撃のダメージを倍にして跳ね返す技なんだ」

 

 鋭いカウンターを受けマンキーがふらつく。だけどマンキーは気合でその攻撃を耐え切り、臨戦態勢を崩さない。

 

『いいぞマンキー!このまま攻撃してもカウンターされるだけ⋯⋯ならここはヨガのポーズでパワーアップだぜ!』

 

 トム君の言葉にマンキーが頷き、

 

『メタモン、カウンター!』

 

 メタモンに向けてからてチョップを繰り出してしまう。

 

『マンキー!?』

 

 さっきと同じようにカウンターパンチがマンキーを吹っ飛ばし、宙を舞って地面に叩きつけられる。

 マンキーは目をぐるぐると回してピクリとも動かなくなった。

 

『2度目のカウンターが炸裂ぅ!マンキーこれには戦闘不能!チャレンジャートムの手持ちは残り1匹だぁっ!』

 

 トム君は確かにヨガのポーズを指示したはず⋯⋯どうしてマンキーはからてチョップを?

 

「ラクナ、何が起きたの?」

「ノーフルさんはアンコールって技を使ってたでしょ?あれを受けたポケモンはしばらく同じ技しか使えなくなってしまうんだ」

「そうだったのね⋯⋯」

 

 アンコールで相手の攻撃を誘発し、カウンターを確実に食らわせる。メタモンの技を確認してすぐこの戦術を組み立てるなんて⋯⋯。

 

『アンコールの恐ろしさは分かったかい?』

『あぁ!でもここからだぜ!行くぜ相棒!』

 

 トム君はボールを投げ、赤い光の中からホルビーが飛び出す。

 

『チャレンジャー最後の手持ちはホルビーだぁっ!今のメタモンはかくとうタイプの技を覚えている!ノーマルタイプのホルビーは不利だが⋯⋯どうするチャレンジャー!?』

 

 この間バトルした時よりも成長しているように見える。ホルビーは目の前のメタモンを見て、威勢よく鳴き声をあげた。

 

『やる気まんまんだなホルビー!ここは⋯⋯マッドショットだ!』

 

 ホルビーの周囲に泥の塊が現れ、それがメタモンに向けて発射される。

 

『カウンターできない技を選んできたか!避けるんだメタモン!』

 

 メタモンは身軽にジャンプし、マッドショットをギリギリで回避する。

 

『パワーアップだ!ヨガのポーズ!』

 

 マンキーが一風変わったポーズを取り、集中力を高めていく。

 

『させるか!もう一度マッドショット!』

 

 再び放たれるマッドショット。ヨガのポーズを構えていたメタモンは回避できず、直撃してしまう。

 

『よっしゃあ!』

『くっ⋯⋯!メタモン、からてチョップだ!』

『ホルビー!でんこうせっかで逃げるんだ!』

 

 ホルビーはものすごいスピードで動き、からてチョップをすり抜けてメタモンに激突し、そのまま逃げていく。

 

『そこだメタモン!アンコール!』

『しまった!?』

 

 メタモンがホルビーに向けて拍手する。ホルビーもアンコールに乗せられてしまい、何処か照れた様子で頭を掻いていた。

 でもこれでホルビーはでんこうせっかしか繰り出せない。近づけばカウンターを受けてしまうだろう。

 

『くっ⋯⋯アンコールが解けるまで逃げ回るんだ!でんこうせっかで走り出せ!』

『そうはさせない!メタモン、回り込んでからてチョップ!』

 

 ホルビーの全力疾走。メタモンはホルビーの動きを読んだかの様に回り込み、突進してくるホルビーにからてチョップを食らわせた。

 ホルビーはそのまま倒れ込み、起き上がる気配は無い。

 

『決まったぁっ!ホルビーたまらず戦闘不能!よって勝者、ジムリーダーのノーフル!』

『ぐぅっ⋯⋯勝てなかったか⋯⋯』

 

 トムは倒れたホルビーの元まで走り、ホルビーを抱き上げる。

 

『ホルビー、お疲れ様だぜ。今はゆっくり休んでくれよな』

 

 トムはホルビーをボールに戻し、ノーフルに頭を下げてバトルコートを後にした。

 

『本日の第一試合はジムリーダーの勝利に終わりました!さぁ、本日残る挑戦者は――』

 

 一旦スマホロトムの放送を消し、作戦を考える。あたしの手持ちの中でかくとうタイプの技が使えるのはダルマッカだけ。ダルマッカならエスパータイプのサイケこうせんで大ダメージを受けることは無いだろう。

 

「よし!明日はダルマッカから出すわ!」

 

 ダルマッカでドーブルを倒した後、メタモンはダルマッカに変身するはず。ダルマッカの覚えているかえんぐるまならお互いに効果は抜群。コリンクだって控えている状態になる。

 

「うん。良いと思うよ」

「でしょでしょ!?」

 

 そうと決まれば特訓だ。自分と同じ能力の相手に勝てるように。少しでも強くならないと!




遅くなりました⋯⋯。
次回はようやくジム戦(予定)です。


――以下設定――


ノーフル 「エターナル・ルーキー」
コラバジムのジムリーダー。23歳。ノーマルタイプの使い手。
誠実で謙虚な性格で、挑戦者に立ちはだかる壁と言うよりもポケモンバトルのなんたるかを教える教師のような役割。
オフの時にはコラバ図書館の司書をしており、子供達に読書と勉強の良さを伝えるべく様々なイベントを考案している。
その性格と見た目から女性人気がかなり高く、スタジアムは彼のファンで埋まってしまうことが多い。
趣味はと聞かれて勉強と答えるほどの勉強オタク。二つ名である「エターナル・ルーキー」は、「ポケモンバトルの長い歴史と比べれば、自分はいつまで経っても初心者に過ぎない。いつまでも初心を忘れず努力し続けたい」という彼自身の言葉から。
藍色の髪のウルフカット。瞳の色は黒。
ワイシャツと黒いズボンの上に紺色のエプロンをかけている。
名前の由来はスノーフレーク。
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