俺には前世の記憶らしきものがある。
思い出したのは10歳の頃だっただろうか……。
この世界でいう所の魔法が使える、ファンタジーな世界に住んでおり、その世界での俺は、火と風の魔法を使えた。
その記憶を思い出してからだろうか……。
俺は大半の人が持たないはずの、超能力といったような力に目覚めうまくコントロールできずに、家族に恐れられていた。なにもない空間に炎を生み出したり、風を生み出したり、或いは……。
そんなところまで、物語の様な世界にいる前世の自分と同じだなんて…、なんだか笑えるな…。
そういう記憶の影響もあり、俺は幼い頃から顔だけは褒められる、無表情で可愛げのない子供だったように思う。
前世での俺は、強盗に襲われ口封じをする為に賊達が刃物を振り上げた時に、俺は呆然とその凶行を見守るしか出来なかった、いやそう思っていた。
意識を失い、意識が戻ると母が言った。
「わたしは化け物を産んでしまった」と言い放ち、俺の傍から逃げていった。
その日から、家族は俺を恐れ距離を置き、それでいて機嫌を伺うように媚びて来るようになった。
仲良く暮らしていたからこそ喪失感は心をえぐり、俺が化け物なのだと突きつける。
叔父が父から俺の話を聞き、俺のもとを訪れた。
叔父は俺に、その魔法を人前では使ってはいけないという。
「俺が化け物だから…?」そう聞くと俺を守るためだと言った。
自分の身と彼らの身の安全を守る為に、家族の中に宿った悪夢を叔父は忘れさせた。
2年も俺を見れば怯える家族達を見ていれば、心が動かなくなっていく。俺が化け物だから、そんな心の痛みは消えずにあるのに。
叔父が記憶を消した日から、俺の苦しかった時間がまるで無かったように振る舞う家族を見て、更に傷は広がった。
きっと二度と塞がることはないのだろう。
愛されたいと願うことも愛したいと思う事も。
叔父に使用を止められたのは闇の魔法。
影から無限に犬や動物を生み出し攻撃できる力だった。
生きていく理由も意味もない。
そんな時、俺は侯爵家令嬢の従者として着くように言い渡された。家族と過ごすのは苦痛でもあったので、すぐに日程を決め家を出た。
俺が傅くのはどんな方だろうか、らしくもなく少し心が動いた気がした。
紹介された令嬢は、輝く銀色の髪湖を映したように澄んだ青い瞳、白い肌。
この世のものとは思えない美しさで俺はひと目で恋に落ちた。
だが、実際口を開くと駄犬!汚らしい!などと苛烈な態度と言葉で俺を責め立てる。
『愛しい。憎たらしい。いつか彼女を膝まづかせてやる!力づくで手に入れて…、認めさせたい。愛されたい』
俺の中で仄暗い愛憎がてらてらと燃えあがっていく。決して消えない焔が…。
愛することは二度とないと思っていた心に歪んだ形ではあったが、執着が愛情らしきものが生じた。
けれど、前世の俺は彼女を手にする事は出来ずに喪った。
その後はどう生きていたのかわからない。
生きていたといえるのかもわからない。
そんな強い思いがこの魂には今もなお、燃えさかっている。
そんな俺が誰かを愛せるはずなどないのだ。
この世界にも、ビアンカはいないのだから……。