俺は「気持ちが落ち着くまででも……」そう言って、俺をふんわりと抱きしめ、背中をなでてくれる彼女に甘えてしまった。
なんだか情けない。
これほど感情に振り回されるタイプだと、俺自身知らなかったし思ってもいなかった。
彼女の持つ空気がそうさせるのか、そう思ったままに顔を上げみことの顔を見ると、彼女はふわりと微笑んだ。
「少しは楽になりましたか? その感じだとゲームお見せしたりお話するより、旅館に戻られて休まれた方が良いのかもしれません。 気が付かないうちに疲れが溜まってしまっているのかもしれませんか、、ゆっくり休んだほうが良いのかも…」
などと彼女は言う。
普段なら追いすがる女性に、辟易しているはずなのに彼女は何故かそうはなってくれない。
貴女になら振り回されても構わない…、心の何処かでそう感じるのに、彼女は俺を必要としてくれない。
前世の俺と似ていなければ、ここまで踏み込めたかもわからない。
情けないとは思いつつも、ここで引いたら彼女の懐にまた入れる自信がない。
「ありがとう。体調は問題ないのでゲーム見せていただけますか?」
そう言うと、「わかりました。辛くなったら言ってくださいね?」といってくれた。
みことは、誰のルートがいいかなぁ〜?と暢気な口調で彼女なりに考えている様だ。
「ハッピーエンドが良いですよね〜。せっかくなのでマクシミリアンのルートで進めてみますね!」
スマホで攻略サイトを開き、「ちょっと時短の為に、ズルしちゃいますね〜」と、ぺろりと舌を出す仕草も愛らしい。
ゲームを起ち上げると、オープニングが流れ見知った顔とキャストが流れていく。
ルミナティ魔法学園にヒロインである男爵令嬢シュミナ・パピヨンが登校してくる。
マクシミリアンの近くで転んでしまったヒロインは、マクシミリアンに助け起こされる。
思わずマクシミリアンの美貌に見惚れてしまう彼女。
「わたくしの従者に色目を使うなんて。どこのご令嬢なのかしら?」と面白くなさそうにビアンカが言い放つ。
確かに俺の記憶にもあるワンシーンだ。
ビアンカが苛烈な怒りであっても、俺に感情を続けてくるのが嬉しくて、あの女を好きなふりをしていた。
「ビアンカは悪役令嬢で…シュミナちゃんに意地悪するんです。顔はかわいいけど正確キツイんですよね……。
シュミナちゃんを助け起こすシーンのマクシミリアン、格好良くて大好きなんですよ〜! この頃はまだクールで表情出してくれないのですけど…」
みことはそう言いながら、ウットリとヒロインと俺とのやり取りを見ている。
多分前世の俺はそんな夢のような、甘やかな気持ちで彼女に接していなかった。ビアンカの関心が欲しかっただけに過ぎない。
みことの二人の仲を応援するような…そんな目線で語られてもどう返していいのかわからない。
少しだけ、ゲームを一緒に見ると言ってしまった事を、後悔したのは言うまでもない。