俺はふと考える。
転生しても何も変わらない…。愛しいと思う女性を陥れてまで、手に入れようとする浅ましさも、周りから囲い込んで逃げ道を無くさせるそんな人間性も。
そう思いながらも、その先のみことはあの明るさを失わず、その後も笑っていてくれるのだろうか…。
正直、こんなことに気づきたくもなかったが、あの笑顔が消えてもそばに彼女がいれば俺は幸せなのだろうか。
そして彼女は? そんな葛藤が俺を揺さぶる。
「あの…。良かったらご飯食べていきますか? 新鮮なお魚もあるし、お刺身さばくのは得意なんです!」
気まずい空気をなんとかしようと考えてくれたのか、みことがそんな提案をしてきた。
刺し身……、生魚……。これまで食したことが無いだけに、不安が強まるが……。彼女の手料理だといいのなら、どんなゲテモノ料理でも完食して見せなければ……。
そんな事を俺が考えていると…。
「あ……、でも旅館でもご飯出ますよね……。そろそろ旅館に戻られた方がいいのか……」
「いただきます!」
俺はみことの言葉を遮るようにして言い切る。
スープなどは俺が作らせて貰えば、二人で料理出来る……のか……。俺はそんなにガキではないし、断じて夫婦みたいだとか、新婚みたいで嬉しいなどとは思っていない……断じて……。
台所へと移動し、お米を炊飯器にセットし、スルスルと鯛と赤身の魚の塊や小ぶりの海老などの皮を、器用に剝いたり捌いていくみこと。
「鯛の頭ですが、私が出汁を取ってスープでもつくりましょうか?」そう言うと嬉しそうに「お願いします!」と笑うみことが愛らしい。
とりあえず、鯛の頭をよく洗う。そして塩をもみ込んで臭み取りのために時間を置く。
そろそろ良いだろうか……? 塩をよく洗い流し鍋を火をかけ沸騰したところで鯛の頭をいれて出汁を取る。
すこし出汁を取りすぎただろうか……、そう思っていると…。
「うわぁ!! お出汁美味しそうです! 少し味付け前に他の器に取り分けて、残しておいてもらってもいいですか?」
みことがすごく嬉しそうにそんな事をいうので、耐熱のボールを受け取り、出汁を取り分ける。
鍋の残りは頭を取り出し、長ネギと白菜などの野菜が目についたので少量分けてもらい火を通し、味噌を受け取り味付ける。
それなりの味にはなっただろうか、喜んでくれる味に仕上がっていることを祈るばかりだが…。
みことが嬉しそうに、鯛の切り身を少量薄く切り分け、練ごま…醤油…みりん…お酢…砂糖…、といった調味料を混ぜ合わせ、電子レンジで加熱していた。
冷めた頃に薄く切り分けていた切り身を漬け込み冷蔵庫へとしまう。
鯛の頭に残った身を使い、卵焼きでも作ってみるか……。そう思い卵を数個に取り分けていた足しを少量もらい、溶いた卵に入れる、鯛の頭に残っていた身を混ぜ込み、軽く砂糖と塩で味を調える。
目についた卵焼き器な油をいれ加熱し、卵を流し入れ焼いていく。確か巻いていくんだったか……?
うろ覚えな知識で作っているため、少し不安はあったがそれなりの形に仕上がったようだ。
「うわぁ! だし巻き卵ですか!?美味しそう!!」
その声に応えるように、炊飯器が炊きあがりを知らせた。