「みことはこのあと忙しいのですか?お時間があれば、私とお茶にでも付き合ってもらえると嬉しいのですが…」
警戒されたくないので、にこやかにそういう俺。
「はわっ!推しがめっちゃ笑顔でお茶に誘ってくれるとか……。課金…!課金…どこにすればいいのっ!?」
何故か一瞬財布らしきものを俺に差し出した気がしたが、気のせいだと思っておこう。
混乱したように、小さく呟くのが聞こえたので、「推しとはなんですか?」意味がわからないので、感情そのままに首をこてんと横に傾げ、きょとりとしたまま聞いてみる。
「ふぁ〜…、聞こえてますよね。ごめんなさい。大好きなゲームの大好きなキャラクターにマクシミリアンさんがとても似てて……!ゲーム画面からそのまま出てきたようなってくらいで、なんかテンションがおかしくなっててごめんなさい……。こんなの引いちゃいますよね……?」
ん?ゲームのキャラクターに似てる?
俺の生まれた地、スペインでも何度となく聞いた言葉だ。
「胡蝶の恋とか言う作品ですか?」
まさかな?と思いつつ口を開くと、キラキラした瞳で「ご存知なのですか!?その中に出てくる悪役令嬢ビアンカの従者のマクシミリアン・セルバンデスさんが、私本当にっ本当に大好きで!!名前や声まで似てるからすごくビックリしました!」
は?
悪役令嬢ビアンカと従者のマクシミリアン・セルバンデス?まさかな…、そう思いつつ質問を投げかけてみる。
「そのゲームだと、ビアンカ嬢が毒殺される展開なんてあったりしますか?」
「はい!確かパラディスコ王国って国の王女ミルカに毒殺される展開があった気が…!マクシミリアンさんもお好きなんですか!? 乙女ゲームっ!意外だけどなんだか嬉しいです!」
頬を染めて警戒を緩めたように、喋りだすみことを微笑ましく嬉しく思う。けれどそれとは別に、俺の前世がゲームの中とかどんな冗談だ…?一般常識だとありえないだろう。
「知人から聞いたことがあるだけなんだよ。だけど少し興味があってね」俺がそう言うとみことは嬉しそうに笑った。
一応確認のために聞いておくか…。
「ゲームのマクシミリアンは、魔法を使えたりするのでしょうか?」
「確かマクシミリアンの魔法は闇と火と風だったと記憶してますけど。でもマクシミリアンの幼少期の回想シーンで、あの闇魔法で黒い犬が影から、たくさん出てくるんですけど。あれが子犬や子猫で出てくるならもふもふ天国で素敵だなぁって思ってました!だって恐れられる魔法だって使う人の心次第でしょう?」
前世で恐れられて忌み嫌われた力が素敵だと……?
思ったこともない考えにもまた動揺した。
俺の前世の世界がゲームの世界?
あの苦悩がゲームの世界だとでもいうのか?
俺は困惑する気持ちをうまく隠せているのだろうか?自信は無いが、今はみこととの時間に集中しようとひとつ深い深呼吸をつくしかなかった。