「立ち話も何なので、みことのおすすめの喫茶店などあれば、教えていただけますか?」
「私の好みでいいんですか?甘いものとかはお好きですか?」
俺はニコニコとみことにそう聞かれ口ごもってしまう。食べれないわけではないが進んで口にしたくはない。
「ん?あまりお得意じゃないですか?」
彼女は俺の様子を見て、あまり得意ではないと気がついたらしい。
「あ!近くにケーキやローストビーフのサンドとか色々食べれるお店があるのでそこでお話しますか?こっちなのでいきましょうか。確か公式設定のマクシミリアンも、お野菜とか甘いもの苦手って書いてありました。そんなところまで似てるなんてとても不思議ですね!」
彼女はそう言って、お店への道を案内してくれる。
「ユウ君以外で、胡蝶の恋のお話に付き合ってくれる人がいるとは思わなかったなぁ〜、嬉しい!楽しい!」
…と、みことは小声で無意識に口にしているようだが、ユウ君…男の名……か。
仄暗い焔が心の中で燻るのを感じる。
このままどこかに連れ去って、手折ったら俺だけのものになるか?
今はまだ駄目だ…この感情を圧し殺せ。知り合ったばかりだ嫌われてしまう、逃げられてしまう。
何よりこのたおやかで眩しい笑顔が潰えてしまう。
俺は彼女を必ず手に入れると、じくじくと痛み続ける己の心に誓ったのだ。
どんな手を使っても手に入れたい、けれど愛らしいあなたを壊したくもないとも思う。
相反する気持ちが鬩ぎ合う。
芽生えたばかりの感情など、隠しきれるはずだ…。
天真爛漫で人を疑うことを知らない彼女になら。
真綿のように、貴女を包んで捕まえて離さない、逃さない。いつか俺以外の男の名前など、口に出せないように俺だけでいっぱいにしてやる。
『どうしたら俺のことだけを考えてくれる?俺だけを見てくれる?どうしたら俺だけを愛してくれるのか…?』
けれど、感情は理性よりも強欲で素直らしく、そんな焦燥が俺の心を掻き乱す。
「大丈夫ですか?なんだか辛そう……。熱でもあるのかな?屈んでくれますか?」
みことの声で我に返る。
無意識に立ち止まっていたのか…。
「え?屈む??」
咄嗟のことで理解できなくて、つい聞き返してしまう。
「あ、マクシミリアンさん、日本語流暢だから、つい日本語でたくさん話しかけちゃってますね。えーと…、こう身体を低くすることを言うのですが……」
…と、彼女はリアクションをつけて教えてくれる。
言葉が理解できなかった訳ではなかったのだが…、と思いつつ、「こうですか?」と素直に従う。
「ちょっとそのままでいてくださいね」
そういった彼女の顔が、どんどん俺の顔に近づいてくる…!?気がつくと彼女は、俺の額に自身の額をつけていた。
「熱は無さそうですけど……」
「これは何をしているのかな……」
近すぎる距離に顔がどんどん火照ってきてしまう…。
けれど意図がわからないから、どう動けばいいのか測りかね、素直に聞いてみることにした。
「ふぇ…? ……はわわっ!! ごめんなさい!家族が熱を計る時にいつもこうしてくれてて……、つい癖で…。会ったばかりなのに、私何してるんだろっ。もぅ恥ずかしいぃ〜!」
彼女はぴょんと後ろに飛び去り距離を開けると、両頬に手を当てている。健康的に焼けた小麦色の肌に赤みがどんどん増していき、本当に愛らしい。
「私を心配してくれたのですね、みこと。嬉しいです!」
俺は彼女が心配してくれた事、触れてくれた事が嬉しくて彼女に触れたくて、思わずみことを抱きしめ額に幾度もキスを落とす。
あぁ、なんて心地良いのだろう。このまま離したくないな……。
「くっ……、イケメンめ……。って…な?き、キスされた!?なんでぇ…?」
真っ赤になってフリーズしているみことは、俺の腕から逃げることも出来ず、ただ小さく呟いた。