私の大好きな乙女ゲーム「胡蝶の恋」の公式完全ガイドという私にとってのお宝本…。
待ちに待った本が入荷したと、行きつけの本屋さんから連絡が来たのだ。テンションが上がり、海女としてのお仕事を終えてすぐに、自宅でシャワーを浴び、ご飯は帰り道で食べて帰ればいいわね!とこの島に一軒しかない本屋まで駆け出した。
お店の店員さんに「いつもありがとう!移動のお店来たときに代わりに買って置いてくれるから助かるよ!」そういい本を受け取ったのだ。
いつも買ってる通販は、運が悪く予約締め切りのあとだったのだ。
『家に帰ってすぐに読む!うぁ〜、今すぐ出して読みたいっ!!でも我慢しなきゃ!マクシミリアンのスチルゆっくりおうちで見よう!幸福感に浸るのよ!』
スキップでもしそうな勢いで、お店を出ようとしていたせいで、前にいた大柄な断裁に気が付かず、ぶつかってしまった。
私は155cmという小柄な身長もあってか、勢いを消せずに後ろに飛ばされそうになった。その拍子で本まで落とすとか…ついてない…。
その人が転ばないように背中に手を回して、預けてくれたおかげで私は転ばずには済んだみたいだった。
手にしたばかりの宝物の本を落としてしまったけれど…。
『はわわ…、ぶつかって助けともらうとか!浮かれすぎててだめだなぁ……』
そう思いつつも前方不注意でぶつかった私にも原因があるのだから、謝ってから拾おうと腹を決める。
「あぁ〜、ぶつかってしまってごめんなさい!欲しい本を買えて浮かれてました。それに助けていただいてありがとうございます!」
そうお詫びとお礼を伝えてから、ぶつかったらしい男性にもう一度、「本当にごめんなさい」と伝え顔を上げてみた。
感想はまずすごく背の高い人だなぁと思った。
褐色の肌に黒髪、クールな眼差しをした黒い瞳。
カジュアルな白いシャツの上に濃いめの色合いのグレーのベストをボタンはとめずに羽織ってる。
すっと足首の方で細くなるデザインの黒いトラウザーズ、きれいに磨かれたモンクストラップデザインの黒い革靴。
ラフなのにおしゃれで格好良すぎる。
思わず眼福と見惚れているうちにある事に気がついてしまった……。あまりにも信じられない出来事に、体が少し震えてしまう。
ゲームの世界から、大好きなマクシミリアンが目の前に現れたと言われたら、そのまま信じられる程にそっくり!
「マクシミリアン!私の…最推しっ!!」
呼吸ってどうやってするんだっけ?
心臓の動気が早すぎて苦しいよ。
鼓動よ止まれ!とか意味不明な思考に走る私…。
「推しが…、推しが…」そんな事を口にしてるのも気がついていなかった。
動きを止めていた私に、マクシミリアン似の彼は話しかけていたらしいけど、全く余裕がなくてきっとは美声であろうその声は、私はの耳にはいってこない…。
どれくらい呆けていたのかわからないけど、不意にマクシミリアンによく似た男性の美しく長い指が、私の顎に添えられ、クイッと緩やかに上を向かされた。
身長差があるので、かなり上を向かされている気がしますよ?素敵なお兄さん?
それでも屈んでいるのか、息が触れ合いそうな近い距離で彼と目が合う。
私って欲求不満だったのかな?と思う。そうでもなければこんな現実とか早々ありえないでしょう!?とか意味が分からなすぎて、思考が迷子になってる気がするわね…。
驚きのあまり奇声を上げた気がするけれども、思考も感情すら今の状況に全然追いつかないのだ。
頬や耳が熱くなる…。
本当になんだろうこの状況は。
私、やっぱり白昼夢でも見てるのかな…?
それだと本を買いに来た事自体が夢だったのかな……?それなら、少しくらい仲良くお話してもバチは当たらないかな?
顔が真っ赤に染まっているのを自覚しながらも、大好きな最推しそっくりの彼に、笑顔を向けられ、私は混乱のあまりどうする事もできなかった。