夢無き少年のVtuber物語 ~Dream Stage Live!~   作:瀧野瀬

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第一章 夢無き青年がVtuberを初めてみました
夢無き人と夢追い人


 俺は何度も考えたことがある。

 人はどうやったら、成長するのか。何処まで努力をすれば、欲しいものは手に入るのか。どうすれば、まるで観光地の夜景のように綺麗な夢と言うものが手に入るのかと……。その輝かしい夢と言うものを俺は欲していた。

 

 何故、俺がそんなものを欲していたのかはやはり祖父の遺言が俺の心に沁みついているからだろう。

 そう、あの言葉が……。

 

「彰斗よ、そう悲観するな。お前の人生はまだ始まったばかりだ」

 

 病室にいた祖父に俺は毎日のようにお見舞いに行っていた。偶に「そんなに来なくてもいい」と言われることもあったが、俺は気にせず祖父の部屋に行くのであった。

 

「お前はまだ若い。だから、今はゆっくり悩め。何れ、お前は本当に自分が成し遂げたい夢と言うものを手に入れることができるはずだ」

 

 それを言い切った瞬間、祖父はあの世へと旅立った。あのとき、祖父に言われた言葉は今でも覚えているが……。未だそんなものを手に入れるに至っていない。爺ちゃんが生きていたら、俺のことをきっと怒るだろうなぁと思いながら、今日も今日とて重たい腰を下ろして昔嵌っていたゲーム実況を見る。目を擦りながら、凝視しゲーム実況を見る。かつては俺もこんな風に楽しくゲーム実況をやっていた。ただ、いつからだろうか。俺は心の底からゲーム実況が楽しくできなくなってしまったのだ。

 

 なんでかは分からない。だが、よくこんな話を聞くだろう。歌が得意な人間がいつしか歌を上手に歌えなくなりあの子は昔は歌が上手かったと言う話や若い頃のスポーツ選手を見てあの頃はよかったのに……。と落胆する人々の姿を……。

 

 そんな人達と俺を同列に語るのは、烏滸がましいと思うが例えるならこれが一番簡単な話だ。自分でも分からないが、きっとこんな感じで年を取る度にゲーム実況と言うものが楽しくなくなってしまったのだろう。

 

 しかし、本当にそうだろうか……。俺はこうしてゲーム実況の動画を見る度にまたあの頃のように活動したいと言う気持ちもあるのだ。こうしたジレンマを抱えながら、俺はもう1年も動画を投稿していない。

 

 

「飯ねえのかよ……」

 

 冷蔵庫の扉を開けると、過去の自分を疑いたくなる。冷蔵庫は空洞になっており完全に電気代だけ取られていると言う意味のない状況になっていた。すぐに自分の机の上に置いてある財布を確認する。財布の中身を確認すると、それなりには金は残っているようだ。

 

 仕方ない、買ってくるか……。

 青のシャツを着ていた俺は、その上に黒のパーカーを着る。それからして、マンションを出て鍵を閉めて俺は24時間やっている画期的なコンビニに向かうのであった。外に出ると、暑さがこれでもかと言うぐらい自己主張してくる。

 

 

 ひたすらコンビニを目指し、何も考えずに歩いているそんなときであった……。俺の耳に微かな歌声が入って来る。路上ライブをしている人なんて珍しくはない。大変なんだろうなと思いながら、俺は目の前を通ろうと思ったとき……。

 

 

 脳の思考が歌声に完全に持って行かれた。その歌声が素晴らしいものだったからなのか、俺はその歌声に完全に体を持って行かれたのだ。そして、当然次に移る行動は分かりきっている。人間と言うものは好奇心でその歌声の持ち主が誰なのか、気になり始める。俺も同じように、その歌声の持ち主の姿を確認する。

 

「七瀬……?」

 

 その姿に見覚えがあった。

 俺が歌声に惹かれていたがこのときなんとなく自分自身で理解できていた。そういうことか、知っている奴の歌声だったから俺の耳は反応したのか。

 

「彰斗……」

 

 俺の姿に気づいたのか、七瀬 桜が俺を見る。まるで、もう再会するはずのなかった人間と再会できて驚いているかのようだ……。実際、そうかもしれない。俺達は高校を卒業してから二度と会うことはないだろうと思っていたからだ。

 

「驚いたな、お前がこんなところで歌ってるなんてな」

 

 俺は思っていたことをそのままに七瀬に伝える。七瀬は俺の言葉を聞いて、恥ずかしくなったのか頬を赤く照らしギターを片付け始める。

 

「なんだ、もう止めるのか?良かったのに」

 

 俺は丁度あった壁に寄りかかりながら、七瀬に言う。七瀬は、ギターを片付けながら、「良かった」と言われたとき体の動きが一瞬鈍くなっていた。

 

「良かった、私の歌が?」

 

 まるで正気でも疑うような言い方だ。俺の耳は腐ってもいねえし、脳も腐っているつもりはない。

 

「そんな耳疑うようなことを言ったか?」

 

「歌褒められたこと……そんなにないよ」

 

 あんなに上手だったのに、褒められたことがそんなにない……?この言い方的に七瀬が路上ライブしていたのは、これが初めてではないはずだ。歌声も何なら可笑しくはなかったし何処が駄目なんだろうか。

 

「あんないい歌声なのにか」

 

「ほ、褒め過ぎだってば……。私なんてまだまだだし」

 

 七瀬は音楽が得意だった。得意なのは、ギターボーカル。あいつの歌っている姿を見ているとき俺は、いつもギターを演奏しながらよくあんな綺麗な声で歌えるなと、俺は凄いと感じていた。いつかとんでもないビッグになるんじゃないかと思いながら俺はあいつのことをよく見ていた。

 あのときの俺の眼差しは、きっとあいつが羨ましく見えていたんだろう。希望に向かって頑張っているあいつが……。

 

 

 それから、俺と七瀬は久々に会ったこともありこいつの知り合いが経営しているカフェにやって来る。

 

 

 

 

 カフェ……。

 木材でできたような床と壁でできたような自然を体験できるようなカフェ。その作りに都会では滅多に見れないような場所だなと思いながら、俺は店内を見る。それと同時に、「いらっしゃいませ」と言われる。

 

「別にこんな場所じゃなくても良かったんじゃないのか?」

 

「安いところでも話せるけど、こういうところの方が落ち着いて話せるから」

 

 落ち着いてか……。

 確かに、周りにいるお客さん達はまるで静けさを求めてやってきたかのような人達ばかりだ。しかし、このカフェの内装を見ると俺には少し賑やか過ぎる気もしていた。その為、七瀬は何の躊躇もなく案内された席に座り、俺はまるで田舎から都会に初めてやってきた人間かのように周りをキョロキョロしながら座る。

 

 内装は、カウンターのようなものがあり、コーヒーを淹れているところを間近で見られるようになっているようだ。更に、席と席の間にはところどころアクアリウムがありより一層都会ならではの景色の体験の仕方が置かれている。

 

「こちら、メニュー表になりますね」

 

 店員さんがテーブルの上にメニュー表を軽く置き、立ち去って行く。店員さんの雰囲気もこの店にはかなり特色溢れるものとなっており内装と一致しているような気がしていた。

 

「それにしても久しぶりだな、七瀬」

 

「そうだね。連絡くれても良かったのに……」

 

 こいつと会ったのは卒業式以来だ。卒業式以降も時々連絡は来ていたが、暫くして七瀬の方が忙しくなってからは連絡をしなくなった。

 

「悪い……。忙しそうだったから……」

 

 多分、忙しそうにしていたからと言うのは嘘だ。さっきも言っていたが、俺は希望を持っているあいつが羨ましかったんだ。だから、七瀬のことを思い出さないようにする為に俺は敢えて七瀬とは連絡を取らなかったんだ。

 

 俺は、他人が思っている以上に面倒な人間だ。

 

「別にそんなに気にしてないからいい。彰斗は何頼む?」

 

 七瀬がメニュー表を見て決め終えたのか、俺にメニュー表を見せて行ってくる。適当にメニュー表を見た後、七瀬に此処のオススメを聞いた後、俺はパンケーキとコーヒーのセットを頼むことにした。ベルを鳴らすと、店員さんがやって来て俺と七瀬の注文したものを書きこんでいた。店員さんは、メニュー表を持って行き戻って行った。

 

「彰斗って今何してるの?」

 

「何もしてねえ」

 

 夢なんてものがなかった俺は昔から風の向くまま行動していた。ゲーム実況だってそうだ。やってみたいって思ってやってみたら意外に面白くて自分と言う人間を見てくれる人が多かった。だから、俺はゲーム実況を続けることができた。

 

「そうなんだ。私と一緒だね……」

 

「一緒じゃねえだろ。今のお前がどんな感じかなんて俺は知らないけど、あの感じを見ると今も頑張ってるんだろ」

 

 あの路上ライブを見る限り、今も七瀬が頑張っていると言うのが伝わって来ていた。

 

「一緒だよ、オーディション何度も受けたけど駄目だった。私の歌には何か一つ欠けているんだってさ」

 

 七瀬の歌に一つ欠けているものがある……?そんなものがあるのだろうか。俺は七瀬の歌が完璧のようにも聞こえるから分からない。

 

「そんなことしているうちに、路上ライブをやってどうにか気分紛らわせてるって感じ……。馬鹿みたいだよね」

 

「馬鹿じゃないだろ。今もこうして歌で頑張ってるんだからな」

 

 七瀬は自虐しながら笑っていた。そんな七瀬を見ながら、俺は真剣に七瀬の言葉に返す。

 

「彰斗は相変わらず優しいんだね。それで、路上ライブしているときあるとき違う夢を見つけたんだよね。彰斗はさ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「Vtuberって知ってる……?」

 

 Vtuber、アバターを用いて、もう一人の自分自身を作り出しそれを配信もしくは動画を投稿する人たちのことだ。ゲーム実況界隈に居たから多少は知っているつもりだ。だが、あまり動画や配信などを見た事がない為どのような人達なのかは知らない。ゲーム実況をしていた人間がVtuberとなったと言う事例はかなり多いとは聞くが……。

 

 俺は七瀬の問いに「多少は」と答えると、七瀬は続ける。

 

「初めはあんまり興味なかったんだけど……。Vtuberの動画や配信を見たら私達もこんなふうになりたいって言う憧れが湧いてきた」

 

「だから、Vtuberになろうと思う」

 

 憧れ……。その理想から七瀬は新たなる夢を見つけた。そんな七瀬の姿を見て俺は何をやっているんだろうかと思っていた。未だに夢を見つけることが出来ず、毎日毎日駄目な人間のような暮らしをしている。こんな暮らしをいつまで続けるつもりなんだろうか……。

 

 俺は水槽越しに見える自分自身に溜め息を吐いた。

 

「夢見つかってよかったな。頑張れよ、七瀬」

 

「ありがとう。彰斗もVtuberに興味ない?」

 

 その言葉に一瞬脳の思考が停止する。その言い方だと、まるで俺とVtuberをやって欲しいと言っているようにも聞こえたからだ。だが、俺にVtuberと言うものが果たして向いているだろうか。無理だ、俺に向いている訳が無い。

 

「あっ、彰斗あんまりVtuber知らないだろうからちょっと待って」

 

 七瀬がそう言いながら、バックからタブレットを取り出して動画サイトでVtuberの歌動画を検索し始める。俺がVtuberと言うものをあんまり知らないから、七瀬は誰かの動画を見せようとしているのだろう。

 

「あった。わりと彰斗好みの女の子だと思う」

 

 俺好みの子ねえ……。映し出されたのは、女子高生ぐらいの女の子だろうか。薄めのサラサラとしてそうな黄色ロングの髪。透き通る水晶のような綺麗な緑の瞳。着ている服は白のワンピースだろうか……。

 

「彼女の名前は、バイオレット。皆に小さな幸せを届けることが好きなんだって」

 

 この配信は、どうやら歌枠のようだ。既に彼女は3曲歌え終えているようだ。

 

「それじゃあ、皆行くよ。4曲目!」

 

 彼女は4曲目を歌い出す。それと同時にコメント欄が激しく動き始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――そして、その瞬間。

 俺の心は突き動かされた……。彼女の歌声は素晴らしかった。これが人間が出せる声なのかと……。思わず、自分の耳が腐ってしまっているのではないのかと思ってしまうほどだ。こんなにも、凄い歌唱力がある人間がいたのか……。

 俺の心を突き動かしたのはそれだけじゃない。コメント欄もだ。彼女の歌声は本物だったのを証明するかのように、コメント欄は魅了されているかのような感じだ。お世辞も多少あるのかもしれないが、俺はこのコメント欄と彼女の姿を見て思った……。

 

 俺のやりたいことが見つかったのではないのかと……。爺ちゃんが言っていたあの言葉通りのものをようやく見つけることができたんじゃないかなと……。なにより、こんなにも多くの人を虜にしてしまう配信。俺はそんなことをしてみたいと今のこの心の中で思ったのだ。衝動的とは言え、今までとは比べるほどにない心の鼓動が早くなっていたのだ。

 

「なぁ……七瀬」

 

 配信を少し見た後、俺は七瀬に言葉を震わせながらある言葉を言う。

 

「俺もVtuberをやりたい」

 

 七瀬はその言葉を待っていたのようにニヤッと笑う。

 タブレットをバッグに戻し、片付ける。

 

「彰斗ならそう言うと思った」

 

 夢の無かった俺があそこまで突き動かされたのは初めてだ。俺はすぐにこれだと思ったんだ。これなら、俺はやれるんじゃないかと……。

 

「じゃあさ。一週間後、此処の事務所行こう」

 

「は?一週間後?」

 

 七瀬の言葉に一瞬戸惑う。

 流石に早すぎるだろ……。

 

「っそ、良かったら誰か誘ってみてくださいって言われたんだけど誘う相手もいなかったから、今日久々に彰斗と会えたから彰斗を誘ったの。もしかしたら、彰斗の夢が見つかるんじゃないかなって思って」

 

 俺の夢がか……。此処で断ったら、もう二度と俺の夢が見つからないかもしれない。なら、此処は迷ってる場合じゃない。即決即断だ。覚悟を決めよう。

 

「そうか、分かった」

 

 七瀬が「じゃあ、明日よろしく」と言いながらコーヒーを一瞬飲み、顔を顰める。すぐに砂糖をコーヒーの中に入れまくる。俺はその姿を見て、こいつこの癖まだ治ってなかったのか……と呆れている。

 

「そんなに砂糖入れるならコーヒー飲むなよ……」

 

「五月蠅い、あんただって無理して飲んでんじゃん」

 

 七瀬が「クソ甘」と言いながら、コーヒーを飲む。しかし、その表情は嫌がっているわけではない。どちらかと言うと、嬉しそうに飲んでいる。ガムシロ、砂糖一つで充分だ。正直言って、これでも俺は苦いんだけど……。だから、七瀬に無理して飲むなって言われるんだけど。ただ、苦みが少しでも残ってる方がコーヒーは飲みやすい。

 

「余計なお世話だ。パンケーキ少し食べるか?」

 

 話しているうちに届いていたパンケーキを切り分けようとする。

 

「うん、食べる」

 

 俺は七瀬のケーキ皿の端っこに置く……。七瀬はケーキを上手に切り分ける。

 

「ほら、私のケーキ此処置いておくね」

 

 食べたいとは言っていないが、貰えるものなら貰っておこう。

 七瀬が切り分けたケーキを俺の皿に乗せる。ケーキを乗せるとき何故か七瀬の顔が赤くなっていたが、俺は特に気にすることはなくケーキを食べる。

 

「美味いな……」

 

 口の中にクリームとふわふわとしたスポンジの食感が広がる。こんなケーキ今まで食べたことはない。

 

「でしょ……。彰斗甘いもの好きだから絶対気に入ると思った」

 

 七瀬は俺が切ったパンケーキを口に入れながら「美味しい」と小声で言いながら、食べている。どっちも美味いから俺は満足かなと思っていると、パンケーキを食べ終える。七瀬の方を見ると、一瞬幸せにしながらケーキを食べているのが見え、俺が見ると一瞬で表情を直していた。

 別にケーキを食べているときに幸せを感じるなら、別にそういう表情をしていてもいいのに……。と思いながら、俺は七瀬の方を見ていると七瀬も食べ終えて、お互いに小声で「御馳走様でした」と言い、コーヒーを飲み終える。それからして、会計のレジのところに行く……。

 

「支払い俺がするから」

 

 こんな美味い甘いものを食べさせてもらったんだ、こっちが払いたい気分だ。七瀬は「ありがとう」と言いながら、出そうとしていた財布をバックの中に入れる。それから、俺と七瀬は店を出る。この後、帰るのかと思っていたが……。

 

「彰斗、少し公園行かない?」

 

 俺は七瀬の提案に了承し、俺と七瀬は公園に行くのであった。

 

「彰斗、今日はありがとうね」

 

 公園のベンチに座り、七瀬は水を飲みながら言う。七瀬の顔を見ると、満足したかのようにこちらを見ている。

 

「こっちこそ、お前のおかげで夢が見つかりそうだから、ありがとうな」

 

 まだ本当に夢と言えるものなのかは、分からないけど……。

 

「うん。そうだ、折角だからさ……。彰斗一曲歌ってみてよ」

 

 いきなりそんなことを言われた俺は驚きながら七瀬に「は?」と情けない声で言う。

 

「彰斗が高校生の頃一回歌聞いたことあったじゃん?あれ、何気に良かったからさ。もう一度聞いてみたいんだよね」

 

 俺の歌声か……。確かにこいつに聞かせたことはあったが……。正直言って、人に聞かせられるほどの歌声なんかじゃない。だから、聞かせるのは嫌だけど……。この先Vtuberとなった場合、歌を聞かせることもあるんだろう。なら、七瀬に一つ感想でも言ってもらうとするか。

 

「情けない歌声でも笑うよな?」

 

 七瀬は「笑わないよ」と言いながら、俺が歌うのを待っている。何を歌おうか決めているとき……。俺の頭の中でこいつの前で一回歌った歌を思い出す。

 

 

 そう、そのタイトルは……。

 夜明けの最前線……。

 

 

 

 DAYBREAK FRONTLINE……。

 

 

 

 

 

 

 ある程度歌終えて、七瀬の方を見ると七瀬の目からは涙が零れている。

 

「お、おい……大丈夫か?」

 

 七瀬が目から出ている涙に気づき、すぐに手で拭き始める。

 

「大丈夫……。彰斗やっぱ凄い歌上手いじゃん……」

 

「そうか?俺上手くないと思うんだが……」

 

 俺の歌を上手いと評している七瀬。あのときも七瀬は俺の歌を上手いと言ってくれた。七瀬はあんまりお世辞を言わない人間だ。だから、上手いってのは間違いないだろうが……。俺的に上手いのか分かっていない。

 

「……上手いよ。本当に今日はありがとう、彰斗」

 

 七瀬は笑顔で言いながら、再び満足した様子で俺の方を見る。俺はそんなことを言われて悪い気はしなかった。寧ろ、嬉しかった。人に褒められたのは久しぶりだったから……。

 

 

 

 

「ああ、これからよろしく頼むぜ七瀬」

 

 褒められたことを噛み締めながら俺は自分でも分かるぐらいの笑顔で俺は七瀬の方を見る。すると、七瀬も元気な笑顔でこっちを見てくる。それからして、俺と七瀬は手を握り握手をするのであった。

 

 

 

 

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