夢無き少年のVtuber物語 ~Dream Stage Live!~ 作:瀧野瀬
「来たよー葵!」
元気いっぱいな声で部屋の玄関にいたのは多分バイオレットさんだった。
「もう来たのか早いな」
夕食の準備を終えて、食器によそる準備をしていた葵先輩は俺に任せてバイオレットさんのところに行くのであった。
「走って葵のところ来たからね」
「外大雨降ってるんだから危ないだろ」
「そうかなぁ?」
葵先輩は、バイオレットさんにタオルを渡して頭をゴシゴシしているようだ。
「あれ、もしかしてやっぱり男の子部屋に呼んでた?彼氏とか?」
「あいつは違う。二期生の奴だ」
何処をどう見たら、彼氏に見えるのだろうか……。
ああ、でも部屋とかに居たらそう思うのは無理もないか。
「二期生!?じゃあ、キミが天喰 焔君!?」
バイオレットさんが俺のことをよく見ながら言う。
「おっと忘れてた!初めまして、私の名前は橘 菫!バイオレットだよ!」
家にあがって来た菫先輩が俺に自己紹介をしてくる。俺も自己紹介を返す。
菫先輩がどんな人なのかは一視聴者として気にはなっていたがどうやら配信中の菫先輩とそんなに変わりないようだ。俺は少し一安心していた。
「あっそうだ!この前の耐久配信面白かったよ!」
あれを耐久配信と呼んでいいいのだろうか……。
俺はそんなことを思っていた。
「それにしても珍しいね。葵が男の子泊めるなんて」
「外は大雨が降っていたから偶々事務所から、家が近い私の家に泊まらせてやろうと思っただけだ」
「それ以上に意味はない」と言いながら、菫先輩にシチューが入った器を渡している。
「いただきます!」
菫先輩が言った後、俺も「いただきます」と言い葵先輩は小さく言う。
「やっぱ葵の料理は美味しいなぁ!二週間ぶりだよ!」
よく葵先輩の料理を食べに来ているのか、そう言う菫先輩。
「彰斗、料理大丈夫だったか?」
葵先輩が口にあったのか気になるのか俺に聞いてくる。
「美味しいですよ」
俺は葵先輩が作ってくれたホワイトシチューを食べ始める。
味は普通に美味かった……。料理しているとき凄く男みたいな料理の仕方をしていたが凄く美味かった。葵先輩は素っ気なく言葉を返していたが、頬は緩んでおり笑みを見せているのに俺は気づいた。シチューを一気に体に流し込み、俺はお代わりをすると葵先輩は何も言わず装ってくれた。俺はシチューを食べ続け、葵先輩達と話すのであった。
――夕食を済ませた後、葵先輩は風呂を入れてくれたまでは良かった。そして、一番最初に入っていいと言われ入って出て葵先輩が入った俺は菫先輩にこう言われたのである。
「葵はいつもお風呂から出たとき下着で出てこようとするから気をつけてね」
俺はその言葉に一瞬動揺するが、すぐに正気を取り戻す。そんなことがあり得るのだろうか?と思っていると、
「いい湯加減だったな」
葵先輩が風呂からあがってきたのか、菫先輩が言ったように下着で出てきたのである。
「葵ー!駄目だよ、男の子いるんだし下着で出てきちゃ……!」
「……ああ、そうだったな」
後で菫先輩から聞いたのだが、この人がいつも部屋にいるときは下着で出ている癖があるらしい。因みに、これも後で知ったのだがこのことは葵先輩の視聴者なら知っている事らしい。普通嫌じゃない……?誰も居ないからって女の人なのに下着でいるって……。いや、男でもヤバいけど……。
「仕方ない、ジャージを着るか……」
何故か葵先輩は嫌そうにしながら渋々ジャージを着る。
菫先輩は俺に対して「ごめんね」と言っていた。葵先輩は、俺にベッドで寝るか?と聞いて来たが、流石に人のベッドで寝るのはマズいだろうと思ったが、「子守歌を歌ってやろうか?」と俺に聞いて来たがそれを聞いていらないですと言い、俺は椅子で寝ることにした。
「おやすみー、彰斗君!葵!」
結局、菫先輩も葵先輩の家で泊まることになり葵先輩のベッドで葵先輩の隣で寝るようだ。葵先輩と菫先輩って仲凄くいいんだなぁって思いながら俺は今日あったことを振り返ったりしながら寝ようとしていた。ただ、人の部屋と言うこともあって眠るにはかなり時間が掛かった気がする。
◆
「じゃあね、ばいばい!」
――朝になり、私は今彰斗を見送っている。
菫は元気よくあいつに別れを告げていた。別にまたいつか会えるだろと思いながらも、私はあいつに手を小さく振っていた。
「ねぇ、葵!これからカラオケ行かない!?」
いきなりそんなことを言い出した菫。
「此処ら辺だと朝やっているところ少ないぞ」
私は調べながら菫に言う。
しかし、偶には良いかと思いながら私は「行く」と告げる。
「彰斗君、良い子だったね。でも、やっぱり私の気のせいかな。葵と似ているような気がしていたんだよね」
彰斗が私に似ているか……。それは私も思っていたことだ。あいつは知らないだろうが、私はあいつの姿を事務所で見かけたことがある。直接話した事は無いが、あいつが事務所から出るところを私は目撃したことがある。そのときに思った。
そう、こいつは私と似ていると……。
私は少し特殊な人間だ。人の顔を見ただけでその人間が今までどんな人生を歩んできたのか何となくだが分かってしまうのだ。昔、それを何となく言った事があって気味が悪いように思われた記憶がある。そんなことは今となってはどうでもいいが、当時は凄く傷ついた。でも、今は気にしていない。
だとすれば、私はあいつに興味が湧いたと言われたとき私は嬉しかったのだろうな。あんな風に人が私に言ってくれたのは初めてだったから。
「他の二期生の子も良い子なんだろうね!凛ちゃんなんて私のファンなんだよ!嬉しいよね!あんなふうに私と一緒に歌いなんて言われるのなんて!」
風月 凛のことか。
きっとあいつはこの界隈に憧れいっぱいで入ってきたんだろうな。
「……そうだな」
「葵は楽しみじゃないの?これから増えてくる後輩達と絡むの?」
彰斗とのコラボ配信はあれだったが……。多分、あれが全然駄目だったのは私がコミュ障とやら依然にアイドル時代の人間関係がトラウマになって居るからと言うのもあるのだろう。そして、なによりアイツのようにならないか心配なのだ……。
「もしかして、伊織のことを思い出して気にしてるの?」
菫に気にしていることを言われた私はただ黙っていることしかできなかった。伊織、あいつに無理をさせてしまったのは私の責任だ。
「すまない、菫」
「いいよ、葵のせいじゃないんだから気にしないで」
その後、私達の間で沈黙が続いていた。あいつの話をしていたからと言うのもあるだろうが、お互いに何を話そうか手探りな感じになっていたのだ。まるで初対面の人間がお互い当たり障りない話をするかのように……。
「葵、今日は何歌う?葵の曲歌ってもいい?」
「私を殺す気か。頼むから歌うなよ」
こいつやっぱり、私の曲歌う気満々だな。
そんなことを思いながら、カラオケ店に入り部屋番号が書いた紙を貰い、私と菫は部屋に入るのであった。
「さてと、さっそく葵の曲をっと……!」
「おい」と言おうとした瞬間、曲が流されてしまい地獄が始まるのであった。それから、私も何故か付き合わされ歌わされ最悪な目に遭うのであった。今日は厄日だな。
「葵はやっぱ歌っているとき輝いているよね」
そうだろうか、確かに私は歌っているとき輝いていると言われることが多い。視聴者からもそんな感じのことをよく言われることが多いけど……。実際、そうなんだろうか。次に私が曲を入れる。
「そうだ、今度葵私とVtuber交換してみようよ!」
いきなりなんてことを言い出しているこの女は……。と思いながら、私は歌を入れる。
「何を言っているんだ、お前は……」
「だって、葵って声真似も得意じゃん!」
確かに私は一時期声真似主及び歌い手をやっていたから得意ではあるが、歌い手はともかく声真似主は若干黒歴史だから声真似はやりたくないと思っている自分がいる。
「ほら、やってみてよ!私の挨拶!」
「やらん……」
と言いながら、私の番になったので歌い始める。
歌い終えると、菫が笑顔で拍手をしている。
「やっぱ、葵の歌はいいなー。幸せを感じながら歌っていると言うのが伝わって来るよ」
そうなんだろうか……。
歌いながら飲み物が入っているグラスを見ると、確かに嬉しそうに歌っている私の顔をが映る。そうか、私はやっぱり歌っているのが楽しいのか。じゃあ、今日と言う日をとことん楽しまなくちゃいけないな。
「菫、今日は喉が潰れるまでやるぞ。覚悟しろ」
「えぇ!?そこまでやったら配信とかに響いちゃうよ!?」
確かに配信とかに響くかも知れないだろう。だが、そのうちやるかもしれない歌枠耐久配信に備えると言うのも悪くないのかも知れないだろう。と思いながら、私は今日喉が潰れるまで歌い続けるのであった。
「葵私喉ヘトヘトだよ」
「私もだ」
会計を済ませた私達はお互いに喉を潰した状態で店を出る。菫は笑みを浮かべながら、私を見ていた。多分、私も歌っていた時みたいに笑みを浮かべていたと思う。
「この後少しカフェにでも行くか?」
「うん、行こうよ葵」
菫は首を回しながら、声を出しながら喉を調節している様子。「カフェに行こうか」と言うと、犬のように嬉しそうな顔を見せるのであった。それから、私は今日菫に対して感謝の気持ちを言うのであった。
「菫今日は、気分転換ありがとう」
「ん?全然気にしなくていいよ。彰斗君達ともこんな風に遊んであげたいね」
「そうだな……」
菫の提案に対して同意をしながら、後輩達か……。
と思い、私は彰斗のことを考えるのであった……。