夢無き少年のVtuber物語 ~Dream Stage Live!~ 作:瀧野瀬
――都内のスーパー。
この日、珍しく俺達三人二期生は買い出しに来ていた。何でも同期オフコラボをする為の買い出しと言うことで三人が集まっている。
「で結局何を作るのか決めたのか?」
俺がスーパーのカートの中にカゴを入れながら七瀬と雛井に聞く……。
此処に来る直前にタコパか鍋で迷っていると言う話は聞いたが……。
「えっと、やっぱ此処は超王道の闇鍋をやろうかなぁって思ってさ」
雛井の言葉に俺は喉を詰まらせる。学生時代、一度だけ闇鍋をやったことがあったがロクなことにならなかったを今思い出していたのだ。俺はそれに対して全力で首を振ろうとしていたが……。
「闇鍋、いいんじゃないかな」
七瀬もその言葉に乗っかり闇鍋になってしまうのであった……。
仕方ない、こうなった以上ネタ的には面白くないがマトモな食材を買って来るか……。じゃないと、普通に腹が死ぬ。
鍋か……。
そういや、何の鍋の素使うのか聞いてなかった。無難な豆乳かキムチだろうか……。俺はそんなことを思いながら、肉コーナーを見る……。鍋だから普通に豚肉か鶏肉をよく見ることが多いな。後はつくねみたいな肉団子とかかと思いながら俺は肉を見つめる。
闇鍋はそれぞれ二種類それぞれ食材を決めることになっていると聞いた。と言うか、普通初の同期オフコラボで闇鍋はねぇだろと思いながら俺は無難に豚肉を取ろうとしたが……。
「わっ!?す、すまない……!」
「ああ、こちらこそ……」
その声に聞き覚えがあるような気がして俺がその人の顔を見ると、やはり見覚えがある人だった。
「なっ!?藤堂君じゃないか!?」
俺の前にいたのは綾瀬さんだった……。
「仕事帰りですか?綾瀬さん」
「そうなんだ、今日は久々に一人鍋でもしようかなぁって思ってな」
「一緒にやってくれる相手いないんですか?」
「居る訳ないだろ。そう言う話もないし……」
小さく答える綾瀬さん。
まあ、俺も人のことを言えた義理じゃねえが……。
「ところで藤堂君こそどうしたんだい?見たところ、鍋の具材を買おうとしているようだが」
俺のカゴに鍋の素が入っているのに気づいたのか、綾瀬さんが聞いてくる。
「そんなところです。同期のオフコラボで闇鍋するって言うので決まったんで」
「闇鍋……!?」
闇鍋と言うと、綾瀬さんは「マジかぁ」みたいな顔をしながら顔を歪めている。
「……頑張ってくれ」
綾瀬さんはそうとだけ伝えて、俺の前から居なくなった……。とりあえず、豚肉買うか……。カゴの中に豚肉を入れ、俺は野菜でも見に行こうかと思ったときであった……。俺の頭の中でいらない天啓が降りる。もし、仮にだ。仮にこの闇鍋が三人共、闇鍋になるのを恐れてしまい普通の鍋になったらオチはどうなるのだろうかと俺は考えてしまったのだ。
そして、そんなことを考えていた俺はカゴの中に何故かクッキーを入れてしまうのであった。菓子だし、少しふやけた感じになるだろうから大丈夫だろうと俺は過信していたのである。
◆
「天音、鍋だけどやっぱ普通の鍋にしておいてた方がいいよね?」
闇鍋を提案したのは私と天音だが実際にやって見ることを考えると普通に鍋の具材を買った方がいいかも知れないと私は考えていたのだ。
「そ、そうだね……。もし、お腹壊したり吐いたりしたら大変だからね……」
そんなことを言いながら、雛井は絹ごし豆腐をカゴに入れている。
どうやら、天音も同じ気持ちのようだ。私も鍋に入れるような具材をカゴに入れるのであった……。
◆
そして、当日……。
闇鍋は事務所でやるので俺達は集まっていた。そして、その場所へと行こうとしたとき……。
「ほら、葵。早く行かないとオフコラボの打ち合わせ遅れるよ?」
「……だからと言って、私を引っ張る必要はないだろ」
葵先輩が菫先輩に引っ張られ、歩いている姿を俺を見る。
そして、葵先輩は俺に気づいたのか「彰斗か……」と小さく言っているのが聞こえた。そして、その声が菫先輩に聞こえたのか俺が居るのに気づいたようである。
「あっ、彰斗君じゃん!どうしたの!?」
「オフコラボですよ」
「そうなんだ?って、もしかしてそっちの二人は……!?」
俺の隣にいる七瀬と雛井に気づいたのか菫先輩は見る。
七瀬は自己紹介しようとしていたが、誰なのか気づいたのか口が噛みまくっていた。
「えっと、雛井 天音です。Vとしての名は水無月 薫です」
正気がある雛井が挨拶をする。
「おっ、薫ちゃんか!私薫ちゃんの飲酒配信とても好きだよ!勿論、素面配信もね!」
雛井は嬉しかったのか、頬を緩ませていた。
「てことは、キミが風月 凛ちゃんだね!いつか私と歌コラボしようね!」
「えっ……はい!ありがとうございます!」
歌コラボの話をされて満悦の表情を隠せない様子であった。
当たり前か、憧れの人にこんなことを言われたら俺だって七瀬のような感情になるだろう。
「三人共、じゃあね!」
菫先輩と葵先輩は俺達に手を振りながら、とある一室の中に行くのであった……。
「彰斗、バイオレットさんと知り合いなの?」
「ーん?そうだな」
七瀬と雛井が小さく「いいなぁ」と言っているような声が聞こえてくる。
「さてと、鍋の準備は出来ているよ」
――オフコラボ会場。
綾瀬さんが鍋を見ていてくれていたのか、会場にいた。
「綾瀬さん、ありがとうございます」
「いやいや、気にしないでくれ。美味しいところがあったら私にも少し分けてくれ!」
綾瀬さんは目を輝かせながら言ってくる。
美味しいところか……。多分あるよなと思いながら、俺は鍋が出来上がるまで待つ。
「はい!と言うことで皆初めての同期オフコラボだよ!」
綾瀬さんが配信を開始させ、初めての同期オフコラボが始まる。それぞれ自己紹介を終えて、俺達は今日の趣旨を話そうとしていた。
「それで今日は初めてのオフコラボと言うことで闇鍋をしようと思うよ!」
闇鍋と言うと、コメント欄がざわついているようだった。嫌な予感しかしないと言ったところだろうか……。皆、そう思おうよな。俺は此処に来てふざけたのが自分だけじゃないよな?と思い始めていて怖い。
「それじゃあ、鍋の方も出来上がったみたいだし灯かりを消してっと……」
必要最低限の灯かりを消してとうとう闇鍋が始まる。
「それじゃあ、最初に私から行くね。いただきまーす!」
最初に鍋を食べ始めるのは雛井からであった。雛井は鍋を装い、食べ始める。
「ん……?チーズの味がする」
チーズの味……。
俺はチーズなんて居れた覚えがないぞ……。七瀬だろうかと思っていた。
「それとこれは豚肉かな……?そんな味がするかな」
豚肉を入れたのは俺だ。
となると、今雛井が食べている豚肉は俺が買った豚肉だろう。
「それじゃあ、次は俺が行くよ」
鍋を装い、食べ始めたと同時に黙り始める七瀬……。
「焔、聞いてもいいか?」
この時点で俺は何を言われるのか理解していた。
「お前、クッキー入れただろ」
俺はその言葉に何も言えなくなる。実際、クッキーを入れたのは俺だからだ。
「ああ、俺だ……」
すると、七瀬はイラっと来たのか俺の器を勝手に持って行き、クッキーが入っていただろうと思われるところを装い、俺に無言で渡す。俺はそれを渋々受け取り食べ始めるが……。
「うぇっ、まっずっ……」
腹からそんな心の声が漏れ始めていた。俺は何も言えず、ただマズいとしか答えることが出来なかったのである。俺はその後腹を壊してぶっ倒れてしまうのであった。その後、起きたときにはオフコラボは終わっておりトレンドを確認すると、#起きろ焔とか書かれていたようだ。