夢無き少年のVtuber物語 ~Dream Stage Live!~   作:瀧野瀬

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第二章 先輩Vtuberとの衝突
カルミア


 此処は株式会社ネイロスの社長室。

 

「社長仕事の方、進んでいますか?」

 

 仕事の進み具合を確認しに来たのか、眼鏡をクイっと上げながら綾瀬は入って来る。社長は終わった仕事の内容を彼女に報告していた。

 

「分かりました。ところで、社長カルミアこと桔梗 伊織の謹慎が今日で一ヶ月が経とうとしていますがどう致しますか?」

 

「桔梗か……。今謹慎を解いてやっても構わないが、どうも今謹慎を解くのは悪手な気がしていてな」

 

 桔梗 伊織。彼女は一ヶ月前、Vtuberとしての活動を休止させられたのである。それも無期限の……。

 そして、彼女の謹慎から一ヶ月が経とうとしていたのである。

 

「それではまだ謹慎は解かないと言うことでいいですか?」

 

「ああ、桔梗にはそう伝えておくようマネージャーに言っておいてくれ」

 

「分かりました」

 

 彼女はそう言いながら、社長室を立ち去ったのであった。

 

 

 

 

 

 ◆

 

「すいません、まさか家に泊めてもらうなんて」

 

「気にするな、今日は遅くまで仕込みをしていたんだからな」

 

 私は今葵先輩の家で泊まって行くことなり、此処に居る。何故、そうなったのかは私が七兎でバイトを始めたからである。そして、今日は葵先輩が手伝いで来ていた為、「泊って行くか?」と聞かれて私はお言葉に甘えさせてもらったのである。

 

「それでバイトを一週間ぐらい始めた感想はどうだ?」

 

「そうですね……。みんな優しいですよ、偶に菫先輩に付いて行けないときもありますけど……」

 

「そうか、あいつも後輩が自分の仕事場で働いてくれて嬉しいんだろうな」

 

 菫先輩はいい先輩だと思う。ただ、凄い積極的な人だから私は距離感が分からなくなってしまうけど……。

 

「今日の晩飯は、肉じゃがでいいか?」

 

「ありがとうございます。私も手伝いますね」

 

 と言いながら、立ち上がり私は葵先輩の肉じゃが作りを手伝うのであった。

 

「桜は料理とかするのか?」

 

「時々ですけど、しますね」

 

「そうか、なら彰斗に比べて安心だな。あいつはコンビニ弁当でほぼ済ませていると言っていたからな」

 

 でも、肉じゃがなんて作るのは何年ぶりだろうか……。

 私は、葵先輩の肉じゃが作りを手伝いながら色んな話をするのであった。

 

「彰斗もちゃんと料理すれば出来るんですよ」

 

「知っているよ。実際その現場を見たからな……。ただ、あいつが作る料理はガサツ過ぎると思ってな……」

 

 葵先輩が彰斗が作った料理でも思い出しているのか、肉じゃが作りをしていた。

 

「そう言えば、今日アイツとのコラボ配信だったな……。まぁ、いいか」

 

「え!?いや、良くないですよね。私やっぱ帰った方がいいですよね?」

 

「別に構わんだろ」

 

 とかなり呑気なことを言っている葵先輩。

 私がもし配信中に喋ったりしたらどうやって対処するんだろうか……。普通に風月 凛が自宅に来ているって言う紹介をするのだろうか……。

 

「彰斗も先輩とのコラボして行くにつれてかなり話すようになりましたよね。二人がやっぱり似ているからですかね?」

 

「私があいつに似ているか……。確かにそれもあるかも知れないが、あいつが私に慣れて行ったと言うのもあるんじゃないのか?」

 

 確かにその理由はあり得るかも知れない。

 でも、彰斗と葵先輩って似ているような気がする。

 

「料理していて思い出したが、あの鍋配信大丈夫だったのか?」

 

「鍋配信ですか?彰斗が余計な物入れた以外大丈夫でしたよ」

 

 本当はそれ以外に酔っ払った天音の介護をしていてかなり疲れてしまったのもあったけど言わなくてもいいだろう。私と葵先輩は肉じゃが作りをして、そのまま肉じゃがを食べ終えた後、葵先輩は特に何も言わず彰斗とコラボ配信を始めるのであった。

 

 彰斗とコラボ配信しているときの葵先輩は何処か落ち着いた様子でコラボをしていたような気が私には見えていた。時々、物音を立ててしまい「大丈夫かな?」と思いながら、葵先輩の方を見て確認しても特に何もない様子で私はホッと安心しながら、配信を終えるのを待ちながら私はロメリアさんのプロフィールを見返す。

 

 ロメリア・アーナイト

 

 花の国に住むお城のメイド長を務めている花の国のメイド。

 いつもはお嬢様に手を焼いているが、ある日お嬢様と共に異世界の狭間の調査に来ていたのだがその狭間に落ちてしまい、この現実世界でお嬢様と共に帰る方法を模索する為に活動を始めた。

 

 綺麗な黒髪ロングヘアーに、紫の瞳に鮮やかな白と黒のメイド服……。これがロメリア・アーナイトさん。最初に知ったのは、勿論バイオレットさん経由だけど私はロメリアさんを見て最初はとんでもなくだらしない人だなぁ……。って思ったけど実際こうして葵先輩を目にすると本人の素に近い部分が割と出ているなぁって私は心の中で笑っていた気がする。

 

「配信終わったぞ……。私の配信どうだったと思う?」

 

「良かったと思いますよ、彰斗とも凄く喋れていたと思いますし」

 

「そうか……」

 

 此処だけの話だが、所謂カップリング好きと言う人達からは葵先輩と彰斗は受けが良いらしい。後、私と彰斗もそうらしい……。何で私なんだろうか?と思うときもあるけど……。

 

「その葵先輩に聞いてもいいですか?」

 

 葵先輩は「なんだ?」と言いながら、冷蔵庫の中に入れてある缶ビールを取り出し、栓を開けて飲み始める。

 

「葵先輩はVtuberを始めて自分とのギャップって感じたことありますか?」

 

「ギャップか……。少しはあったな。私はメイドなんて似合うような女じゃないし、アイドル時代もそうだったが演じるのは苦手だったからな。素に近い自分を他人に見せてつけることしか私にはできなかった」

 

 葵先輩は何処か未練があるような顔をしながらその言葉を語っている。

 

「もし、お前が素の自分とのギャップに思い悩んでいるのならそれを気にすることはない。寧ろ、そのギャップと戦っている己を褒めてやれ」

 

「……ありがとうございます、葵先輩」

 

 そのギャップと戦っている己を褒めてやれか……。

 葵先輩は良い人だなぁ……。私の中で葵先輩に対する思いが色々変わりつつあった。最初は何考えているのかよく分からない人だったけど、話してみたら葵先輩の感情は理解できた気がする。

 

「電話か……もしもし」

 

 葵先輩の携帯に電話が鳴り、その電話に出るのであった。

 

「そうですか……、分かりました」

 

 葵先輩はそう言って、電話を切る。

 電話を切ろうとしていたとき、何処か名残り惜しそうにしながらも電話を切っていた。

 

「どうしたんですか?」

 

「……ん?いや、私の同期のことについての電話だ」

 

 葵先輩の同期……。

 確か、バイオレットさん以外にもカルミアと言う女性Vtuberが居たはず……。その人のことについてだろうか……。

 

「私と菫の同期のことは知っているか?」

 

「え?はい、知っています。カルミアさんって言う人ですよね」

 

 カルミアさん……。

 確かに私達がデビューする一カ月ぐらい前に謹慎を受けている人だ。プロフィールを確認しながら、私は彼女のことを聞く。

 

 カルミア

 

 花の国において牢獄に囚われた伝説の魔の一族の花の人間であるが、唯一の友であるロメリアとバイオレットのお陰で解放されたのだが、バイオレットと共に行った異世界の狭間に身を落としてしまい、この現実世界で帰る方法を模索しながらバイオレットと共に活動をしている。

 

 若干長めのピンク髪の髪をしており、水色と赤の瞳とギザ歯が特徴的なVtuberである。

 

「そうか……。なら、あいつが謹慎を受けている事も知っているだろ。その件についでだ」

 

 カルミアさんと言う人が謹慎を受けていることは知っていた。

 

「それでなんと電話が来たんですか……?」

 

 

 

 

 

 

「まだ謹慎を解くつもりはないとのことだ……」

 

 謹慎を解くつもりはない……。

 それは恐らく反省の余地が無いからと言う理由なのだろうか……。

 

「そうなんですか……。あの、カルミアさんってどんな人だったんですか?」

 

 私はカルミアさんが居なくなった後の一期生のことしか知らない為、葵先輩に聞くのであった。

 

「カルミアか……。あいつは自分が正しいと思ったら、絶対に曲げない性格の持ち主でな……。とにかく、自分を貫こうとする奴だった」

 

「だから、それに反発する奴も多かった。それが原因もあるんだろうが、あいつは今頭を冷やすために謹慎を受けている」

 

 葵先輩は言うことはなかったが、どうやらカルミアさんと言う人は地雷扱いされていたようで彼女がコラボすると必ず彼女のコメント欄が荒れる事が多かったそうだ。

 

「葵先輩はカルミアさんのことをどう思ってるんですか……?」

 

「私にとってアイツは同期でもあり、仲間でもあった……」

 

 

 

 

 

 

「でも、私はあいつを助けることはできなかった……」

 

 

 

 

 

 

 

「カルミア……」

 

 葵先輩の家から帰って来た私は、カルミア先輩のことについて調べ始める。私が知っているのは、カルミア先輩と言うVtuberが謹慎していることと、コラボ配信では地雷扱いされていたことがあまりにも有名だったのである。それぐらいだ。だから、私はカルミア先輩と言う人がどんな人なのか知りたかったのである。

 

 興味本位と言うのが一番あるだろう。

 そんなことを考えながら、私はカルミア先輩のことを調べていると、ある一つのサイトが目に止まる。そこに書かれていたのは、カルミアと言うVtuberは最後のコラボ配信にてコラボ者そっちのけで配信内でアンチと喧嘩をし始めると居ていたと言う情報が載っているのであった。また、日頃からアンチに対してはかなり色々と問題発言することが多かったそうだ。

 

 恐らく、これはカルミア先輩の一部だけなのだろうがとんでもない人だと言うのは理解できる。カルミア先輩のことを調べていると、私のスマホから着信音が聞こえ始める。私はゆっくりとその電話に出る。

 

「もしもし、綾瀬なんだが」

 

 電話を掛けて来たのは綾瀬さんだった。

 

「急ですまないが、明日実は打ち合わせの方が入っているんだ。申し訳ないが、事務所の方に来てもらうってことって可能か?」

 

「構いませんけど……」

 

「そうか、では明日」

 

 そう言われ、電話を切られる私。

 次の日、打ち合わせをある程度済ませた後、私は綾瀬さんにこう聞く……。

 

 

 

 

 

 

「あ、あの綾瀬さん。カルミア先輩ってどんな人なんですか?」

 

「……カルミアか。何故、あいつのことを?」

 

「そ、その知りたいです。カルミア先輩のことについて」

 

 綾瀬さんはいきなりカルミア先輩のことを聞かれて驚いている様子。

 

「私は直接関わったことはあんまりないが、物凄く自分の考えを曲げようとせず信念を貫き通そうとする奴ではあったのは間違いない」

 

 葵先輩と似たような言葉が返って来る。

 その言葉を聞いて私は、あることを綾瀬さんにお願いする。

 

「あ、あの綾瀬さん。そのカルミア先輩と会えるようにしてもらえるってことできますかね?」

 

「……難しいと思うよ」

 

 綾瀬さんは低いトーンで言う。

 難しい、何故……?

 

「多分だけど、カルミアはキミ達二期生のことをよく思ってないから。会える可能性なんてのは低いと思うよ。それこそ、バッタリ鉢合わせとかじゃない限り」

 

 限りと言い切ったところで、綾瀬さんは言葉を詰まらせるのである。

 誰か後ろにいるのだろうかと、思いながら見るとそこには黒いロングの髪に、綺麗な黒の瞳が特徴的な女性が立っていた。

 

「俺の話をしていたんですか?綾瀬さん」

 

「そうだよ。ところで、キミはなんで此処に?」

 

 綾瀬さんは何処か緊迫した様子でその女性に話しかける。

 もしや、この後ろにいる女性が……。

 

「ああ、河本社長との打ち合わせがまだ始まらないので……。一応、綾瀬さんに挨拶だけでも済ませておこうと思いましてね」

 

「そうかい、それは良い心がけだね」

 

「そこに居るのは……ああ、なるほどな」

 

 私を見て何か納得したのか、鼻で笑う女性。

 

「お前、二期生の奴だろ」

 

「そうですけど、何か?」

 

 すると、目の前にいた女性はあることを言い始めるのであった。

 

 

 

 

「俺はお前ら二期生を認めない。絶対にな」

 

 

 

 

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