夢無き少年のVtuber物語 ~Dream Stage Live!~ 作:瀧野瀬
「え?私とロメリア先輩がコラボですか!?」
「うん、そろそろいい頃合いかなって思ってさ。どうだい?雛井」
今日の配信を終えると、綾瀬さんが私に連絡を入れて来てそう言ってくる。
「勿論、まだ早いと思うならこの話はなかったことにしてくれて構わない。どうする?」
私の中で既に答えは決まっている。
私はすぐに返事を返す。
「やります、ロメリア先輩とコラボさせてください!」
あのロメリア先輩とコラボできる絶好の機会かも知れないんだ。私はそれを逃す訳がないと思いながら、綾瀬さんにそう返す。
「良い返事だね、分かった。ロメリアにもそう伝えておくよ」
◆
「もしもし、私だ。綾瀬だ」
雛井からの返事を聞いた私はすぐにロメリアに電話を繋ぐ……。
ロメリアは私からの電話と言うのにすぐに気づいたのか、すぐに出る。
「何か御用ですか?」
「ああ、コラボ依頼だ」
と言うと、何の用件なのか理解したのか息を吐くロメリア……。
「二期生に水無月 薫と言う子がいるだろ。その子とコラボをして欲しいんだ」
「二期生ですか。分かりました、コラボはいつ頃ですか?」
ロメリアは嫌な声を一つも出さずに応じてくれた。藤堂君とのコラボを依頼したときはあんまりいい返事をしてくれていなかったが今回は大丈夫そうだ。
「そうだね、早ければ三日後とかにでもお願いしたいんだが構わないか?」
「三日後ですか、構いませんよ」
「ありがとう。では三日後コラボの方を頼む。時間の指定はこちらからまた頼むから」
私はそう言いながら、ロメリアとの通話を切るのであった。
そして資料の方を纏め始めていると、とある人が私に話しかけてくるのである。
「す、すいません。綾瀬さん」
私に話しかけてきたのは若干紺色の髪をしておりちゃんとスーツを着ている男性が前に立っていた。彼の名前は、青葉 陽翔。一期生のマネージャーを務めている。過去の経歴は詳しくはないが彼はかつて元ボカロPをしていたと言うのは知っている。
「青葉か、気にしないでくれ。これも私の仕事だからな」
二期生のマネージャーになったときからこうなると言うのは理解していた。一期生のマネージャーである青葉はカルミアやバイオレットのことで忙しいのは知っていたからだ。だから、こうして偶にだがロメリアとの連絡は私がしているのだ。
「いえ気にしますよ。元はと言えば、自分の仕事ですから」
青葉は割と気にする人間である。だから、こうして細かいことでも私に謝って来る事が多い。
「それでそのロメリアは了承してくれたんですか?コラボの方は?」
「そうだね。快く了承してくれたよ」
「そうなんですか……。焔君のときとはかなり違うんですね」
藤堂君とコラボするときのロメリアはあんまりいい返事をしてくれなかったし、何処かめんどくさそうにしていたのを私は今でも覚えている。彼女の中で何かあったのだろうかと考えながらも、今度の資料を印刷し終える。
「彼女にも何かあったんじゃないのかな」
「そうだと嬉しいですね」
一期生、二期生のことを話していると煙草を吸っている河本が室内に入って来る。
「此処は禁煙ですよ。社長」
「電子タバコだ。ったく、なんで最近は喫煙者に対して皆当たり強いんだ……」
青葉が社長が煙草を吸っているのを見て、止めていた。「電子タバコって吸った気になれねぇな」と愚痴りながら、電子タバコを吸うのをやめていた。
「電子タバコとは珍しい。ようやく体を気を遣う気になったのかい?」
「そんなんじゃねえ。社内で電子タバコ勧められたから吸ってみたがどうも俺好みじゃねえな」
社長は電子タバコについて色々愚痴っていたが、私は半分聞き耳を持たずにその話を聞いていた。
「それで青葉、桔梗についてはどうなっている?」
煙草の話を終えた河本が社内にあった椅子に座りながら言う。
「何度か電話を入れてはいますが、やはり反省はしていないようです」
「そうか……。あいつも光る物はある。出来れば更生してまた活動して欲しいが厳しいか……」
桔梗か……。
彼女のことはあまり詳しくないが、中学生時代にゲーム実況を始めて彼女は当時の動画サイトではかなりの人気を誇っていたのは間違いない。だから、河本は光る物はあると言っているのだろう。
「青葉、とりあえず桔梗のことは今後も頼む」
「分かりました、社長。やれるだけやってみます」
◆
二期生の水無月 薫か……。
奴のことは一応桜から聞いたことがある。あまり活発的な人間ではないが、お酒を飲むと人が変わったように活発的な人間になると……。だから、こんな企画をうちのマネージャーと綾瀬さんは考えたのだろう。
『飲酒耐久配信!先に酔いつぶれるのはどっちだ!?』
彰斗がやっていたような深夜のテンションで考えたかのようなノリだな。
苦笑いを浮かべながら、そのタイトルを見つめていると私が教えた連絡先に薫と言う人間が電話を掛けてくる。
「え、えっと先輩……今日はよろしくお願いします!」
初々しい声を出しながら薫が私に言ってくる。
先輩とのコラボと言うこともあって、緊張しているのだろう。彰斗のときは失敗したが、此処は先輩らしく後輩の緊張を和らいでやらないとな……。
「そう畏まらなくてもいい。水無月 薫だったな。酒の方は強いのか?」
あまり強い印象はない。と思いながらも私は聞く……。
「そ、そうですね。あんまり強くないです」
だろうな、と思う私。
と言うのも菫の配信を見る限りあまり酒に強いイメージは持てず、こいつ酒に弱いんだろうなと言うイメージが私にはあった。
「そうか、あまり無理せずに飲むなよ」
こんな感じに話してみたが……。
果たして緊張は和らいでいるのだろうか……。分からずに私は言っていた。菫ならもっと上手く話せていたんだろうな。少しお喋りに関して後悔していると、時間が近づいていることに近づき、私は配信の準備を進め始める。
「あ、あのロメリアさん一つお願いしてもいいですか!?」
「なんだ?」
配信の準備を終えると、薫は私にお願いがあるのか一つ聞いて来る。
「ロメリアさんってメイドさんじゃないですか。そのおかえりなさいませ、ご主人様って言ってくれませんか!?」
……ひょっとしてこいつはもう酔っているのだろうか。
配信を始める前に酒を飲んでもう酔っているのだろうか……。私にとっては酒に酔っ払った人間がただの冗談を言っているように聞こえていた。
「……お前、正気か?」
私がその言葉を言うことに何処に良いところがあるのだろうか。
あるとすれば、せめてギャップと違って面白く感じるところだろう。
「はい!お願いします!」
後輩の顔なんてものは電話で分かる訳がないが、多分こいつはきっと今私が言うのを嬉しそうに待っているのだろう。言ってくれるのを楽しみにしているのだろう。となると、これはもう逃げれない。覚悟を決めるかの如く水を一気に飲みつつ、私は深呼吸をする。
「おかえりなさいませ、ご主人様」
――恥ずかしい。
今そばに枕か何か殴れるものがあれば殴っているところだろう。ああ、そうか。目の前に机があったか。台パンでもするか。と思いながらも私が選んだのは……。ヘドバンであった。頭が痛いがこのぐらいしないと多分私は恥ずかしさでこの後配信を乗り切れない。
「可愛いですよ先輩!今の録音しました!」
「おい待て!?録音だと!?」
何故、私の声を録音しているのだろうかと驚きしか出なかった。薫はと言うと、かなり嬉しそうにしている。所謂限界オタクかのような声を出して喜んでいる。
「はい!クール系メイドの先輩のとっても可愛い声が聞こえたので凄く嬉しかったです!」
思い掛けない言葉が飛んできて驚いてしまう私。
私が可愛いだと……。今まで生きて来てそんな風に言われたのは初めてだ……。だが、そんなことはどうでもいい。それよりもそろそろ配信を始めなければいけない時間だ。切り替えて私は配信に集中しようと考える。
「そ、そうか……。そろそろ配信だから一旦切るぞ」
「はい、分かりました!」
薫は満足げにしながら通話を切っていた。
あいつもう酒を飲んでいるのではないだろうかと思いながらも私は配信の前に酒の準備をする。
配信の開始時間となり、私は配信開始のボタンを押す。
すると、私の配信が映し出される。
「こんばんわ、ロメリア・アーナイトだ。今日もまた二期生の奴とコラボだ」
配信内では誰とコラボすると言うことは伝えていない。
そして、内容も伝えていない。みんな、その内容を知りたくてこの配信に来ているのだろう。ある程度、話をしてから私は次にこう言う。
「さて、そろそろ頃合いだな。それでは紹介しよう」
「こんかおる~!初めましての方は初めまして!水無月 薫だよ~!」
私の隣に動いている薫が映し出される。そして、最初に電話を掛けて来た薫は何処へやら元気そうな声が聞こえてくる。コメント欄ではかなり予想していた通り、『薫か!』と言うコメントが流れている。二期生も私とコラボしていないのは残り二名だし、確率は二分の一だし当たりやすいのも当然か。
「さて、紹介した通り二期生の水無月 薫と今日はコラボして行くぞ。だが、ただコラボするんじゃ面白くない」
私はテロップを表示しながら、次の画面を映し出す。
今回の本題へと向かう。
『飲酒耐久配信!先に酔いつぶれるのはどっちだ!?』
と言うテロップを表示する。すると、コメント欄では……。これは私の圧勝だろうと言う予想が流れていたり、薫のことを心配するコメントが多くなっていた。
「心配無用だよ、みんな。この勝負絶対に私が勝つんだから!」
と意気込みは良しの薫……。
正直この勝負の結末は見えているようなものだと私は思うがやれるだけやってみるか……。と思いながら、私の意気込みを言う。
そして……。
「さて、それぞれの意気込みを言ったところでそろそろ開始しよう」
ルールはタイトル通りで簡単だ。私は一缶目をグラスに入れて飲み始める。
「さてまずは一缶目だな。私の方は大丈夫だが……薫の方はどうかな?」
「え!?私ですか……!?私はこの通り元気ですよ!!」
こいつの素はあまり知らないが、多分こんな感じの奴ではないと言うのは何となく分かる。恐らくだが、こいつは配信が始まる前に何本か飲んでいる。そうでなければ、この反応はおかしい。この反応は酔っ払った人間とほぼ一緒だ。
そして、やはりこうなったかと言う感想が私の中で出ていた。
「薫一つ聞いてもいいか?」
「お前酔ってるだろ」
「え!?酔ってませんよ~!」
機嫌が良いのか、もしくは酒に酔っているのか薫がそんなことを言う。
これは酔っているな……。私は溜め息を吐きながら、続けて言う。
「いや、酔っているだろ……。これじゃあ企画倒れも良いところだぞ」
「酔って……ない……ですよ……」
眠くなってきているのか、今にも眠そうな声を出しながら言う薫。
そして、こいつは次の瞬間とんでもないことをする。
「むにゃむにゃ……」
「……完全に寝たな。これはどうすればいいんだ?私の勝ちでいいのか……」
コメント欄を見るとコメント欄も困惑しているようだ。今日の配信が私だけ良かったな。あいつも配信をしていたら、あいつの枠が残ってしまうから色々と寝言が聞こえてしまうだろうからな。
「と、とりあえず今日の配信はこれまで……だ。これで良かったのか若干戸惑っているが次回もまた会おう」
本当にこれで良かったのだろうかと思いながら、私は今日の配信を終える。
それから、水無月 薫と言う人物について考えていた。桜の話を聞く限り真面目そうな奴だと聞いていたが、酒を飲むと人が変わったようになると言っていたが此処まで変わるものとは思ってもいなかった。
「すいません、先輩!」
そう謝って来たのは次の日……。
薫は私にそう言ってきた。
「気にするな。昨日は飲み過ぎたのか?」
「うっ、そうなんです。自分がどれだけお酒耐えられるのか確認したかったので少し飲んだだけでああなってしまったんです」
どうやら元々酒には弱かったようだ。
「そうか……。薫は昨日の配信どうだった?」
「はい、先輩とコラボできて嬉しかったです!」
その言葉に嘘偽りはなさそうだった。
私はその言葉を聞いて少し嬉しく思っていた。
「そうか、なら良かった」
彰斗とコラボしたときのような後味の悪い感じが残らなくて良かったと思いながら、「それじゃあ、またコラボしような」と言った後に電話を切り、私は冷蔵庫の中から酒を取り出し、酒を開け飲み始めようとしながらあることを言う。
「それにしても二期生か……」
二期生か、どいつもこいつも色々と頭のネジが外れたような奴らが多いグループだなと思いながらも私は今日飲む予定の酒を開けながら、飲むのであった……。
楽しそうにしながら……。