夢無き少年のVtuber物語 ~Dream Stage Live!~ 作:瀧野瀬
「お前、ヒイロか……?」
「ああ、ヒイロだよ」
確認の為、俺は目の前に居るアイツがヒイロかどうか聞こうとしたがすぐにその返事は返って来て、自分がカルミアと言うVtuberがヒイロであると思っていたことが間違っていなかったことに少し驚きつつ、俺はその場をすぐに座る。
「やはり知り合いだったか……。一応念のため、彼女の自己紹介をしておこう。彼女は一期生のカルミアだ」
ヒイロは俺の方を見ていたが、何も言わず行儀よく横に座る。少し意外だな、こいつのことだから何か言って来ると思っていたが……。社長が居る事もあって、大人しくしていると言うことなのだろうか……。こいつはそんなタマじゃないと思っていたんだが……。
「今日キミ達を呼んだのは他でもない。親睦会だ」
親睦会……。隣に居る奴の感じを見る限り、そんな生易しいもんですまない可能性が高いと思うが、果たしてどうなることやら……。俺はチラチラとヒイロの方を見ながらただ黙っていた。
「すいません、社長。私少しお手洗いに行ってきますね」
「ああ、そうか。俺も丁度行きたくなってきたところだ。俺も行くぞ」
下手な芝居だな……。大方、俺とヒイロが話す機会を与える為の芝居だろう。それに気づいているのか、ヒイロの方も呆れたように溜め息を吐いていた。大人二人が、トイレに行くのを見ながら俺達は二人取り残され、沈黙が続くのであった。
「最近活動していないのは知っていたが、まさかVtuberになっていたなんてな」
先に話してきたのはヒイロの方だった。ヒイロは俺のことを若干睨んでいた。
睨まれるようなことしてねえと思うけどな。多分……。
「お前こそ人気ゲーム実況者だったのにVtuberとは意外だよ。そもそも、お前こういうの嫌いじゃなかったか?」
風の噂で聞いたことを言うと、ヒイロはムッとした表情でこちらを見てくる。
「あんなのはただのデマだよ。私は一度でもVが嫌いなんて言ったことがねえ」
確かにコイツの言う通りだ。俺がこの情報を知ったのはとあるサイトでだから信憑性などあまりなかっただろう。となると、この話はあまりするべきではなかったなと思いながら俺は少し思っていた。
「そう言えば、仁の奴はどうしてるんだ?」
「仁先輩か……。俺もあんまり詳しくないぞ」
仁先輩とはあの時以来電話が来ていない。
そう言えば、あのとき言っていたサプライズとはいったいなんなんだろうか。結局何のことだが分からずじまいだった。でも、今は考えていても仕方ないか。
「それにしても意外だな」
俺は思ったことを口に出す。
あいつは「何を?」とでも言いたそうな顔をしながらこちらを見ている。
「いや、聞いていたよりこちらに友好的なんだなって思ってな」
「別にそんなつもりはねえよ……」
そんなつもりはねえか……。
だけど、思ったよりこちらに友好的なのは驚いた。もう少し敵対心剥き出しと言うかそう言う感じに思っていたが、対してこちらに敵対心を向けていないのに意外だったんだ。それから、俺とヒイロは帰って来た大人達と食事を済ませた後に、それぞれ解散することになった。
「お前この後空いてるか?」
「空いてるが、何処に行くんだ?」
帰ろうとしたとき、俺はヒイロにそう呼ばれ待つのであった。
「ボウリングでもしに行くか?どうせこの後暇だろソア?」
確かに暇だがもう少し言い方ってもんがないのかと思っていた。
「そのソアって呼び方やめてくれねえか。俺のこと知っている奴にバレたら面倒だし……」
「なら、本名を教えろ。俺のことはどうせあいつから聞いているんだろ?」
あいつってのは七瀬のことだろうか……。
確かに七瀬から伊織のことは聞いていたが……。それから、俺は本名を名乗ると伊織は俺のことを「彰斗」と呼ぶようになった。彰斗と呼ばれ、随分と親しく呼ぶんだなと思いながらも俺はあいつの後ろをついて行った。
「それでボウリング行くのか?」
「行くよ、どうせこの後暇だし……」
まあ、暇なのは否定しないんけどな……。家帰ってもどうせやることと言ったら動画投稿するぐらいだし……。俺達は話している間にボウリング場へと辿り着き、色々済ませてから俺と伊織はボウリングを始める。
「お前、ボウリングやったことあるのか?」
俺が先攻となり、ボウリングの玉を持ち構えながら伊織に聞いた。
「少しな、そう言うお前はどうなんだ?」
「俺もあんまりやったことねえよ……」
と言いながらボウリングの玉を投げると、ガターになってしまう。向きを間違えたか?と思っていると、伊織の方を見ると伊織は笑いを堪えているのか大きく息を吸ってリスのように口を膨らませている。この女、後で覚えておけよと思いながら、俺はボウリングを続ける。
「下手だな、お前」
と言いながらボウリングの玉を投げる伊織。その玉を投げ終えたすると、ストライクを決めこちらをドヤ顔風に見てくる伊織に対して若干イラっとしたが、俺は落ち着いた。そうだ、相手はただの高校生だ。何をイライラしているんだ。それから俺もボウリングを続けるのであったが……。
結果だけを言おう。俺は敗北した。
正直言って、此処まで屈辱的な敗北を受けたのは初めてだ。しかも、相手は高校生だ。高校生相手に負けるとは思ってもいなかった。あいつはと言うと、俺に勝って上機嫌なのか鼻歌を歌っている。あいつあんな感じなところもあるんだなとは少し思っていた。
「下手糞だな、お前」
それから俺と伊織は、伊織が腹が減ったと言うことでファミレスに向かうことになったのである。
「ハンバーグステーキで」
「フライドポテトで」
こいつさっき食べたって言うのに主食を食べるのかよ……。と思いながら、俺はあいつの言葉を聞いていた。もしかしてこいつ大食いなのか……?
「そう言えば、お前高校生ってマジなのか?」
今まで聞こうとしなかった疑問を伊織にぶつけてみた。こいつが中学生の頃、よく自分の動画で中学生アピールをしていたが本当に中学生だったのだろうかと少し疑問に思っていたのだ。でも、背丈見る感じ今は高校生なんだろうけど……。
「本当だよ、俺は高校生だ。ポテト貰うぞ」
来たばっかりのポテトを食べ始める伊織。
「お前大食いなのか?」
思ったことを再度口に出すと、伊織はこちらを不機嫌そうにしながら見てくる。
「誰が大食いだ、ふざけるな。腹が減ってるんだから仕方ないだろ」
さっきいっぱい食べておいてよく言うよと思いながら、俺はその言葉を聞いていた。その後、伊織は来たハンバーグステーキを美味しそうに食べていた。そんな姿を見て、子供っぽいところもあるんだなと思いながら、俺はポテトを食べていた。
「今日はありがとうな。お前が思ったより悪い奴じゃないって理解できて良かったよ」
ファミレスで食事を終えた俺と伊織は解散の流れになり、お互いに何か言おうとしていたが先に俺が話を始めるのであった。
「勘違いすんな……。別に俺はそんなつもりでお前に絡んだ訳じゃないんだからな……」
と言いながら、帰ろうとする伊織を見送りながら俺も帰ろうとしたときであった。
「姉ちゃん、誰と居たの!?」
と言う声が聞こえ、「なんだ?」と思いながら後ろを振り返ると先ほどまで一緒に居た伊織がそう呼び止められていた。姉ちゃん……?ん?姉ちゃん……?姉ちゃんってどういうことだ……?まさか……?
「はぁ!?姉ちゃん!!?」
と大きな声で再度後ろを振り返ると、口を手で隠されている少年とそこに立っていたのは伊織の姿であった。