夢無き少年のVtuber物語 ~Dream Stage Live!~ 作:瀧野瀬
単純に伊織をどう改心させるかでずっと悩んでいました。
後、単純にサボってた
すいませんでした!!!
「ほんとしつこいな。お前らアンチに構ってる暇なんてないんだから、とっとと失せろよ。学校で習わなかったのか?人に迷惑になる行為はやらない方がいいって……。お前ら、ほんとしつこいよ」
炎上当日、放った一言は炎上へと繋がりアンチスレではお祭り騒ぎとなっていた。
100.名無しさん
【速報】炎上Vtuber、カルミア
再びアンチ煽りをし、可愛い可愛い信者ちゃん達を無視してしまう
101.名無しさん
またカルミア燃えたのかよwwww
102.名無しさん
相変わらず火には困らない女だなww
こんな奴野放しにする運営も頭イカれてるなww
103.名無しさん
お前らアンチに構ってる暇はないとか言ってるけど、構ってるのお前じゃん
マジ性格悪いわ、アイツ
104.名無しさん
ほんといい加減辞めて欲しいわ
あいつが居るとバイオレットにも飛び火しそうで嫌になるわ
彼女専用で作られているアンチスレはこのような形となり、カルミアへの不満が爆発していたのであった。カルミアはその後、活動休止を社長から宣告された。
――株式会社ネイロスの社長室。
「謹慎……?」
「ああ、幾らなんでもやり過ぎた。今回のはコラボ相手にまで飛び火している。一度冷静になれ」
カルミアこと桔梗 伊織は納得していないのか嫌そうな顔をしながら社長の話を聞いていた。
「あっそ……。言っておくけど、俺は謹慎したからと言って律義に良い子ちゃんになるような奴じゃねえぞ」
桔梗 伊織はそう言い残し、社長室を思いっきり扉を開けて扉を閉めて出て行った。その姿を見ながら、一緒に来ていた花咲 葵は拳を握り締め自分には何か出来たはずだと考え込むのであった……。そして、後日SNSでカルミアの活動休止が発表された。その発表は物議を醸すことになった。例えば、運営の怠慢が生み出した結果ではないのか?と言う意見が多数述べられたり、方針に問題があったのではないか?という意見も出ていたのだ。掲示板では当然この知らせが報告され、満場一致で自業自得という答えを出していた。それから、彼女はそのままバイオレットやロメリアと会うことはなくなった。彼女達に会わなくなったのは、彼女達に会わせる顔がないと思っていたからだ。
だが、それでも彼女は自分が間違っていなかったと思っていた。そして、彼女はなにより自分の居場所を奪おうとする奴を許さない。そして強くあろうとした。どんな手を使ってでも……。
そして、彼女の人生というものがそれを証明している。
と言うのも彼女は昔両親という頼れる存在がいたのだ。両親は老舗の饅頭屋をやっていたのだ。しかし、あるとき立ち退きを命じられた。両親は最初こそ反対していたが、お金を渡そうという条件を突き付けられると、両親達は目の色を変えてそのお金を受け取り、今の住所で生活していたのだが父親は多額の金を目にして酒に溺れる生活を日々送るようになり、家族には暴力を振るうような性格に変貌したのである。そんな父を見兼ねた母は一人で家を出て行き、その後父は母に見捨てられた悲しさのあまり最後には正気に戻ったのか自殺を選んだ。
そんな家族を見てきた伊織は家族を恨むことはしなかった。だが、自分達の居場所を奪ったこの運命と呼ばれるものを恨むことにしたのだ。
そして自分の性格が災いして友達も出来ず暇を持て余していた伊織は祖父に買ってもらったスマホでゲーム実況というものを知り、伊織は友達も居ないから暇を潰すには持ってこいかもしれないと思ったのだ。こつこつ貯めていたお年玉と祖父がくれたお金で機材を買い、伊織は初めてゲーム実況というものを始めた。初めこそは伸び悩んでいたが、徐々に伊織はゲーム実況者として伸びていったのだ。そして、伊織はゲーム実況界隈では有名なゲーム実況者となっていた。持ち前のオーバーリアクションと怒号のような大きな声での実況は彼女を人気者にさせていったのだ。そんな彼女であったが、悩みがあったのだ。
自分のゲーム実況のやり方がかつての父を彷彿とさせていたのだ。大きな声を自分で張り上げる度にかつての父を思い出していたがそれでも人気となった伊織は止まろうとはしなかった。だがいつの日か父のような人間になってしまうのではないのか?と悩んでいたが、この輝きを保ちたいと考えていたのだ。
好調だったゲーム実況者をやっていた頃、彼女はVtuberというアバターを見かけるようになったのだ。彼女は最初はこのVtuberというのに全く興味がなかったが、ある日河本 弘から「Vtuberになりませんか?」と言うメールが届いたのである。Vtuberに全く興味なかった伊織であったがまだ新しい事業というのを調べて、自分がどれだけやれるのか試してみたいと思ったのだ。
その結果、カルミアとなった彼女……。
彼女は決められたRPを守りながら、自分が元々持っているキャラを発揮させていた。当初は彼女の口は悪いものの人気はそれなりに保っていたのだが、彼女は専用のアンチスレが出来上がるほどアンチもついていたのだ。
無視するのが得策であるが、彼女の性格上それはできなかった為、彼女はアンチに対してキツい口調で指摘することが多かったのである。それが原因で燃やされることが多かった。そして配信の度に言うと、徐々に彼女を応援していたいと願っていたファンは離れていった。当然であろう、応援してくれているファンより自分を否定するアンチを選んだ結果であろう。その結果、火は大きく燃え上がり悪意ある切り抜きなども多発。
そして、あの言葉を言ってしまったのだ。
これがカルミア、桔梗伊織の過去である……。
◆
「姉ちゃん、誰といたの教えてよ!そこに居る人?」
伊織のことを姉と呼んでいる少年は必死に抵抗し声を再び出し、そんな声が聞こえてくる。あいつ、弟がいたのか……。いや、そんなことより此処は反応してやるべきなのだろうか。あの伊織の弟の反応を見る限り、反応してやるの正しい反応だよな……。
「そうだよ、お前は伊織の弟なのか?」
「うん、そうだよ。姉ちゃんが男の人と居るなんて珍しいね」
伊織と違って普通に良い子そうだな、と俺は思っていた。伊織の場合、言葉に棘が多いからな。
「お、おい。そいつとは喋るな……」
伊織は弟の手を引き、自分の方へ引っ張り弟の口を隠させていた。どうやら、伊織は俺と弟と話をさせてくれないようだ。とっとと帰りたいのだろう。
「待てよ、伊織。まだ話足りないんだ。少し付き合えよ」
だが、俺にとってこれは伊織のことをもっと知れるチャンスかもしれないと思っていた。
「何を言っている。お前と話す事なんてもうない。とっとと失せろ」
「ね、姉ちゃん……!俺もあの人から色々話を聞きたい!いいでしょ!駄目!?」
なんとか伊織に抵抗していた弟が姉の手を振り払い、俺の方を見る。すると、伊織は観念したのか溜め息を吐いていた。
「はぁ、分かった……。お前は一度言ったら聞かないからな。話をさせてやる。これでお前ら満足か?」
伊織は俺のことを睨みながらも、再び溜め息を吐く。溜め息を吐くと幸せが逃げるという言葉があるが、そんな言葉は信じていなそうだなこいつは……。俺もそんな言葉信じていないが……。
それから俺達は先ほどとは別のファミレスに行き、弟がパスタを笑顔で頼んでいた。姉の方は、ほうれん草のソテーを頼んでいた。やっぱ、こいつ大食いだろと俺は心の中で思っていた。俺は、何も頼まないのもどうかと思い、適当にデザートでも頼んでいた。
「その姉ちゃんとどういう関係なんですか?」
関係か……。こいつとの関係と聞かれたら答えるべき選択肢は、前の知り合いってところだろうか……。とはいえ、こいつとコラボしか回数なんて数えきれるほどしかないが……。だから、知り合いと呼べるかどうかも怪しい。同業者ってところが正しいだろうか。
「同業者ってところだ。お前名前は?」
「
きょうと書いてけいと読むのか……。そこまで珍しい名前でもないから憶えやすいな。俺も名前を名乗ると、「戦国武将みたいな名前でかっこいいね!」と言われる。確かに藤堂と言う戦国武将は居たな……。それも武将の中ではまあまあ有名な奴が……。俺はかっこいいねと言われて、悪い気分ではなかった。この伊織の弟が姉と比べてみてもいい奴だなというのが分かってきた。
「姉ちゃんと同業者って言ってたけど、彰斗さんもVtuberやってるの?」
小声でそう聞いてくる伊織の弟。小声で聞いて来たのは俺がVtuberだとバレた大変だろうと言う配慮の為だろうな。中学生ぐらいなのに偉いな。自分の姉がVtuberをやっているというのを知っているようだ。伊織のことだから隠しているのかと思っていたが、知っているようだ。
「ああ、俺もVtuberをやっている。天喰 焔って名前でな」
俺も小声で返す。
「わぁ~!すっごいカッコいい名前だね!」
初めて俺は自分の名前をカッコいいと呼ばれた。周りの奴らというか、七瀬とかは俺のことを中二病呼ばわりしてきていたのにこんなふうに言われたのは初めて少し嬉しかった。頭の中では自分でもチョロすぎんだろと、思っていたが俺は自分の名前がカッコいいと呼ばれてやっぱりこの伊織の弟は良い奴だなと思っていた。弟はそれからドリンクを取りに行き、一旦席を外す。
「お前の弟、良い奴だな」
「そうか。ところで、お前さっき俺に話したい事がまだあると言っていたがあれはなんのことだ?」
ドリンクを取りに行く伊織の弟を見送りながらも、伊織の言葉を聞いていた。
「お前のことでまだ知りたいことがあるからな。だから帰らせる訳にはいかねえよ」
「俺のことで知りたいことがあるだと……?そんなものはないだろ」
「いや、まだあるさ。お前が戻りたいのかってことさ」
伊織は飲んでいたジンジャーエールを飲むのをやめて、こちらを再びキツネのように目を細めて睨む。俺はその目を見て、動じずにいた。
「俺が戻りたいかだって……?お前には関係ないことだろ」
「関係なくはねえだろ。一応お前は俺の先輩なんだからな」
出過ぎたことをしていると思っている。だが、それでも俺は伊織に聞いてみたかった。こいつがまだVtuberに戻りたいのかと言うことを……。その答えは言われなくても分かっている気がしていた。多分きっとこいつは……。
「五月蠅いな、二期生如きが俺のことを知った気でいるなよ」
それでも伊織が俺にVtubernに戻りたいのかということについて話すことはなかった。
伊織のことはまだ知らないことが多い。だからこれ以上あいつに言葉を通しての会話というものは難しいのかもしれない。これ以上は無理か……。と考えていたが、俺の頭の中で一つだけまだ方法があることを閃いた。この方法ならもしかしたらこいつからまだやりたいと言わせることができるかもしれないと思っていた。
「……そうか。気分を害するようなことを聞いて悪かったな、トイレ行って来る」
俺は戻って来た伊織の弟の姿を見ながら、トイレに向かう。それから、携帯を取り出しそのままトイレに入って行く……。トイレに入って行くとき、一瞬俺の頭の中で出過ぎた真似をしていると理解しているのなら何故、こんなことをしていると言ってくる心の中の俺がいた。
確かに俺は出過ぎた真似をしていると理解している。それでも、俺がこうして伊織の言葉を聞きたいと思っているのは……。Dream Stageが本当の意味で形をなすのならば、伊織が必要だと俺は思っているからだ。誰かに命じられたからじゃない俺自身が決めたことだ。俺はトイレの洋式トイレに入り、鍵を閉めて電話をする。あの人たちは今の時間帯出るだろうか……。と思いながらも、電話口で出るのを待っていた。
「もしもし、彰斗です。今時間いいですか?」
電話をしながら俺が立っていると、誰かが扉を小さく叩く音が聞こえた。トイレに入りたい人だろうと思い、俺はすぐに電話を済ませようとしていた。
「分かりました。伊織と電話を繋いで欲しいんですが構いませんか?」
電話口の相手は伊織と言う名前を聞いて、驚愕しているようだ。俺はそのまま事情を話すと、俺の電話を聞いてくれていた人たちはそのまま了承してくれた。俺はその言葉を聞いて、電話を切りトイレを出るとそこに立っていたのは伊織の弟であった……。
「聞いていたのか?今の話?」
「……うん、姉ちゃんのことで話していたんでしょ。姉ちゃんはきっとまたVtuberをやりたいと思っているからだから……!」
俺は伊織の弟の言葉を聞いて、頭に手を乗せる。
「分かってるよ。まだ中学生ぐらいなのに良い弟だな。それじゃあ、行って来る」
俺は伊織の弟の頭を撫でた後にトイレから出て行き、俺は通話を開始しそのまま先ほどまで伊織が座っていた場所に向かう。伊織は俺のことを睨んではいなかったが、あまり良い表情でこちらを見てはいなかった。
「お前に電話相手だ。出ろ」
伊織は俺に「誰だ?」と苦い顔をしながら、俺の携帯を受け取ろうとはしなかった。それでも俺が「出ろ」と強硬すると、渋々伊織は電話に出る。そして、伊織は「もしもし」と言われたのか……。電話口の相手に驚いていたのだ。