夢無き少年のVtuber物語 ~Dream Stage Live!~ 作:瀧野瀬
紅葉が見ごろなこの季節……。しかしまだ暑さというのは続いていた。東京の温度というのははっきり言って異常だ。熊谷とかがよく最高気温は越えましたなんて、アナウンサーが延々と語っているのを見ると……。東京の方が暑いからと言いたくなる。どうでもいいけど、わざわざ暑いところに行かせられるアナウンサーも可哀想だよな。仕事だから仕方なくやってるんだろうが……。
「伊織、今度の復帰配信だけどどんな内容にしたい?」
冷房がガンガンに効いている休憩室で、青葉マネージャーに呼び出され私はお茶を貰って飲んでいた。あれから二週間が経ち、俺は今日SNSで復帰報告のツイートをした。当然、俺が復帰するとなれば目の色を変えてやって来る奴らがいた。俺はそんな奴らを無視していた。
「提案があるのですが……。こんなのはどうですか」
俺は青葉マネージャーに提案をした。
「良い提案だね、賛否両論になるかもしれないが伊織らしい配信だと思うよ」
提案は受理され、俺の提案を基に復帰配信を行うことになった。この配信で俺は賛否両論となるかもしれない。それでも俺はこの提案を押したかった……。家に帰ろうと思ったとき、一階でとある奴と出会う。そう、風月 凛だ。
「伊織先輩……」
「お前か。この前のことは悪かったな」
「え?」
凛は俺の方を見ながら、頭にハテナマークでも浮かべていそうだった。俺がいきなり謝ったからだろうな。
「頑張れよ、二期生」
俺は凛の肩をポンと叩き、その場を去って行く……。
「は、はい!」
あいつに謝るつもりなんてものはなかった。だけど、何れ二期生という存在は無視できない存在になるのは間違いないはずだ。だから、俺は謝ることを選択した。これで背負っていた重荷は軽くなったかな……。さてと、俺の復帰配信……。頑張るとするか……。
そして、復帰配信当日となり俺は机の前でマイクに息を吹き掛けながら、ただ時間が過ぎるのを待っていた。待機画面を見ると、俺が帰って来ることを待っていた奴。未だに俺に粘着している奴らが暴れていた。俺を全く知らない奴らも配信に来ていた。大事にしてやらないといけないよな、俺のことを待ってくれていた奴らを……。
「よぉ……!聞こえてるかお前ら!?」
配信は始まり、俺は声を出す。
声を張り上げるのも久しぶりだな。
『聞こえてるよ』
『お久しぶり、待ってたよカルミア』
『アンチに無様に敗北したカルミアさんちっす!』
『またアンチに触れて炎上するんだろ』
『アンチなんか気にしちゃ駄目だよ』
色んなコメントがあるのは理解していた。どうせそうなるというのは理解していたからな。
「Dream Stage所属一期生、カルミアだぁ!この度、無事釈放されて自由の身になったからな!」
『お勤めご苦労様です、カルミア姉貴!』
『魔の一族で閉じ込められたのってそういう理由……』
『アンチについて一言お願いします!』
練習振り以来の自己紹介だったが、すんなりと言うことはできた。
「そしてこの度の謹慎につきましては色々な方々にご迷惑をかけたことをお詫び申し上げます」
コメント欄を見る覚悟はしていた。だが、俺はなるべくコメント欄を見ないようにしていた。結局、俺はコメント欄が見るのが怖かったのだろう。俺を否定されていると思ってしまうからだ。俺は頭を上げ、コメント欄をチラッと見た。
『気にしないで、大丈夫だよカルミア』
『心配したんだぞ、カルミアァ!』
コメント欄を見るとそこには温かいコメントばかりがあった。待ってくれているファンがいるか……。こんな俺でも本当にいたんだな……。
「みんなありがとう!今日は俺から皆に歌をプレゼントしたいと思うんだ」
『初めての歌来ちゃー!』
『おっ、どんな歌かな』
『ワクワク』
この曲は賛否両論かもしれない。だけど、俺を表した曲に近いかもしれない。
「それじゃあ耳の穴ァかっぽじってよく聞けよ!」
「正しさとは 愚かさとはそれが何か見せつけてやる!!」
こういう曲は俺はあんま好きじゃない。しかし、この曲を聞いたときあることを思いついたのだ。この曲をアンチに向けて歌おうと考えていたのだ。アンチに対して「うっせぇわ」と……。
『うっせぇわ!?』
『おい!お前、完全に俺達を敵に回したな!』
コメント欄を見ると、案の定コメント欄でアンチが大暴れしている。いいさ、お前らに一方的な暴力をするのもこれで最後だ。好きなだけ踊らせてやる。
「はぁ?うっせぇうっせぇうっせぇわ!」
『カルミアってあんま歌は歌いたくなさそうにしていたのに歌上手いじゃん!』
そのまま二番を歌い始めていた。コメント欄を見ると、俺がどうやらトレンド入りしているようだ。低評価を見ると、どんどん増えているが高評価の方がまだ上だった。大したことないな、アンチの奴らも……。
「はぁ……スッキリした!もう一曲歌っていいか!?」
一度水を飲み、「はぁ……」と息を吐く……。
さて、次歌う曲は……。俺がやっているゲームの曲を歌うとするか……。
『こ、この曲は……!?』
『ファッ!?マジかよこの曲歌うのか!?』
『OTAHENアンセム!?』
俺のイメージには、合わない曲だが俺は歌う。この曲に歌詞にある「タヒね」って部分が俺は好きだ。なによりこの曲を歌っているりあむって奴は俺と同じ炎上した人間だからな。
この曲も歌い終わり、俺は歌い終えたことに達成感のようなものを感じていた。俺のやりたいことは全てやり遂げた。最後にこの言葉を言って終わろう。
「お前ら、今日はありがとう!これからも色々と迷惑をかけるかもしれないが、俺を見ていてくれ!」
『ありがとう、楽しかったよカルミア』
『魔の一族の実力がこれほどの物とは……!』
『カルミアの歌凄かったんじゃ~』
『凄かったよ!カルミア』
俺を賞賛する声もあれば、俺を否定してくる声もあった。賛否両論になるのは分かっていたが、どうやら賛の方が多かったようだ。最後のコメントはどうやらバイオレットが俺の配信にコメントをしていたようだ。俺は配信を切り、ロメリアもコメントをしていたのだろうかと思い、確認すると歌っている最中にサイリウムを振っていたようだ。節子のコメントも確認すると、節子もコメントしていたようだ。
三人共、俺の配信を見てくれていたんだな……。自分でも分かるくらいの喜色を見せていると、俺の携帯に電話をかかってきた。
「青葉だ、まずはお疲れ。今日の配信どうだったかい?」
「自分では満足の結果になったと思う」
「それは良かった。初めての歌はどうだったかい?」
初めての歌か……。コメントにもあったと思うが、俺は歌を歌うのはそんなに好きじゃない人間だ。歌もそれなりにって感じだし……。ゲーム実況をやっていた頃も歌動画だけは絶対に出さないでいた。それでも今日俺が歌ったのは、アンチに対して最後の攻撃をしたかったからだ。恐らくこれ以上、俺があいつらを一方的に攻撃することはないだろう。
「あんまり得意じゃありませんでしたが、なんとかやりきれたと……。青葉マネージャー的に今回の配信どうだと思いますか?」
「良かったと思うよ、キミに出せる実力の全てを出せていたと思うよ」
俺の出せる全ての実力……。青葉マネージャーにそこまで評価してもらえるなんて俺は思いもよらなかった。
「それと十万人おめでとう」
十万人。俺が謹慎する前は確か9万8千ぐらいいた。だが、炎上したことにより千人ぐらいが減っていた。今日の配信何人が見に来ていたんだと確認すると、どうやら二万人が見に来ていたようだ。そんなに俺の配信を見ていてくれていたのか……。
「ありがとうございます、青葉マネージャー」
十万人か……。この数字を大切にしないといけないよな……。
俺はSNSをチェックしながら、水を飲むのであった。
◆
10.名無しさん
今日のカルミアの配信どうだったと思う?俺は面白かったと思うけど
11.名無しさん
カルミアがまさかOTAHENアンセムを歌ったのには驚いたな
うっせぇわはイメージと合っていたけど
12.名無しさん
カルミアの話題は此処では禁止して……まあ、でも今回の復帰配信凄いあいつらしいよな
13.名無しさん
ブレないって感じだな……
それでも十万人を突破しちゃうんだから、才能はあるよな
14,名無しさん
俺カルミアのガチ恋勢になったかもしれん
15,名無しさん
カルミアのガチ恋勢とかマジか!?
16.名無しさん
これからの一期生の動向がますます気になる一方だな
OTAHENアンセムは載せていいのか分からなかったので、曲名だけ載せました。
感想くれたりすると、喜んで飛び跳ねます