夢無き少年のVtuber物語 ~Dream Stage Live!~   作:瀧野瀬

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前回、冒頭に七月と書いたのですが秋ごろに変更させていただきました。すみません。


第三章 第三回ヴィーナス杯
中二病が許されるのは中学生までだよね


 カルミアの復帰配信が終わり、その次の日俺はカルミアの配信を見ていた。

 カルミアの今日の配信はApex、マスターチャレンジ。Apexとは大人気バトルロイヤルゲーム。

 

『あぁぁぁ!チーターの分際で俺の邪魔すんじゃねええ!!!早く行かせろよ、マスター!!てかゴースティングして来てんじゃねえよ!?』

 

 カルミアの汚い声が俺のイヤホンに流れてくる。

 前にも思ったが、こいつヒイロの頃と何なら変わりないな……。これでも八千人近くがカルミアの配信を見ているんだから、凄いよな。まあ、確かにこいつの配信って見どころはたくさんあるしな。

 因みに、ゴースティングってのはゲーム実況者などの配信画面を見て、同じゲームに自分も参加してプレイすることだ。

 

『来いよ、チーター野郎!一対一でケリつけようぜぇ!お前らチーターなんか俺が捻り潰してやるよ!』

 

 威勢がいいとはこのことだろうか……。

 この感じ、どう考えても負けるだろうな……。俺はカルミアの配信を凝視しながら見ていた。カルミアで思い出したが、この前伊織が七瀬に謝罪をしたらしい。最初は七瀬は驚いたらしい。謝りそうにない人から謝られたんだ驚くのも当然か……。

 

『E〇!見てるか、これがチーターの闇だぞ!目逸らすんじゃねえぞ!!』

 

 カルミアはチーターにタイマンを挑んだのだが、結果だけを伝えるならば負けていた。

 

『クッソ、今日の配信は散々だったな……!今日の配信はこれにて終了だ!』

 

 カルミアは配信を切り、配信は終わった。退屈しのぎにカルミアの配信を見ていた俺はこの後どうするかなぁと思っていた。暇だし、動画編集でもするか……。最近思ってきたことがあるんだが、俺はそろそろ自分の挨拶というのを変えようかと思っている。イタリア語でも良かったんだけど、それだけだとなんか味気ないかなと思うようになってきていた。挨拶ってのも大事だからな。さてどんな感じなのがいいかなと思いながら、考えていたのだが……。

 

「駄目だ、思いつかねえ……」

 

 考えても考えても良い案が思い浮かばない。視聴者に募集を募るってのも手だがこういうのは自分で考えたい……。何かいい方法はないか……。そう思っているうちに俺はどんどん眠くなり、ベッドに入り眠る事は選んだ。

 

 

 

 

 次の日の朝……。今日は事務所で会議ということもあり、俺は8時に起きた。ゲーム実況をしていた頃は、よく徹夜してでもゲーム実況を撮っていたから俺は生活リズムは完全に崩れていた。今は完全に良いのかと問われれば、良いとも言い切れないだろうな……。

 

 時間帯は10時になり、俺は事務所へと向かう。事務所へと向かっている最中、誰にも見られないようにSNSでエゴサしていた。俺はカルミアと同じようにゲーム配信をメインに行っている人間だ。それはカルミアの配信を見る限り、伝わってくる。問題は、俺がカルミアに勝っているところがあまりない。気にする必要はないし、静かなゲーム配信を見たい人には俺を見る人も居るだろうし、男だから見ている人もいるだろう。しかし俺はどうにかしてアイツに勝ちたいのだ。何か天喰 焔らしさというものがあればいいのだが……。

 難しいよな……。

 

「さて今日三人に集まってもらったのは他でもない。今日は会議をしていこうかと思うよ。内容は今後の活動方針についてだ」

 

 綾瀬さんが同期三人集まったのを見て会議を始める。今日の内容は予め聞かされていた。

 

「現在、三人の登録者数はこうなっているね」

 

 俺達が活動開始したのは七月頃だったはずだ。面接に合格してからかなり早い段階でのデビューだった。既に季節は秋となっていた。デビューした後は、俺が一番登録者数が少ない人間だった。確か、三万人ぐらいだったか。紅無限耐久配信がバズってその後も登録者数は伸びていたはずだ。

 

 俺は資料に目を通す。俺の登録者数はあれから七万人に到達している。あれから四万人近くが俺を登録してくれたようだ。雛井は九万人突破し、七瀬は八万人突破しているようだ。こう見ると、色んな人達が俺達のチャンネルを登録してくれているようだな。

 

「さてと三人共中々に良い感じに登録者数が伸びて来てるね。次に今後の活動方針について話していこうか……。まず雛井だ、雛井は確か絵を描くのが得意だって面接のときに言っていたらしいじゃないか!そこで、マスコットを生み出して配信してみるというのはどうだろうか?」

 

 マスコット配信か……。最近俺も他のVtuberを見るようになったから分かるが、マスコットを生み出して配信している人を偶に見かけることが多い。マスコット配信ともなれば、見に来る人も多くなるだろう。悪くない提案だ……。

 

「な、なるほど……。マスコットですか、今度考えてみますね!」

 

 雛井は軽くメモしていた。

 

「次に七瀬だ。七瀬は確か歌だけじゃなくギターも得意だそうだね。ギター配信というのを試みるのはどうだろうか?」

 

「ギター配信ですか……。確かに今までやったことはなかったのでやってみたいと思います」

 

 ギター配信か……。七瀬は歌もギターも得意だし、特徴的な何かを持っているものは強いな。それは雛井にも言えたことだが……。俺は何かあるだろうか。俺に残されたものなんてゲーム実況しかないからな。だけど、ゲーム実況はあいつ(伊織)に勝てる要素はないしな……。あいつと違うジャンルのゲームをやるってのも手かも知れないが……。

 

「最後に藤堂君!藤堂君は中二病という設定を活かして大きく中二病らしさ全開を出していくというのはどうだろうか?」

 

 確かに俺の設定には中二病を引き摺っているという設定がある。因みに、俺が中二病を引き摺っていたのは高校卒業するまでだ。七瀬は俺のことを未だに中二病引き摺っていると言っていたが、今は引き摺っていない。ただそう上手く行くだろうか……?心の中で疑問もあったが、俺は一度やってみようと意欲的になっていた。

 

「分かりました。やってみようと思います」

 

 中二病か……。高校時代の自分に戻れば何とかなりそうだ。

 

 

 

 

 

 次の日、俺は朝七時という俺史上異例の早起きをして昨日買ってきたコーヒーを淹れ始める。そして、出来上がったコーヒーを飲み始める。

 

「苦っ……。でも味と風味は最高だな」

 

 朝のルーティーンにする予定のコーヒーを飲み終え、トーストを食べて俺は自分の今日の配信まで難しい小説やラノベを読み始めていた。因みに、ラノベを呼んだのも高校生以来だ。文字だけってのがどうしても慣れなくて俺は読んでいなかった。

 因みに何故こんなことをしているのか?と問われれば、かつての自分を取り戻す為の作業だ。

 

 

 

 

 配信開始三十分前となり、俺は声出し練習をしていた。

 

「闇の炎に抱かれて消えろ!」

 

 かつて俺がハマっていたゲームの秘奥義の台詞を練習している。勘違いされることが多いが、これの元ネタはアニメではない。勘違いされやすいけど……。ってこんなことどうでもいいか次の台詞を読み始める。その作業を繰り返しているうちに配信時間となる。

 

 今日の配信タイトルは『今日から俺は変わります!』と言う配信タイトルである。

 その配信タイトルに釣られてか、一万人近くが俺の配信を見ている。さて、行くとするか……。俺の配信へ……。

 

 

 

 

「ふっふっふっ……」

 

『え!?誰!?ほむっち!?』

 

『えっと……どちら様?』

 

『これはwwwまさかwww』

 

「ようこそ同士諸君……!Добрыйвечер(ドーブライヴィーチェ)!」

 

 Добрыйвечерロシア語でこんばんを意味する言葉だ。

 

「今日は俺の配信にご足労頂いたこと誠に感謝する!俺の名は天喰 焔!」

 

『えっと……焔だよな?』

 

『ほむっちだよね……?』

 

『中二病なほむっちも好きだよ!』

 

 俺の顔が熱くなっている気がする。

 流石に高校時代でも此処まで酷くなかった気がする。

 

「しかし天喰 焔と言うのは仮の名。俺の名はイフリート!炎を司る魔法の使い手!俺の目標は天をも喰らい尽す人生だ」

 

『自身の能力を隠しているっていう設定何処行ったんすかね?』

 

「フッ、そんな設定など最早俺のプロミネンス・ノヴァで燃やし尽くした。此処に俺の新たなる設定を生み出した」

 

 

 

 

 天喰 焔

 

 炎を主体としたフリーの魔法使いであり、魔法使いとしての素質はかなり高い。

 当人が掲げている天をも喰らい尽す人生が目標。未だに中二病を引き摺っている。

 

『なにぃ!?設定を書き換えただと!?』

 

『プロミネンス・ノヴァってなに!?』

 

『お腹痛いんだけどwww』

 

 ぶっちゃけ、滅茶苦茶恥ずかしい。だけど此処は乗り越えなきゃいけない。乗り越えた先に何かがあるはずだ。本当にあるのかは知らんけど……。

 

「フッ、ある程度俺の自己紹介は終えたな。因みにプロミネンス・ノヴァというのは俺の最大火力魔法のことだ。これからも使うことは多いだろうから、覚えておくように」

 

 使うことはないけどな……。

 

『えっと……焔だよね……?もしかして中二病って奴になってるの……?』

 

 雛井の奴、俺の配信見てるのかよ……。見ないで欲しかったんだが……。

 

「水無月か……。中二病と言う言葉がどういう意味かは知らないが俺は俺だ。変わることはない。風月は俺の配信を見ているのか?俺に見惚れてコメントをし忘れていたのか?」

 

 自分でも最後の言葉はキモいと思った。思ったが言い切った。言い切った後、後悔したけどどうでもいい。此処まで来ると、どうでもいい。

 

『すまない、茫然としていてコメントを忘れていた』

 

『同期に茫然とされていてワロタwww』

 

『そりゃあ、そうもなるわwww』

 

「フッ、二人共俺の配信に驚いているようだな。それも当然か……。これこそが俺の本当の姿だからな」

 

『きっしょ、マジでキモい』

 

『カルミア先輩見に来てて草』

 

 カルミアも俺の配信見に来ているのか……。なんでこんなに集まってるんだ……?

 

「は?キモい……?失礼だが、カルミア、キミの美的センスは壊滅的レベルではないかね?」

 

 先ほどの言葉のせいでキャラがブレブレだが、此処まで来るとキャラとかどうでも良くなってきていた。

 

『は?お前やんのか?』

 

「いいだろう、此処はキミの得意なゲームでケリをつけようではないか。当然勝つのは俺だがな……。お前の為に鎮魂歌(レクイエム)を奏でてやろう」

 

『上等だ、ゴラァ!Apex準備して待ってろ!』

 

 唐突に始まった俺とカルミアとのApexバトル。

 カルミアの実力は確かダイヤ1だったはず。俺の実力はダイヤ2だ。カルミアの方が実力は上だが、この勝負負けるつもりはない。風月も呼んで審判係をやってもらった。射撃訓練場に行くと、俺達はボルトと呼ばれている武器を持った。ボルトというのは、非常に使いやすいSMG(サブマシンガン)

 

 

 

 

 

 

「はい!俺の勝ちィィィ!二度と俺に逆らえると思うなよ!」

 

 カルミアとして演じているのは理解できるが、こいつやっぱ子供だわ。

 

「……はい、すいませんでした。二度とカルミア様には逆らいません」

 

 タイマンでの銃撃戦の結果、俺は敗北した。これがダイヤ1とダイヤ2の差とでも言いたいのか……。認めねえ、認めねえぞ……。こんなの……!その後、カルミアは勝ったのに満足したのか俺の配信を見るのをやめたようだ。何故それが分かったのか……。それはあいつが帰るときに「逃げるなぁ!卑怯者ォ!」と言ったが、反応がなかった。

 

「くそっ……。奴に逃げられてしまったようだな……。ん?電話か、誰だ……?」

 

 来てもいない電話に出たフリをしていた。

 

「はい、もしもし天喰です」

 

「ああ、そうか……。そうか、分かった……。すまない、諸君。どうやら組織の人間が俺の仲間を攻撃しているようだ。今回の配信はこれにて終了だ、今後も配信していくから期待していてくれ」

 

 配信を切り終え、俺は溜め息を吐く……。コメント欄を最後まで見た感じは好評だったが、今回の配信キャラが完全にブレブレだった。まだ決まってもいないキャラだったから仕方ないとはいえ、次からはキャラを固めた上で演じて行かなければ……。中二病か……。難しいものだな……。

 

 

 

 

 一週間後、雛井 天音こと水無月 薫のマスコット配信が決まった。

 そして、その当日となりマスコット配信が開始された。開始されたのだが……。

 

「ご主人様の妹が帰ってきたワン!逃げるんだワン!」

 

「お姉ちゃん!お姉ちゃん……!あれ!?お姉ちゃん居ないの?あれ此処にマイクが置かれている。しかも配信つけっぱなしだ……。どうしよう、お姉ちゃんの代わりに配信してみようかな。あっ、こんにちは!水無月 亜実です!いつも姉がお世話になっております!」

 

 優しそうな声が響いていた。

 なんとマスコットのみならずなんと水無月の妹なる人物までもが登場した。結構可愛いイラストだった為、SNSでは水無月 亜実とポチがトレンド入りしていた。

 

 

 

 

 続いて、風月のギター配信が行われたのだが……。

 

「最初の二人が強すぎて俺が霞むんだよ!なんだよ、中二病に妹に犬ってよ!反則過ぎんだろ!」

 

 ギターを弾く前に言っていたこの発言に俺は笑っていた。

 

「それじゃあ最後の曲弾くぜ!」

 

 最後に弾いた曲に俺は覚えがあった。一度聞いたことがあったからだ。そう、それは高校一年生の文化祭のときだ。確か、七瀬の兄が歌っていた曲だ。七瀬には兄がいた。今では有名ロックバンドのボーカルになっていると聞いている。

 

 

 

 

 七瀬の兄か……。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

「風月 凛か……」

 

 とある男が待機室でスマホで風月 凛の配信を見ていた。その男は険しい表情で風月 凛の配信を見ていた。

 

「颯斗!そろそろ本番始まるよ!」

 

「ああ、分かった……」

 

 颯斗と呼ばれた男はスマホの電源を切り、スマホを置いて行った。

 

「颯斗、何見てたの?」

 

「別に何も見ていない」

 

 首を横に振る。

 

「本当に?まあ颯斗が話したくないならいいや。そういや、颯斗はVtuberとか見てる?」

 

「Vtuber……?」

 

「知らないんだ!最近流行ってるんだけど、面白いから今度暇なとき見てみなよ!」

 

 颯斗の隣にいる男は楽しそうにVtuberのことを話していた。

 

「そうか……。Vtuberか……」

 

「ん?颯斗何か言った?」

 

 

 

 

「いや、何でもない。そろそろ行くぞ、俺達のライブに……」

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