夢無き少年のVtuber物語 ~Dream Stage Live!~   作:瀧野瀬

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お姫様と台パン女と中二病

 ゲーセン……。

 此処は色んな奴が集まる場所だ。家族連れにカップル……。オタクと思われる奴や偶には変な奴も此処に来ることが多い。そんな集団密集地にやってきた私はあいつを探しており、あいつを見つけた俺は今ではやる人をほとんど見かけることが少なくなったシューティングゲームの前に立っていた。あいつは俺に気づいたのか、こちらをチラッと見てすぐにゲームに戻っていた。

 

 俺は後ろに下がり、ゲーム画面を見ていた。紗月の腕前は尋常じゃないものだった。百発百中の射撃手ってのはこういうことを言うのかもしれないな。ゲーム画面を見ていると、今のところ全てヘッドショットでゾンビを倒していたが、一匹だけ体に当てて倒してしまいその画面を見て紗月は一瞬舌打ちのようなものが聞こえた気がしていた。俺が見ているという緊張かはたまたまミスをしてしまったと言ったところだろうか。だが、この調子で行けば俺のスコアは越せるだろう。

 

 最後のステージとなり、ボスのステージと辿り着く……。ボスも数分で倒し終え、最終スコアが表示される。当然、一位となり俺のスコアを抜かしていた。

 

「貴方、来ていたの……」

 

 ゲームを終えた紗月は水を飲んだ後に俺に話しかけてくる。

 

「ああ、此処に来ればお前に会える気がしたからな。それで俺の記録を更新した感想はどうだ?」

 

「こんなの練習すれば簡単。でも今回はミスもあったからまだまだ」

 

 あの腕前を見る限りではかなりの努力をしたのは間違いないはずだ。

 

「そういえば、まだ名乗ってなかったな……。俺の名は桔梗 伊織だ」

 

 俺は軽く自己紹介を済ませる。

 

「桔梗 伊織……。それが貴方の名前……。そういえば、この前一緒に来ていたあの人とは一緒じゃないの?」

 

「彰斗のことか……。あいつは今日は一緒じゃない」

 

 連絡しようと思ったが、あいつにはあいつの用事もあるだろうと気を遣って連絡はしなかった。

 

「あの人とはどういう関係なの?」

 

 彰斗のことを聞いてくる紗月。どういう関係か……。普通に考えれば同業者って感じでいいだろうか……。別に友達って訳でもないからな……。いや、友達なのか?でも、あいつと俺とは歳離れてるし……。友達って訳でもねえか……。

 

「別に大した関係じゃねえよ……。なんでそんなことを聞くんだ?」

 

 紗月は少し歩き始めてから何かを考えていた……。

 まるで、なんでそんなことを聞いたのだろうかと自分で悩んでいたのかもしれないな。

 

「少し気になっただけ……」

 

 ……本当にそれだけか?と心の中で思っていたが、俺はそれを口にすることはなかった。口にしても良かったが、別に聞く必要もない。俺と紗月はゲーセンを歩いていた。ゲーセンを歩いていると、黒髪でパーカー姿の男を見かける。俺はすぐに彰斗だと気づき、俺達を探しているのかキョロキョロとしている彰斗に俺は近づく……。

 

「お前らもやっぱり此処に居たのか……」

 

 彰斗も俺達が此処に居ると思ってどうやら此処に来たようだ。

 

「ああ、別に俺はこいつ(紗月)に会いに行くためにゲーセンに来た訳じゃねえけどな」

 

 彰斗は「本当か?」とでも言いたそうにしながら俺を見てくる。

 

「そうか……。えっと、お前にはまだ名乗ったことがなかったな。藤堂 彰斗だ」

 

「城崎 紗月……」

 

 紗月と彰斗はお互いに名乗り、名乗り終えた紗月は俺達と共に対戦ゲームを楽しむのであった……。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 ゲーセンから帰って来た俺は、家で暫くのんびりしてから配信の準備をしていた。今日はコラボ配信であり、レディアとカルミアと一緒にゲームをすることになっている。正直言ってこの二人の相手をするのは疲れるかもしれない。レディアはあんな感じだし、カルミアは通常運転過ぎてもう手に負えない。因みに、今回のコラボを見て待機している視聴者は俺のことを保護者と呼んでいる。誰が保護者だ。

 

 配信も始まる時間となり、俺は配信開始のボタンを押した。どうやら今日はレディアは寝坊をしていないようだ。ディスコの画面を見る限り、起きているのが分かる。音量調整をしながら、俺は配信をスタートする。

 

「よぉ、みんな……!Добрыйвечер!Dream Stage所属炎のイフリートこと天喰 焔だ」

 

 自己紹介を試行錯誤しまくって結局これを選んだ俺。

 どうでもいいが……。

 

「今日はカルミア先輩とレディアとのコラボだ。カルミア先輩とは一応これが初コラボになるな。てか、今日は寝坊しなかったんだなレディア」

 

 一回俺の改めての自己紹介配信で一回コラボのようなことはしたことはあったが……。

 

「そんなの当たり前じゃん。うーっす、どうもどうも。Live Star所属、ほむっちの織姫ことレディアだよー。今日はよろしくー」

 

 いや、いつも遅刻してるだろ。俺がそっちに気を取られていると、とんでもない爆弾発言をする。当然、コメント欄が加速している。「やっぱレディアさんってほむっちの彼女なんだー」と湧いている。俺のコメント欄がこんなだからきっと向こうもあんな感じだろうな。

 

「え?年に一回しか会えないのって?そうだよ、私のパパが厳しいから年に一回しか会えないんだー。自由に生きたいのにねー。人生は冒険なのにねぇ……。ねぇ、ほむっち今年はどんな一日を過ごしたい?甘い一日?それともずっと忘れられない一日?」

 

 前のコラボ配信のときと同様、相も変わらずのレディア。

 因みに、こいつの配信を確認したがこいつが男性Vtuberに対して此処まで好意を抱いていることは全くない。つまり、俺だけなのだ。なんで俺だけこんな扱いされてんのかはよく分からない。

 

「でもほむっちと一緒ならきっと楽しい一日になるのは間違いないよねー。私お姫様だから元々王子様に憧れてたんだー」

 

 この態度から考えられないがこいつはお姫様なのである。二度も言うが、こいつはお姫様なのだ。俺もこいつと最初にコラボしたときは本当にこいつお嬢様かと驚いたが、それを受け入れるしかなかった。因みに、王子様に憧れているとか言う設定はない。

 ガチでどうでもいいが……。

 

 レディアの設定はこんな感じになっている。

 

 レディア

 

 年中無休の我がままお姫様。

 毎日家に引き篭もってはゲームをしており、世話をメイドに頼んでいる。新しい刺激を求める為に、Vtuberを始めた。

 

 

 

 

「それじゃあほむっち、私と一緒にゲーム始めようかー」

 

 カルミアのことを完全に無視してゲームを開始しようとするレディア。

 

「……おい」

 

 そんな状況をカルミアが無視するわけがない。

 

「ほむっちは何選ぶー?」

 

 カルミアに呼ばれても無視するレディア。

 これ以上無視すると、カルミアがヤバい気がするが……。はたして……。

 

「おい、コラ。テメェ、人のことを無視してんじゃねえ」

 

「ん?なに余りものの台パン女さんー」

 

 挑発とも受け取れるその発言……。

 カルミアはいったいなんて反応するのだろうかとドキドキしながらも俺は待っていた。

 

「ぁ?台パン女?随分な名で呼んでくれるな……」

 

「え?だって、あの台パン凄くウケたよー。弱小国喰っててイキってたら核を使われて無言の六回台パンには凄い笑ったよー」

 

 ああ、あの切り抜き動画か……。俺も見たから知ってるけど……。

 切り抜きを見たという話を聞いて、黙り込むカルミア。見苦しいところを見せたとでも思っているのだろうか……。

 

「あれ?どうしたの?まな板さん?」

 

「テメェもまな板だろうが……」

 

「私はまな板じゃないよー。まだ成長過程なだけだよー。今度ママが大きく描いてあげるって言ってたよー」

 

 余裕を見せるレディア。

 胸の大きさとかどうでもいいだろ。女ってよくそんな話題で盛り上がれるよな……。

 

「くだらねえ話だ……。早くゲーム始めろ……」

 

「つまんないのー。まあ、いいや。それじゃあゲーム始めようかー」

 

 

 

 

 

 ゲームを開始、数分後の世界……。

 そこには猿山の動物園が広がっていた。

 

「おい扉開けんなァ!馬鹿ァ!おい、早く閉めろォ!」

 

 カジュアルだからまだ許……。いや、許していいのだろうか……。レディアは「大丈夫、大丈夫」と言いながら、突っ込んでいる。当然、レディアのライフはどんどん減っていき、風前の灯火となっていくのだが……。

 

「ほら、大丈夫だって言ったじゃん。ほむっちもカルミアもビビりすぎなんだよー」

 

 持ち前の実力で1VS3を制止。圧倒的な実力を見せつけるレディア。

 レディアの配信のコメント欄で何度か見かけたことあったが、こいつ本当にマスターの実力があるんじゃないのか……?なんでこんな奴がダイヤ帯に居るんだ……?

 

「……認めたくはねえが、こいつの実力は本物だな」

 

「おっ、カルミア褒めてくれるの?ありがとうねー」

 

 実際のプレイを見せられて黙らされたカルミアはそれ以上何も言わなかった。俺はアイテムを漁っていると、よく使われる武器を見つけてそれを知らせると……。カルミアが「それ貰う」と言うのであったが……。

 

「……無いんだが?」

 

 俺が再度確認すると、敵のアイテムから武器が消えている。残っているのはカスみたいな武器だった。俺は盗んでないから盗んだとしたら……。

 

「おい、レディア。お前俺の武器盗んだろ?」

 

「え?盗んでないよー。酷いなー、カルミアは仲間を疑うの?」

 

 良心に訴えるレディア……。

 この感じ、盗んだのはレディアだな……。

 

「お前、戻って来い。アイテム画面でお前の使っている弾確認できるんだからな」

 

 アイテムで確認したのか、カルミアがレディアに言う。

 レディアは武器を取った後、現在逃走中である。

 

「証拠あるのー?」

 

 カルミアはレディアを追う為だけに空を飛び始める。そして、レディアが居る場所へと降下する。そして、武器を確認したのか……。

 

「やっぱ、お前が盗んだじゃねえか!!」

 

「ごめんごめんー、お詫びにこれあげるから許して」

 

 

 

 

「いらねぇ!!」

 

 ゴミでも渡されたのか大きな声で張り上げるカルミア。

 こんな状況が何度も何度も続き、俺とカルミアはレディアにおもちゃのように振り回されていた。

 

 

 

 

 それからカルミアが一旦トイレに行き、二人っきりになった俺達。

 

「ねぇ、ほむっちってカルミアのことどう思ってるのー?好きだったりするー?」

 

 あいつのことが好きか……。俺にとってあいつはただの事務所の先輩だけって感じがするけど……。俺はカルミアのことを一旦考えてみる。伊織本人と比べて、ハイテンションのゲーム実況。オーバーなリアクション、面白いゲーム配信。どれもこれも素晴らしい奴だ。こう考えると、俺にとってなんか憧れみたいな存在なのかもしれない。歳は俺の方がいってるのに、こんな風に思うのってなんか変な気分だな。

 でも、好きか嫌いかで言われたら、俺は多分きっと……。

 

「まあ、普通に好きだと思う」

 

「そうなんだー。私もカルミアのこと好きだよー。面白くて弄り甲斐があるよねー。じゃあ、カルミアが帰ってきたときに言うねー」

 

「は!?」

 

 どうせ冗談だろうと思いながら、少し黙っているとカルミアが帰って来たのかマイクに反応があった。

 

「あっ、カルミアお帰りー。さっきねー、ほむっちがねー」

 

「おいやめろォ!!!!」

 

 とこんな感じでコラボは終始レディアに振り回される形で終わりを迎えるのであった……。

 レディア……。最初はなんだこいつはと思っていたが、面白い女だなと俺は思っていた……。またコラボしたいな……。いや、すればいいか……。こいつとコラボするの割と楽しいし……。振り回されてばっかだけど……。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 とあるVtuberの雑談配信。その雑談配信のタイトル名は『今日のヒーロー活動日記』と言うタイトルであった。

 彼女の名前は、マヤ・クラウス。オレンジ色のショートヘアーに、水色の瞳が特徴。そして、ライダージャケットに黒ニット、グレーのパンツを履いている女子である。

 

「そういえば、皆。そろそろヴィーナス杯の時期だね。今年はあるのかなー?」

 

 ヴィーナス杯は去年も一昨年もこれぐらいの時期にやっていたのである。

 

「え?仮に今年あるとしたら、誰と戦ってみたいって……?うーん、前回私と良い勝負をしていたアキラかなー。あの人とまた一緒に戦いたいかな。あの人と戦えるかもしれないと考えるだけでも滾って来るよ!やらないかなー、ヴィーナス杯……!」

 

 

「まっ、仮にやったとしても今回こそは私が勝つんだけどね!」

 

 

 

 

「だって、私は皆のヒーローだからね!!」

 

 

 

 




レディア

 年中無休の我がままお姫様。
 毎日家に引き篭もってはゲームをしており、世話をメイドに頼んでいる。新しい刺激を求める為に、Vtuberを始めた。

 服装はシンデレラのボロ服みたいなイメージ。

マヤ・クラウス

 ヒーローに憧れている女子高生。
 放課後ではヒーロー活動というのを行っており、困っている人を見かけたら助けている。
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