まつろわぬ神   作:橋里うら

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解説会というか、それぞれの情報のすり合わせになるはずだったのに文字数がすごいことになりました。今までで一番長いです。これもグダグダ書いていたせいなんですけど。
ここ間違ってるんじゃないか、と思ったら優しく教えて下さい。



カエル三匹目

通常はこうした暑い日であっても神社や寺は何となく涼しく感じるものである。だが、火に巻かれた、というこの場所はじりじりと嫌な暑さをしていた。時折流れる風も生ぬるく、焦げ臭い。

 

 

「特級呪霊、だったはずだよな」

「私と悟が真面目に話を聞いていた限りだとそのはずなんだが。お竜さんに殴られただけで死んだが」

 

それもさっきまでの話。嫌な暑さはさっぱりと晴れ、木々に囲まれている分少し涼しいくらいだ。

 

 

特級と定義されたはずの呪霊は姿を晒して殴られ、早々に塵になった。

場所は放火により消失したという神社の跡地。出現するようになった堕ち神は中々に力を持った存在であったはずだった。そも、お竜さんを試すための試金石なのだから上もそれ相応の呪霊を回したのだ。

 

それがこうも瞬殺されては、その姿を視認する暇さえなかった。

せっかくの特級だから取り込めないのは勿体ないな、と夏油は物惜しいと感じながらも呆けた顔を晒した。

流石にそれだけで特級呪霊とあろうものが死んでしまうとは思わなかったのだ。

といっても躊躇やらがないだけで討伐自体は五条の時も同じくらい早いだろう。ただ、そちらのほうが見た目から圧倒的なのに対して、お竜さんはただの拳なものだから戸惑いが一番にくるのだ。

 

 

「お竜さんが最強なのは当然だが、今回はクソザコナメクジでも死なないように手加減したはずなんだ」

 

その特級呪霊を出会い頭にぶん殴って消滅させたくせに言い訳をする。

契約上は一級以上生け捕り毎にボーナスが出るのだ。そう、生け捕りが条件なので今回はお竜さんにとってタダ働きということになる。

こんなの弱い方が悪いだろと言う視線を感じるが縛りは縛りだ。夏油としてもそれはどうすることもできない。

 

「そのパンチでピンピンしてるならクソザコナメクジ呼ばわりされてるやつ、実は相当丈夫なはずだろ」

「か弱い乙女なお竜さんのパンチだぞ」

 

そのクソザコナメクジって結構語呂がいいな、と五条が言う。お竜さんが来てからというもの、五条のクソガキムーヴがパワーアップしている気がする。

それでも夏油には自分の親友と言えども口調を諌める気はないので放置一択だ。普段は隣に規格外が居るから真面目な優等生だと思われがちだが、実のところそうでもないので。正直自分に迷惑がかからなきゃどうでもいい。

 

「お竜さんは兎も角、悟は口が悪いと私が文句言われるんだから言う場所は気をつけな」

「傑のいいとこは言うなとは言わないとこだよね。でもまあ、もう傑に文句も何も言えないでしょ、上の連中は」

 

ジジィ共であっても大いなるものを相手にはしたくないわけだ、と呆れたように言う。

最強であろうと文句をつけられ続けた身からすると、やはり人外っていうのは相当に恐ろしいらしいことが伺える。倫理を人外に求めるのは間違っているというのはボケたジジィ共でもわかるらしい。

その結果が今回の補助監督のみを通しての試験的な任務なのだろう。

普段なら呼びつけての文句の雨あられが、この距離の取り様なのだからあまりに顕著だ。

 

「お竜さん、俺らがびっくりするくらいしっかりできるのにねぇ」

「何なら悟よりもしっかりしてるぞ。見習ったらどうだ?」

「あ“?」

 

 

仲がいいのに煽り合いをする光景は中々にお竜さんには新鮮に見えて、面白く感じた。カルデアには喧嘩友達とかライバルとかはそこそこに居たが、これはちょっと特殊な部類だろう。

 

「ゴジョウはなんかやらかすのか」

「帳の降ろし忘れ、人目のある場所での術式発動、とあげ始めたら限りがないさ」

「神秘の秘匿って知らないのか…?」

 

信じられない、といったようにお竜さんは五条に向き直る。

もっと言ってやってくれ、と夏油じゃなくとも思うはずだ。正直誰もお竜さんがここまで秘匿の意識がしっかりあるとは想定していなかったので、相対的に五条の行いが悪く見えるのだった。

尚、お竜さんを含めた幾名かはカルデアで神秘の秘匿についてしっかりと学んでいるため、心構え自体はバッチリである。アガルタでの計画通りみたくなって英霊の座がなくなるのは勘弁なのだ、との認識があってこそだが。

 

「神秘がなんだか知らねーけど、お竜さんまでそうやっていうわけ?」

 

五条が不貞腐れるが、夏油もお竜さんも見事なまでにスルーした。あとは帰るだけなのだ。お竜さんだって昨日の今日で早速出陣と相成ったのだからちょっとくらいは疲れていた。そしてずっと寝てばかりだったからか、まだまだ眠い。

昨日はもう夜だったから許されたが、本日は未だ話していない諸々を夜蛾を交えて説明しなければならないのだ。

まだ日も高い。高専のある場所ともそう遠くはないし、こんな時間に疲れた、寝たい、と言っても受理されないだろう。

 

お偉方からお竜さんに関するその他一切を放り投げられた夜蛾は心労で死にそうになっていて哀れだった。だからと言っていたわる気のある可愛い生徒は一人も居なかったが。

 

「悟はいいかも知れないが、こっちは三者面談を控えてるんだ。面倒なことはさっさと終わらすに限るさ」

「お竜さんも眠いから、それもすぐ終わらそう」

 

連絡を入れるまでもなく帳はもう上がっていたし、今回は本殿があった高台に留まるばかりだった呪霊が相手だったので補助監督もそのすぐ下に待機している。任務が終わったことはあちらも把握しているだろうから、もう車を出す準備も済ましているに違いない。

 

階段をゆっくりと降りていく。神社の階段というのはどうしてこうも斜面が急で下りにくいのだろうか。特に高身長の男子高校生二人と普段宙に浮いているお竜さんなら尚更だった。まだ生い茂る木の陰になることをいいことにお竜さんは早々に諦めてちょっとだけ浮いたが。

 

「議論はまた今度に」

「お、それならその三者面談、四者面談にしようぜ」

「お竜さんのことが気になるのか。有料だぞ」

「気になるね、話の断片を聞くだけでも面白いんだから」

 

お竜さんそろそろ、と夏油に言われてお竜さんは大人しく地面に足つける。普段開放されている足には、ローファーのギュッと擦れる感じがお竜さんにはなんとも言えなかった。

うぇ、という顔を隠さないお竜さんに夏油は苦笑いだ。声には出さないが、こういうリアクションの類が何となく五条に似ているな、と思ったのだ。

 

見た目に違和感を感じるというから、同級だという女子に靴を借りたのだという。窮屈で面倒だったが、人目に触れかねない一瞬だけと言われたのでこうして履いている。後日、もっと履き心地のいいものを用意するという約束だ。

霊体化というものがいかに便利であったかを思い知らされる。

 

「車に入ったら脱いじゃって大丈夫だよ」

 

もう目と鼻の先に迎えの車は止まっている。

そういえば珍しくワゴン車での送り迎えだが、履き替えの配慮だと最初は思うだろう。三人なら普段のものでいいわけなので。

結局は単純に補助監督の人が助手席に五条とお竜さんが来る可能性を避けたかったんだろうな、と誰もが思うくらいこっちに構うなという強い意思を感じた。

普段なら五条が目敏くちょっかいをかけるのだが、今朝はお竜さんに視線を向けていたからそれなりに静かに済んだ。帰りもそれで済めばいい、と夏油は思う。普段なら自分も揃って揶揄しにいくところだが、正直眠い。帰りは当然のように寝るつもりでいた。

 

昨日は急だったからお竜さんにベッドを譲って、自分は空き部屋に布団を敷いた。夏なのに冷房もない部屋だったから暑さで中々寝付けなかったのだ。

騒ぐのがお竜さんの場合、命令権の行使も辞さないほどである。

 

 

 

 

 

 

 

バタバタ、と乗り込む。

 

補助監督のかすかな「おかえりなさい」が聞こえたが、車内冷房の方が優先度は数段上だった。

 

一番後ろの席を真っ先に五条が占領したので、その手前に夏油とお竜さんの二人で座る。さっさと靴は脱ぎ捨てられたので、夏油は邪魔にならない場所に寄せた。これを借りた家入は中々に容赦がないので傷をつけでもしたら何を言われるかわからない。

何かと入用になることは明確だったので、ある程度は夜蛾が手配してくれているだろうが、靴ばかりはちゃんと自分で選んでもらう他ない。履き心地の良し悪しは本人でなくては決められないだろう。

 

お竜さんはぐでー、と重力を忘れていってしまうので、後ろの席は手分けしてブラインドカーテンを下げる。お竜さんのことがないにしても、交通ルールなんてものは知らない、とばかりにシートベルトも無視されているので中は見せられない惨状なのが常である。

傍から見たらきっと中の見えないワゴン車なんてものは不審でしかないのだとは思ったが、それはこちらの考えることではないとばかりに高専生二人とお竜さんは早速まぶたを下ろした。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 

 

 

 

 

「眠いんですけど」

 

夏油が代表して文句を言う。そしてそれに寝ぼけ眼の二人が頷いた。

 

 

丁度眠りも深くなったところで車は停まった。そしてそのまま待ち構えていた夜蛾が教室に連行する。東京都呪術高専に指導室なんて高尚なものはないので教室だ。家入は夜蛾がこちらにかかりきりになるのをいいことに寮の自室に帰ったという。

 

もとから眠かった夏油とお竜さんは言わずもがな。一人だけ起きていても、と揃って寝ていた五条も中途半端なところで起こされたため不機嫌だ。だがさきに言った三者面談に割り込むと言ったのは忘れていなかったらしい。こうして律儀に発言通りついてきた。

 

机は三つ。図らずともいつもの授業風景のように着席した。唯一の違いといえば家入の席にお竜さんが着いているくらいだ。眠いのに、かっちりと席に座っているのはお竜さんにとっては困難で、結局はいつもの宙に寝そべる体勢に落ち着いたが。

 

 

 

 

 

「高千穂の大蛇であると名乗ったな」

 

夜蛾はそんな様子の三人のことなぞ知らん、とばかりに早速話を開始させた。

 

「そうだ、何なら変化するのを見せてみようか」

「いや、それはいい。夏油が一番に送った画像で見たからな」

 

あの逆鱗に触れられて暴走状態のお竜さんの写真である。荒れ狂うその姿の写真が報告に上がったときには、まさかこんなに容易く解決するとは思わなかったものだが。

 

「それで結果なのだが、その神性は疑いようもない。そして幕末時代の坂本龍馬の周辺情報が改竄されたあとが見つかった」

 

龍馬の妻であったお龍が自分であると言ったのは傑に聞いたからな、と夜蛾は言うが、その表情は苦々しい。

お龍である楢崎龍とはその隠蔽の産物であったというわけだ。

 

「ちゃんと隠蔽されてたってことっしょ?いいことじゃないの」

 

あれだけ自分に秘匿しろというものなのだから、それでいいのではないか、と意味で五条は問う。

 

「秘匿のために情報改竄を行ったのがこちら側ではないことが問題なのだ」

「どうせ魔術教会が駆り出されたんだろ」

 

間髪入れずにお竜さんは返す。

 

「あの頃のお竜さんは神秘の秘匿とか何も知らずに人前で飛んだりしてたから、後処理したんじゃないか?」

 

あっけらかんと、さも当然のことであるかのように言った。

 

 

 

「魔術、というのは呪術とどう違う?お竜さんはそっちの存在とでも?」

 

夏油の疑問に、お竜さんはちょっと面倒くさいという顔をする。お竜さんも詳しいわけではないのだ。部分部分覚えていただけの聖杯知識と、キャスター陣による神秘の秘匿講座の賜物であるだけなので。

全部人づてだぞ?と前置きする。

 

「大本に神秘がある。人に知られすぎるとその分だけ細分化されてしまうから、これを秘匿する。人が起こす神秘を魔術といい、門派によってそのやり方も名前も変わる。人の信仰によって概念は安定するから土地によって別物になる」

 

お竜さんはこの神秘の体現で、これ以上聞かれても人に聞いたことをそのまま話しただけだから何も知らない、とお竜さんは膠もない。

 

「名前が違うだけ?」

「まあ言ってしまえば」

 

五条は夢がない、とケチをつける。実際は概念によって左右されるからほとんど別物になるのだが神秘から出るところは変わらないだろう、と返しは適当だ。

 

「呪術は極東のマイナー門派だからって魔術協会からハブられてるらしいな」

 

そういえばタマモがそんなことを言ってたかも、くらいのソースだ。

 

「じゃあ魔術協会というのは、海外の呪術連合みたいなものということか?」

 

お竜さんは、呪術連合について何も知らないのにそんなことを聞かれても、というじとりとした視線を夏油に返す。

咳払いを一つして、夜蛾が黒板に呪術師、及び呪術連合、その中心の御三家について書き始める。せっかくここは教室なのだから、と授業みたいにして解説が始まった。

 

 

 

 

・・・・・

 

 

 

 

 

へぇーっとお竜さんと五条が納得した、というように声をあげる。

話は脱線して、何故呪術師は帳を降ろすのか、呪霊はどうやって発生するのか、ということまで。

中々にわかりやすかった、と思う。お竜さんが慣れているカルデアの傍若無人な英雄には、人にわかりやすく教えるという機能が基本的に備わってないので、夜蛾の教え方は丁重に感じられた。

 

 

少し悩む。

 

「いや、こっち風に言うなら術式の研究だけしてる引きこもり、が神秘の漏洩だけは警戒してるから抜け駆けを監視する組織を作っただけだな」

 

引きこもってるから呪術師界との関わりがないのだろう、と結論つける。

そしてさらに聞いている限り、情報操作と帳くらいしか秘匿の手段がない呪術側と比べると、暗示による記憶操作、印象操作のある魔術側では隠蔽の度合いが違う。

大方、魔術の存在が呪術側にもしっかりと隠蔽されていたのだろう、と憶測で話した。

 

 

 

「一つ気になることと言えば…」

「言えば?」

 

夏油が律儀に聞き直す。

正直、お竜さんにとっては魔術協会とかの話なんてどうでもいいのだ。今まで関わりのあったわけではないので、今回の話ではあるものとして話したがそもそもお竜さんはこの世界に魔術協会があるのかすら知らないというのが正しい。

 

懸念するとすれば、それは抑止力と神秘の濃度についてだった。

 

「お竜さんは神秘の体現だと言ったな?ならお竜さんがここに居れているのはおかしい」

 

そもそもお竜さんは海に消えた時に世界の裏側に去るはずだった。神霊として高次に行くとしても、ここにとどまれていることは異常なのだ、というのがお竜さんの心配ごとの一つだった。

さらに言ってしまえば、変化の竜の姿をとれていたことからおかしかったのだ。人理焼却時のように世界が揺らいでいるくらいでないと排斥されてしまう代物だ。神霊の顕現ってだけでも抑止の対象であるので。

 

「神秘は薄れる。それに伴い神は姿を消す。お竜さんには海に去ったその後などない。それがお竜さんの最後だったからだ」

 

五条、夏油、夜蛾が三者共に、意味がわからない、といった顔をする。

だって三人の目の前にいるお竜さんは終わりなどまだ迎えていないのだから。

 

 

それは、既に座に至っているお竜さんだから言えることだ。座には時間の概念がなく、またカルデアでの日々を夢に見たからこそ気付ける異常性。

現代に生きるサーヴァントは総じてカルデアの日々を夢に見ているという形で召喚された。このお竜さんもそのうちに含まれて、でもしっかり海に消えたお竜さんも居たので座にも登録されている。むしろ現代にはお竜さんはもう居ないというのが正史に近いのだろう。

 

「この世界はあまりにお竜さんの知ってる他の世界線と勝手が違うというだけだ。お竜さんはもう世界からは居なくなってるのが普通だからな」

 

もともとそうであったのか。それとも途中でなくなってしまったのか。知るすべこそないが、一先ずはこの世界を抑止のない、神秘に溢れた世界だと仮定する。差こそ大きいかも知れないが、剪定されないほどには同じ世界であるのであると。

 

「神様っていうのはそういう他の世界とかも知れるもんなわけ?」

「お竜さんが特別なだけだぞ」

 

胸を張る。偶然の産物であって、お竜さんがすごいわけでは全くないのだが。

 

五条はというと、自分から聞いた上でよくわからん、という顔を隠そうともしなかった。神様には違うかも知れないが、人間には世界というものは一つであるので、と開き直る。

 

さらに五条も夏油も相手が神様であろうと失礼な人間であったので、話半分以下で聞いていた。

違う世界の話を持ち出したところでそれを知らぬ人間に理解が得られるわけがないのだから、いつまで経っても平行線。さらりと聞き流すが吉である。

 

教え子二人がその調子であっても夜蛾はうんうんと頭を悩ませながら真面目に聞いていたが。

 

 

「わかりやすく三行で」

 

夏油が無茶振りをする。が、まあ仮にもマスターの言うことなので、とお竜さんは大人しく答えることにした。カルデアのマスターもこういうノリは好きだったな、と思いながら。

 

「普通の世界線だとお竜さんはもういない。呪霊もいない。神秘は世界に留まれないから」

 

呪霊とは先程の夜蛾の授業曰く、人の有する呪力が負の感情によって形を得たものだと言う。

こちらの常識で言うのなら精霊種、そのなかでも人が知覚できないのであれば妖精程度の存在規模だ。妖精であっても人を引きずり込むことはあれど、妖精郷に居るものだが。

例外なく、精霊種も神霊も魔獣も神秘が薄くなるにつれて、よりそれが強い世界の裏側へ去るのが通常である。

 

そう、呪霊の存在こそお竜さんを除いて一番の相違点だ。

あいにく龍馬と居たときのお竜さんは呪霊を知る機会などなく、そしてそれより前であればそんなもの居て当然くらいのものでしかなかったので、いつから異なってしまったかなどを知るすべはお竜さんにはないが。

 

夏油が驚いたように言う。

 

「え、呪霊いないのか」

「正確には消えた。人に信仰されなくなった神が姿を消したみたいに。こっちじゃ呪霊じゃなくて妖怪だの、魔性だのと言ったりするが、人の信仰やら思いから発生するのにそもそも人間に居ると信じられてないなら存在のしようもないだろ」

 

 

それがこの世界じゃ感情だけで発生して存在できるのだからエコだな、というのがお竜さんの感想だ。

帳の重要性もここにつながるのだが、神秘の秘匿の理由とは変なところで違うのだからおかしなものである。

 

 

「すべてが仮想怨霊みたいなものか」

「逆に厄介じゃない?」

 

 

口を揃えて夏油と五条が言う。

今度はナニソレ、という顔をお竜さんがしたので夜蛾が黒板に「仮想怨霊」と書き加えた。

 

 

 

 

・・・・・

 

 

 

 

「生まれたとしても、土台となる神秘が西暦以前から薄れ続けてるからすぐに消えるぞ」

 

仮想怨霊について完璧に理解した、とばかりにお竜さんが返す。

夜蛾が聖杯知識みたく気になった言葉を解説してくれるものだから便利である。

 

「それがよくわかんないんだよね」

 

机にぐで、と溶けたまま問う。普段なら怒られかねないが、今回は授業ではないので。

五条は知りたがりであるが、そもそものお竜さんの説明が要領を得ないので聞き直すことにした。実際はお竜さんにしてはしっかり話しているのだが、土台となる概念の差異が大きすぎる上に用語の概要を話していないだけである。

 

疑問を上げていけばあまりにきりがない。

 

「一問一答にしていこう」

 

夜蛾が提案し、散々解説で埋まった黒板を消そうとする。

まだ全然覚えたとは言えないが、まあいいか、とお竜さんはそれを見送った。

 

 

 

 




自分で書いときながら、お竜さん主体で説明とかさせるのは無理だろ、と思いました。
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