ある日突然《解放》として艦これの世界に漂着した件について。   作:久里浜燐

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1話 ハロー、私を知らない艦娘

「ソビエツカヤ・ベロルーシヤ?」

「そうそう、なんだかんだでソビエツキー・ソユーズの名前を継承したんだけど……」

とりあえず艦娘《解放》として振る舞うことに決めた私は自分の事を説明する。とはいえ艦娘としての部分だけだが。

「うーむ、聞いたことはあるが…工事中止のまま音沙汰が無かったはずだぞ」

「それはそう、なのかな?太平洋の戦争が終わってからその、建造が再開したからさ」

なんだかんだで戦艦が戦果を残したからね、と付け足すと微妙そうな顔をしながらも納得をして貰えた。

「……まぁ、同志ベロルーシヤの経歴にとりあえず違和感は無いし……同志提督の所に連れていけばいいんじゃない?どうかな、ガングート」

「そうだな、私もそれでいいと思うぞ」

「あはは、ありがとう……それで、その、曳航して貰えるかな、この身体で動くの、ちょっと怖くて」

今さっき目覚めたんだから、ごめんね?と視線を向ければ仕方ないと曳航ロープを艤装に繋いでもらえた。誰が曳くのかと見ると第六駆逐隊の面々が入れ替わりで曳航するらしい。

会話で少しでも思い出せるように、との事だけどその優しさがちょっと怖い。

だって「本当は艦これっていうゲームをプレイしている人間でそのゲームを元にファンメイドの小説を書いてたらその世界に来ました」なんて言ったらマジの狂人だもんね……。

 

 

という訳で最初に曳航してくれたのは雷。定期的に「記憶が無いの?大丈夫?」なんて心配してくれるのは本当に母性を感じる。やはりママみが強い……。

「大丈夫だよ、雷。記憶が無いだけで身体は問題ないからね」

「そーぉ?それならいいけど……無理しないでね?」

私を曳きながらも時折心配そうにちらちらとこっちに視線を送ってくる。本当に可愛いな……。

 

次の曳航は電。元は他の鎮守府で最初期から秘書にあたっていたいわゆる“初期艦”だったけど横須賀で他の姉妹3人が保護されたからそこの初期艦と入れ替わりで来たらしい。

「えーっと、その、大丈夫なのです?」

「大丈夫大丈夫、記憶が無いだけで健康そのものだから!」

雷は母親が子供を心配するようなそれだったけど、電のはペットの小動物が主を心配するようなそれであった。保護してぇなぁ……。

とまあ、それは置いておいて。今から私達は横須賀に向かっていることがこれで判明したのだ。佐世保ならともかく呉や舞鶴じゃなくて良かった。マジで全然知らない、なんて事はなさそうね……。

 

3番目に曳航してくれたのは暁。見た感じ改二相当の改造を施されて居るらしく、結構頼れる存在だろう。

……もしかしてさっきの雷電姉妹もそれなりの練度なのでは?暁は改二だし響はヴェールヌイだし……なんて考えてると暁が話しかけてくる。

「ちょっと、聞いてるの!」

「ああごめん、少し脳内を整理してて……なんだっけ?」

「もう!……べろるーしや、さん?ってどんな敵と戦ったの?」

「うーん、覚えて……大和さんと合衆国のアラバマさんと。アラバマさんを沈めた時には忌々しい資本主義の犬を水底に沈められたと魂が震えましたよ」

「へ、あ、え……?」

──なんだ、今のは。私の意思で喋ったんじゃないぞ?誰かが私の身体を使って喋ってる?

「え、あ、ジョークジョーク、その辺全部忘れちゃっててさ……」

「そ、そうよね!ええ!」

とりあえず唖然としてた暁に笑みを見せる。と、同時に私が口走った内容を反芻する。

《大和》、《アラバマ》……忌々しい資本主義の犬。北海道戦争中、第二次日本海海戦で《セヴァストポリ》や《クロンシュタット》と共に《ソビエツキー・ソユーズ》が対抗した相手だ。

そんな記憶がすらすらと出てくる……今のは、私の中にある、あるいは私に塗り潰された《ソビエツキー・ソユーズ》が表に出たのか?

なんて考えてると、曳航艦を交代するタイミングらしい。怖がらせて申し訳ないと暁に謝ればレディーだからいいのよ、と少し的外れな返答。この子はこうでなくちゃね。

 

「それで最後は私な訳だが、同志。なにか思い出したことはあるかい?」

曳航ロープを艤装につないだ響──否、ヴェールヌイはこちらを向く。

「──まあ、一つだけ。暁を怖がらせちゃったけど、ね」

「ふむ、それはなんだい?」

「北海道近海、日本海で私は戦艦《大和》、《アラバマ》と相対してる。」

「……冗談はよしてくれないか、私はあの日、大和を見送ったんだ。」

「坊ノ岬沖海戦、大和を中心に矢矧を始めとした随伴艦は多数帰らず…帰還したのは陽炎型と秋月型と松型が数隻ずつ、だっけ?」

「そこに、キミは存在する余地がない」

「そう、だから私にも訳が分からないの」

肩を竦めておどけて見せれば、ヴェールヌイは溜息をついて視線を前に向ける。

「そうね、他には……《クロンシュタット》や《セヴァストポリ》の姿もあった気がする……巡洋戦艦のね?」

「待ってくれ、彼女らは建造されることなく解体されたはずだ」

「それは私もそう……の筈、でしょ?」

曳航するヴェールヌイはこくりと頷く。

とりあえず征途の子を艦これにぶち込もう、って考えてた初期案では“何故”が解消される所までプロットを組めなかった。いや、この6人と合流するところまですらなかったのだ。何故、の答えがあるのかどうかすら分からないのに、《解放》がここにいる理由を説明できない。

それに、私が《解放》の身体を使ってこの世界にいる理由もまず分からないのだ。私からしたらそっちを先に解決したいが……まぁ、無理でしょ。

「……ほら、そこが横須賀鎮守府だ。」

響の声ではっと顔を見上げる

脳内で考えてる間は周りの情報がほとんど入らない悪癖を治さないとな、なんて考えながらその建物と市街を見る。程々に高層建築が建っている、21世紀初頭の……私が生きた時代の見慣れたそれが視界に入り、思わず涙ぐみそうになる。

そして、響や随行してくれた艦隊のみんなに見守られながら久しぶりに私は本土の土を踏んだ。

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