ある日突然《解放》として艦これの世界に漂着した件について。   作:久里浜燐

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3話 《解放》と私

「ここが同志ベロルーシヤの部屋だ。必要なものがあれば適当に言ってくれ、私以外でもいいぞ。備品があれば運び込むし、無ければ上手いこと提督がやってくれるぞ」

「なるほど……ありがとう、ガングート」

 

案内された部屋を一通り見まわせば、それなりに広めの一人向けの個室にそれなりに広めのベッドと勉強机みたいな感じのデスクが部屋の片隅に。

……今まで生きてきた中で一番いい部屋なのでは?なんて思いながらベッドに腰を下ろす。

 

「……当面は大丈夫そう、かも?とりあえず、暮らしてみないことにはね」

「む、そうか?……まあ、そうだな。そうしないとわからないこともあるだろうしな」

 

では私はこれで失礼するぞ、と私を残してガングートは部屋を出る。

……さて、私は何をするべきか……って考えながら、ごろりとベッドに横になる。

意識を取り戻してからの怒涛の展開はどうやら私の疲労を蓄積させ、なおかつそれを覆い隠していたらしく、思考を纏める瞑想のはずがそのまま意識を深い微睡へと潜らせてしまった。

 

 

「……あれ、ここは?」

 

さっきまでの身体じゃない、元の"私"の身体であることはさっきまでの身体と生じる違和感が(というか、不思議なことにさっきまでの身体に違和感は無かった)ハッキリと伝えていた。

そして、次に白一色の周囲を見回す。天井と床、そして4つの壁がある立方体の部屋はなんちゃらしないと出られない部屋だな、みたいなことを思っていると壁の一か所が内開きのドアみたいに開けられる。

そこにいたのは先ほどまでの私……に近い別の誰か。あれが恐らく本来の《解放》の艦娘だろう。というかデザインしたラフスケッチ通りだし。結構美化されてるけど。

 

「目を覚ましましたか、"私"」

「おはよう、って言うかさっき寝た気がするんだけどね……《解放》」

 

地面にぺたんと座っている私を見下ろしながら解放は床に手のひらを向ける。するとそこの床からぬっとテーブルと1組の椅子が出てくる。どっちも白一色ではあるが。

近い側の椅子に腰を下ろせば、向き合うもう一つの椅子には解放が腰かける。

 

「……この空間は、どっちが主なの?」

 

アニメとかでよくある精神空間みたいな場所だなって考えながら、ノータイムで解放にその質問をぶつける。

 

「そうですね、強いて言うなら私……ですが、表に意識が出ていない方が主である、と言うべきですかね」

「なるほど、身体の主導権を握ってない方ってわけね」

 

ふむふむと頷きつつ、解放の方を見れば慣れた手付きでこれまたどこから現れたかわからない急須と湯呑を取り出し、緑茶を注いでくれた。

 

「さて、色々と言いたいことはありますが……」

 

片方の湯呑を私に差し出しつつ、《解放》は一拍呼吸を置く。

 

「まず、先ほどは勝手に身体を借りてしまいましたね。ごめんなさい」

「ああ、大丈夫大丈夫……暁はビビってただろうけどね」

 

程よい温度の緑茶を一口含みつつ、へらへらと手を振ってみる。

 

「それと、何故先ほど《ソビエツカヤ・ベロルーシヤ》と名乗ったのでしょうか?」

「まあ、この世界にあるかわからない北日本の戦艦《解放》や、もしかしたら誰かが知ってるかもしれない《ソユーズ》よりもこっちの方がいいかなって」

 

ソユーズは私の記憶じゃ"史実"だと一番建造が進んでいたんだから、と続けるとちょっと納得がいってなさそうではあるが、とりあえず理解はしたような表情を浮かべる。

 

「……《ソユーズ》姉さんとは別の艦娘である、と認識されるのは幸いなので、まあいいです」

 

少なくとも、私の中でソユーズ姉さんは生き続けるのですから、と頷く《解放》。

 

 

「……で、私らはいつまでこうなの?」

「と、言われましても……私にも、なんでこうなったか、わからないのですよね」

 

ある程度話が弾んだところで、私が一番聞きたかったことを尋ねる。でも、《解放》も知らないとあっては手詰まりである。

 

「うーん……ってなるとどうしようもないかー……」

 

背もたれにぐたりと寄りかかりながら、天を仰ぐ。相も変わらず視界には真っ白な天井のみが一面に。

一度長い溜息をつけば、妙な浮遊感を覚える。

手元を見れば、白い粒子となって消える私の身体。

 

「……ああ、もう時間ですか。では、また後程」

 

席を立って軽く一礼する《解放》は、妙に大和撫子っぽく見えるなと思いながら私は意識を手放した。

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